進む
ーローゼマインー
フランから隠し部屋を出るよう、用件が述べられた。
城からの呼び出し。
「待ってください。フェルディナンド様、皆、よく聞いて。
この神話は一万年前の状態なの。
今はこの状態よりも拗れていると思う。
けれど、人は生活し、このユルゲンシュミットで生きているでしょう?
このままの状態で、取り繕うのはもう無理じゃないかな?
外国などに突発的に産まれ、迫害の対象であった魔力持ちが、迫害などされずに生きるために、ユルゲンシュミットは建国されたと言われていますね?
でも神々だって、私たちからの祈りに乗せる魔力や、魔術を使う時の魔力が神として生きる上で必要なのです。
神々が破滅思考で自滅するなら、外国のように神々とそこまで生活が密着しない国になっても良いのでは?とさえ、思うのです。
迫害されても生き残るか、神々と一緒に崩壊するのか。
私は、それでも家族で最後まで足掻いて、自分たちで先を決めたい。
誰かの思惑に踊らされて、いつの間にか何かが勝手に決まってるのは嫌だと思います。
ユルゲンシュミットは、魔術に頼ることで他の進化を妨げています。
ランツェナーヴェが、魔術の効かない布などを開発したように。
世界の一強状態が続き、魔力に頼り過ぎた生活がユルゲンシュミットなのではないか?とさえ、思うのです。
私は今後のユルゲンシュミットの事など知りません。
考えるのは、家族の事だけ。
私たち家族が生き残り、平穏に暮らせる事を一番の目標とし、その一番の目標の中にアレキサンドリアに貴方たちを帰す事も入っています。
とりあえず、交渉相手は多分メスティオノーラ様から始まると思います。
私たちが差し出せる利は、魔力だけなのか、それともユルゲンシュミット存続のための考え方なのか、それともユルゲンシュミット崩壊後の始末なのか。
神話を読み、皆で色々考えて見れば、ユルゲンシュミット存続が、神々の利なのかも分かりません。
それでもアレキサンドリアのフェルディナンド様とローゼマインは、交渉の末貴方方を過去に送ることを成功させています。
神々と取引をし、交渉を成功させるために神々の状況理解と、真実の目的を探るべきだと家族で話し合いを持ちました。
神話を読んで、分かった事は神々も人と同じように悩み、幸せを望んでいると言う事です。
想定外に神々と遭遇したら、神々の希望もそうですが、心からの願いにも耳を傾けてみましょう?」
私は家族であるフェルディナンド様、フェリックス、フェデリーコ、フェルローズを見ながら、自分の考えを伝えた。
「わかった、ローゼマイン。
とりあえず城に行ってくる。君は子どもたちと神殿で待っててくれ。
皆、ローゼマインを頼んだぞ」
「「「はい」」」
「フェルディナンド様、行ってらっしゃい」
「あぁ、行ってくる」
私を床に下ろし、子どもたちを残してフェルディナンド様は、隠し部屋を出た。
「おかぁしゃま。大丈夫ですか?
また私たちは、おとぅしゃまとおかぁしゃまいなくなるの?神々と交渉。危なくないですか?
神話を読み解いていて思ったのです。
おとぅしゃまとおかぁしゃまがまた居なくなってしまったら、・・・。
このままじっとしてたら、皆で一緒にいられますか?」
私はフェルローズにゆっくり近寄り抱きしめる。
「んー。どうかな?これだけ皆で大神全属性の上に魔力も豊富なら、廃領地に隠れ住んでも見つかるかも?
フェルローズがユレーヴェの間に廃領地に移領するや、廃領地を賜わるにはって話が出たのよ。
でもね、何も悪いことしていないのに、隠れて暮らすなんて出来ないし、貴方たちが大きくなったら、婚姻相手もいないわ。
今だけでなく、先を見据えなきゃね。
それには、貴方方をアレキサンドリアに戻してあげるのが一番。
こちらにずっといたら、私とフェルディナンド様の子どもだって言えないじゃない?
私はまだこんなに小さい。
フェリックスとフェデリーコはフェルディナンド様に似ているわ。フェルローズは私ね?
このままだと家族と名乗れず、離れ離れも有り得るでしょ?
