臨時領主会議
ーフェルディナンドー
ゴルツェもターニスベファレンも大人の集まりでは、そこまで時間かからずに討伐されそうだ。
このままではつまらないなと、ゴルツェに狙った魔力弾が間違えてターニスベファレンに当たったように狙って魔力弾を撃ち出す。
ボニファティウス様もエックハルトもこちらの意図に気づいたようで、同じように方向違いから、中央騎士団の後ろから撃ち出している。
ターニスベファレンが、良い感じに大きくなり、ゴルツェに狙いを定めている。
私の魔力を感知されないように、ゴルツェが大きくなっていて良かった。
扉を守っていたダンケルフェルガーもターニスベファレンの討伐に移動したので、私たちは皆扉に近付いて、撤退合図を待つ。
子どもたちの声が響き渡る。
《なんかあの人偉そうだけど、お腹出てない?》
《本当だぁ。ずっとツェントもいないから、ユルゲンシュミット惰性の塊だねー?》
《でも、偽物ツェントがいるんでしょ?》
《そうそう、グルトリスハイトの偽物作ったくせに無くした馬鹿たちでしょ?》
《闇の門の者たち、裏切り者だし、ユルゲンシュミット終わりじゃない?》
《あそこのアウブ配、ランツェナーヴェを引き入れようとして、なんだっけ、変なことしてるんだよね?》
《うん、僕も聞いたよー、神々が怒ってたねー》
子どもたちの会話は、この臨時領主会議の会場に響き渡っている。
内容が酷いな・・・。
グルトリスハイトが偽物だと言っている。
会場にいる者が、声を出さずに皆耳を傾けながら、魔獣討伐している。
《あれ?
闇の門のお腹の出てる女の人?に化けてる奴でしょ?》
《え?あれ人じゃないの?》
は?ゲオルギーネが人じゃない事になってるな。
《人だったら最悪じゃない?娘の子育ても碌に出来てないよ?》
《あ、あの愚かな娘かぁ。神々も呆れてたよね?》
《そうそう、なんかラオブなんとかって騎士も繋がってるんだよね?
この間、神々が見て呆れてたよ》
《人の皮を被った魔獣と一緒って》
あー、幼い事でこの言葉を聞いて、ゲオルギーネとラオブルートを魔獣だと思ったことにするのか・・・。
皮肉には丁度良いのか?
《そうなんだ!新種の人型魔獣かもね?》
《しかもさ、あの新種の魔獣、夫のアウブ殺そうと毒盛ってるんだって!》
《え?魔獣なのに、毒も使えるの?》
《そしたら、さっき威張ってた男の人もそうじゃない?新種の魔獣同士なんでしょ?》
《もうユルゲンシュミットも終わりだね。人型魔獣が、出てるもん》
もう2人は新型魔獣決定か?
ユストクスが笑いを堪えているのが、視界に入るな。
《あんな馬鹿に入り込まれてて、終わりだねー。馬鹿ばっか!》
《ねー、あんなお腹の出てる人いないのに、分からないんだねー?》
《グルトリスハイトないから、仕方ないよ。
だから神々が闇の国境門閉めたんだよ?
他の門開ける事にするって》
《くすくす、神々に見放されたんだね》
《くすくす》
《ふふふ》
《終わりだね》
「中央騎士団長とアーレンスバッハの領主一族を捕まえろ!」
アウブダンケルフェルガーが、ダンケルフェルガーに指揮を出す。
扉が無防備だ。今だ!
『撤退だ!』
ボニファティウス様の撤退の合図に、皆が扉をすり抜ける。
後を追われると困るので、魔術で鍵をかけた。扉を壊せば出れるだろう。
『到着した順にドンドン帰還しろ。中の事は、カルステッドとユストクスに後で聞こう。
フェルディナンド、転移陣を頼む』
『畏まりました』
走りながら、皆が揃っていることに安堵し、皆が転移した事を見届けて転移陣を回収。
私も急いで図書館の礎への道を開けて、エーレンフェストに転移した。
帰りはエアヴェルミーンの声は聞こえなかった。
「「「「おかえりなさい!」」」」
エーレンフェストに転移すると、行きと同じように、ローゼマインと子どもたちが私を待っていてくれた。
「皆でこれから昼食です。
でもお祖父様は城を長い間留守に出来ないので、城に戻るそうです。
お父様とユストクスも戻って来ないから、今日の話はまだ先かな?」
「そうだな。とりあえずフェリックスとフェデリーコ、オルフェーロにパトリツィオが凄い爆弾を落として来たから、臨時領主会議はまだ続くのではないか?
