◇◇◇
[b:_ヒーローインターン]
そういえば、ちゃんと行われた合格祝いの席で、兄さんと会長がどっちの事務所で引き取るか、言い争っていた。
結局は、「会長には爆豪がいるでしょう!?」という言葉に、会長が引き下がり、兄さんに決定したようだが、
「間違っても、ホークスなんぞのところには行くな。」と何度も念押しされた。・・・ホークスに何か言われたのだろうか?
ヒーロー仮免試験から数日、
とある朝のホームルームでのこと
「入っておいで。」
先生の言葉で入ってきたのは、見覚えのある顔ぶれだった。
通形ミリオ
天喰環
この二人は、数か月前の職場体験の時に、
ロー救出の際に会ったことがある。
真ん中の好奇心旺盛な子は知らないけど、
雄英のビッグ3か、
「あ!鷹目、今は紙原さんと爆豪くんだ!おーい!!」
「ッス、」
「お久しぶりです。
・・・天喰先輩は、相変わらずですね、」
「オレの、絶対的な安全圏、」
なんて、?
ブンブン腕を振り回す通形先輩と、
目にもとまらぬ速さで、私の座る席のすぐ隣に移動した天喰先輩。
「知ってるー!職場体験で一緒だったんだよね!私!波動ねじれ!よろしくね!!」
「紙原凛です、」
「天喰くん、どうして紙原さんの隣にいるの?」
「オレの絶対安全区域だから。」
「なにそれ、意味わかんなーい。不思議~。」
・・・私もよく分からない、
ただ、先生の目が少し鋭くなったことだけしか
「君たちについてはよく知ってるんだよね!
まあ、色々な事件に見舞われたっていうのも
あるんだけど、特に、神野の後の報道で君たちの”声”を聴いたよ。」
・・・[[emphasismark:涙の主張 > ・]]、か。
「俺も環も、紙原さんのことを凄く心配してたから、みんなの言葉が聞いた時、とても嬉しかったんだ。君たちの絆を凄く感じたよね。」
「・・・俺も、ミリオも、3年や2年生の署名活動手伝ってたんだ、」
「!そうだったんですか、・・・ありがとうございます。」
「ううん。一番頑張ってたのは、この子達だから。」
全校生徒への署名活動、
あれが世論をひっくり返す動力源の一つになったといっても過言ではない。
まさか、一度きりしか関わりのなかった二人まで、協力してくれていたとは、
「・・・いえ、それでも、感謝してもしきれません。」
「1年から仮免取得だよね。うん。
今年の1年ってすごく元気があるよね。
・・・・・・[[emphasismark:そうだね > ・]]。
何やらスベり倒してしまったようだし、」
なぜか、突然通形先輩の雰囲気が、
[i:「君たちまとめて俺と戦ってみようよ!」]
急遽体育館に移動する。
私と爆豪は、通形先輩の個性を知っているということで見学らしい。
爆豪と隣り合って座っていると、間に天喰先輩が入り込んでくる。
「・・・・・・心、折れちゃわないといいけど。」
ぽつりと呟かれた言葉を爆豪が鼻で笑った。
「そりゃ、ありえねー話だ!」
「?」
「アンタらは知らねぇかもしれねーが、俺たちゃ、もう何回もバキバキに折られてんだよ。
確かに、通形・・・センパイ、は強ェが、ゼファー先生より全然マシだっつの。」
「・・・それはそう、」
おじいさまは、心が折れてもお構いなく、
だからなぁ。
「・・・逆に、追い込まれるのは、通形の方だろうよ。」
「・・・イレイザー、そういうこと言うの珍しいですね、?」
「まあ、・・・だてにアイツらの([[emphasismark:生き地獄 > ・]])訓練を見てきてないからな、」
・・・・・・最近、先生はもう見聞色使えてるんじゃないだろうか、というレベルで気配を察知するのが、早いし的確になった。
他の子たちも、チラホラと気配の察知が速くなっている。反応速度も良い。
通形先輩が急に現れたりしても、気配を察知して動けるだろう、