私は嫌。貴方たちは、私の子どもだし、フェルディナンド様は、私の夫で貴方たちの父親だわ。
廃領地とかに隠れ住んで、もし見つかったら?地位もなかったら、私とフェルローズは政治のための婚姻の駒に使われるかもしれない。
フェルディナンド様は、私たちを守るために1人で無理をするかもしれない。
フェリックスとフェデリーコだって、フェルディナンド様に王命が出たように、何処かの領地に連れて行かれちゃうかもしれない。
それに、そんな状況じゃなくても、こちらで隠れ住んでいてもいずれ、ユルゲンシュミットが滅びるかもしれない。
滅びるなら、家族で滅びを回避して、貴方方をアレキサンドリアに帰してあげたいのよ。
神々との交渉に一度は成功しているんだもの。なんとかなるわ。
フェルディナンド様も私も十分辛い月日があったことを理解してる。
分かっているなら、回避する。
シンプルでしょ?
エーレンフェストのフェルディナンド様と私ではないかもしれないけど、アレキサンドリアなら貴方たちの本当の両親がいるわ。
だけど、その前にまずは王族を叩きましょう?
未来の憂いを無くすために。
だから貴方たちも手伝って?」
子どもたちは、じっと考えていたが、それぞれ承諾してくれた。
王族への仕返しは納得してくれたかな?
臨時領主会議
ーフェルディナンドー
私は急いで貴族服に着替えて城に向かう準備をする。ボニファティウス様には、先に城に行って貰った。
まさか、またくだらないジルヴェスターの話ではないよな?
ユストクスを伴う。エックハルトは今旧ベルケシュトックで隠密行動中なので、側近は1人しか伴っていないが、今までも1人で城に行く事もあったから気にしない事にした。
ローゼマインは、子どもたちがついていてくれるから大丈夫だろう。
ローゼマインと子どもたちと話し合った神々の事は、頭の片隅にあるが、先に王族を叩いて、中央騎士団長をなんとかしなくてはならないな。
ジルヴェスターの執務室に到着すると、すでに側近は部屋から出されていた。
ユストクスにも部屋から出て貰うが、耳元に手をやり、通信の魔術具を繋ぐ。
ユストクスも理解したようだ。
「ジルヴェスター、緊急の用件とはなんだ?」
「フェルディナンド、少し待ってくれ。フロレンツィアももうすぐ来るから。ボニファティウスも含めて4人で話し合わなければならない」
ほぉ。フロレンツィアも呼んだか。
これはジルヴェスターの悩みではないな。
中央が動いたのだな・・・。
暫くして、フロレンツィアが執務室に到着し、4人で話し合いの場として、礎の供給の間に入る。
部屋での盗聴防止魔術具でも足りない内容か。
「実は先程中央から水鏡で連絡があった。
3日後に貴族院で臨時領主会議が行われる。
内容は、グルトリスハイトが見つかったそうだ。
アーレンスバッハの国境門が閉まったそうだ。これは、アーレンスバッハとの水鏡でアウブアーレンスバッハから聞いたのだ。
もう直ぐ貴族院も始まるが、その前に領主会議を行いたいそうだ。
エーレンフェストの出席者は私にフロレンツィア。
それに、フェルディナンドも一緒に領主会議に出席して欲しい。
「は?何故私が?」
中央からの水鏡では、臨時領主会議が開催される。日程は数日で終わる予定と言われたのだ。
内容は、会議で話すとだけ。
だが、その後にアーレンスバッハから水鏡が来て、隣のクラッセンブルクの噂を教えてくれと連絡が来たのだ。
エーレンフェストは、クラッセンブルクとの境界門があるからな。
だが、特にこれと言って噂も何もクラッセンブルクの商人など、エーレンフェストに来ないだろ?
まだ境界門が開いているなら、エーレンフェストから商人を出してクラッセンブルクに探りを入れて欲しいと言われたのだ。
クラッセンブルクの国境門が開いたらしい?と聞いたが本当か?と見て来て欲しいそうだ。
アーレンスバッハは、今後のエーレンフェストの動き次第で、今後は友好関係をもっと深めたいと言ってきたのだ!
まず、手始めに砂糖の輸入量を倍にしても良いと!
それならこちらも探っても良いと答えたのだ。砂糖が倍量入ってきたら、エーレンフェストの流行も流しやすいだろ?
ローゼマインの流行は、砂糖を使うからな!
で、色々話していたら、アーレンスバッハは一時的に国境門が閉まったと言うのだ。
これからは以前のように毎年時期が来たら開かれると。
商人に頼めば探って来てくれるだろ?
下町のローゼマインの専属に頼めば良いと思ったのだ。流行で砂糖を使うのは、ローゼマインだからな!
で、流石に情報収集が必要だから、フェルディナンドに他領から情報を聞いてきて欲しいのだ。
ヒルシュールもフェルディナンドには話すだろ?エーレンフェストの寮監だと言うのに、私には何も言わないからな、ヒルシュールは!
