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米花町のモブ市民は萩原研二の死亡フラグを折る

かのこかのこ

米花町スピリットの持ち主な一般モブな小説家さん(名前は中禅寺秋子)(前世があるけども役に立つかは微妙)(ファンタジーや児童小説をメインに書いてる)(読者には性癖クラッシャー。性癖の破壊神にして創造神と崇められてる)が小説を盗作されて殺意に目覚めて完全犯罪を遂行しそうになったり。 幼馴染みの萩原さんと。萩原さんの友達の死亡フラグを折る為に同じ手口の事件は模倣犯などの例外を除けば起きない筈!!だって毎週違う事件が起きてたもん!!と先に自分の小説内で事件を起こしてた結果ミステリ作家の仲間入りしたりしながら。 ギリギリの瀬戸際で小説家さんの完全犯罪を防いだ萩原さんにあんなヤツの為に人生をドブに捨てるぐらいなら俺に秋姉ちゃんの人生をくれないかとプロポーズされる話。

注意書
米花町スピリットの持ち主な一般モブな小説家さん(名前は中禅寺秋子)(前世があるけども役に立つかは微妙)(ファンタジーや児童小説をメインに書いてる)(読者には性癖クラッシャー。性癖の破壊神にして創造神と崇められてる)が小説を盗作されて殺意に目覚めて完全犯罪を遂行しそうになったり。

幼馴染みの萩原さんと。萩原さんの友達の死亡フラグを折る為に同じ手口の事件は模倣犯などの例外を除けば起きない筈!!だって毎週違う事件が起きてたもん!!と先に自分の小説内で事件を起こしてた結果ミステリ作家の仲間入りしたりしながら。

ギリギリの瀬戸際で小説家さんの完全犯罪を防いだ萩原さんにあんなヤツの為に人生をドブに捨てるぐらいなら俺に秋姉ちゃんの人生をくれないかとプロポーズされる話。

書き癖が強め。久々にコナン夢を書いたので色々変かもしれませんがたぶんあるだろう誤字脱字と共に読み流してください。

蝉時雨が降っていた。

他人事のように荒い自分の呼吸を聞き、握り締めた果物ナイフを動かそうとするも。身体ぜんぶを使って私の殺意を食い止める少年のせいで果物ナイフは標的と定めたモノから遠ざかる。

ぜぇぜぇと肩を戦慄かせて。少年は秋姉ちゃん、ダメだと感情の昂りで潤んだ目で睨んで、あんなヤツのせいで秋姉ちゃんが人生をドブに捨てるなんて絶対にダメだ!と少年は。

研二君は叫び。俺は警察官になるんだ!!と私の腕にしがみついたまま語り出す。

「───何時か絶対に俺がアイツを捕まえる。秋姉ちゃんの悲しみを晴らすから。アイツなんかの為に秋姉ちゃんが手を汚す必要はない···!」

もし、それでも。どうしてもこの先の人生をドブに捨てるって言うなら俺に秋姉ちゃんの人生をくれ!!と研二君は言う。

そこでようやく私は思い出したのだ。私の書いた物語の一番のファンは彼だったことを。
必ず小説家になり初めに世に出した本を渡すと約束をしたと。

大事な約束だったのに忘れていた。握り締めていた果物ナイフが地面に落ちる。殺意は消えやしないけど、発露するだけの勢いは無くなった。そして気付く。

(え、私の幼馴染み。あの爆処の萩原研二では···?)

ヤッベェ、事件を起こしてる場合じゃねぇや。研二君の死亡フラグを折らねばと。私に抱き着いて。秋姉ちゃん、返事くんないかな?とあざとく小首を傾げる研二君に。あ、はいと素に返って頷くと研二君はにこーっと笑う。

あら、可愛い。秋姉ちゃんは俺のなんだから。あんなヤツのことより俺のことだけ考えてりゃ良いの!

ほら、行くぞ。秋姉ちゃんが好きなドーナツでも食べにと果物ナイフをスイミングスクール鞄に仕舞いこんで研二君は私の手を引いて歩き出す。

「研二君。私が怖くないの。私、さっきまで完全にひとを殺そうってしてたよ。本気も本気で。」

「秋姉ちゃんのことだから失敗してたよ。刺される相手が痛がるのを見たらそれ以上のことは絶対に出来っこない。だって秋姉ちゃんは優しいんだ。根本的にひとを憎むのに向いてない。」

