私がただ楽しいだけ
車に乗り込んだ後、アクセルを踏む足に何か違和感を感じていた。なんだか嫌な予感が止まらないので確認のため路肩に停車させる。
「どうしたの?」
先程まで、頭を悩ませていた姉も私のおかしな行動に気づいたのか、不思議に見つめてくる。
「ちょっとね」
靴の脱いで確かめる。靴の踵の部分にボタンサイズの丸い白いものがついていた。
「ソレって!」
姉も気が付かなかったってことは、姉を車に押し込んだ時か。これでも、私たちは人の動きに敏感な方だ。周りは不自然な動きはしていなかった。ならば、考えられるのは自分の視界よりも下のもの。
あの、江戸川コナンとかいう子供か
「盗聴器かな?」
プロに聞いてみる。本物はあまり見たことないけれど、なんとなく勘でそう思ったものを口にしてみる。
「名探偵だな…!」
姉も同じ答えに辿り着いたのか、肩をわなわなと震わせ、私からソレを奪い取った。
「レディの会話を盗み聴くなんて、紳士のすることじゃないわよ」
姉はゴリラのようなその握力でソレを握り潰した。
グッパイ盗聴器!儚い人生だったなと大振りに手を振ってやった。
「本当に油断も隙もないんだから!」
いつもの調子が戻ってきたのか姉は、座席に座り直すと足を組む。
「それより、なんでアンタはリュウのことを言ったの!しかもあんな大勢の前で!」
「それを言うなら、なんで私を呼びつけたのあんな大勢の前に」
ギロリと睨みつけた。こんなことになったのは元はと言えば姉のせいだろう。
「そ、それは酔いが回っていたというかぁなんというかぁ〜」
「私、言ったよね、酒は飲んでも飲まれるなって」
「う」
さっきまでの威勢はどこにいったのやら、図星を突かれへたり込む姉。そんな姉に畳み掛けるように聞いた。
「あと、兄さんの件だけど、お姉ちゃん私に隠してることあるでしょう」
じとりと睨みつける。姉は体を揺らす。本当にいつものらりくらりしている瀬戸刑事なのかと疑問に思うくらい今の姉は動揺を隠せていない。
「お姉ちゃん、話して」
約束したでしょ、私は目を見つめて言った。
オートロック付きの防犯設備が整ったマンション。姉は事件やらでほとんど帰っていない場所。
姉と共に部屋まで歩く。ここまでずっと無言だった。姉が車では話せない、家まで待てと言ったからだ。
それしても、こんなに会話をしないのは私が高校生の時の反抗期以来じゃないだろうか
病弱だった母が死に、父子家庭育った。警察官である父は家にほぼ帰らず、姉は家庭の中では親の役割をしてくれた。私が成人するまでは実家にいてくれたし、歌手になりたいという夢に一番反対したのは姉だった。
この世界の危険さをお前は知らないから、そう言って、何度も私も止めた。結局、姉が止めなくても歌手にもなれなかったけど。
そんなことを考えていると、部屋についた、姉は鍵を開ける。すると、奥の方からドタバタと足音が近づいてきた。
部屋に誰かいる?
「おかえり!ねぇちゃん!」
子供の声が響いた。
昔、この声をよく聞いていた。
「リュ、ウ、にいさん?」
姉の体で隠れた、小さな体を見つめる。
「りゃこ?」
可愛らしく小首を傾げるその姿に、姉が言っていたこの世界の危険さを少しだけ理解できた気がした。
「はぁ??潜入捜査先で諜報員ってバレて、一か八かで薬を飲んで生き残った??なんで、そんな危険なことしてるの!?」
思わず、大きな声が出てしまう。
「りゃーこ!声でかいから!いくら防音とは言え!」
姉が慌てた様子で私の口を塞ぐ。その声の方がでかいはとは言えなかった。
「だって、その方法しか思いつかなかったんだ」
ぺしょぺしょになった子猫のように体を縮める兄に、なんとも言えなくなった。
「諜報員バレはまぁ、しょうがないとして、どうして毒薬なんて飲んだの?」
「撃たれたんだ。傷口を塞がなきゃって思って、一か八かで縮めば、傷口も塞がるかもしれないだろ」
めちゃくちゃなことを言う兄に頭を抱える。
「一歩間違えば死ぬかもしれないのに?」
「あの時飲まなければどのみち死んでた。飲んだから今生きてるんだ。」
納得してしまった。自分もきっとその立場になったら、薬飲むだろう。二度と大切な人たちに会えないとしても