それにユストクスもこう言うのは得意だろ?」
祝福は効いているが、本当に誰かこっそりエフロレルーメに祈ってないか?
ヒルシュールが情報流さないのは、何故かとは考えないのか?
未だにヒルシュールには、エーレンフェストから手当てなしなのか?
「ジルヴェスター、私はローゼマインのユレーヴェの管理があるし、未だに還俗した事を他領は知らないのだ。
神官の身で貴族院には行きたくない。
そんな事をすれば、ジルヴェスターが責められる事になるしな。
「うなぁ、なんでだ!」
私がエーレンフェストで神殿入りした事は他領も知っているが?
其の方の母親が領主会議で散々他領にも話したそうだぞ?根回しもせずに突然行く訳には行かぬ。諦めろ」
「だが、そうしたらエーレンフェストは何処からも情報が取れないではないか!
流石にグルトリスハイトは見つかったかもしれないのだぞ?
情報収集は必要だろう?」
「だったら、ジルヴェスターの側近に探らせれば良かろう?
なんならフロレンツィア様だって側近がいるのだ。出来るだろう?
だが、ユストクスは臨時領主会議に連れて行っても良い。
私は神殿にいなければならないから、城の留守はボニファティウス様で宜しいですか?」
ボニファティウス様が考えこんでるふりをしながら、ジルヴェスターの話を聞いている。
「そうだな。城にも留守番が必要だからな。
それは私がやる。ジルヴェスターとフロレンツィアは、アウブとアウブ配なのだ。
それが順当だろう。
それに2人はアウブとアウブ配なのだ。
自分たちの側近を使って、情報収集すれば良かろう?
クラッセンブルクの国境門の事も、ユレーヴェ中のローゼマインの専属でなく、アウブやアウブ配の専属を動かすべきだな。
アウブやアウブ配の側近や専属に、諜報活動が出来ないのは、今後困るであろう?
なんなら、国境門が開いているかどうかなら、自分の専属とヴィルフリートの専属に任せて、課題とするのもありではないか?
そろそろ子どもたちにも領主候補生としての動き方を教えるべきであろう?
それに、グルトリスハイトが見つかったのだとしたら、エーレンフェストだって国境門があるのだ。
国境門が開いている時にツェントが魔力供給に来た時の対応など、エーレンフェストは誰も知らん。
そう言った事はアウブ同士やアウブ配同士で聞くものだからな」
ボニファティウス様の追い討ちが凄い。
グルトリスハイトが見つかっていないのをわかっていながら、アウブとアウブ配にと振っている。
臨時領主会議は、我々だって忙しいのだ。ジルヴェスターの後始末や、エーレンフェストのために動いている場合ではない。
ボニファティウス様の上手い口実に私も乗ろう。
「そもそも、私はアウブやアウブ配の社交には参加出来ないのだから、情報収集も何もなかろう?
ヒルシュールだって、あくまで寮監だ。
アウブが持っているような情報は持っている訳がない。
ここはジルヴェスターとフロレンツィア様が頑張って社交中や、自分のこれまでの付き合いで情報収集するしかないと思うがな。
それで、今回の臨時領主会議は、王族がグルトリスハイトを見つけた事を発表する場だと言う事なのだな?
そうなったらジルヴェスターはどうするつもりなのだ?」
情報収集は任せたとして、次の話にすり替える。
「どうするとは、なんだ?」
本当に何も考えていないな!
アウブなのだからもう少し・・・。無理か。
「グルトリスハイトが見つかったこのタイミングで、エーレンフェストの国境門をどうするかだ。
エーレンフェストの国境門は、開くのか、開かないのか。
開かないにしても、国境門はユルゲンシュミットの中で中央を含めて7つしかないのだ。
国境門に魔力を籠めに来て頂かないとまずいのではないか?」
「何故だ?ずっと籠めていないのだし、開くための相手先の伝手もないのだ。
まさか、昔外患誘致しそうになった国と繋ぐ訳にも行かないだろう。
だったら何もしないで良いのではないか?」
「そうは行かないだろう?
国境門にずっと魔力が籠ってないのだ。
白の建物の国境門が崩れたら、エーレンフェストのせいではないか?
だが、エーレンフェストから国境門にずっと魔力が籠ってない事を進言し、それでも籠めないと王族が決めたのなら、それは仕方ないが。
ジルヴェスターがアウブとして、王族に進言しなくてはならないのではないか?」
「そんな!王族に進言など!