そうかな。そうかもしれない。私より私のことを知る研二君が言うならそうなのかもと。私の手を握り締める研二君をまじまじと眺める。

私はこの日、殺人事件の犯人に成り損ね。研二君は警察官になる第一歩を踏み出すことになる。

鳴り止まない蝉時雨のなか、私は積乱雲が浮かぶ真っ青な空をぼんやりと見上げた。米花町で事件を起こそうとしたら。そりゃ捕まるわ···と。

東京都、米花町───。

それは日本のヨハネスブルク。異様にトリックに凝った殺人事件が多発する爆発が春の季語な日本の大都市である。

そんな米花町に暮らしている、私。中禅寺秋子はしがない小説家です。主にファンタジー小説をメインで。ミステリをサブで書いてます。

東都米花住みでミステリがメインじゃないのかと聞かれたならばブルーマウンテン先生の世界でミステリは競合他社が多すぎるけれども。他のジャンルは未開拓地。

というかミステリ作品と比べたら湿気った煎餅的な味わいの作品ばかりだったので。前世のノリで書いた作品はこの世界では濃縮還元オレンジジュースの原液並みに濃かったらしく、これまでになかった作品だとすさまじく受けたという背景がある。

お陰で犯罪率はバリ高だけども物価がまあまあ高い東都の一等地の米花町でセキュリテイが確りしているオートロックのマンションに暮らせています。

まあ、このマンション爆弾が仕掛けられてあわや木っ端微塵になりかけたんだけども。それはともあれ。私、中禅寺秋子には前世の記憶がある。前世を思い出したのは中学生の頃。当時の私はごく普通の子供だった。

両親が揃って小説家だったものだから、私も小説家を目指してノートにアイデアを書き散らす日々を送っていた。

まあ、文学少女というヤツである。そんな私には萩原千速という格好良い友達が居た。隣近所に住み、幼稚園の頃からの付き合いで。小学校も同じなら中学校も同じ。さっぱりして潔くて男前。

タカラジェンヌのような千速ちゃんは私とはかなりタイプが違うけど、よく一緒に居た。千速ちゃんには弟さんが居た。名前は研二君。

千速ちゃんちに遊びに行くと高確率で研二君と研二君の幼馴染みの松田君と鉢合わせる。松田君が千速ちゃんに構われに行く度に私と研二君は二人のやり取りを微笑ましく眺めていた。

研二君は私が小説家を目指していることを知っていた。というか読者さんだった。

研二君が小さな頃から絵本の読み聞かせの延長で即席で作った物語を聞かせていたこともあり、物語を思い付く度に研二君に話してよく感想を貰ってた。

当時、前世の記憶なんてなかったけど。三つ子の魂百までも。前世の良質なファンタジー作品に触れ、読み込んできた私の語る物語は前世色が強いというか。かなり濃いモノで。

ようは濃縮還元のジュースの原液だったせいで。その濃すぎる物語に慣れてしまった研二君は学校や図書館で借りた本に微妙な顔をして、秋姉ちゃんの書く話の方が百倍面白いと嬉しいことを言うものだから。

お世辞でも嬉しいぞぅと私は嬉々として様々な物語を研二君に話して聞かせた。

惚れっぽい一角獣と堅物ドワーフ戦士の世直し旅。世紀の大泥棒と少女探偵の凸凹バディによる奇想天外な冒険。安楽椅子探偵の空想グルメ紀行etc.

不思議と研二君を相手にすると物語が頭から溢れだし、多くの作品を書き上げられた。

事件が起きたのは中学三年の時。とある出版社が年齢不問で幅広い層からミステリ小説の公募を呼び掛けた。書評は新進気鋭のミステリ作家。ファンタジーだけでなくミステリにも挑戦しようとしていた私は寝る間を惜しんで作品を書き上げた。

タイトルは『揺れる狐火』。生真面目な同心と足を洗った元泥棒が利害の一致から一夜限りの相棒となり巨悪を倒す痛快な時代劇ミステリだ。

研二君からも面白いという御墨付きを貰って出版社に小説を送った。数ヵ月後、賞を取ったのは別人だった。それでもその時はまだ落選してしまったのだと思っていた。

まさか新進気鋭のミステリ作家が出した新作が私の書いた作品だとは思いもしなかったのだ。

私の書いた作品は盗作された。最悪の形で。

当然、出版社に抗議をした。作家にも苦情を入れもした。けれども、証拠はなにもないと相手にされなかった。

それどころか盗作された小説は作家のヒット作になったこともあり。作家に対する誹謗中傷だと反対に訴えられた。新進気鋭の有名ミステリ作家と無名のアマチュア。世間は前者を信じ、後者を被害妄想の激しい異常者だと嗤った。

私の無実を信じてくれたのは両親と松田君。そして萩原家の人たちだけだった。
盗作されたことも許せなかったが、盗作された作品が杜撰な改変をされたことに私は強い怒りを抱いた。