昼食を食べて、執務を片付けて、夜にでもエルヴィーラとローゼマイン、フェルローズに教えるから、皆でやるべき事をやってしまおう」
「「「「はーい」」」」
「はいは短くしなさい。そのまま言葉が乱れてしまうぞ」
「「「「はい」」」」
家族とのやり取りに日常に戻ったと感じた。
臨時領主会議
ーカルステッドー
今日は、臨時領主会議にジルヴェスターの護衛として貴族院についてきた。
何故私までジルヴェスターの護衛としてついて来なければならないのだろうな。
ジルヴェスターは、昔からの側近に囲まれていたり、馴染みのある者が近くにいる事に安心するらしい。わざわざ辞任した私を連れて行くと言ってきた。
どうせ、そのうち戻って来させようとしているのだと分かるが、素知らぬふりで、領主会議はジルヴェスターの近くでなく後方にいることにする。
私とユストクスは、皆の動きを見なければならないし、騒動の後をエーレンフェストに戻ったら皆に伝える役目もあるのだ。
ジルヴェスターに構っている場合ではない。
臨時領主会議の宣言を中央貴族の司会が述べ、ツェントからアーレンスバッハの国境門が閉まった報告があり、クラッセンブルクや
ハウフレッツェ、ギレッセンマイヤーの国境門が開いた事を話し始めた時に、会議室の扉が大きく開いた。
皆の視線が扉に向く。
通信の魔術具から父上が指揮を取っているのが聞こえる。
コルネリウスがザンツェを持って、振りかぶっていた。
その斜め後ろにはアンゲリカが立ち、その後ろには、フェリックスとフェデリーコの騎獣が見える。
あぁ、始まるのだな。
コルネリウスの投げ入れたザンツェにすかさず、アンゲリカが魔石を投げつけ、ザンツェが口を開けて飲み込んだ瞬間にゴルツェとなった。
ローゼマインの魔力の籠った魔石をザンツェに取られ、ゴルツェになったと聞いていたが、目の前でザンツェがフェルツェを飛び越えてゴルツェになると、吃驚するな。
臨時領主会議のため、中央騎士団の者が少なめに配置されていたこと、それに騎士団団長も扉の外から投げ入れられているのに、外の捜索に人手を裂かなかったため、コルネリウスとアンゲリカは楽に離脱出来たようだ。
父上から撤退命令が出ている。
エーレンフェストに早く戻れ!2人はまだ見習いだ。
机で囲われているど真ん中でゴルツェが暴れているため、どの領主も机から離れて壁際に下がっている。
「なんで、あんな魔獣が入り込んだのだ?」
ジルヴェスターも焦った顔をしながら、フロレンツィア様を伴って壁際まで下がってきている。
フロレンツィア様など、あんな大きな魔獣を身近で見たのは、初めてなのだろう。
ジルヴェスターを追い越す勢いで、壁際に下がってきていた。
私も一応シュタープを出して、ジルヴェスターの前にでる。
ジルヴェスターの後ろだと、皆の活躍も良く見れないからな。
ローゼマインやフェルディナンド、子どもたちに父上が、毎朝祝福を送っているのは知っていた。
今、目の前で繰り広げられている魔獣との戦いの中で中央騎士団団長の腹に目が行く。
本当に腹が出ているな・・・。
その腹に注目するのは、私だけでなかったようだ。
「あんなに腹が出ていて中央騎士団長など出来るのか?」
後ろからジルヴェスターの声が聞こえる。
お前が言うな!とも思うが、自白剤がばら撒かれているのだろう。
広い四隅から、袋のような物を出して、何かを部屋中に撒いているのが見える。
ランプレヒト、もっと腕を大きく振れ!
早く撒くんだ!心の声が聞こえたかのように、ランプレヒトも撒き終えたようだ。
他領からも中央騎士団長の腹の話が聞こえてくる。
魔獣と騎士団員たちの間からラザファムとダームエルがターニスベファレンを落としている。
落として直ぐに魔石まで投げているのだからたまったものではない。
[b:ボフン]
まるで、騎士団員たちの魔力弾により現れたかのようにターニスベファレンが大きくなる!