私がするのか?」
バカだ、バカだと思っていたが、本当のバカだな。
ボニファティウス様と2人で、揃ってため息を吐いてしまった。
「ジルヴェスター、当たり前だろ?
エーレンフェストのアウブは、ジルヴェスターなんだからな。
他の誰が、王族に進言出来ると言うのだ?」
ボニファティウス様が、ジルヴェスターに言い聞かせてくれた。
「その際は、きっちりといつから魔力が籠っていないからと話さないとならないかもな。
国境門が崩れたら、まずい事になるぞ?」
私もボニファティウス様の後に追撃する。
「あぁ、その通りだな。アウブの側近たちとよく話し合って、どう伝えるか考えた方が良い。
それと、先程のアーレンスバッハの件についても、顔合わせるんだ。きっちりと契約してこい。
クラッセンブルクには、早く専属を出した方が良いぞ。
あと3日しかないのだ。フロレンツィアとも良く話し合って、国境門の事も情報収集の仕方を相談しろ。
儂も3日後からは城に詰める事にする」
「そんな、どうしたら良いのだ?私にそんな王族との交渉やアーレンスバッハのアウブとやり取りなど・・・」
「だが、ジルヴェスターがエーレンフェストのアウブなのだ。ジルヴェスターがやるしかなかろう?」
そうか、グルトリスハイトが本来あれば、ジルヴェスターももう少しアウブらしかったのかもしれないなと思った。
グルトリスハイトがないから、ジルヴェスターはエーレンフェストでアウブでいられたのだな。
やはり統治には必要な書だな。
旧ベルケシュトック
ーエックハルトー
私たちは、旧ベルケシュトックまで騎獣を飛ばして、コルネリウスとアンゲリカとラザファムで侵入した。
私とラザファムは、フェルディナンド様と共に野営なども貴族院時代からしているし、こう言った際の動きなども、阿吽の呼吸で出来るのだが、まだ未成年のコルネリウスとアンゲリカはどうだろうか?
2人はまだ正式に騎士団としての討伐にも参加していない。
2人が使いものにならずとも、私とラザファムでどうにかなるか?と、騎獣を飛ばして来た。
まずは拠点となる、安全な場所を探さなくてはな。
子どもたちも今回は参加なので、出来たら空き家で周りに民家とかないのが良いのだが・・・。
休憩の際にそのような話をコルネリウスとアンゲリカに話しておいた。
騎獣を飛ばしながら、普段ならハンドサインのみで動きを決めるが、今は通信の魔術具があるからな、飛びながらでもハンドサイン以上のやり取りが出来る。
「エックハルト様、下の山の中腹に山小屋がありますよ?
そこは如何ですか?」
アンゲリカからの知らせに下を見る。
確かに民家が密集してない分、拠点には良いか?と、降りるハンドサインを出して、4人で山小屋に向かっていく。
山小屋は、頑丈に出来ていた。扉は木の板だったが厚みがあり、獣の侵入を許さない作りとなっていた。
中は埃がかなり分厚く積もり、長年使っていなかったのがわかった。
ここをとりあえず拠点とする事にした。
「まずはこの埃か・・・。
アンゲリカとコルネリウスでヴァッシェンをして、綺麗にしてくれ。
ラザファム、周りで水がないか確認してくれ。獣や魔獣が飲みに来ると困るからな。
井戸は使用しない。エーレンフェストの神殿から、飲み水も食事も転移させる。
長年使っていない井戸は、安全性が確認出来ないのと、水を汲みに小屋を出て見つかる可能性を減らすのだ。
水の安全性は、よく分かるだろう?いざと言う時に腹下しになったらまずいからな。
こう言う斥候部隊の基本だ。
それから火も炊かない。煙は遠くからでも視認されるからだ。良いな」
コルネリウスとアンゲリカに説明する。
教本に書いてある事は記憶に残らないが、実地が伴えばアンゲリカは覚えると、ローゼマインとダームエルに教えて貰ったのだ。
アンゲリカの勉強は、あまり進んでいなかったので、剣をアンゲリカに振らせながら教えると覚えた。
ローゼマインは、流石は脳筋!そして教える方も脳筋!と呟いていた。
アンゲリカには、どうあっても卒業して貰わなければならないのだ!