「あー、もう!わかった、もう何も言わない」
嬉しそうに目を輝かせる兄。
「ただし!兄さんは私と住もう」
「神奈川に?」
「そう、ここよりかは安全でしょう。兄さんがバレたってことは公安に裏切り者がいる可能性がある。一人じゃないかもしれない信用できない、その奴らの近くにいればまた命を狙われる。」
「それは、そうだけど、」
「お願い兄さん。もう、仲間外れは嫌よ」
約束したでしょ、私は兄を見つめて言った。
姉と別れを告げ、兄を助手席に乗せ、運転する。
「りゃこ、俺はさ、助けてやりたい奴がいたんだ。」
兄の立場を考えれば、きっと本当に助けたかった相手なんだろう。自分の立場も命さえも投げててしまえるほどに大切な相手。
「ソイツはさ、不器用なんだよ。きっと今頃俺を傷つけたと思って一人で泣いてる。だから、迎えに行って慰めてやりたいんだ」
普段は開かないその瞳が薄く開かれ夕焼けに照らされていた。
「きっと、兄さんがそう思う相手は、迎えも慰めも望んでないよ」
私の一言に、さらに目を大きくさせる。次の瞬間には細められた
「違げねぇや」
ニヤリと笑い、肩を揺らす。姉に似たその笑い方にやっぱり私たちは兄弟なんだとそう思った。
「うん?で?何この状況?」
「私が知るわけないでしょ」
兄と私は呆然と立ち尽くしていた。
私の住むマンションが燃えていたのだ。
Q、安全とは?
A、モブからサブキャラ昇格おめでとうございます!
とりあえず、兄を姉の元にリリースし、私は仮住居を見つけるまでホテル暮らしをすることにした。
なんなか、全部姉が悪い気がしてきた。
「よ!おはよう!」
元気よく声をかけてきたのは萩原小隊長、いろいろあり過ぎたせいで正気のない挨拶を返す。
「どうした?覇気がないな、顔色悪いぞ」
心配そうに、私の頬をペチペチと触る。
なんだ距離感近くね?少し半歩下がると萩原小隊長も半歩近づく。
思わず、後ろに2歩下がる。すると、小隊長も2歩詰め寄ってくる。
そんなやりとりをしていると、壁まで追い詰められてしまった。
「なぜ、逃げる!」
私の方が背が高いため、自然と上目遣いになる小隊長は、両手を壁まで伸ばし、完全囲い込いこまれた。
「小隊長こそ、なんで追ってくるんですか」
チベスナフェスが悲鳴を上げる。ちかいちかいちかいと心の中で連投する。
「お前が、逃げるからだろ…」
少し拗ねた顔をで目を逸らされる。
なん、何があった?この1日でなんの心境の変化???
「小隊長?」
あまりの様子にもしかしたら、熱があるのでないかと、顔を覗き込む。
「…ら」
何かを小声で言う小隊長に私は心配が募る。
「小隊長、大丈夫でー「だから!」
「ち、千速とは呼んでくれないのか…?」
頬を赤らめ、目が潤んでいる女神がそこにはいた。
ー!?
あまりの衝撃に、脳がショートした。
え?ん?え?
「ち、ちはやさん?」
一拍置いて困惑の末、彼女の名を口にする。
「なんだ、りゃーこ…」
目を潤ませながら、睨みつけられる
かわいい
じゃなくて!なんでこんなことになってるんだ
この前までは普通にただの上司と部下だった。
なに?私何かしたっけ、
あー、どうしよ、兄が縮んでたことと家がなくなったことが衝撃すぎて思い出せない
「覚えてないのか?お前から言い出したんだからな、今更、何を言っても私は梨耶子と呼ぶからな!」
そう宣言すると、彼女は去っていった
一人部屋に残された私はその背を見つめながら、思った
私、なんかやっちゃいました?
・・・
「何があった?話してみろ」
なんで、私は小隊長と夕食を取っているんでしょうか
確か、仕事を終えてホテルに行こうと車に乗ったら、なぜか小隊長が助手席に乗ってきた。
あれよあれとやっているうちにレストランに来ていた。
なぜ?
いや、まぁ運転してきたのは私だけどさ、
「小隊長」
「きみ、メニューのこれを一つ」
私の問いかけを無視し、定員に注文する彼女にため息をついた。
意を決して、言葉を発する。
「…ちはやさん」
「なんだ?梨耶子」
機嫌良さそうに、微笑む彼女。
絶対このポジションは私じゃない!横溝警部変わってくれよ!頼むから!