黒の魔獣の出現に、アウブダンケルフェルガーが助っ人要請に答えて、黒の武器を持つ領地の護衛も駆り出されることになった。
仕方ない、形だけでもとシュタープの剣を黒の武器に変化させた。
ターニスベファレンは5匹とも放たれ、その上、フェルディナンドと父上にエックハルトが、ゴルツェの討伐中に外れたふりをしてターニスベファレンを大きくしている。
子どもたちの声が聞こえてくる。
《なんかあの人偉そうだけど、お腹出てない?》
《本当だぁ。ずっとツェントもいないから、ユルゲンシュミット惰性の塊だねー?》
《でも、偽物ツェントがいるんでしょ?》
《そうそう、グルトリスハイトの偽物作ったくせに無くした馬鹿たちでしょ?》
《闇の門の者たち、裏切り者だし、ユルゲンシュミット終わりじゃない?》
《あそこのアウブ配、ランツェナーヴェを引き入れようとして、なんだっけ、変なことしてるんだよね?》
《うん、僕も聞いたよー、神々が怒ってたねー》
ユストクスと視線で会話をする。
通信の魔術具から、父上の撤退のために扉に近づく指令が聞こえている。
もう少し大きくしたいがな。
フェルディナンドの魔力弾がターニスベファレンに命中する。
またターニスベファレンが大きくなった。
《あれ?
闇の門のお腹の出てる女の人?に化けてる奴でしょ?》
《え?あれ人じゃないの?》
ははは、ゲオルギーネは魔獣扱いか!
あの子たちの多彩な話術に笑いそうだ。
《人だったら最悪じゃない?娘の子育ても碌に出来てないよ?》
《あ、あの愚かな娘かぁ。神々も呆れてたよね?》
よっぽど、フェルディナンドの王命が許せなかったのだな。
フェルディナンドとローゼマインの子は、やる事が悪辣だ。
だが、周りは皆子どもたちの声に耳を澄ませている。
《そうそう、なんかラオブなんとかって騎士も繋がってるんだよね?
この間、神々が見て呆れてたよ》
《人の皮を被った魔獣と一緒って》
《そうなんだ!新種の人型魔獣かもね?》
《しかもさ、あの新種の魔獣、夫のアウブ殺そうと毒盛ってるんだって!》
《え?魔獣なのに、毒も使えるの?》
《そしたら、さっき威張ってた男の人もそうじゃない?新種の魔獣同士なんでしょ?》
《もうユルゲンシュミットも終わりだね。人型魔獣が、出てるもん》
酷い!
魔獣扱いを連呼するな!私の腹筋が崩壊しそうだ。
ユストクスは、崩れ落ちたな。
《あんな馬鹿に入り込まれてて、終わりだねー。馬鹿ばっか!》
《ねー、あんなお腹の出てる人いないのに、分からないんだねー?》
《グルトリスハイトないから、仕方ないよ。
だから神々が闇の国境門閉めたんだよ?
他の門開ける事にするって》
《くすくす、神々に見放されたんだね》
《くすくす》
《ふふふ》
《終わりだね》
皆に撤退命令が父上から出た。
この後の様子は、私とユストクスが見なくてはならないな。
「中央騎士団長とアーレンスバッハの領主一族を捕まえろ!」
良し!皆部屋から出たな。
中央騎士団も善戦?し、ゴルツェを討伐したが、子どもたちの声と、アウブダンケルフェルガーの声に戸惑っているな。
ここにはエックハルトもフェルディナンドもいないのだ。私1人じゃ大きなターニスベファレンは討伐出来ないぞ?
あんまり大きくないやつは、倒しておくか。目の前の小さなターニスベファレンは討伐した。首輪つきのやつだな。
首輪は必要だ。旧ベルケシュトックを怪しんで貰わないとまずいからな。
さて、ツェントは?と見ると、呆然としていて、中央騎士団長がダンケルフェルガーに捕縛されているのも黙って見ているな?
「アウブダンケルフェルガー、ターニスベファレンは旧ベルケシュトックの魔獣だ!
ダンケルフェルガーとアーレンスバッハの統治下だ!ダンケルフェルガーも怪しいのではないか?」
アウブドレヴァンヒェルが言い出した。
「そうです、自作自演もある。ダンケルフェルガーは、アーレンスバッハの領主一族と中央騎士団長捕縛して、自分たちから疑いを逸らすつもりですか?」
アウブインメルディンクも追付いした。
「何を言うかぁー!そのような事を我がダンケルフェルガーがする訳ないだろう?」
アウブダンケルフェルガーが吠えている。
あー、クラッセンブルクも参戦し、この場の主導権争いが始まった。
去年卒業し、臨時領主会議に出席していた第一王子など、真っ先に壁際に下がって、震えているな。
こいつだな、ローゼマインに付き纏った馬鹿王子は。
子どもたちの話も聞いていたが、ここまで魔獣で怯える様子を見ると、口ばかりで魔獣の事など何も知らないのだろうな・・・。
「ラオブルートとアーレンスバッハのアウブ配の記憶の確認が先ではないか?