パトリツィオの母なのだからな。
パトリツィオもアンゲリカの勉強具合を気にして、10覚えたら、シュティンルークに足りない属性を魔石から魔力を入れると、アンゲリカにハッパをかけていた。
アンゲリカは、パトリツィオの持つ自身より刀剣の長いシュティンルークを見て、やる気になっているので、これも良い刺激となった。
パトリツィオとパトリツィオのシュティンルークがあって良かった。
私とパトリツィオでアンゲリカの勉強を見て、私たちは少し家族らしくなった。
パトリツィオは、私とアンゲリカの子らしくあまり話さない。必要があれば話す。
3人の中で一番論理的で口も立つが、黙っている。護衛騎士に向いているなと思う。
早くアレキサンドリアに戻してやりたい。
あちらで、何も心配する事なく、6歳と言う年齢らしく遊ばせてやりたい。
その時、ここにいる我々はどうなるのか?
それは分からないが、アレキサンドリアにはアレキサンドリアに辿るまで頑張った私がいる。
本来のパトリツィオの父親が。
私であって私でないアレキサンドリアのエックハルトにパトリツィオを返せるように頑張る。
「良し、綺麗になったな。転移陣と転送陣を広げて、転送陣には、用意完了と送ろう」
暫くすると転送陣が光り出した。
ランプレヒトが先に転移して来た。
抱えられるほどの大きさの時を止める魔術具を持って。
次に父上がパトリツィオとオルフェーロを抱えて転移してきた。
直ぐに父上が話出した。
「準備ご苦労。中央が動いた。3日後に臨時領主会議だ。領主会議前日には、皆で作戦会議だ。
それまでにターニスベファレンを探し、旧ベルケシュトックのブローチを探す。
直ぐにこのままこの前決めたチームで動くこと。
連絡はオルドナンツは使わずに通信の魔術具を使うこと。
それに隠蔽の魔術具フェアベルッケンのお守りは、落とさないように首から下げて、服の中に入れておくように。
魔獣探しの指揮は私が取る。ブローチ探しはエックハルトが指揮を取れ。
通信の魔術具はお互いの状況が聞こえる。
だが、気にせずに使用するように。
自分の判断で動くな?必ずチームで連携だ。良いな?
良し、では行こう」
要は泥棒ですね!
ーアンゲリカー
私は今旧ベルケシュトックに来ています。
ローゼマイン様がユレーヴェから目覚め、本来なら一緒に貴族院に通えるはずだったのですが、貴族院の用意が何もなされてなくて、その上未来???情報があり、このままだと良くないそうです。
私は、未来から来た私とエックハルト様の子どもに会いました。
私とエックハルト様に似た男の子。
初めて会った時、何故か私について歩いていたのです。
その後、エックハルト様に抱かれて、挨拶をしました。
パトリツィオと言う名の男の子。
私は挨拶をした時に私の子どもだと分かりました。
腰に私と同じようにシュティンルークを下げているのです。
私の魔力だと分かります。
お互いに挨拶をして直ぐに言いました。
「私はローゼマイン様の後を追ったのですね?」
アレキサンドリアの事もユルゲンシュミットの話もよく分かりません。
ですが、私がローゼマイン様から与えられた相棒としてのシュティンルークを手放すのなら、私はローゼマイン様の後を追ったのだと分かります。
「はい、母上はローゼマイン様がいないなら自分も行かなくてはと思っていたようです。
シュティンルーク?」
「あぁ、ここからは変わろう。
アレキサンドリアのアンゲリカは、アンゲリカの主が高みに上り、もうすぐ自分も高みに上るからとパトリツィオに私を委ねたのだ。
私なら、色々と説明出来るからと。
13年前に戻るなら、13年前のローゼマインとこれからのパトリツィオを守って欲しいと。
エーレンフェストのアンゲリカ。私の主は、アレキサンドリアにローゼマインと行ったアンゲリカだ。
そのアレキサンドリアのアンゲリカに、頼まれたから、私は今パトリツィオの魔剣だ」
シュティンルークから、フェルディナンド様の声が聞こえてきます。
シュティンルークは、ずっと私と一緒だったのでしょう。
「そうですか。
分かりました。私は私のシュティンルークが相棒です。パトリツィオはパトリツィオのシュティンルークで、これからローゼマイン様を守りましょう」
エックハルト様が、変な顔をして見ていますが、私には私のシュティンルークと私が守るローゼマイン様がいるのです。
「母上、私はフェルディナンド様とローゼマイン様の子どものフェリックス様の護衛騎士です。
フェリックス様を守る事で、ローゼマイン様を守ると言う事で良いですか?」
「フェルディナンド様とローゼマイン様の子ども・・・。
はい、それで構いません。エックハルト様もフェルディナンド様の護衛騎士です。
ローゼマイン様の大切な人を守れば、ローゼマイン様を守る事になります」
そんな会話をしたのでした。
そこから、貴族院の予習をして、アーレンスバッハに芋虫転移に行き、今旧ベルケシュトックです。
チームは、エックハルト様、ランプレヒト様、パトリツィオ、私です。
何をするかと言うと、旧ベルケシュトックの貴族のブローチを出来たら3つ探し出して手に入れるのが任務です。
「分かりました。私たちは泥棒になるのですね?」
あれ?私、間違ってますか?
