nmmnです。
お風呂から上がって髪も乾かし終わった衣織が寝室にやってきた。
私はベッドの真ん中でごろごろしながら動画を見ている。
「ねーね、舞香」
ベッドに乗り上げてくる衣織。長めの丈の変な格言付きシャツを羽織ってて、その顔はほんのりと火照っている。ずりずりとよって来た衣織は、私のすぐそばにぺたんと座った。
「なに見てるの?」
「動画。子犬の」
「かわいー?」
「うん」
正直、画面から目を離したくないぐらいにはかわいい。小さいものってどうしてこんなに愛おしいんだろう。
そんなわけで、衣織への返答もそこそこに画面を注視していると、突然シャツをめくられた。
「…なに」
「おへそ綺麗だね」
止める間もなくシャツを引き上げられ、そこに長い指が伸びてくる。
「ちょ、さわんないで」
「ほら綺麗に縦」
下腹部の膨らみを優しく辿った指が、へその周辺をなぞる。
くすぐったくて、思わずスマホの画面から衣織の方へ視線をずらした。
そのときの、目があった瞬間の衣織といったら。
にまーって効果音が似合いそうな口元と緩んだ目元。
いたずらが成功しました!といいたげな。
指を払いのけると今度はもう一方の手が降りてくる。だるい。
どうやって追い払おうか考えていたとき、指が窪みをぐっと押し込んだ。
「ねぇ、やめて、お腹痛くなる」
「指突っ込むな」
指の腹でぐりぐりと。そんなに強くないし、爪を立てないように配慮しているのがムカつく。でもなんか嫌だ。触るようなとこじゃないし。
「えー」
「じゃあ舐めていい?」
「っはぁ!?ばかじゃないの!?」
なんでこいつは、こんなに突拍子もないことを言い出すんだろう…!
なんてことを考えている隙に、衣織の顔がお腹に近づいた。
「わ〜い」
「ねぇっ!いいって言ってな、わっ」
最初に湿った吐息がかかって。息を呑んだ瞬間にちゅっと小さくリップ音がなった。
「きっ、たないって、ば!」
ぬるり、とおへそで感じたことのない感覚。背筋がぞわっとして、思わず衣織の肩を強く押した。
それでも衣織はやめなくて。力が入って鋭くなった舌の先端がゆっくりとくぼんだそこを動き回る。
「まいかのおへそほしー」
「ばかっ、やめてって」
べしっと頭をはたいてしまうと、渋々といった風に顔が離れた。
スマホが私の手を離れて放り出されているのに、このとき初めて気づいた。
「おなかもすべすべ、もちもち」
「つまむな!」
「白いね、大福みたい」
舐めるのをやめさせたのはいいものの衣織の暴走はとまらなくて、お腹に唇を何度も落としたりくびれあたりの肉を摘んでみたりやりたい放題。
「跡つけていい?」
「ぜっっっったいだめ!」
挙げ句にはこんなことまできいてくる。だめだ、明日は仕事だし、万が一見られでもしたら。
「ん、残念」
断られるのが分かってたみたいな軽さで衣織はすっぱりと諦めた。
これはこれで、拍子抜け。
てっきりもっと粘ってくるかと思った。
「よっこらせ」
唾液に濡れたおへそを拭っていると、衣織が体勢を変え、私の体を跨ぐように乗っかってきた。
「わっ、なに」
そのまま衣織は腰を落として。
「へ?」
抑えることもできず、間抜けな声が漏れた。
え、いや、…え?
さっきまで衣織がいじっていた私のお腹。今は衣織が跨っているそこは、私が想像してたのとは違う感覚を受け取っていた。
熱くて、ぬめりがあって、じっとりと濡れている。
「だってさ、舞香、ぜんぜん誘われてくれないんだもん」
「だから、ん、勝手にする」
衣織が腰を軽く前後に揺すった。その動きに合わせて、私のお腹と衣織の股の間でくちりと小さな音がなる。
「ちょ、はっ!?」
「え、は、履いてないの?」
長いシャツに隠されたそこは見えないけれど。
このあたたかさを私はよく知っている。
「…っん、そーだよ…ぁ」
衣織の顔を見た。さっきよりも赤くて、眉がぴくぴくと動いている。薄く開かれた目と目があって、心臓が大きく跳ねた。
「やば、衣織」
「んぁ、まいかのおなか、やわらか」
私の肋骨あたりに軽く手を置いて、細く息を吐きながら衣織が腰を動かす。
ゆっくりと円を描くように。
濡れた柔らかさの中に度々掠める硬さを持った感触。
そのたびに衣織の息が乱れて、小さく声が漏れた。
「……きもちい?」
「ぅん、やばっ、きもち、い…」
懸命にそこを押し付け快感を拾おうとする姿がかわいい。
子犬もほんとにかわいかったんだけど。
やっぱりこの可愛さは別格だなって思ったり。
「おへそに指突っ込まれても、さすがに誘われてるとは思わないよ?」
「だってぇ…」
たまにこうやって空回って変な誘い方してくるから面白いんだよね。
衣織の顔に手を伸ばし、汗で貼り付いた前髪をどかしてやる。
「衣織ほら、手」
「あ、…ま、いか、すきっ」
お腹に置かれていた両手を繋いで指を絡める。そのまま顔の横まで引っ張ってきてベッドに突っ張るみたいな感じにさせると、ちょっと距離が近くなった。
ぴくっと反応し目を開いた衣織は、こんな行為中には似合わない幼い顔で笑う。
んー、色っぽい。
「ぐりぐりきもちいね」
「ぁっ、や」
もうちょっと頑張ってほしくて、自分の腰をぐっと浮かせる。
上に乗ってた衣織はうまく対応できなくて、そこがさらに強く密着した。
「すごい、おなかべちゃべちゃ」
「ぁん、っ、ごめ」
「可愛いからいーよ。動いて?」
手は握ったまま、衣織が乗ってる分でちょっと重いけど、腰を上下にゆっくり揺すってみる。衣織も小さく息をのんだ後、おなかの上を前後に、さっきよりも速いスピードで腰を動かし始めた。
「まっ、て…やばいかもっ」
「ん?」
「やば、やばぃっ、ぅ、」
小さな声で何回も呟く。うわごとみたいに、熱い吐息にのせて。その切羽詰まった感じにきゅんとしてしまい、繋いだ手に力がこもった。
「目あけて衣織、こっち見て」
「むりっ、むりむりっ」
いつの間にか衣織はしっかりと目を瞑ってしまっていた。欲望に濡れたそれが見たいのに、頑なに首を振る。
「いおり?」
「っあ…!ま、まいかぁ、ゃっ」
それでも、ちゃんときいてくれるって知っているから。
――ほら、やっぱり。唇を噛んで押し寄せてくるものに堪えながら、衣織の双眸があらわれた。気持ちよくなって、溶けそうになって、大好きが溢れた目。
「どしたの?」
「いっ、く…いっちゃう、んっ」
おなかの上で衣織の体がびくびくと痙攣し始める。てっぺんが近づいている証拠。
お互いの体温が溶けて、二人の境界まで曖昧になるような熱を持て余したまま。
「いーよ、ほら、最後まで頑張って」
自然と顔が近づいた。
最後は吐息も声も全部唇で引き受けて、その瞬間を静かに待った。

















