本編始まる前にひとつだけ
桜です。
私の作品「転生した世界で本物を」を見てくださっている皆様、ありがとうございます。
先週に投稿したヒナタ・サカグチがルーキーランキング1位をとったのでここにご報告させていただきます。ありがとうございます!
これからも頑張っていくのでよろしくお願いします!!
「ご無事でしたか、我が主よ!」
慌てたように、ランガが影の中から飛び出る。
さっきの結界でリムルとの接続が切れたことで、よほど心配していたんだろう。その毛は緊張からか逆立っていた。
そんなランガの様子を見て、リムルは問題ない。と安心させようと撫でる。
ランガも落ち着きを取り戻したようで、いつもみたいにリムルに甘えている。
「リムル。テンペストに戻るぞ」
俺はそう言って『空間転移』を発動させた。
もうこの地に用はない。それより、さっきのヒナタの言葉の意味とソウエイの安否を確認するのが優先だ。
が、『空間転移』は失敗に終わった。一体何が起きてる?
《テンペストの位置情報の特定ができないんだ。さっきの空間断絶系の結界がテンペストにも張られているかもしれない》
やばいな。
テンペストを潰す。という発言は本気みたいだ。今すぐに帰りたいのに、これじゃ帰るのに時間がかかってしまう
「キャスタ。『大賢者』が洞窟内に作っておいた魔法陣に転移できる場所を見つけた。行くぞ!」
リムルはそう言って、封印の洞窟へと転移した
________________________________________________
封印の洞窟の魔法陣の前に、ガビルたちが集合していた。
「吾輩の攻撃で破って見せましょうぞ!」
「無理だ。俺がもう一度行く」
「おい、テンペストに何があった」
何やら言い争っているガビルとソウエイに声をかける。
すると、俺たちの存在に気づいたガビルたちは、安堵の表情を浮かべた
「おお!リムル様方!!」
「リムル様キャスタ様、ご無事で何よりです」
「ああ…って、俺よりソウエイ、お前が大変じゃね!?」
リムルがソウエイの姿を見て驚く。
俺もその声に釣られてソウエイを見ると、全身が傷だらけであった。かなり消耗しているようで、疲労困憊なのがすぐにわかる
「これくらい、どうということもありません」
何言ってんだこの馬鹿は。と思っていると洞窟の奥から何かを持って走ってくる影が見えた。それはだんだんこちらに近づいてくる。誰かと思って少し警戒したが、その人影の正体はベスターだった。その手に持っているのは完全回復薬だ。ソウエイの傷を癒すために、大急ぎで持ってきたのだろう。ベスターは俺たちに一礼すると、ソウエイに完全回復薬を手渡した
「テンペストに何が起こっている?」
リムルがそう問いかける。しかし、帰ってきた答えは俺たちの求めるものではなかった
「それがよくわからんのです」
「町に行った吾輩の部下とも連絡がつかず心配で……!」
ザザっ。と水晶にノイズが走る
やはりテンペストに空間断絶系の結界が貼られているようだ。
「ソウエイ様は、テンペスト周囲に張られている結界を破って、町に入ろうとし、お怪我を召されたのです」
「黙れソーカ。俺のことはいい」
「……は。」
ソウエイはソーカの心配を一言で切り捨てる。
それはやってはだめだ。ソウエイ。あとで説教だな
「それで、その結界は誰の仕業だ?」
「おそらくは、人間の国、ファルムス王国かと。奴らが軍事行動を起こしているのを確認しております。大群がテンペストに向かってきております」
……人間の国、か。
これは、俺も覚悟を決めなきゃな。何があっても感情に身を任せて暴走しないために
________________________________________________
洞窟から移動して、現在俺たちはテンペストと外界を区別する結界の境界線に来ている。サイカ、この結界を調べてくれ
