「お、いいゴミだな!」
俺の名前は穹!趣味はゴミ箱とゴミ集めだ。それ以外のことは思い出せない、所謂記憶喪失と言うやつだ。
今はよくお店の人から賞味期限切れのお弁当を貰ったりゴミ漁りをしたりして生活してる。
でもたまに夜になるとおじさんがホテルで一緒に過ごすだけで大金を貰えるんだ。
何故か身体中を触られたりするけど、風呂にも入れるし食事も奢ってくれるしお金もくれる、優しいおじさんだ。
「最近冷えるな」
裏路地の奥、薄暗い道の脇、大きなダンボールとボロボロの枕と1枚の毛布が置かれた場所、ここが俺の家だ。
我ながらセンスのある家だな。
例えばこの下に敷かれたダンボールは全て期間限定黄金のゴミキングフィギュアのダンボールなんだ。
これを集めるのに1ヶ月かかったぞ。
それにここは滅多に人が通らない、秘密基地みたいな場所だ。
そして近くに置かれた棚には今まで俺が集めたゴミコレクションの数々だ。
「ん、完璧だな!」
棚いっぱいに飾られたゴミの数々、最高の眺めだな!
そんな事を思いながら、穹は繁華街の方に目線を向ける。
そこには心地よいミュージックご聞こえてくる。
「あ、もうすぐか!」
穹は繁華街の方に走り、裏路地から出れば穹の目線はビルに取り付けられた大きなテレビに向かった。
『ヒバナーのみんな、おまたせ〜!』
道を行き交う人達の目がビルに付けられた大型テレビに釘付けとなる。
彼女は火花、今は世界的有名な動画配信者で、様々なアイドル、芸能人、同じ有名な動画配信とコラボしたり、今では化粧品や食べ物等の宣伝とかもしてる。
『今日はなんと〜、コラボ配信だよ!』
挨拶もそこそこに本題に入る火花。
今回の配信はなんと、とあるアイドルグループとコラボ配信をするらしい。
アイドルグループの名前は星穹列車らしい。
『今日はよろしく頼む』
「お!丹恒だ!」
クール系アイドル、丹恒。
いつ見ても丹恒はかっこいいな!あのキリッとした瞳も、クールな話し方も男の俺でも惚れてしまいそうだ。
『うちも一緒だよ〜!』
「なのかだ!」
三日月なのか。
自他ともに認める美少女。ちょっと抜けてるところもあって丹恒にいつも助けて貰ったりしてる。
まぁ俺も美少女だけどな!
今回はこの3人で歌配信をするらしい。
それにしても火花のコラボ相手はいつも大物ばかりだ。
この前はアイドルグループ"黄金裔"とコラボしてたし。
俺の推しは黄金裔のリーダーであり"元"宇宙飛行士でCEOのカイザーことケリュドラだな!
それにしてもすごいな、宇宙から帰ってきてそのままスカウトされたらしいけど、そのままトップアイドルにまで上り詰めるなんて。
「やぁ穹くん」
ぽん、と誰かが俺の肩に手を置く。
「あ!おじさん!」
さっき話したご飯やホテルに泊めてくれる優しいおじさんだ。
なんか距離が少し近いけど、俺が美少女だから触れたくなっちゃうのは仕方ないな!
「髪、伸ばしてくれたんだね」
「ん?あぁ··········」
別に伸ばそうとか思ってなかったけど、切るのも面倒だったからな。
後髪に触れると髪の毛が肩にかかっていることに気づく。
「ね、ね、これから来るよね」
「んー」
正直配信を見ていたいが、最近は冷えるし、正直ふかふかのベットで寝たい。
お金ももう無いし、今日は賞味期限切れの廃棄弁当もなかったし、行かないと言う選択はなかった。
「じゃぁ行くか」
そうしておじさんは俺の尻や腰を撫でながらホテルまで向かった。
よく体を撫でられるけど、少しくすぐったいんだよなぁ。
「きょ、今日もいっぱい洗いっこしようね」
「あぁ、いいぞ!」
今日は暖かい布団で寝れるな!
など思いながら、穹はおじさんと共に繁華街の中に消えていった。
「··········」
それを冷え切った、殺意と怒りすらこもった目で見つめ続ける者がいた事に、穹は気が付かなかった。
▶▶▶▶▶
星核ハンター
───ねぇ、起きて。
───起きて、穹。
「んー、おじさん後5分」
「そろそろ起きなきゃダメよ」
次の瞬間俺はバッ!と飛び起きた。
そして何故か俺の隣で横になってる紫色の髪をした美女。
「おじさんが美女になった!?」
「ふふっ、まだ寝ぼけてるのかしら?」
あまりにも驚きな光景に思わず訳の分からないことを言ってしまった。
いや、だけど確かに昨日はおじさんと洗いっこしてご飯を食べてそのまま一緒に寝たはずだ。
なのに何故か隣にハイライトの消えた美女が居る。
絶対におかしい。
「えっと··········どちら様ですか?」
「あら、私の事忘れちゃったのかしら」
「もしかして俺が記憶喪失になる前に会ったことがあるのか?」
俺の言葉に女性はどこか訝しげにこちらを見ていた。
「··········ねぇ、あなたは"前世"の記憶はどこまで覚えてるの?」
「ぜん··········せ?何の話だ?」
「そう··········」
どこか悲しそうな顔をしたと思うと、彼女は俺の頬を撫でる。
「ねぇ、あなたの家族は何処にいるの?」
「··········俺に家族は、分からない。記憶を失った時には独りだったから」
「そう、なのね」
そう言って彼女は申し訳そうな顔をする。
感情の無さそうな女性だったけど、意外と表情豊かなんだな。
「えっと、俺は帰るけど、お前はどうするんだ?」
「··········私も着いて行って良いかしら?」
「あぁ!」
そう言って俺は身支度をしてホテルを出る。
出る途中紅い液体が見えた気がしたが、目の前の女性の「見ちゃダメよ」という言葉に、何故か抗えず、俺はその液体がなにか気づく前にホテルを出た。
▶▶▶▶
「ここが俺の家だ!」
「··········ここが?」
目の前の女性は目を見開き、驚きを隠しきれなかった。
ふふ、俺のベストマイハウスに驚いて言葉も出ないか。
俺はドヤ顔で自信満々にダンボールやゴミコレクションを説明していると目の前の女性は口を開く。
「どれくらい、ここに住んでたのかしら?」
「ん?んー、10年近くかな」
「今すぐ私の家に来て」
「え?」
「『今すぐ私の家に来て』」
「え?え?え?」
こうして俺は目の前の女性、カフカの家に居候することとなった。




