「なぜ、このようなことに?」
「なぜって、お前が元気なさそうだからだろ?部下の機嫌を直すのも上司の務めだろ?」
小隊長はニヤリと笑う。その顔に心臓が跳ねる。
「それで、何があったかそろそろ教えてくれないか?」
真剣な表情でいう彼女に、私はついに折れた。
「実は…」
・・・
「そうか、火事で…なるほど、」
私は兄のことを除き、姉を家まで送り届けた後のことを話した。小隊長は少し考えた後私の方を見つめにっこりと微笑んだ。
「なら、私の家に住むといい。弟も家を出ているし、ホテル暮らしよりマシだろう?」
「はぁ、は?」
思った以上に低い声が出た。
「何を言っているんですか?」
「部下が困っているんだ、手を差し伸べるのも上司の役目だろ?」
この人、正気じゃない。
「上司と部下の関係を超えていると思いますが」
冷静になろうと落ち着くために水を口に含んだ。
「なら、その関係を壊そうか」
「ぐっ、うぐ」
吹き出しそうになるのをグッと抑え、飲み込む。
「さっきから何を言っているんですか、あなたは」
「君は上司の世話になるのが嫌なんだろう?だったら、上司と部下でなければいいんだ。それにもう、ただの上司と部下ではないだろ?名前で呼び合う仲なんだから」
「それは、萩原小隊長が…!」
あなたが強制的に呼ばせているんでしょうという言葉を言うことはできなかった、
「言っておくが、先に始めたのは私じゃない。私の名を呼んだのはお前だよ、梨耶子」
・・・・
「小隊長、起きてください!今日はご出勤でしょう?あーもう、千速さん!」
目の前の彼女から布団を奪い取る。あれから何故か、上司と同居することになった。一応条件付きで、仮住まいを見つけるまでと約束をした。
「あーなんだ梨耶子か、」
「なんだとは何ですか。いい加減起きないと朝食冷めますよ」
こうして、お世話になる身として家事全般は私がすることにしている。寝ぼけている上司をベット引っ張り出して、洗面所まで連れて行く。
部屋は片付いているし、生活能力がないわけではなさそうなのに、普段見ている小隊長とは大違いだ。
「先にリビング行ってますからね」
「ーん」
わかっているのかわかっていないのかよくわかない返事を返される。
私は出来上がった料理を机に並べる。私の料理の腕は普通レベルなので、何とも言えない。まぁ食べれる程度には美味い方だ思うけど。
「おはよう。美味しそうだな!」
「大したものではありませんが、どうぞ」
「そんなことないぞ、焦げていない目玉焼きは久しぶりだ!」
「多少は焦げてますよ?」
普段どんな料理を食べてんだと思いながら、いただきますと二人で手を合わせる。
こんなに穏やかな朝食は久しぶりだ。
まだ、お父さんが生きてて、お姉ちゃんたちが学生だった時以来かな、なんてもの思いに耽りながら食べ進めた。
「今日は何をするんだ?」
「出かけようかと思っています。」
「なんだ、家を探すんじゃないんのか」
よくある世間話
けれどその一言で、思わず警戒してしまう。
「なぜ、物件探しではないと?」
私の作った朝食を口に含み、ごくりと呑み込んだ。
「あぁ、だってお前の性格上物件を探すと素直にいうだろ、それを言わずに濁すってことは、別の用があるってことだ」
もとより鋭い人というのは知っていたが、ここまで自分を観察されているとは思わなかった。確かにこの場面だったら私は普通に物件探しに行くと言っただろう。
「そう言われてしまうと否定できませんね」
「それで、どこに行くんだ?」
「ヒミツです」
姉と違って嘘が苦手な私は真っ向から言うつもりはないと言い張らなければならない。交通課とはいえ、警察官の彼女にこの手が通じないのはわかっているが、こういうしかないのだ。
「涼子のところか?」
「はぁ、そうです」
「嘘だな、涼子は今日は出番だ」
適当に返したことを後悔した。何故、出番非番を把握している。飲み仲間だからか!内心、舌打ちをする。
「…どこに行こうと萩原小隊長には関係ないのでは?」
「そうだな関係ない。」
「それならー」
「しかし、私がお前に興味がある。だから教えてくれないか」