《うん、任せて。……解析終わったよ。結界は二つあるみたいだね。一つ目が今僕たちが見ている結界。原理はヒナタ・サカグチが使ってた"聖浄化結界"と同じみたいだけど、質が低いね。結界内の場所によって浄化作用がバラバラだよ。これはヒナタ・サカグチの使ってた結界の劣化版だね。もう一つは魔法不能領域だね。こっちは特に何もないよ》
サンキュな。サイカ
これが"聖浄化結界"の劣化版なら問題はない。ただ、浄化作用に差があるなら術者は複数いるな。そこだけ面倒か
「ソウエイ。この結界を張ってる奴らの場所を突き止めろ。ただし、戦闘はするな。あくまで調査だ。内に張ってるのは俺とリムルで押さえる」
「御意。連絡はどのように致しましょう?」
あー、連絡か。
どうしよっかなー。
俺がそう悩んでいると、リムルが糸を出して俺とソウエイの手首に巻いた
「どうだ?これを伝えば、結界があっても『思念伝達』で意思疎通ができるんじゃないか?」
「なるほど」
「よく思いついたもんだな」
イメージ的には糸電話みたいなものだろうか。
これなら、結界に阻まれずに意思の疎通ができる
「よし、行け!」
「ハッ!」
そうして、ソウエイたちは結界を張っているものたちのところへ、俺たちは町の内部へ。自分達が今すべきことのために行動を開始するのだった
町の内部は、濃度が薄くなってはいるが、魔素が残っていた。魔法不能領域がなければ、魔法も中級くらいまでなら使えそうなほどある。
"聖浄化結界"の方は何も問題はない。ヒナタが使っていたものの劣化版なのだ。俺は当然として、リムルにも影響がないみたいで安心した。
町の中を駆け抜け、中央の広場の先にある執務館へ向かう。中央には人だかりができており、重苦しい空気が漂っていた。そして、ここにくるまでにあった火や瓦礫を見るに、やはり俺の予感は当たっていたようだ。
「リムル様ー!!キャスタ様ー!!」
俺たちに気づいた周囲の者たちは道を開けて跪く。そして、執務館の方向から猛烈な勢いでリグルドが走ってきて、俺たちの前にスライディング土下座をかました。
これはすごいな。見事なまでの角度、俺がこの域に至ったのは中学の頃折本に告白していじめられた時……って、何考えてんだ、俺。今はテンペストの状況確認を急がなければ
「よくぞお戻りになられました。ご無事で何よりです——」
感極まったように言うリグルド。その瞳からは大粒の涙が流れ落ちている。他のみんなも俺たちの帰還に喜びの声を上げている。しかし、そんな中で神妙な面立ちをしている者もいた。カイジンたち、ドワーフだ。
「旦那方、良くぞ無事で……」
そう声をかけてくる。
安堵している声だが、魂は悲痛な叫びを我慢しているように見える。それは声の響きにも乗っていて、心痛そうな様子であった。それを見て、俺は理解した。ああ、また間に合わなかったのかと。
リムルたち魔物は俺のように魂を見ることはできないが、感情の波を感じ取ることはできる。それによって、カイジンたちは俺たちに何か隠し事をしていることを悟っていた。
「リムル様方!状況の報告と相談がございますので、こちらの対策本部へ……」
リグルドが立ち上がって普段通りの声で言う。その言葉には有無を言わせぬ強さがあった。リムルは未だ疑念を持っているようで、首を縦に振らない。だから、俺はリグルドの言葉に乗っかった。まだリムルは知らなくていいのだ。これは、俺が背負えばいい
「行こうぜリムル。先ずは状況把握をするのが優先だ。それに、お前が帰ってきたって知ればベニマルたちも安心するだろうし」
リグルドの顔が明るくなる。
リムルは悩んでいるようだが、俺の言葉にも一理あると思ったのか、渋々と言った様子で対策本部へ行くことを決めた。
その時、広場と離れた方角から爆音が轟いた。魔素が薄くなっていても感知できるこの妖気は、ベニマルで間違いない。そして、今の爆音から察するに、誰かと戦っているのだろう。これは、丁度いい口実ができたな
「リムル、俺はベニマルの方を確認してから行く。お前は先にリグルドと一緒に対策本部へ向かっててくれ」
「待て!俺も一緒に——」
「さっきも言ったがお前の役目は状況把握と皆を安心させることだ。大丈夫、確認し終わったらすぐそっちに行く」