改変された台詞、物語の流れと構図。作者である私が意図したモノから剥離したそれは完全に不協和音を奏でている。盗作されたことよりも私はそれが赦しがたかった。

苦心して作り上げた作品を台無しにされた。その怒りは最早自分では消せない程に育ち、私は作家の殺人計画を練り始めた。この怒りを、殺意を晴らすにはそれしかないと。

私は作家の住所を調べて、生活パターンを割り出し。人間関係を把握し。慎重に、慎重に。殺人計画を描いた。そしていよいよ作家を殺すという段階に至り。あと一歩というところで私の異変に気付いていた研二君に止められた。

作家の暮らす場所の近くに研二君が通ってた公営のプール施設があり。バスの窓からミステリ作家の後をつける私を見付け、嫌な予感がしてバスから慌てて降りて私が果物ナイフを取り出したので止めたのだ。

「俺、秋姉ちゃんの書く話が好きだよ。というかさ。秋姉ちゃんの一番のファンは俺だから。あんな最低のヤツのせいで秋姉ちゃんの書く話を読めなくなるとか。すっげえ嫌だ!!」

「あ、はい。」

ミステリ作家を殺し損ねた衝撃で前世の記憶が戻り、ぽけーっとしながら都内のドーナツ店。その窓際の席でオールドと銘打たれたドーナツを食べる。甘くて美味しい。なんだか久々に食事をしてると。ドーナツをもごもご咀嚼する。

前の席に腰掛け。研二君は俺がアイツ必ず捕まえてやるから。
秋姉ちゃん、俺を信じてくんないかなと語る。

前世、私は歳の離れた妹からブルーマウンテン先生のショックでスリルでサスペンスなラブコメミステリィに出てくる警察学校同期組を布教された身。

だから研二君が将来、爆発物処理班になることは知ってる。爆発物処理班って確か機動隊だよね。部署が違くないかなとは思ったけども。

秋姉ちゃんの恨みは俺が晴らすと。ふすーっと張り切る研二君にふにゃりと私は笑う。うん、何時か必ず捕まえてねと返すと研二君は任せとけとニンマリ笑う。

この時点で盗作された怒りはだいぶ下火になっていて、私が何故此処までの激情に駆られたのか。遅れて自覚する。私は研二君に初めに世に出した本を渡すと約束をした。

その約束を台無しにされたことが悔しくて堪らなかったのだ。
というかミステリ作家に殺意を抱いてる場合じゃないなと研二君を見て気付く。

前世の妹からの受動喫煙知識が確かならば警察学校同期組な五人組は一人を除いて尽く殉職してしまうらしい。

つまり研二君も殉職確定なのだ。由々しき事態である。研二君は私の一番の読者だ。かつ親友である千速ちゃんの大事な大事な弟さん。

私が辛いときに支えてくれた萩原家の方々には長生きして欲しいし幸せであって貰いたい。だが私は非力な中学生だ。どーしたもんかなーっと考え。

私に出来ることってこれだけだと研二君と研二君の友達になるだろう四人をモデルに小説を書いた。タイトルは『桜、未だに五分咲き』だ。

研二君以外は容姿も名前も変えつつ、警察学校同期の五人がそれぞれ配属された部署で活躍する話だ。基本的にブルーマウンテン先生の作品は同じ手口の事件は起きない。

連続殺人事件とか。模倣犯とかを抜きにしたら毎週、まったく違う事件が起きてた訳で。なら小説という形で先に事件を起こせば良いのでは!?と思い付いた次第である。

書き上げたミステリ作品は父を経由し、父の知り合いだったミステリの大御所の工藤優作先生に行き。工藤優作先生の伝で信頼できる出版社に渡って。

私は工藤先生の秘蔵っ子という形で作家デビューを果たした。
私はまだ未成年だったので顔出しはせず、覆面作家としてミステリ作品を幾つか出した。そこからファンタジー作品にジャンルを伸ばし。

そちらを主軸にしながらも警察学校同期組の。研二君が活躍するミステリ作品『桜、未だに五分咲き』シリーズを出し続けた。すべては研二君と研二君の友達の死亡フラグを折るために。

順調に小説家としてキャリアを積んで行く私に反して例のミステリ作家は落ち目になってく。

素行が悪く。チラチラ私以外の作家から。作品を盗作したという噂も出回り始めた。でも自分から関わるつもりはない。なにせ研二君と約束したのだ。自分から手を汚すことはしないと。

(···勝手に落ちぶれたら良い。私はもう直接手は下さない。)