面倒な恋人の相手をしてるような気分になる。もう、どうにでもなれという気持ちで返した。
「人に会いに行くんです。」
「誰に」
「そこまで言わなければいけませんか?」
「ああ、教えてくれ」
目の前の彼女を見つめる。どこまでも真剣な眼差し言ってしまってもいいかと口を開きかけた
「言いたくありません。」
寸前のところで、姉の顔、兄の顔を思い出した。秘密を守ること、それが兄弟の絶対の約束。
それがどんなに大切な相手だろう言ってはいけない。
「…わかった。すまない、そんな顔をさせたいわけじゃないんだ」
彼女は私の頬を撫でる。どんな顔だよとは聞けなかったが、それ以上は聞かないと言ってくれたので、私も口を開かなかった。
「りゃこ!」
玄関の扉を小さな手で開けるその姿に庇護欲をそそられる。
「兄さん、そんな無警戒に扉を開けちゃダメだよ」
「大丈夫、りゃこっていうのは足音でわかってたから!」
「何その特技、初めて知った」
いろいろあってねっと胸を張る兄の頭を撫でつつ、出掛ける準備をさせる。
「どこに行くんだ?」
「ショッピングモール」
「なぜ」
「服を買いに」
「誰の?」
「兄さんの」
私は自分の持ってきた荷物を漁りながら、テンポよく進む会話に懐かしさを感じていた。
「いやいやいや!ダメだろ!外に出るの危険だってお前が言ったんじゃないか」
慌てた様子で兄は言う。
「それなら大丈夫」
「は!?」
私は自分の持ってきた服を兄に見せた。
「お姉ちゃんのお下がりワンピース、私も着てたやつ!実家から持ってきたの」
「まさかお前、これを俺に着ろとかいうんじゃないよな?」
顔を引き攣らせながら、兄は2歩3歩と後ろに後ずさる。
そんな兄の腕を掴み、私笑顔で言い放った。
「さすが公安のお兄ちゃん!ご明察〜!」
勢いよく兄の服を引っぺがす。
「うわぁぁ、やめろぉぉお!」
・・・
「なんで、こんなことに…」
白いワンピースを身に纏い、兄は死んだような顔で車の助手席に座っていた。
「死ぬよりマシでしょ」
「男としては死んだよなもんだぜこれは…」
兄の背景にしょもーんという効果音が見えた気がするけど、多分気のせい。
「それじゃ行こうか隆子ちゃん」
「誰が隆子だよ…!」
今日は怒ってばっかだな兄さんは、しょうがないちゃんと考えてあげよう。
「じゃあ、蒼は?」
「なんで、蒼?」
「兄さんに一番似合う色だから」
私がそう言うと兄の顔が一瞬くしゃりと歪んだ。勢いよく顔を下に向ける。
「…ありがとな、梨耶子」
潜入捜査官をしていた兄に何があったなんて知らない、
けれど、私にとって兄が警察官であることは変わりない。
「それじゃ、行こうか。」
・・・
「おれ、俺大丈夫かこれ」
「大丈夫だって可愛いよ、そんなに動揺しないで堂々してて、
逆に怪しまれるでしょ」
私の足に隠れながら、周りをキョロキョロ見渡す。やめろ私が怪しまれる。
「ねぇ、大丈夫?」
「うわっ!」
カチューシャをつけた女の子に話しかけれ兄は肩を揺らしてびっくりしていた。子供に背後を取られるなんてよくそれで公安務まるな
私はしゃがこみ、女の子と兄の壁になる。
「ごめんね、この子人見知りなの」
「そうなの?ごめんなさいいきなり話しかけて、私は歩美!吉田歩美、よろしくね!」
そう、少女が名乗ると兄は先ほどより一層私の後ろに隠れる。
「ごめんね、あゆみちゃん、この子は蒼。ほら、蒼」
私が兄に呼びかけるが兄は出てくるつもりがないようだ。困った様子の私に、あゆみちゃんもどうにかしようと兄に近づく。しかし、それは許されなかった。
「何してるの、吉田さん、行くわよ」
歩美と名乗った少女と同じくらいの少女があの彼女を呼び止めたからだ。
「哀ちゃん!」
哀と呼ばれた少女に手を引かれ、歩美ちゃんは去っていく。
「待って、哀ちゃん!じゃね、蒼ちゃん!それにお姉さん!」
大きく手を振られ、私も振り返す。
兄はずっと私の後ろに隠れたままだ。
「知り合い?」
「ちがう」
兄は否定するがどう見たって顔見知りだろう。けれど、こうなった兄は死んでも口を割らない。
「それじゃあ行こうか、」
兄と手を繋ぎ、ショッピングモールの中を歩く。