3人がなんとも言えない顔をしてますね。
まぁ、細かい事は良いのです。
泥棒だろうとなんだろうと。
これがローゼマイン様のためなら、私はやります。
「私は、マントにブローチをつけてます。
マントを外すのは、家ですね?
だったら、旧ベルケシュトックの貴族の館に行くのが一番ですね?
ただ、ブローチを盗むなら簡単です。
この隠蔽の魔術具を使えば良いのです」
「待て、アンゲリカ。ブローチが無くなった事が直ぐに分からないようにしたいのだ。
そこを皆で考えている」
ランプレヒト様とパトリツィオも難しい顔をして悩んでいます。
何故こんな簡単な事が分からないのでしょう?
私も首を傾げて頬に手を当ててエックハルト様を見ます。
「直ぐにバレたら、臨時領主会議の時に旧ベルケシュトックの城の転移陣を使うのが難しいだろ?
だから4人で考えているのだ」
エックハルト様が説明してくださいました。
話して良いでしょうか?
黙って、エックハルト様を見ます。
頷いたので、話して良いでしょうか?
「なるほど。それなら、側仕えのブローチ。それも女性のブローチを狙いましょう。
女性は、普段からマントをして家にいません。それに側仕えは、業務中もマントなし。
そして、うちの母は、ブローチは毎日家に有ります」
「そうなのか?
あー、うちの母上もいつもブローチは持っていないな」
ランプレヒト様が、納得してくれました。
旧ベルケシュトックの貴族の館の女性部屋からブローチを盗む事が決まりました。
特に高齢女性から盗む事になりました。
今、私はランプレヒト様と2人で、貴族の館を窓の外から覗いているところです。
高齢女性がいます。
中級貴族くらいの館ですね。これなら我が家と同じような作りでしょう。
『兄上、良いターゲットが見つかりました。
ブローチ捜索して良いですか?』
『あぁ、こちらも多分下級貴族の高齢の側仕え夫婦を見つけた。ブローチを見つけて、・・・。
手に入れたら、拠点に戻ろう』
『『了解』』
私たちは、無事にブローチを盗み出して任務を完了しました!
黒の魔獣
ーコルネリウスー
私はまだ学生で、黒の魔獣に直接対峙した事がない。
この前のアーレンスバッハでの作戦で、初めてエーレンフェストの黒の魔木であるトロンベを見た。
タウの実と言う水分を多く含んだ実に魔力を籠めると発芽。その後、周りの魔力を吸い込んで、討伐後不毛の土地になってしまうと言う。
私は海に投げ込んで発芽させたため、土地の魔力をどのように吸うのかは分からなかったが、ローゼマインとフェルローズ様が魔力を籠めた海であっという間に発芽し、私の騎獣の魔力目掛けて伸びてきたのだ。
それと同じように魔力を打ち込むと、体が大きくなる魔獣がいるとの事。
有名なのが、この旧ベルケシュトックにいるターニスベファレンと呼ばれる魔獣だそうだ。
その幼体を5体捕まえてくるのが作戦内容なのだが・・・。幼体に魔力を打ち込めば、体が大きくなるため、フェルディナンド様作成の魔力を黒の武器のように吸い取りながら、眠らせる首輪型の魔術具を嵌めて連れて来るのだそうだ。
こちらのメンバーは、父上にラザファム、オルフェーロに私。
ラザファムは下級貴族の側仕えだそうだ。
だが、フェルディナンド様と貴族院時代から旧ヴェローニカ派と対抗する術を身につけている[[emphasismark:らしい > ﹅]]。
オルフェーロは、まだシュタープも持たない6歳。
このメンバーで、魔獣の捕獲は難しいのではないか?
「コルネリウスは、黒の魔獣とやり合うのは初めてだな?
この中で黒の魔獣に一番理解が薄いのがコルネリウスだ。
決して魔力弾は打ち込まず、我々の補佐をして欲しい。
ラザファムは、このローゼマインの魔力の籠った魔石を餌にして罠を作成する係。
ラザファムの護衛がオルフェーロだ。
良いな?」
「「はい」」
「なんだ?コルネリウス、何か不満か?」
「いえ、オルフェーロが護衛するよりも私がした方がと思ったのです」
「コルネリウス、まだ分からないか?今は私が指揮するチームだ。
コルネリウスが疑問に思っても、それはいちいち口に出すな。
それから納得がいく答えをいつも求めるものではない。
特にこう言った作戦の時は、司令するものだけが納得して指示を出している。
分かるか?