我がギレッセンマイヤー出身とは言え、我が領が加担していないことの証明として進言する!
ツェント、裁可を」
アウブギレッセンマイヤーが、子どもの声に反応して、記憶を改めろと進言してきた。
「ですが、あの声を信用出来ますか?
子どもはここに入りこんでいません。
何処かの領地の陰謀では?」
確かに陰謀だな。ローゼマインや子どもたちの。だが、証拠はないぞ?アウブガウスヴィッテル。
上位領地は、上位としての発言をしているが、アーレンスバッハはアウブもアウブ配も捕縛されたからな。
次に発言するならヨースブレンナーか?
領地順位もアウブの発言の重さ、発言順位に影響する。
ジルヴェスター!分かっているのか?
相変わらず呆けているな。
そして、側近も誰も言わない。
フロレンツィア様がジルヴェスターに何か言っているな。
「記憶を改めれば、疑いも晴れるのです。
第一、魔獣だと言われるような何か疑わしい事があるのでは?」
ジルヴェスターが発言したな。
記憶を改める方に賛同したか!
順位を飛び越えて発言する意味、そして内容をきちんと踏まえたのか?
そして、それが何を引き寄せるのか、理解しているか?
フロレンツィア様も2人の側近も気づいてないのか?
「そうだな。記憶を覗こう。ラオブルートは私がやる。アウブアーレンスバッハはクラッセンブルクに頼みたい。
アーレンスバッハのアウブ配は・・・。
女性だし、マグダレーナにやって貰おう。
だが、1人では心配だな。
アウブダンケルフェルガー、私の後にもう一度。
アウブドレヴァンヒェル、アウブアーレンスバッハの記憶をもう一度。
アーレンスバッハのアウブ配は、血縁だったな、フレーベルタークのアウブ配に頼む」
その瞬間にピリッとした空気が流れた。
ゲオルギーネと血縁なのは、フレーベルタークのアウブ配であるコンスタンツェ様だけでない。
エーレンフェストは、ゲオルギーネの出身領地であり、アウブエーレンフェストは実弟なのだ。
エーレンフェスト内にも焦りが見られるが、もうユルゲンシュミット内で誤魔化しの効かない状況だ。
もし、ゲオルギーネが罪を犯していたら。
エーレンフェストはどうなる?そんな空気がエーレンフェストの者たちから見える。
ジルヴェスター、覚悟の足りないアウブでは領地を背負う事は出来ない。
アウブ位に伴う責任を誰かに代わって背負って貰うなら、もうその者はアウブではないぞ!
ジルヴェスター、ユルゲンシュミットはジルヴェスターの考える正しさで成り立っているのではないぞ?
そんな甘い世界でアウブが生きられると思っていたからこそ、代償は大きかったな。
ジルヴェスターに対する従兄弟としての情は、今まで我慢していたもの、貴族社会の理不尽で飲み込んできたもの、エックハルトとハイデマリーの毒殺も押し付けられた第二夫人も、残りの家族全員の命と引き換えにしてまであるものではないのだ。
血縁の従兄弟より実子と受け入れた血の繋がらない娘の方が、大事なだけだ。
臨時領主会議
ーユストクスー
故郷が無くなっても良いとは思いませんが、もうアウブがアウブ足り得ないのなら、手放すべきですね。
我々は、エーレンフェストに拘っておりません。
まして、今のユルゲンシュミットにも拘ってないのです。
自分たちがどう言った形で、どうなるのかを考えるよりも子どもたちを元のアレキサンドリアに戻す事を優先するのですから。
アウブたちの領地順位、発言内容に伴う責任はあるのですよ?
グルトリスハイト、要するにメスティオノーラの書がなかったから見逃されてきた無礼や失態。
ジルヴェスター様は理解されていないのだろう。
何かあれば、フェルディナンドー!と叫び、自分の後始末を任せ、自分が気分良く暮らす上で、場を整えてくれると心底思い込んでいたのだろうな。
ゲオルギーネは罪を犯している。
この全アウブの揃う中で、それが周知された時、血の繋がりがどのように働くのか・・・。
この場で私とカルステッド様の捕縛も有り得る。
アウブやアウブ配の側近ではないので、調べられれば、大丈夫か?
私はフェルディナンド様の側近であるが、カルステッド様はこの間までアウブの側近。
その上、筆頭護衛騎士だったのだ。他領にもその様に認識されている。
連絡がない事で気付いてくれるか?