兄に似合う服、アクセサリーを物色しつつ、店内を見渡す。兄の調子戻らない。
私はアイスクリームのお店を見つけると目線下の兄に話しかけた。
「ちょっと、休憩しよう」
通路に置いてあるベンチに腰掛けながら、アイスを口する。
アイス片手に心ここに在らずと言った兄の様子に、どうしたものかと頭を抱えた。
こうなった兄は面倒だ。絶対口を割らないし、自分が納得するまで考え続ける。
「キャー!!」
とあるショップから悲鳴が聞こえる。私は兄の手を掴むと死角に隠れた。
ここからなら、出入り口も見えるし、あらちの様子は見える。向こうから見えないだろう。
館内放送で、ショッピングモールから出るなという指示と共に出口が封鎖された。
殺人事件かなと嫌な予想をしてしまう。
「殺人か…?」
兄も同じ考えに至ったのか、ショップの様子を伺う。本当なら兄が一番現場に駆け付けたいだろうに
しばらくして出口付近にパトカーが複数台止まる。
降りてきた人たちを眺める。体格のいい帽子を被ったいかにも偉そうな人に若いスーツを着た男女。
そして、
「「お姉ちゃん/ねぇちゃん」」
思わず、声が出てしまった。
こんなところで、きょうだい大集合してしまうとは思いもしなかった。
ショップに入っていくところを見つめ、まぁ姉がいるならすぐに捕まるだろうと、アイスを食べながら思った。
数十分経つ。
「待ちなさい!」
そんな声を聞き、ショップの方向を見つめる。
ショップから飛び出してきたのはナイフを持った男とその男に抱えられたさっきの歩美という少女だった。
その二人を追うように刑事たちとこの間出会った毛利蘭という少女が出てきた。少女はあろうことか、刃物を持った相手に素手で立ち向かうとしている。危ないと思いつつ、人質を取られた周囲は思うように動けない。
犯人は逃走するためにこちらに走ってくる。
マジか
私は兄を背に隠し、死角から犯人に足を引っ掛けた。
躓いた犯人は歩美ちゃんから手を離し、私はそれをすかさず受け止める。その遠心力を利用して犯人足蹴りを喰らわせた。
床に顔面を押し付けて犯人は倒れ込む。
手放したナイフを掴めないよう、足で蹴飛ばした。
「警視庁の刑事はあの状況で犯人を取り逃がすなんて馬鹿なのか?」
思わず、嫌味を吐いてしまう。
ちなみに姉に対してだ。
「あなたは…!」
「さっきのお姉さん!」
毛利蘭ちゃんと腕の中にいる歩美ちゃんが私にキラキラした笑顔を向ける。やめて、眩しい
「りゃーこ!?なんでここに!」
「「りゃーこ!?」」
男女の刑事が驚いたように声を上げる。私は後から来た姉を睨みつけた。
「連絡してただろう?今日は蒼の面倒は私が見るって」
「蒼?あー、ごめんすっかり忘れてた!確か今日だったね!」
さすが、嘘つき。私の言ったことから蒼が誰を指すのか瞬時に理解は話を合わせた。
私たちが話している間に、男女の刑事が犯人を確保する。
「あのぉ、お二人はどういうご関係で?」
男の方の刑事が弱々しく問うてくる。
それを私たちの代わりに目を輝かせた毛利蘭という少女が口を開いた。
「お二人はご兄弟で、瀬戸刑事の妹さんの瀬戸梨耶子です!梨耶子さんは、神奈川県警の白バイ隊員さんなんですよ!」
「ご紹介いただき、ありがとうございます。姉がいつもお世話になっております。先程の発言失礼いたしました。すべてこの馬鹿姉に向けて言った言葉ですので、お気になさらず」
「は、はぁ」
「すっごい!!あ姉さん白バイの人なの〜?歩美見てみた〜い!」
「神奈川に来てくれたら、見せてあげられるかもね」
そう言うと私は少女の頭を撫でた。
「それと君」
「は、はい」
私は毛利ちゃんに向き直る。私の真剣な表情に彼女また顔を固まらせた。
「武器を持った相手に立ち向かおうとする心意気は評価する。けれどやめなさい。君はまだ子供で私たちは大人だ。この意味わかる?」
「…すみませんでした」
表情が曇る、あ、これ伝わってないやつだ。私は慌てて頭を上げさせる。
「顔を上げて、別に怒っているわけじゃないんだよ。ただ、私たち大人を頼って欲しいんだ。君がまだ子供でいるうちは私たちは君を子供として守れるんだから、無理しないで助けを求めてほしいんだ。