「……分かった。必ず来いよ、キャスタ」
「おう。」
さて、俺は俺のすべきことをしますかね
________________________________________________
リムルと別れ、ベニマルの元へ向かうとそこでは予想通りベニマルが誰かと戦っていた。否、これは、戦いと呼べる代物ではない。力の差が開きすぎている。これでは虐めだろう。
そのベニマルたちを囲うように、鎧を纏った猪人族の兵とゲルドがいる。ゲルドたちは何かするわけでもなく、ベニマルと相手——獣人のグルーシス——を見守っていた。
あの獣人、確か魔王カリオンとかいうやつの配下だよな。何でベニマルと戦ってる?そんな疑念は一瞬で消えた。グルーシスの後ろにヨウムとそれを抱き抱える女がいたからだ。だいたい事情は察した。今はあの女を守ろうとするグルーシスを殺さぬように必死にベニマルは我慢している。が、テンペストがこんな状況なのだ。長くは続かないだろう。その証拠に、妖気が激しく迸っている
「貴様もその女を庇うのか?悪いが、今の俺たちに余裕はない。さっさとそこを退け」
「へへっ、それは出来ん。冷静さを欠いた今のお前に、この女を渡すわけにはいかねーよ」
「ほう。俺が冷静ではないと?冷静じゃなかったら、既にお前たちは消し炭にしているさ。いいから大人しく——」
「悪いな、どうあっても俺はこの女を守る!!」
そう叫ぶなり、グルーシスが動く。
剣を抜かないベニマルに向かう。瞬時に『獣人化』して、灰色人狼へと姿を変えて。だが——
「大人しくしろって言っているんだ!」
ベニマルの前では全てが無に帰す。
持っていた剣は妖気に触れるなり蒸発し、刃を届かせることすら許されない。グルーシスは驚いた一瞬の隙をベニマルに見逃されず地面に叩きつけられた。鈍い音がして、地面にヒビが入る。同時に、グルーシスの頭から鮮血が飛び散った。
力の差は明白。
そもそもの話、"格"が違うのだ。
それなのに、グルーシスは諦めずに立ち上がり……
「グッ、だが、俺はまだ……」
「チッ、これ以上抵抗するなら本当に——」
「やめろ」
そこでようやく、俺は制止の声を上げた。
俺に気づいたベニマルは、即座にグルーシスを手放し跪く。その身に迸る妖気も綺麗に消し去り、先程までの緊迫した様子が薄らいで見える。ゲルドたちも跪き、帰還を喜んだ。俺が現れたことによって、だんだんと余裕を取り戻していったようだ。
「ベニマル、状況は?」
「はっ、この結界です。魔法が使用できなくなり、俺たちの力の減少も生じました。そのせいで、町のものにもぎs——」
「ベニマル殿っ!!」
ベニマルが何か言いかけたが、ゲルドの声にかき消される。そのまま二人は視線を交差させ、ベニマルは気まずそうな表情で頷いた。
「その話はまた後で……。その時、俺たちが弱体化した原因が、その女の使った魔法にあると……」
ベニマルはその女を一瞥して、説明は終わった。
ゲルドも重々しく頷き、この町を覆う結界の原因となった術者を探し出し、追い詰めようとしたことを説明してくれた。その時にヨウムが邪魔したので、やむなく戦闘になったと。
俺はゲルドにヨウムたちと女を拘束して連れて行くよう指示し、ベニマルに向かい合う
「ベニマル。俺はだいたい察しがついてる。今はリムルもいないし、正直に話してくれ」
そう言うと、ベニマルは観念したのか、立ち上がって歩き出す
「——ついてきてください」
広場に向かって歩いて行く。
俺の目に映った光景は、無数の、横たえられた町の魔物たち。老若男女問わず並べられている。
——そして、その魔物たちは死んでいた。
———不思議と、怒りの感情は湧いてこない。
およそ100人ほどの死体を見ても、俺は何も感じない。
この状況に納得してる自分がいる。予想通りだったと、ただ自分の中で、冷静に結果を確認しているだけ。他人事のように、テンペストの町のものが死んだと言う事実だけが俺の頭に入る。
俺は、リムルと同じテンペストの魔物を統べる主なのに。
——違う。
何故、俺の瞳からは涙も流れない?