あとは、攻撃を[[emphasismark:どう当てるか > ・]]・・・だが、
基本的に常時発動型の個性以外は、どんな個性にもデメリットが存在する。
例えば、
爆豪であれば個性を[[emphasismark:使用しすぎる > ・]]と手を痛めるし、
緑谷であれば個性を[[emphasismark:使用しすぎる > ・]]と身体への負荷が大きくなる。
「・・・通形先輩にも必ず、何らかのデメリットはあるはず、」
「なら、ずっと攻撃をしかけ続けるしかねぇな、」
「よし、」
全員の方向が纏まったところで、
高度の連携を駆使した絶え間ない攻撃が
通形先輩を襲った。
「緑谷は、本当に勘が鋭いな。」
「チッ・・・昔っから、ヒーロー研究ばっかしてやがったからな。」
「・・・ミリオが、押されてる、」
「通形が、・・・凄いね、みんなとっても強い、」
あ、先生ちょっとドヤ顔してる、
結果、通形先輩は倒された。
彼は明るい表情で、悔しそうにするという芸当をこなし、自分の個性を「強い個性」にした、といった。
インターン先のサー・ナイトアイが、通形先輩を育ててきたのだろう。
あの職場体験の時も、確かな信頼を感じ取れた。
皆がインターンについて真剣に考えながら、
教室に戻る中、通形先輩と天喰先輩が、私と爆豪の隣に挟むようにして並んだ。
波動先輩は三奈で遊んでいるようだ。
「君たち、二人は引き続きエッジショットとベスト・ジーニストのところに行くのかい?」
「はい。私は、すでに話をつけてあります。」
「・・・俺も、昨日電話があって、話はついとる。」
え、会長、行動が速いな。
そうか、と天喰先輩が残念そうに言うので、首を傾げる。
「ファットが呼びたがってたからさ。」
「俺も、サーが呼ぼうかどうか迷ってたよ。
でも、多分二人の師匠が許さないだろうからって。」
・・・・・・職場体験の一件で結構気に入られたんだな、
「・・・できたら、ファットが関東に来ることがあれば教えてください。ローがあのボディに抱き着きたがってるんで、」
「ローくんが、・・・分かった。伝えとくね。」
「はい、私も飛び込んでいいか、聞いといてください。」
「えっ、あ、分かった」
「何言っとるんだ、おめぇ、」
「だって、脂肪でしょう?
・・・リアル、人を駄目にするソファ、
ベイマッ〇ス、でしょう?」
「・・・何言っとるんだ、おめぇ。」
さて、雄英側はかなり渋っていたようだが、
結局、ヒーロー公安委員会からもセミプロたちにはもっと経験を積んで欲しいと要請を受け、
1年生のヒーローインターンに踏み切った。
預け先のヒーロー自体も、厳しい選考の末決定するようだ。
実績のあるヒーローなので、エッジショットとベスト・ジーニストはすんなり選考を通った。
[b:【港区!〇〇ショッピングモールにて、強盗による立てこもり事件発生!!被害人数は1500人と想定!近隣のヒーローはすぐに急行せよ。】
]
「行くぞ。」
「はい。」
≪NHAの放送≫
「現在、こちらの大型商業施設の前には、
大量の警察が武装して待機しています。」
テレビ画面には、休日大勢の人で賑わっていたであろう商業施設の前の広場の様子が映っていた。
そこに集まる大勢の人質たち、
総勢20名は超えそうなヴィラン達が周囲にはひしめき合っていて、「人質を解放してほしければ、10億もってこい」と商業施設と警察に要求している状況だ。
ヴィランの個性により、1500余名は捕縛され、下手に手を出せばもしかすると、一気に殺されてしまうかもしれない状況で、その場は完全に膠着状態にあった。
「・・・まもなく、ヒーローが到着する予定ですが、」
金の準備に時間がかかることに主犯格のヴィランが苛立ちを露にしているのが、分かる。
[i:
『さっさと、金を寄こしやがれ!!