君の身のこなしから強いのはわかるよ、きっと私たち大人に守られなくたっていいこともわかる。
だけど、君が子供でいるうちは私たちに守らせて欲しい。
できれば、おまわりさんの役目を取らないで欲しいなっていう頼りない大人たちからのお願い、わかったかな?」
「は、はい…!」
頬を赤く染め、彼女は元気よく返事をする。
今度こそ伝わったようだった。
「女子高生を口説くなよ〜!」
姉がニタニタ笑いながら近づいてくる。イラっとした私はつい姉の顔面を鷲掴みにした。
「お前は反省しろ」
「痛い!りゃーこさん痛いって!頭取れちゃう!」
「そのまま取れろ」
「酷い!!」
あの瀬戸刑事が押されてる…
妹さんには勝てないんですね
なんていう子供達の声を聞きながら、姉の顔面に徐々に力を入れていく。
「あれ?コナンくんがいない!」
「灰原さんもです!」
「それは大変!探さなくちゃ!」
私に顔を鷲掴みにされながら、姉は答える。
「あー、それならさっきトイレ行くって言ったよ!」
「ちぇーまたコナンのやつトイレかよ」
「相変わらずですね!」
また、嘘をつき上がって、兄の姿もないってことはそういうことだろう。
まぁ、応援してるよ、お兄ちゃん。
「ちょ、ちょっと放してよ!」
俺はメガネの少年に人気のない場所まで手を引かれてやってきた。コイツ、意外と力がある。
「人が拳銃で撃たれて生き残る確率はそう高くはない。けれど死ぬ確率も高くないんだ。体を貫通して現場に残った弾丸は3発、撃たれたのもの3発、けれど遺体だけは残らなかった。忽然と姿を消したんだ。」
自分の正体がバレるかもしれないとは思っていた。でもこんな初対面でバレることある?絶対降谷とか諸伏入れ知恵しただろ!
「さっきから何を言っているの?」
とりあえず、普通の子供を装ってみる。そんなものはなからつうじないとわかってるけどさ、
「それはなぜだと思う?」
小さな名探偵は俺の精一杯の演技を無視する。ホンマコイツどついたろか、お前の子供らしい演技より上手いだろうが
「わかんないよ!離して!」
「それは、死んだと思っていた遺体は自分から動き出したんだ。しかも、その体を縮めてね」
うわぁ、お前って言ってきますやん。あー帰りたいりゃこちゃん迎えてぇー
「アンタは公安の潜入捜査官としてとある毒薬について調べていた。その使用データと使用された人間についてだ。そして、辿り着いたんだろう?
工藤新一に」
あーわかった気がする、あれだ。俺が今ってどれくらい話進んだっけと思って工藤新一と江戸川コナンについて調べてたのを多分諸伏が見つけたんだ絶対そうやん、それをコナンに教えやがった。
「アンタはこの薬に副作用があることを知っていた。撃たれた瞬間、アンタはあの薬にかけたんだ。
生きて、宮野志保を助け出すために!」
本当にやめてほしい。俺はただ志保ちゃんと明美ちゃんが楽しそうに微笑んでたらそれでよかったのに、今更死人が出てきて掻き乱したくない。
否定しようにも言葉が見つからない。黙って名探偵を見つめる。沈黙は肯定、早く否定しなきゃいけないのに…
不意に後ろから抱きしめられる。
「え」
「ばか!」
背中に冷たい雨が降っていた。
もう、否定する気にもなれなくて、されるがまま抱きしめられていた。
・・・
「おかえり、蒼。随分と仲良くなったみたいだね」
「あはは」
しばらくして、兄と哀ちゃんと呼ばれる少女と手を繋いでやってきた。その後ろにコナンという少年もいた。なんか微笑ましそうに笑っていたけど、本当に子供なふりする気あるの?
「ずるい!!私も蒼ちゃんと仲良くなりたい!」
歩美ちゃんは相当ヤキモチを焼いていたけど、
とりあえず、めでたしめでたし?
ネクストコナンズヒント!
「実は僕男の子なんだ」
「「「えぇーー!?」」」
「せっかく女の子友達が増えたと思ってたのに!」
「ちょ!ちょっと灰原さんから離れてください!」
「じゃあなんでスカート履いてんだ?」
「お姉ちゃんたちの趣味」
「「「えぇぇぇ!?」」」
「おいおい」
「ふふふ」
次回「千速と梨耶子と涼子」
お楽しみに(続くかなー?)






