——それは、俺が何も思っていないから。
違う。
俺は、テンペストの皆が大事だ。
だから、何も思わないはずなんてない……!
——なら、どうしてお前は泣いていない?
それは、俺が悪魔になったからで……
——違うな。お前はサイカたちが死んだ時泣いていた
無責任な心の声が、俺に刃を突き立てる。
思考がうまく働かない。こんな時こそ考えなきゃいけないはずなのに、俺の体は時が止まったかのようにピタリと停止して動かない。
——お前は結局、テンペストの皆を仲間なんて思ってないんだ。上辺だけ取り繕っても俺には通じない。俺はお前だ。俺にはお前の全てがわかる。もし分からないなら教えてやろうか?お前が涙を流さない理由を
黙れよ。
邪魔だ。消え失せろ。
お前に俺がわかるはずがない、お前に俺を理解できるはずがない。
——そう思いたいならそう思えばいいさ。だがこれだけは忘れるなよ。そのままだと、お前はいつか壊れるぞ
言いたいことだけ言って、そいつは勝手に姿を消した。
あれは一体なんだったんだろうか、それを考える余裕すら俺にはない。
「人間たちが、容赦なく……!我々は、申しつけ通り、人間たちを受け入れておりました。その結果が、これです」
ボブゴブリンの長老の言葉が聞こえる。
リムルがいなくてよかった。責任感が強いあいつがこの場に入れば、全部一人で背負い込むことになるだろうから
「おい、それ、リムルには言うなよ」
けれど、しっかりと釘は刺しておく。
俺の言葉を聞いた長老は自分の言っていたことに気づき、謝罪の言葉を言う
「……ハッ。申し訳ございません」
俺はベニマルに他の被害を聞いた後、リムルたちのいる対策本部へと向かうのだった
________________________________________________
本部がある執務館に向かうと報告は既に終わっていたようで、ご立腹な様子のリムルが立っていた。
「遅いぞキャスタ!いつまで待たせる気だよ!」
「悪いなリムル。ちょっと色々あってよ」
俺はリムルからリグルドと話した相談の内容や報告を聞いた。おおよそ移動中にベニマルたちから聞いた内容と一致している。
「今から怪我人の治療に行くとこなんだ。キャスタもくるか?」
シュナたちを見かけなかったのはそういうことか。襲撃で怪我を負ったものたちを、現在治療中なのだと。結界で外界との接続が切れた今、洞窟に行くことができないため、回復薬の在庫がないことになる。そうなれば、治癒魔法を使えるシュナだけが頼りなのだろう
「ああ、行かせてもらう」
病院として使っている建物に向かう。
中に入ると、そこにはクロベエとシュナがいた。ベットに寝ているのは二人で、シュナが看病してクロベエが手伝っているようだ
「具合はどうだ?」
「あ、リムル様!」
「リムル様、オラ、なんと言えばいいだか……」
リムルが声をかけると二人は少しだけ明るくなる。俺にも気づいたようで、シュナたちは一礼した。
シュナは疲労の色が見え、クロベエはオドオドしている。二人の対応はリムルに任せ、怪我人の様子を見る。ベッドに寝ていたのは、ハクロウとゴブタだ。ザックリと大きな切り傷ができており、血が滲んでいる。
「"空間属性"の攻撃か。確かに、これはシュナの治癒魔法しか打つ手がないな」
"空間属性"の攻撃で受けた傷に回復薬をかけても回復しない。"空間属性"のバリアが傷を覆っているからだ。結界で外界との接続を切られているように、"空間属性"の攻撃は傷と空気の間に別次元の空間が存在する。だから回復薬を傷にかけることができず、回復できないのだ
「グフッ、心配召されるな。ワシもこの不肖の弟子も、これくらいでくたばるほど、柔ではありませんぞ」
「強いな、お前たちは。どれ、傷を見せてみろ」
俺はハクロウの傷に手を置く。
サイカ、解析してくれ
《うん、任せて》