じゃねぇと、このガキども!ぶっ殺すぞ!!』
]
1500余名の内、隔離された子供たち100名が男の個性よって操られた大量の刃物を向けられ、泣きわめいている。
その親たちが「早く助けてくれ!」と警察にしきりに叫んでいて、痛いほど伝わってくる感情が、警察の判断を鈍らせていく。
[i:
『総員、』
]
[i:[b:
ー「”忍法・千枚通し”」
]]
[i:
『エッジショットだ!!』
『NO.4ヒーローが来た!!』
『もう大丈夫だ!!!』
]
「エッジショットです!!忍者ヒーロー・エッジショットが現れました!!」
エッジショットにより、主犯格以外のヴィラン達が戦闘不能になった。
[i:
『・・・もう、大丈夫だ。』
]
エッジショットの登場に湧きあがる人質たち、
そしてメディアに警察。
それとは逆に、
[i:
『く、くるんじゃねぇ!!』
]
急に顔を真っ青にして、焦り始める主犯格。
「残る一人のヴィランが、大量の剣を子供たちに向けています!!!ん、?!!あ、あれは!!」
そんなヴィランに目にもとまらぬ速さで迫る黒い影、
[i:[b:
ー『”風切刃”』
]]
突如として起こった突風が、ヴィランを人質から突き放した。
[i:
『!!ヒーロー・プラタだ!!!』
『剣士ヒーロー!』
『かっけぇ!!』
『プラタ!!』
]
子供たちから歓声が上がる。
「雄英高校ヒーロー科!
現在兄であるエッジショットの元にインターン中のセミプロヒーロー!
プラタです!!」
最近、ヒーロー仮免許を取得したばかりの、
インターン生だが、
その実力がプロをも凌駕するということは
周知の事実である。
明確に、プロではないながらも、
女剣士、という戦闘スタイルのかっこよさと、
本人のどこか男前な気質、
それから、綺麗な顔。
子供たちの羨望を集め、
人気は鰻登りである。
最近の活躍からも、メディアに登場することが増え、一気に注目度を増している。
今、もっとも人気ある学生ヒーロー。
[i:
『皆、もう大丈夫。
機動隊の皆さん!子供たちを!!』
『『『『『『『はい!』』』』』』』
]
機動隊が子供たちを保護すると、
プラタは、吹き飛ばされたヴィランの元に向かう。
どこか、様子のおかしいヴィランに、
エッジショットが他のヴィラン達を拘束しつつ、
「気をつけろ。」と注意をする。
プラタはそれに、頷いて刀を抜いた。
[i:
『許さねぇ、許さねぇ!!死ねぇ!!!』
]
そう言って叫んだヴィランの背後に、視認できるぐらいでも銃弾のようなものが、現れた。
[i:
『全部、ぶっ殺してやる!!』
]
男が腕を振り下ろすと、ソレは一斉にプラタと、その後方の機動隊隊員たちに襲い掛かる。
[i:[b:
『___”月光”』
]]
だが、それは、
誰かに危害を加える前に、優しい複数の月の光に包まれ、全て塵となった。
[i:
『なっ、!?』
]
刀を鞘に納めつつ、プラタが構える。
[i:[b:
『___”弦月”』
]]
弓から放たれた、一本の矢のような、
鋭い突き技が、ヴィランの腹に命中した。
歓声が沸き上がった。
「聞こえますでしょうか!?凄い歓声です!!
つい先日より、エッジショット事務所で活動を始めたヒーロー・プラタは、連日、エッジショットと共に、数々の事件を解決に導いており、
国民の皆さんからも期待の声が上がっています。」
◇◇◇
「すげぇじゃん、紙原!テレビ見たぞ!」
「ほんと!凄かったわ。」
「うんうん、解決までの速さがとっても速いね!エッジショットとプラタの連携はブツブツブツブツブツブツ・・・」
「わは、通常運転やね、デクくん。」
今日は、兄さんと行動するのではなく、
サー・ナイトアイからの要請で、一時的にサーの元にインターンをさせて貰うことになっている。
やけに朝早く呼ばれるとは思っていたが、
まさか、寮を出て切島、緑谷、お茶子、梅雨ちゃんの四人と出くわすとは、
「みんな同じ電車・・・同じ駅に行く?」
「方向も同じ」
「曲がる角も同じ」
集合場所であるビルの前には、ビッグ3も。
「やっぱり、紙原さんも呼ばれたんだ、」
「やっぱり、?」
「安全圏・・・」と呟きながら、天喰先輩と一緒に中に入る。
大量のヒーローたち、
「あ、ファットガム、」