何名で行動しようと、命令系統さえしっかりしていれば問題がない。
コルネリウスは上級貴族で、今まで説明をする側だったのかもしれんが。
騎士団にまだ入っていないから分からないかもしれないが、騎士団の動きは大体この程度の説明しかしない。
今日はむしろ、丁寧に説明した方だぞ。
とにかく、行くぞ。コルネリウスは、全体の補佐で、魔力弾は打ち込むな」
ラザファムとオルフェーロが騎獣に相乗りし、森を目指す。
大体の地形を見て、ハンドサインで森に降りて行くが、私と父上は騎獣に乗って、上空待機だ。
ラザファムが、穴を堀り、魔力を通さない皮袋から、ローゼマインの魔力の籠った魔石を出して、穴に入れて土を少し被せたところに目が沢山ついている魔獣が近寄ってきた。
私が動きそうなのを父上が手で制する。
『オルフェーロ、行けそうか?』
『既に首輪付きです。首輪の上からで大丈夫でしょうか?』
『問題ないそうだ。魔術具作成者の魔力を上回らない限り、効くそうだからいける。
外した時のためにラザファムも用意を』
『『了解』』
『もう少し引きつけます』
腹を空かしているのか、口から涎を垂らし、その上目が沢山あるので、穴とラザファムとオルフェーロ、それに上空の私たちも見えているようだ。
「コルネリウス、黒の魔獣や魔木は、その場にいる一番魔力の強いものを追う。そして魔力を得ようとする性質がある。
この中で一番魔力が強いのが、ローゼマインの魔力の籠った魔石だ。
ターニスベファレンが一番欲しいのが、穴の中の魔石だ。
『後ろから逸れのターニスベファレンが近付いてきたぞ。首輪なしだ。だが、あれも捕獲しとくか・・・。
ラザファムは後ろを向き、オルフェーロと背中合わせだ。そろそろ動き出すぞ』
『『了解』』
「コルネリウス、弓を出せ。ボーゲン!」
「ボーゲン」
「ラザファムが外した時に備えていろ。
私はオルフェーロに備える。弓の代わりに打ち出すのは魔術具だ。
飛びかかってきたら、動きが早いからしっかり見てろよ?」
私の準備が合図だったかのように、二頭が飛びかかって来た。
かなりな跳躍だが、ラザファムもオルフェーロも落ち着いて、首に向かって魔術具を投げる。
首に巻きつき、そのまま地面に二頭とも落ちた。
父上と私は、地面に落ちた魔獣の手足を縛る。うげぇー、気持ち悪い。
だが、オルフェーロが捕らえたのだ。父親として、なんでもないフリをするしかない。
ある程度の魔力を吸う魔術具のようで、ターニスベファレンは小さくなる。
「幼体じゃないが、首輪付き。良いのが捕まったな。コルネリウス、これを騎獣の前に。
落とすなよ。
また、来たぞ。早いな。
同じ手順だ。首輪がついてる」
私と父上はまた上空に上がり、ターニスベファレンの捕獲を見守る。
今までより機動力?跳躍力?のあるターニスベファレンのようで、ラザファムが一回外すも、横からオルフェーロが飛び蹴り。二回目で無事に捕獲。
あぁ、オルフェーロがラザファムの護衛についたのは、魔力なしで機敏に動けるからか。
私では、シュタープを出して切り付けて、黒の魔獣が大きくなってしまう。咄嗟に蹴りなど出ない。
それにしてもオルフェーロは落ち着いているな。6歳でこの活躍。どうりで、魔獣捕獲班に入ったはずだ。
確かにこの中では、私が一番黒の魔獣に慣れていないな。
同じ手順で鐘一つかからずに、5体のターニスベファレン捕獲が終わった。一体だけ首輪なしだが、良いらしい。
私と父上の騎獣に括り付けて、拠点に戻る。
エックハルト兄上の方もブローチ確保出来たようだ。
拠点には、エックハルト兄上のチームが先に辿りついていた。
この拠点にブローチもターニスベファレンも転移陣も置いていく。
エックハルト兄上とランプレヒト兄上が、神殿に戻って、大きな時を止める魔術具を運んでいた。
その中に捕まえたターニスベファレンを入れ、魔術の鍵を内側からかけて、転移陣でエーレンフェストの神殿に戻った。
首輪付きとは、既に誰かの手でいざと言う時に使おうと捕獲してあるターニスベファレンだそうだ。
普段は野放しにし、先程の様に魔力で呼び寄せ、使う時に魔力を抜き、運ぶ。
幼体は檻に入れて確保するそうだが、ある程度大きくなると、首輪を付けて放してあるのだとか。
暗躍する者が使う昔ながらの手だそうだ。
首輪付きと言う事は、暗躍のための準備をしていたという事になるのだそうだ。
首輪をつけたまま、臨時領主会議で放てば、首輪から犯人?この場合は暗躍計画した者に辿らせるのだそう。
ターニスベファレンは旧ベルケシュトック固有の黒の魔獣だが、今旧ベルケシュトックは廃領地。
廃領地の管理は、ダンケルフェルガーとアーレンスバッハなので、アーレンスバッハへの暗躍の糸を探らせるには一番良いのだとか。
騎士コースで習うだけでない事をこの一件から学んだ。
「お疲れ様ー。無事に完了ですか?