「お待ちください。"空間属性"の攻撃は、体力を回復させ現状を維持し、時間経過による回復を待たねば……」
シュナが不安そうな声で言う。
だが、大丈夫だ。ユニークレベルの"空間属性"など、俺にかかれば操ることなど容易い。
《解析終わったよ。それじゃ、『捕食』するね》
ハクロウとゴブタにかかっている"空間属性"の影響を『捕食』して完璧に取り除く。あとは回復薬をかけるだけだ
「お、おお!お見事です。キャスタ様」
「——素晴らしいです」
ハクロウとシュナは驚く。その後、シュナは嬉しそうに微笑む。何だろうか、この違和感。なんとなく、距離が開いているような…
「ゴブゾウ!大丈夫っすか!?」
回復するなりゴブタが大きな声を出して飛び起きる。
「これ、ゴブタ!」
慌ててリグルドが声をかけたことで、ゴブタはようやく現状に気付いたようである
「あ、オイラ助かった、っすか?」
そう言って、目をパチクリとさせていた。
そして、しばらく様子を見ていたリムルがある疑問を口にする。
「ところで、シオンはどうした?まさか一人で仕返しに行ったんじゃないだろうな。いや、あいつならありえるか?ハハハ」
リムルが言った言葉にリグルドだけでなく、シュナにベニマルといった面々が一斉に、その動きを止めて静まり返った。さっきから姿を見なかったがそういう事だったのか
「あ、あの…リムル様」
シュナがないか言うのをベニマルが手で制し、俺たちはベニマルの案内のもと、広場へ向かった。
広場の中央。
横たえられたものの中に、シオンはいた。
白い布をかけられて、目立たぬように。俺たち……いや、リムルに気づかれないように、ひっそりと。
リムルの隣にいたゴブタは一つの死体に駆け寄って「ゴブゾウ——ッ!?」と叫びながら号泣している。
「シオンは襲撃者が狙った子供を庇って——
結界による弱体化で思うように動けず——」
「ゴブゾウはシュナを守ろうとして——
それを見た襲撃者は、笑いながら——」
リムルに向けられた言葉に、リムルは何も言わず俯いている。
その直後に、リムルの身体から大量の妖気が溢れ出す。
「リムル」
だが、一声かければ妖気は綺麗に消えた。
「スマン。暫く、一人にしてくれ……」
リムルのその言葉で、広場が静寂に包まれる。
そして、互いに視線を交差させ、広場から立ち去る判断をした。俺を除いて
「リムル、今回はお前だけのせいじゃない。俺にだって責任の一端はある。だから、あまり気負いすぎるなよ」
声をかけてみるが反応はない。
数秒経ってからリムルは口を開いた。
「なあ、キャスタ。お前は死人が出たこと知ってたのか?」
「知ってた。つっても、シオンは今初めて知ったがな」
「……何で、俺に言わなかった」
「お前は優しすぎるからな。ただでさえヒナタ・サカグチとの戦いで消耗してるお前にこのことを知らせればお前の精神が不安定になると思ったんだ。だから言わなかった」
それに、失う悲しみをリムルに知って欲しくなかったっていうのもある。
「——ふざけるなよ」
「リムル?」
「俺はこのジュラの大森林の盟主だ。そして、このテンペストの、シオンたちの主なんだ!!なのに、俺はこのことを知らなかった……みんな俺に気を遣ってくれたことに気づけなかった自分が情けないんだ」
カチリ、とパズルのピースがハマるような感覚に陥る。
さっきの治療室で感じた違和感とあの時見ても何も感じなかった俺自身。それについてずっと考えてた。しかし、たった今解は出た。その答えは至極当たり前で単純な悩むのも馬鹿らしいもの。
「それは悪かったな、リムル。確かに"テンペストの主"であるお前に伝えなかったのは俺の落ち度だ。すまなかった。今のお前は一人になりたいようだし離れるよ、用があったら糸で呼んでくれ。じゃあな」
「あっ、待…」