「ん?おお!プラタやないか!!元気しとったか!?聞いたで、えらい頑張っとるってな!」
黄色いが、ぷくぷくのボディ、
「お久しぶりです。」
「そんな畏まらんといて!」
チラリと天喰先輩を見上げる。天喰先輩は「ん?」と首を傾げたが私の言いたいことが思い当たったのか、「あー、」と視線を斜め下に下げた。
「・・・あの、ファット、」
「お?」
ゴニョゴニョと天喰先輩が、ファットガムに耳打ちする。ファットガムは、ふんふん、と相槌を打っていたが、「おお!」と私を振り返って腕を広げた。
「ええで!どっからでもおいで!!」
「!!」
トト〇だ、
駆け寄ってぴょんと、飛びついた。
「・・・ほわ、」
安心感が凄い、
この吸収されていく感じ、
「どや!もちもちやろ!!」
「・・・最高、」
ベイマッ〇スか、トト〇か、悩ましい、
・・・この包まれてる感じ、
人を駄目にするソファよりも効果がある、
「・・・ちょっと、天喰先輩が羨ましいかも、」
「えっ、それが理由で、?」
あ、
いきなり、誰かに引きはがされた。
せっかく、あのぷよぷよを体験していたのに、と少し眉を寄せながら振り返る。
大方、梅雨ちゃんあたりが、「公衆の面前で男の人に抱き着いちゃだめよ。」とでもいうのかと思ったけど、振り返っても、可愛らしい丸い目はない。
・・・てか、視界が黒い、
なんか、すごく怒りの気配を感じる、
それにすごく憶えのある香り、
・・・まさか、
「あ、」
「・・・紙原。あとで話がある。」
「えっ、」
なんで、ここに先生が、
ファットに夢中で、全然気づかなかった、
すっごい睨まれてるし、
背後の梅雨ちゃんとお茶子ちゃんが、遠い目をして合掌している。
「・・・えっと、先生。なぜ、ここに、?」
「急に声かけられてな。ざっくりとだが、事情も聞いてる。・・・・・・それから、それは俺も聞きたいな。麗日と蛙吹はリューキュウ、切島はファットガム、緑谷はサー・ナイトアイ、で?お前は?」
「・・・あれ、兄さんから聞いてませんか。一時的に、サー・ナイトアイの元でインターンをすることになった、と。」
「・・・・・・聞いてない、」
「すまない。イレイザー。私が連絡する予定だったのだが、忙しく今日まで連絡できなかった。」
渋面を作った先生に、詫びをいれる形でやってきたのはサー・ナイトアイだった。
「!お久しぶりです、サー。」
「ああ、活躍は耳にしている。今回は、こちらの要請に答えてくれてありがとう。」
「いえ、私も大体の全容は聞いていますが、まさかここまで事態が進んでいるとは。」
「ああ。そのためにも君の力が必要だ。イレイザーも、プラタの一時移籍の件については協議の中で順を追って説明させてもらう。」
渋々頷いた先生に引っ張られる形で、先生の隣に腰を下ろした。
[i:
『我々ナイトアイ事務所は、約2週間程前から、死穢八斎會という指定敵団体について独自調査をすすめています。』
『調べたところ死穢八斎會はここ一年の間に、全国の組織外の人間や同じく裏稼業団体との接触が急増しており、組織の拡大、金集めを目的に動いているものとみています。』
『そして調査開始からすぐに、敵連合の一人、分倍河原仁、ヴィラン名【トゥワイス】と接触。
尾行を警戒され、追跡はかないませんでしたが、・・・警察に協力して頂き、組織間で何らかの争いがあったことを確認。』
]
「八斎會は認可されていない薬物のさばきを、
シノギの一つにしていた疑いがあります。
そこでその道に詳しいヒーローに協力を要請しました。」
ー大阪で打ち込まれた個性を壊すクスリ、
中身は、人の血と細胞。
・・・なるほど、
[[emphasismark:そういう > ・]]意味で私が呼ばれたのか。
「若頭 治崎の個性はオーバーホール。
対象の分解、修復が可能という力です。
分解、一度壊し治す個性。
そして、個性を破壊する球・・・」
推定、治崎の娘とされている少女、
緑谷と通形先輩はその少女に接触しているのか、「保護する」と息巻いている二人。
「ケッ、ガキが粋がるのもいいけどよ。
推測どおりだとして、若頭にとっちゃ・・・
その子は、隠しておきたかった”核”なんだろ?それが何らかのトラブルで外に出ちまってだ。
あまつさえ、ガキんちょヒーローに見られちまった。
素直に本拠地に置いとくか?
