Novel21 days ago · 2.2k chars · 1 pages

開拓者、ラジオ始めました。(好き嫌い編)

路地裏的に路地裏的に

昨日の配信の刃ちゃんを見てふと思いついた話。 前回と違って今回は台本形式じゃないのと勝手な自己解釈があるのであしからず。 因みに元ネタは昔読んだドラえもんのことわざ事典の4コマより。 ファイノンとキュレネ復刻に備えて石を貯めていたので完凸する事を決心。

穹とポポンによるラジオ番組――
『銀河美少女開拓者のお悩み相談ラジオ』は、今日も星々の片隅へゆるく電波を飛ばしていた。

列車のラウンジに即席で設置されたマイクの前で、穹は無駄にキラキラした笑顔を浮かべる。

「リスナーのみんな!銀河美少女開拓者の穹と、俺の可愛いポポンのお悩み相談ラジオの時間だよー!」

『ガオ!今回もよろしくね!』

元気よく鳴いたポポンが、ぴょこんと机の上へ飛び乗る。

「じゃあ早速お便りを読んでいくぞ!
ラジオネーム"刃"さんから……って本名書いてくるな!指名手配犯だろお前!」

『あらら…早速やっちゃったね。』

思わずツッコミを入れてしまった穹は深々とため息を吐いた。

「はぁ……仕方ないなぁ。
にしても刃ちゃんがこういうの送ってくるの意外だなぁ……肝心の内容は……。」

穹はタブレットで便りを開く。

そして、数秒沈黙した。

「…………。」

『……?』

「…………これだけ?」

タブレットに書かれていたのは、たった一文。

『飯を食え。』

『………え?これだけ…?どういう事?ポポンわからないよ…。』

「いや、違う違う。これ多分――」

穹は何故か察した顔で頷く。

「『うちの(銀狼)が好き嫌いしてピーマンや人参などを残す。何か無理矢理にでも食わせるいい方法はないか。あとお前もちゃんと飯を食え。』
って意味だな。」

『それだけでわかるの!?穹はすごいね!』

「なんでか不思議とわかるんだよなぁ……。」

穹は腕を組みながら苦笑した。

「確かにあいつ、好き嫌い激しそうだよな。
ゲームに没頭してる時とか、放っといたらカップ麺とお菓子とエナドリだけで生活してそうだし。まぁ刃ちゃんがいるしその辺は大丈夫だと思うけどさ。」

『ガオーッ!好き嫌いは身体によくないよ!』

「そうだな!……って、俺も嫌いなものあるから人のこと言えないけど。」

穹は少し考え込み、ぽんっと手を叩いた。

「あっ!
食べさせる相手に気づかせないように食べさせてみるのはどうだ?」

『それって具体的にはどうやるの?』

「ミキサーにかけてめっちゃ細かくして、ハンバーグとか卵焼きに混ぜるんだよ。」

『なるほど〜!お料理の中に隠すんだね!』

「"木を隠すなら森の中"ってやつだな!」

穹は得意げに胸を張る。

「ハンバーグも卵焼きもみんな大好き王道メニューだからな。
好きなものと一緒に食べて、徐々に慣れていけばきっと克服できると思うぞ。」

『その人の好き嫌いがなくなるといいね!ガオガオ〜!』

「あと、ちゃんと毎日飯は食べてるから心配いらないからな刃ちゃん!」

『……もう匿名性ってなんなのかわからないや。』

その頃。

星核ハンターの拠点では、カフカと刃がラジオを聞いていた。

「ふふ、あの子相変わらず元気そうね。」

ラジオで楽しそうに喋る穹の声を聴いて嬉しそうに微笑むカフカの隣で、刃は無言のまま何かを紙に書き込んでいる。

やがて書き終えると、刃は無言ですっと立ち上がった。

「……あら?」

カフカが目を細める。

数十分後。

銀狼の部屋では、彼女がいつものようにゲームに熱中していた。

「よーし、ここもクリア。楽勝じゃん。」

そこへ、扉が開く。

刃だった。

片手には皿を持っている。

「飯を食え。」

「えー、今いいところなんだけど。」

「冷める。食え。」

「はいはい……。」

渋々ゲームを止めた銀狼の前に置かれたのは、熱々で肉汁たっぷりのハンバーグだった。

「おっ、今日はハンバーグか♪」

ナイフを入れると、じゅわっと肉汁が溢れる。

銀狼はぱくりと一口食べた。

「うんうん、んまい♪」

そのまま、ぺろりと完食。

「ごちそうさま〜。さてゲームの続きしよっ。」

「寝る前には歯を磨け。」

「わかってるってば!」

刃は食器を片付け部屋を出た後に、小さく目を閉じる。

『一見肉眼ではわからんぐらいにピーマンや人参を微塵切りにして混ぜてみたが、どうやら全く気づいてないみたいだな。
……素っ頓狂な小僧の言う事も、偶には役に立つな…。』

翌日。

銀狼は端末を操作しながら、ふと思い出したように呟いた。

「あっ、そういえば昨日あいつのラジオがあったんだっけ。
ゲームに没頭してて聞き忘れちゃってたな…アーカイブで聴こ。」

アーカイブを再生する。

スピーカーから穹の声が流れた。

『ミキサーにかけてめっちゃ細かくしてハンバーグとか卵焼きに混ぜるんだよ。』

銀狼の指が止まる。

「………は?」

嫌な汗が頬を伝った。

『"木を隠すなら森の中"ってやつだな!』

「…………えっ?」

ふと昨日のハンバーグが脳裏をよぎる。

銀狼はゆっくりと顔を上げ、刃を見る。

刃は腕を組みながら、静かに口角を上げた。

「………ふっ。」

カフカは肩を震わせて笑っている。

「あら、気づいてなかったの?
でもあれだけジューシーで美味しかったら気づかないのも無理はないのかしらね。」

銀狼の顔がみるみる青ざめていく。

「」

数秒の沈黙。

そして――

「穹のバカーッ!変な入れ知恵しやがってぇ〜〜〜っ!!」

その叫びは、星核ハンター拠点中に響き渡ったという。

— End —

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