いざとなれば、姿を消して逃げ出す事は可能だが・・・。
エーレンフェストにいる皆に迷惑がかかりそうだ。
さて、ゲオルギーネよ。
何処まで記憶を読み取らせられる?
マグダレーナ様は、騎士訓練はされている。しっかりとゲオルギーネの記憶を読み取るだろう。
問題はコンスタンツェ様か。
ここで下手にゲオルギーネを庇えば、コンスタンツェ様も罪に問われ、そして、ジルヴェスター様はこちらも連座だ。
今、皆の見ている前で記憶を探る準備が始まった。これだけ大勢の前で愚行を働く者はいないとして。
それぞれが眠らされ、同調薬を飲まされる準備が整った。ラオブルートとゲオルギーネの抵抗が激しかったが、その事が余計に罪の信憑性を周りに晒していた。
最終的には、ラオブルートは手足を縛られ、アウブダンケルフェルガーに意識を刈られていた。
ゲオルギーネは、同じようにマグダレーナ様に意識を刈られていた。
意識のない状態で同調薬を飲まされ、3人の記憶の確認が続いている。
各領地のアウブと側近たちは、固唾を飲んで見守っている。
最も早く記憶の確認が終わったのは、アウブアーレンスバッハだった。
クラッセンブルクのアウブもドレヴァンヒェルのアウブも確認が終わり、2人で確認をしているようだ。
だが、ラオブルートも、ゲオルギーネもアウブアーレンスバッハが2人から記憶の確認をされても、まだ1人目が終わらない。
先に終わったのは、ラオブルートの方だった。
ラオブルートの記憶確認をしていたツェントは真っ青な顔をしていたが、厳しい表情のままアウブダンケルフェルガーと交代。
ゲオルギーネの記憶の確認を終わらせたマグダレーナ様は、顔色は悪かったが、コンスタンツェと交代した。
その時に一言。
「事実を捻じ曲げたら大変な事になるわ。そして、自己をしっかり持っていないと飲み込まれます。
気をつけて」
コンスタンツェ様は、質問内容の参考にと箇条書きされた質問に再度目を落とし、マグダレーナ様にしっかりと頷いていた。
波紋 ーユストクスー
やっと全ての記憶の確認が終了したのは、鐘2つは経っていた。
朝から魔獣に侵入され、何か分からない子どもたちの声により、記憶の確認が持たれたが、内容が問題になったらしい。
記憶の確認をした者たちが、範囲指定の盗聴防止魔術具を使い、話し合っている。
口元が読みにくいな。だが、エーレンフェストの名が何度も出ている。
どうなる?
「アウブエーレンフェスト、こちらに来てくれ」
ジルヴェスター様がお小言前の子どものような歩き方で、ツェントたちの近くに寄って行った。
範囲指定の魔術具の中に入り、色々と追及されているな。
あぁ、ローゼマインとフェルディナンド、ヴェローニカとも読み取れる。
その後1人アウブエーレンフェストは戻ってきたが、
「領地からヴェローニカと、フェルディナンドを連れて来る。
ヴェローニカは記憶の確認。フェルディナンドは、状況説明をして欲しいそうだ。
記憶からローゼマインに毒を飲ませる指示をしたのは、ゲオルギーネあね いや、ゲオルギーネだそうだ。
またゲオルギーネの記憶からターニスベファレンを旧ベルケシュトックにヴェローニカが頼んだ記憶があったそうだ。
中央の者とダンケルフェルガーの騎士と共に、私は一度エーレンフェストに戻り、また直ぐに戻ってくることになった。
エーレンフェストには、私の側近だけしか連れて行けない。フロレンツィア、後を頼む。カルステッドとユストクスもここに残る」
フロレンツィア様は不安そうにしているが、この場は一旦解散となり、昼食を挟んで、また鐘一つ分後から会議が再開されることになった。
私たちは一度エーレンフェストの寮に戻る事になった。
カルステッド様と私は昼食をさっさと食べて、割り当てられた部屋に各々入り込み、通信の魔術具でやり取りをする。
「カルステッド様、エーレンフェスト崖っぷちじゃないですか?」
「あぁ、ここでヴェローニカが来て、記憶を覗かれたら、領主一族のフェルディナンドに行っていた排斥行為も全て暴露るだろうな。
ゲオルギーネの罪も確定のようだ。
このままだとエーレンフェストは、ゲオルギーネの連座になりかねないな」
「ゲオルギーネの記憶から、どうも姫様とフェルディナンド様、それにヴェローニカの名前が出たようです。
フェルディナンド様が貴族院に転移して来るのは良かったのですが・・・。
姫様が平民出身だとゲオルギーネは明かしたのではないですか?大丈夫でしょうか?」
「あぁ、その可能性はあるな。
だが、エーレンフェストでも同じように噂になり、それを信じた者もいたと話し、青色神官は魔力がなければなれない上、私がずっと資金援助していたような書類もフェルディナンドが洗礼式後に作成してあるのだ。
だからその点は大丈夫だ。
後は当時の神殿長が自分より魔力があるのが気に入らずにローゼマインを貶めるために言った嘘を姪のゲオルギーネに言ったとするので、大丈夫ではないか?