俺なら置かない。
攻め入るにしてもその子が”いませんでしたじゃ話にならねぇぞ”。」
・・・それは、どうだろうな。
ロックロックの突き放すような物言いに、
凜は目を細めた。
[b:ー下手に大きく出て捕え損ねた場合、
エリという少女を助け出すことがさらに難しくなる。
結論:「各地の死穢八斎會の要所の捜索」]
考え自体は悪くないが、まだまだ甘い部分がある、と言わざるを得ない。
【前】に様々な戦場を渡り歩き、色々な悪人を見てきた。
悪人が考えること、
それに伴ってとる行動は
世界を跨がってもあまり変わらない。
「・・・で、結局、なんで[[emphasismark:ウチの > ・]]紙原はこの場に単独で呼ばれたんですかね。」
それは、
「四か月前、ベスト・ジーニストを中心とした、
児童を対象とする研究施設への掃討作戦において、
施設が、死穢八斎會と何らかの関係があったと判明したからだ。」
「・・・なるほど、あの一件で、情報収集をしとったんは、エッジショットとプラタやったな。」
サー・ナイトアイとファットガムの指名を受けて、凛は姿勢を正した。
「・・・エッジショットの方で、インターンをしていますプラタです。サー・ナイトアイからの要請を受け、当時の事件について色々探りなおしてみました。
まず結論からいうと、例の事件の関係者と治崎には、縁がありました。特定のバイヤーを通して、施設の研究員の一人と治崎は知り合っていたようです。」
「バイヤーなんて、関係者リストん中にはなかったやろ。よぉ分かったな。」
ファットガムが感心したように言うのに、凛は
「押収された防犯カメラに映っていたので」と返した。
ロックロックが、「なんで見ただけでバイヤーだなんて分かるんだよ、」と懐疑的な目を凛に向ける。
それに対しても凛はケロリと返した。
「ああ、・・・ご存じの方も多いかと思いますが、
8年前、とある人身売買の拠点が押収された事件があって、私はそこの生き残りです。
私はかなり古参の方なので、一定数の子供を対象としたバイヤーの顔は覚えていたんです。見知った顔だったので、」
勿論、その場にいた全員が知る事実だ。
しかし、報道で聞くのと、当事者の口から聞くのとでは、圧倒的に生生しさが違った。
”お話”だったものが、”現実”になるような、
周囲が息を呑み、ロックロックが顔色を悪くさせたのを一切気にすることなく、凛は再度口を開いた。
「まあ、そんなある意味、[[emphasismark:経験者 > ・]]な私から言わせてもらうと、多分、少女は本邸にいると思いますよ。」
サーが聞きたいのはこっちだろう。
[[emphasismark:ある意味 > ・]]、新鮮な視点で事態を見極め、より確実性の高い推測ができるから。
私の発言に、サーの目が光った。
「・・・何故、そう言える?」
「人体実験というものが、どんなものであれ、その設備には莫大な金がかかります。もはや、存在自体が天然記念物と言われている一ヤクザに、個性ブースト剤を売りさばいているとはいえ、設備をいくつも作れる金があるとは思えません。
バイヤーについては、エッジショットが今追っていますが、恐らく、適当な戦力が欲しくて接触し、その伝手を使って実験設備について学んだのではないでしょうか。素人で準備するには、知識だけではなく、人脈も必要ですから。
となると、少女も恐らく治崎の娘ではない可能性も十分にありますね。」
「せやけど、治崎の個性と、エリちゃんの個性は似とるんやで?!」
「だから、少女の個性は壊すこと、とは限らないでしょう?壊すだけなら、治崎でもできるんです。
要点をまとめます。
[i:一つ、治崎は金が欲しい。]
まあ、天然記念物の組の存続が掛かってますからね。
[i:一つ、薬は高い設備費を払ってもお釣りがくるほどの効果がある。
一つ、もしクスリが完成しているなら、少女を生かしておく価値はない。]
事実、少女を逃がし、こちらに怪しまれる失態を起こしている。
[i:一つ、個性因子が傷ついたうえ、天喰先輩は一定時間個性が使用できなかった。
]
とするならば、クスリの効用は、」
「・・・個性の[[emphasismark:永久消滅 > ・]]」