リムルの言葉に耳を貸さないで全速力でその場から離れる。やっとわかった違和感の正体に気持ち悪さを覚えながら、自分の屋敷へ足を向けた。
自宅
畳が敷いてある和室の一部屋にゴロリと寝転がる。
ついさっき出た違和感の正体にたいする解は至極単純で、テンペストの魔物たちからすれば当たり前のもの。
——やっと気づいたか。随分と遅かったな
消えたはずのそいつは何もなかったように現れる。といっても、俺はこいつの正体も分かっているが
——ふーん。で、どうだった?自分が導き出した答えは。なあ、俺
ああ。
やっとお前がいってることがわかったよ。俺が感じてた違和感の正体となぜそれを感じてたかの理由が。
——へえ。そこまで分かってるんならお前の口から言ってもらおうか。
わかった。
まず、俺が感じてた違和感はテンペストの皆が俺に対して少し距離をとっているような言動をしていたことだ。俺はこの国に来たお客様のような対応をされていた。それは何故か、簡単だ
俺はテンペストの皆にとって『リムル=テンペストの友人』だから丁寧に接してくれていただけ
そう、俺はあいつらの主ではない。そんなことずっと前から分かっていた。なのに、俺は愚かにも勘違いをしてしまった。あいつらにとって、俺をリムルの友人と思っているから丁寧に接してくれているだけなのに、それを自分勝手に解釈してとんでもない間違いを犯してしまった。
——まあ、いいんじゃね?だが、少し足りないな。仮にお前の言うことがあっているとして、お前が涙を流さなかった理由は何だ?お前はあいつらを仲間と思っていたんだろう?
それも簡単だ。
俺にとってあいつらは大切な仲間と思っていた。でも違った。あいつらのことを俺は『リムルの配下』としか認識してなかったんだ。だから悲しくなかった。だって、それは前世でいう友達の友達のような存在だから。友達の友達とは"他人"だ。ニュースで見ず知らずの人が死んだと言われても関心の一つもなくただ可哀想だなーとしか思わないように、シオンにたちの死体を見ても他人事のようにしか思わなかったのがいい証拠だ。
——正解、お見事だよ。さすがだな、俺。それなら次は俺の正体を当ててもらおうか
いいだろう。
お前の正体は前世…『比企谷八幡』だ。正確には、比企谷八幡の皮を被った未練といったところか
——なぜ
俺は今まで誰かのためにやっても空回りして、奪われてきた。そのたびに俺の中にドス黒い何かが生まれた。でも俺はそれを理性で押し殺して生きてきた。それが人として当然と思って生きてきたから。あとは小町に醜いお兄ちゃんを見せたくなかったってのもある。
——ああ、そうだよ。俺はお前のいうドス黒い何かだ。俺よ知ってるか?そのドス黒い何かはお前の中にある"感情"なんだよ。怒り、後悔、妬み、嫉妬、不安、恐怖……。そんな数多ある中で一番大きい感情は「殺意」だ。俺はお前が殺してきた感情の集大成なんだよ。前に言ったろ?そのままじゃいつか壊れるって。それはな、俺がお前を殺すからさ。お前が今まで感情を殺してきたみたいにな
その瞬間、俺の中に痛みが走った。体を内から引き裂かれるような痛み。全てが部位がじっくりと焼かれていくような痛み。さまざまな痛みが今までに感じたことのないレベルの痛みが絶え間なく続く。
《八幡!?一体何が起きたの!?》
だんだん意識が薄くなってサイカの声を聞きづらくなってくる。俺は激しい痛みに耐えきれず、意識を手放した。
________________________________________________
あとがき
桜です。
……何これ。意味わからん。何書きたかったんだっけ…
あ、ファルムスのガイルメンバー決まりました。葉虫とめぐりん先輩と相模で行こうと思います。葉虫と文化祭メンバーですね。
それでは次の作品で




















キャスタどうした…