魔力の色の問題も身食いと違い、フェルディナンドの属性のようだから、調べられたとしても大丈夫なはずだと、フェルディナンドが言っていたぞ」
「あー、良かったです。姫様はユレーヴェって事で貴族院には来ないでしょうし、フェルディナンド様なら大丈夫ですよね?
もう一つは、ゲオルギーネの連座でジルヴェスター様が処分なりにあった場合、側近もですよね?
今はカルステッド様は側近じゃないですが、他領はカルステッド様を筆頭護衛騎士だと思っているのではないですか?
そこも心配なのです」
「それはそうなのだが・・・。
一応いきなりは処分しないだろうし大丈夫ではないか?と思っているのだが。
ゲオルギーネのやらかし次第だな。
もしもの時は隠蔽の魔術具で誤魔化して逃げ出すしかないか・・・。
今、こんなところで処分される訳にはいかないからな。
孫たちのこともある。
どうなるだろうな」
そこへオルドナンツが飛んで来た。
『フェルディナンドだ。貴族院に転移した。何処にいる?』
「フェルディナンド様が転移してきたみたいです。階下へ降りましょう」
「そうだな、階下へ降りよう」
寮の階段を降りると通信の魔術具のやり取りを聞いていたのか、階段下でフェルディナンド様が待っていた。
呼び出し
ーフェルディナンドー
貴族院からジルヴェスターが戻った?ようで、神殿にオルドナンツが届いた。
「フェルディナンド、直ぐに一緒に貴族院に行きたい。フェルディナンドに臨時領主会議で話を聞きたいそうだ。
中央貴族とダンケルフェルガーの騎士も一緒だ」
何を言っているのだ?
貴族院で何かが起こっているのだろう。
とにかく貴族院に行くしかないか・・・
そう思って、貴族服に着替え出かけようとすると、ローゼマインと子どもたちが待っていた。
朝と同じようにフェルローズが抱きつき、私の頬に接吻をしてくれたのだが・・・。
目に涙を浮かべて、自分にもお返しをしろと言う。
「そもそも、これは誓いの行為なのです。
私がおとぅしゃまの無事の帰還を願って、結ぶ約束です。
おとぅしゃまも無事に帰って来れるように願いを込めて返してください!」
フェルローズは本当におしゃまだな。
こんな理論的に話す3歳児は、まさに天才だな!と、頭の何処かで現実逃避していたのだが、フェルローズがますます涙目で怒っている。
はぁ、ここは回避は難しいらしい。
「フェルローズ、行ってくる。ローゼマインを頼んだぞ?」
そう言って、私もお返しに頬に接吻すれば大満足な様子で「はい」と返事をしてくれた。
フェルローズから次はフェデリーコ。
やはり返さなければいけないらしい。
「フェデリーコ、ローゼマインとフェルローズを頼んだぞ?」
そう言って返せば、こちらも大満足。
次はフェリックスで、フェリックスには先に
「母上とフェルローズは任せてください。
父上も絶対無事に帰ってきてください」
そう言って頬に接吻してくれた。
「わかった、約束する」
私はそう言ってフェリックスの頬に接吻したのだ。
「フェルディナンド様、ぎゅー。
貴族院にはゲオルギーネもラオブルートもいます。本当に気をつけて行ってらっしゃい」
ローゼマインが私に抱きつき、ローゼマインもまた私の頬に接吻してくれた。
・・・。もしやこれも約束の誓いなら、私も返さなくてはならないのか?
子どもたちを見ると真剣な顔をして、父親が約束するのかを見守っている。
「ローゼマイン、子どもたちを頼んだぞ?」
そう言って、私がローゼマインにお返しをすれば、こちらも満面の笑み。
これは破廉恥ではなく、約束の印。
気恥ずかしいような気分だが、家族に無事を願われ、出かけるのは心が浮き立つものだな。
「フェルディナンド様、今日はそちらのダンケルフェルガー?のマントはやめて、こちらのエーレンフェストのマントにしてください。
私とフェルローズで魔法陣を刺しました。
まだ一つずつで、しかも簡単な小さな魔法陣ですけど、でも貴族院に行くならエーレンフェストのマントの方が良いでしょう?