緑谷のたどり着いた答えに、凛は緩やかにうなずいた。
「正解。」
「・・・確かに、それだったら、エリちゃんの個性が”壊す”とは限らないね、」
「だったら、エリちゃんは、」
お茶子と梅雨ちゃんの言葉にも、凛は鷹揚に頷いた。
「そう、治崎の血縁ではない可能性は十分にある。突然丁度いい個性の少女が転がってきたのか、それこそ、買ったのか、それは分からない。」
どちらにしろ、非道であることは変わりない。
暗い顔をしつつ、一生懸命に事態の解決策を考える緑谷、切島、麗日、蛙吹に、
凛の過去の話あたりから立ち止まっていたヒーローたちは驚愕する。
凛はそんな様子を、どこか誇らしげに見つめていた。
凛の過去については、マスコミに情報が流れ始めたとき、皆にすでに話してある。
それを踏まえ、史上最も凄惨と言われた事件をよく知りながら、立ち上がり大衆に立ち向かっていった1Aの生徒たちは、もう立ち止まらない。
たとえ、それが自分たちにとってはあり得ない程に悲劇であったとしても、その悲劇で苦しんでいる人がいる以上、立ち止まる時間は無駄なのだ。
だから、考える。
[i:どうすれば、そこから救えるのか。
]
立ち止まっているだけの時間は、
救われる側にはもう残っていないのだから。
先生が机の下にあった凛の手を大きな手で
覆い、握った。
目はもう揺れていない。
「勿論、それぞれの拠点に探りをいれることも大事だと思います。敵連合との関わりがあると分かった以上、無視はできない。そして、本邸の構造、確かな敵の数と能力についても、把握しなければなりません。
・・・ですが、想定できる少女の現状に貴方方が心を痛める時間はありません。少女が望んでいるのは、一刻も早い救助。
合理的に行きましょう。」
◇◇◇
「・・・先生と、ヒーロー活動をするのは初めてですね。」
「そうだな。」
先生と隣り合って歩く。
今から、死穢八斎會に突入するのだ。
「先生、屈んでください。」
「?」
不思議そうにしながらも言われるがままに膝を折った先生の首に、[[emphasismark:十字架 > ・]]をかけた。
「・・・これ、お前のコスチュームの、」
シルバーの十字架。
ヒーロースーツに組み込んだ、
父が【前】にお守りだといって与えてくれたソレを真似たのものであった。
古来より銀には、月の女神の力が宿るとされていて、邪気を祓い、災厄から身を守る神聖なものであるとされてきた。
「・・・・・・お守り。」
治崎は、個性を壊す、ひいては消滅させる研究をしている。
ということは、すくなからず消太さんの個性が狙われる可能性もある、ということだ。
”私”を象徴するようなソレが、
消太さんの首にかかっているのを見て、
私は少し可笑しな気持ちになった。
「ふっ、・・・首輪みたい、」
「!・・・・・・お前、」
「ちょっと失礼でした。ごめんなさい。」
すぐに謝ると、それはそれで少し不服そうな顔をする消太さん。
じっと私の手を見下ろして、
ニッと笑った。
「・・・あんまり、大人を揶揄ってると、
そのまま、ココに首輪をはめちゃうよ?」
骨ばった手が、私の左手の薬指の付け根を指す。
それが、どういう意味をさすのか、
この時の私には分からなくて、
「指に首輪、?」と首を傾げるばかりだった。
[b:08:30]
【突入】の合図とともに、目的から大男が飛び出してきた。
飛び出してきた瞬間に梅雨ちゃんが拘束、
お茶子が無重力にし、
[i:「”神旋風・竜巻”][i:」]
突風が吹き上げ、ヴィランが上空に舞うと同時に、[i:「”解除”!」]とお茶子が手を合わせた。
そのまま地面に垂直落下してくるヴィランを後目に、サーに目線で合図を送った。
「突入するぞ!」
サーが下っ端構成員の一人に未来視をかけて確認した通り、地下に続く道を駆け抜ける。
推定、死穢八斎會・本部長の入中の個性により、建物がどんどん形を変えていく。
通形先輩が【透過】を使って先へ進んでいった。
覇王色を使っても良いが、周囲には警官などの一般人もいる。不用意に使って全員失神などさせてしまえば、ただのお荷物だ。
パッと突然下に大きな穴が開いた。
・・・ヒーローと警官が分離されたな。
そして、こういう場合、降りた先にはヴィランが待ち構えている。