お祖父様とフェルディナンド様は、まだ戻って来てないのです。
途中、ユストクスから通信の魔術具で連絡来たけど、城でジルヴェスター様に捕まってるみたいです。
私たちはお茶しましょう?
お茶菓子でも食べてゆっくりしましょうね」
神殿では、ローゼマインが待っていてくれ、皆で神殿長室でお茶することにした。
「エックハルト兄様、昔リュエルの実を採取する時に、私の魔力の籠った魔石で魔獣が大きくなりましたよね?」
「あぁ、ザンツェがゴルツェになったやつな。あれは、大変だった」
何故この間までユレーヴェだったローゼマインが、魔獣と出くわしているのだ?
しかも、エックハルト兄上も一緒に?
「今日の魔獣に魔力の籠った魔石投げたらどうなります?」
「大混乱だな。いくらなんでもローゼマインの魔力の魔石はダメだな。
だが、中途半端じゃなぁ。
父上どう思います?」
父上まで腕組んで悩んでいる。
「ザンツェから一気にゴルツェになったのだったな?せめて、ザンツェからフェルツェくらいが良いのではないか?
ローゼマインはそれを領主会議の場の混乱に使いたいのか?」
「だって、エックハルト兄様とランプレヒト兄様が運んだ時を止める魔術具に5体入ってしまうほどなんですよね?
黒の武器があれば、トロンベみたいな魔獣ならドンドン魔力抜けて討伐可能です。
それに流石に領主会議に出席するアウブの護衛騎士たちが間違えて魔力弾打ち込むとかないでしょ?
そしたら、直ぐに討伐されてしまいますよ?」
「まぁ、そうかもな。
アウブの護衛騎士など、何処の領地でも騎士団のトップたちだ。
黒の武器が許されてない領地でも、一発くらいは入れたにしても、それ以降は入れないだろう、魔力弾。
だが、その隙に自白剤を撒くのだから、多少混乱すれば良いのだろう?」
エックハルト兄上がもう一度作戦内容をローゼマインに言い聞かせている。
「なんか、未来の話聞いたら、少しは何処の領地のアウブも懲らしめたくなったのです。
それならターニスベファレンには、ダームエルの魔石、ザンツェには、私の魔石を会議室に入れる時に与えるのは如何ですか?」
「ローゼマインは、本当に酷い作戦考えさせるとフェルディナンド様以上だな・・・。
私はその案面白いと思うが、父上は如何ですか?」
父上は首を振って何も言わない。
そこにフェデリーコ様が発言。
「母上はね、貴族院でディッター負けなしなんです。
ダンケルフェルガーと何度もやったようですが、全勝です。
大抵は、母上の案を父上が補強したりしてアレキサンドリアでも五月蝿い他領を撃退してきたのです。
大体、芋虫や下剤などでアーレンスバッハを大混乱させたのですから」
「まぁなぁ。ローゼマイン、まずはフェルディナンド様に相談してからだな。
ザンツェの捕獲は直ぐに出来るから、用意も簡単だ。
だから心配するな」
エックハルト兄上に言われ、渋々諦めたローゼマイン。
ローゼマインとエックハルト兄上も私が思ってた以上に親しげだな。
本当に私は、周りを見ていなかったのだな。
騎士の在り方も今日は、理解していなかった。頑張らなければ、オルフェーロに抜かされてしまうな。