誰に刺して貰ったと聞かれたら、私がユレーヴェの前に刺したと言ってください。
飾り刺繍は、私のと一緒に専属に頼みました。
下手くそでごめんなさい。
でも私もフェルローズも一生懸命刺繍したし、お母様が起動する事を確認してくれました。
まずは、ヴィルフリート兄様との婚約を潰すために、外堀を埋めようと思いまして。
でも私とフェルローズで、愛情はいっぱいです」
そう言ってローゼマインが渡してきたのは、小さな魔法陣が2つ前側にくる位置に左右に入っているエーレンフェストのマント。
[[emphasismark:家族が私の無事を願ってくれた証 > ﹅]]。
小さくても魔法陣が刺繍されている。
「ありがとう、ローゼマイン、フェルローズ。今日はこのマントをつけて出かけてくる」
ローゼマインとフェルローズが嬉しそうに笑っている。
フェリックスとフェデリーコは、羨ましそうだな。
急いで、マントを付け替える。
「では、行って来る」
「「「「行ってらっしゃい」」」」
エーレンフェストの刺繍入りのマントを付けて、エックハルトを伴って私は城に向かった。
城は異様な雰囲気だった。
城の案内に、いつも城にいる側仕えが入り口で待っていて、そのまま転移の間に案内された。
転移の間に近付くと、やっとここ数年聞く事のなかった、ヴェローニカの怒鳴り声が聞こえてきた。
「ジルヴェスター、なんで衣装を着替える時間がないのです?
貴族院の領主会議に行くなら、行くなりの衣装と言うものがあるのですよ!
貴方聞いているの?
そこの側仕え、良いから私の部屋に案内しなさい!」
「ヴェローニカ、その
「まぁ、実の母親を呼び捨てとは何事ですの?いつからそんな義理を忘れたのです?」
ツェントが待っているのだ。
時間がない。
「ツェントであろうと、女性の身支度を待つくらいの時間はあります。
大体、私は無実で白の塔に入れられていたのです。
どうせ、貴方も[[emphasismark:あの庶子 > ﹅]]に言いくるめられたのでしょう?」
「あの庶子とは、誰のことだ?」
そこにダンケルフェルガーの騎士たちや中央の役人もいるのか?
聞いた事のない声まで聞こえてきた。
急いだ方が良さそうだな。
貴族の歩みとしては、ギリギリの早さで転移の間へ歩く。
「まぁ、無礼ですわ!
「ヴェローニカ!いい加減にしろ!」
何をジルヴェスターは言っているのですか?ここは私の城ですわ!
私の城に許可なく他領の者が入っているのです。文句を言うのは当たり前です!」
何故、エーレンフェストの城がヴェローニカの城になるのか?
本当に訳が分からない。
私とエックハルトも転移の間に到着した。
「ジルヴェスター、何故この庶子がまだ生きているのです?
さっさと処分するべきだといつも言っていたでしょう?
貴方は優しい子ですからね。
この母が全てやってあげるから心配はいらないわ!
私の側近は、何処にいるのです?」
「フェルディナンド様も揃ったところで、さっさと戻ります。
アウブエーレンフェスト、今の会話もしっかりと報告させて頂きます。
罪人は五月蝿いですから、黙らせてください」
中央のマントを付けた者がジルヴェスターに言った。
本当に中央の者とダンケルフェルガーの者がいる。
「ヴェローニカに猿轡をしろ」
「ジルヴェスター、さっさとその庶子の口を塞ぎ な・・・・・・・」
転移室にいた者たち全てが、ヴェローニカが猿轡され、静かになった事にホッとしていた。
視線でジルヴェスターにどうした?と向けると、
「ゲオルギーネの記憶の確認があり、その時に記憶からヴェローニカが以前ゲオルギーネにターニスベファレンの幼体を頼んだことがあったのと、ローゼマインへの毒殺?の指示もあったそうだ。
ローゼマインはまだユレーヴェ中だろ?
フェルディナンドに状況説明して欲しいそうだ」
なるほど。ゲオルギーネの記憶からヴェローニカが出てきたか・・・。
エーレンフェストは風前の灯か?
「とりあえず、早く貴族院に戻りましょう?