「!緑谷!先生!!」
「!!うん!」
「ああ!」
降り立て来たことをヴィランが認識し、構えるよりも前に、目についた三人に即座に【抹消】が発動され、
[i:「”デトロイトッスマーッシュ!!”」]
緑谷の連携により失神、
それをくすねてきた手錠で拘束。
「・・・お前、どっから手錠を、」
「・・・・・・落ちてた、」
「嘘つけ。」
「動きが早ェ、ほんとに学生か!?」
「さっすが、緑谷!」
「いや、紙原さn、プラタの指示が的確だった!」
「評価してないで、先を進むぞ。」
「足を止めるな!デク!レッド!!」
緑谷と切島の頭を先生がポカポカと殴るのに便乗して背を叩く。
ハッとした二人が急いで足を動かし始めた。
「ゼファー先生にしつこく言い聞かされただろう?」
「「[i:救助は時間との勝負]!」」
「正解。」
入中は焦るだろうな、
さっき拘束したヴィランは雑魚ではない。
それなりの個性を持った正しく戦闘要員に頭数を数えられている者たちだ。
それが、瞬殺。
となると、狙うは、
「!」
やっぱり、
「イレイザー!」
突如として突き出した壁の一部を切り裂きつつ、分断されそうになった先生に手を伸ばし、連れ戻す。
「・・・っ、危なかった、すまん。」
「・・・・・・いえ、代わりに、ファットとレッドが、」
これもまた急にできた穴に吸い込まれていった。
取り残された天喰先輩が顔を真っ青にして「ファットォォォォ!?」と叫んでいる。
下の方から、それなりの強さの敵の気配を感じるが、
「大丈夫だ、サンイーター。
レッドとファットなら、対処できる。」
「!」
「続きを進んで、先に行ったルミリオンをサポートしよう。」
「!了解、」
また、大きく道が揺れ動く。
入り組んで形を大きく変えていく。
・・・この効果範囲、
居るのは、ほとんどヒーローだらけ、
これなら、
「全員!私の後ろへ!!」
さっきから、それとなく実力を示していたおかげで、その場の全てが指示に従ってくれる。
はじめてのお披露目だ、
[i:____覇気を纏った、技]
[b:[i:「__”九頭龍・神楽舞”」]]
覇王色を表すような黒い稲妻がピリピリと周囲に広がる。
振り上げた刀に沿って、まるで凛の背後に、
おどろおどろしい九頭の龍が並び、ひと塊になって、剣先から周囲に飛び周り、壁を穿っていくように。
周囲の壁だったものが全てえぐり取られ、
入中の断末魔が上がったと同時に、
上からソレが降ってきて、サンイーターがそれをクラーケンで拘束。
隠れていたもう一人のヴィランを、サーが瞬時に拘束したが、それはドロドロに溶けた、
「!この個性、!」
「・・・敵連合の、トゥワイスの、」
緑谷が目を見開き、先生が顔を顰める。
「助かった!プラタ!!」
サーが隣に並ぶ、ロックロックは「マジかよ!?」と一々反応しながら同じく走り始めた。
「はい、ヴィラン連合のトゥワイスが周囲にいる可能性があります。気を付けていきましょう。」
「了解!」
大分、近いな、
ヴィランが一人倒れている。
「この壁の向こうに!!」
「ミリオ!!」
少女を庇う動作を見せるルミリオン、目の前の宙を横切る、
[i:
__銃弾、
___”三日月”
]
「緑谷!根本の確保を!」
「はい!」
「天喰は。玄野の確保!」
「っ、はい!」
先生の指示で、二人が動き出す。
「イレイザーは、玄野の個性を!」
「!だが、」
「オーバーホールは、私が、」
玄野の個性は厄介すぎる、
オーバーホールなら、広範囲攻撃で、ただ切り刻んでいけばいいだけだ。
[i:「___一刀流・奥義 ”朧月・乱れ咲き”」]
地面に手をつけたオーバーホールの攻撃を全て、作ったと同時に割っていく。
オーバーホールは焦った様子で、なんとか私に個性を当てようと動かすが、緩急をつけた動きで、一瞬、緩やかに見えるはずだ。だが、結局は攻撃が当たったかと思えば霞の様に姿を消し、今度は背後に現れる。
その目で追うことのできない圧倒的な速さが、先ほどルミリオンにしたように、「手っ取り早く人質を狙えばいい」という判断自体を鈍らせていく。
そうして、凛が完全に背後をとり、気絶させようとした時だった。
「!」