ツェントたちもお待ちです。
この罪人は、こちらで連れて行きます。
良いですね?」
中央の者に宣言をされ、ジルヴェスターも了承し、皆が転移していく。
私はエックハルトと、ダンケルフェルガーの騎士と転移陣に乗り転移した。
皆は昼食もまだと言う事で、食堂に移動したが、私は状況が分からないために、通信の魔術具に魔力を送る。
ユストクスとカルステッドがやり取りしているようだ。
すぐ様オルドナンツをユストクスに送る。
『フェルディナンドだ。貴族院に転移した。何処にいる?』
『今直ぐに階下に移動します』
ユストクスからオルドナンツが返ってきた。
「エックハルト、小会議室に用意を頼む。それから私たちにはお茶の用意を。
私は合流したら小会議室に行く」
「畏まりました」
階段下でカルステッドとユストクスを待つ。合流したので、そのまま小会議室に行く。
私たちが魔獣を放ち、混乱させた後の領主会議の様子を2人から聞き、ゲオルギーネ繋がりでジルヴェスターの連座や、もしゲオルギーネの記憶の確認の際、虚偽の報告をコンスタンツェが行っていたら、そちらの連座もあると聞き、一気に領主会議が動いたのだなと納得した。
もし、私も記憶の確認されたら、子どもたちの事も表に出てしまうのでは?と心配もしていたようだ。
それとローゼマインの事。身食いであることが暴露るのではとカルステッドと話していたが、こちらは書類なども神殿にもう用意されていると聞いた事。
「わかった、ジルヴェスターの連座の可能性はあるだろうな。
それに私も半分は、血が繋がっている。
もしもの時は姿を隠すしかないか・・・。
今、ここで皆で祝福で隠蔽の神フェアベルッケンに祈って、子どもたちの事は聞かれても記憶を覗かれても隠せるようにしよう。
皆で祝福をしあえば、お互いに隠せるからな。
私に続いて祈りを捧げてくれ。
隠蔽の神フェアベルッケンよ、祝福の隠蔽を。そして、子どもたちの存在を皆から隠したまえ」
「「「隠蔽の神フェアベルッケンよ、祝福の隠蔽を。そして、子どもたちの存在を皆から隠したまえ」」」
手元から祝福のために魔力を使ったのは、体感で分かるが、キラキラした祝福が降ってくるのは、視ることが出来なかった。
だが、お互いに何か祝福されたのは、分かったようだ。
「これで、子どもたちの事は大丈夫だと思う。
こちらの様子も説明する。
まず、私はジルヴェスターからの突然のオルドナンツで呼び出されたのだ。
『フェルディナンド、直ぐに一緒に貴族院に行きたい。フェルディナンドに臨時領主会議で話を聞きたいそうだ。
中央貴族とダンケルフェルガーの騎士も一緒だ』
と、送られてきたのだ。
その上、エックハルトと転移の間につくと、ヴェローニカがいて、相変わらず訳の分からない事を喚いていたのだが、それを全部中央の者とダンケルフェルガーの者に聞かれていた。
貴族院に行くなら着替えたいこと。
私の事は以前と同じあの庶子と呼んでいたこと。
エーレンフェストの城は自分の城と言い、見知らぬ者が入り込んでいて無礼だと中央の者とダンケルフェルガーの者に言ったこと。
私を処分すると話したこと。
全てこの内容は中央の者から、ツェントに報告するとジルヴェスターに宣言されたこと。
最終的には、ヴェローニカに猿轡をして転移してきて、ヴェローニカの身柄は中央預かりとなっていることを話した。
話している私もそうだが、聞いている3人も憂鬱な顔になっていた。
[[emphasismark:あの > ﹅]]ヴェローニカを全領地の前に出すのか・・・。
今のままでも十分にツェントに不敬を働きそうな感じであった。
「今のヴェローニカが不敬を働いたら、エーレンフェストはどうなるのだ?」
「それは、ヴェローニカのせいで何かしらの罰があるのではないか?」
カルステッドの質問に、当たり前の常識で答えてみた。
エーレンフェストは、ずっとユルゲンシュミットの常識から外れていたからな。
ヴェローニカを野放しにしていた事が、どれだけ異常かとやっと皆理解した。
これを許すアウブ・・・。
やはりジルヴェスターのアウブは無理があるな。
今日の呼び出しがどうなるのか・・・
その上エアヴェルミーンにローゼマインを連れて始まりの庭に来るようにと言われた事も伝えた。
そこにまたジルヴェスターからオルドナンツが来た。
4人で顔を見合わせ、ため息を溢した。

























対する態度も有り得ない…身分差を理解して無いヴェロ。この事もきっちり報告されるでしょう。 ジルは、母親がやっている事を止めない事が中央の貴族にどう写るのか…理解して無いんだろうねぇ…(´ヘ`;)