千速ちゃんが警察学校に入り。それを追うように研二君と松田君も警察学校に行き。伊達君、諸伏君、降谷君という友達が出来。

警察学校始まって以来の問題児たちだと教官さんに頭を抱えさせたりしつつも卒業した頃になると私はすっかりベテランの作家になっていた。

研二君の薦めで児童小説も書くようになり研二君からちょっとだけ薄めにしようなと言われて注意しながら。

世界が始まった時に産まれた名前の無い怪物と盲目の戦災孤児が世界の果てにあるという哀しみのない楽園を目指して旅をする王道の物語。

『おまえはおれの。おれはおまえのものだから』シリーズを書いたら。秋姉ちゃん。読んだ子供の性癖がねじまがるよと研二君に真顔で言われ。

ファンの方々には子供に早すぎる児童小説、安定の中禅寺先生節。何時もの性癖クラッシャー、性癖の破壊神にして創造神と評判になった。
怪物×人間の女の子って王道のカプじゃないのと研二君に聞いたら何故かとても生暖かな優しい目をされた。遺憾である。

それはともあれ米花町は住んでみれば過ごしやすい町だった。行き付けの喫茶店も出来た。ポアロと言うカラスミパスタと珈琲が美味しいお店だ。締切間近になるとポアロにノートパソコン持ち込んで執筆してる。

適度にほっといてくれるのが有り難い。ポアロに通うようになって顔見知りも出来た。

ポアロの二階で探偵事務所をしてる毛利さん御一家とポアロの店員の梓さんとマスターだ。毛利さんには娘さんが居て、娘さんの蘭ちゃんは工藤優作先生の息子さんの新一君と仲が良い。

この二人と学友の園子ちゃんとは頻繁にポアロで会う。園子ちゃん曰く蘭ちゃんと新一君はじれったい両片想いなんだとか。

園子ちゃんはそんな二人を応援しているというので変に突つくと意固地になる場合があるからほどほどにねアドバイスをしたら。クリームソーダを飲む園子ちゃんが身を乗り出す。

「気になってたんだけど中禅寺センセーは恋とかしてる?」

「私はないねぇ。恋愛は見てるだけで十分だ。」

梓さん手製のカラスミパスタを食べ、うまーいとふにゃふにゃ笑う私に園子ちゃんは好きなひとは居ないのと問うのでもごもごと口のなかのパスタを咀嚼して。

飲み込んでから、幸せになって欲しいな~ってひとは居るよとまたカラスミパスタをフォークに絡めとる。蘭ちゃんと梓さんが恋ばなですか!?と話に加わって。キラキラした目を向けてくるものだから言葉に詰まる。

私が幸せになって欲しいな~っと思う筆頭は勿論研二君だ。なにせ研二君は赤ん坊の頃から見守ってきたのだもの。健やかに、元気に、溌剌としてくれたら言う事なしだ。

「是非とも結婚式には呼んで欲しいな~って思ってる。親族席で呼ばれたらおねーさんは泣いちゃうけども。感涙で!!」

研二君に渡す御祝儀の積み立てだってしてるよと話すと園子ちゃんが生暖かい目をした。

「···私、その研二って人とはまったく面識がないけど。ものすご~く応援しなきゃならない気がするわね。中禅寺センセーって鈍感って言われたことはないかしら。」

「研二君の幼馴染みの松田君にはどの道もう手遅れだからセンセーはそのままで居ろって言われたよ。」

手遅れってどーいう意味かなぁ。まあ、私のことはどーでも良いんだよ。問題は研二君だ。

「聞いた話によれば爆モテしてるのに誰ともお付き合いしてないんだって。」

なんでかなと首を傾げると園子ちゃんと蘭ちゃんが顔を見合わせ。もしかして。うん、絶対そうと頷きあい。研二さんが誰かとお付き合いを始めたら、嫌じゃないですかと聞かれたから。

幸せになれよ~って気持ちで一杯になると答えた。あ、ダメだわ。中禅寺センセーの恋愛回路。完っっ全に死滅してると園子ちゃんが顔を覆った。

恋愛回路と言われましても前世分の年齢を加算したら精神年齢はとっくに不惑を過ぎてるし···。今さら、恋にはしゃぐ歳でもないしなぁ。先生って淡白ですよねぇと梓さんに言われて。

恋愛って他人事というか、苦手なんだよぉと返した。苦手なんですかと蘭ちゃんに聞かれたから。根本的に変化が怖いのかもしれないとカラスミパスタと一緒に頼んだ新メニューの明太子バターのバゲットを食べる。

あ、美味しい。バゲットの美味しさに気が緩み、口が滑る。失望されるのが怖いのだと。仮に好きなひとが出来たとして。運よく付き合えるとする。

となれば知人。或いは友人という関係から恋人になる訳だ。当たり前な話ではあるけれども恋人になったら友人には戻れない。これまで通りという訳にはいかない。

私は恋人になった相手が望む言葉や態度をきちんと取れる気がしないと眉を下げて笑う。前世の話になるけれども交際した経験が一応あるのだ。

でも、毎回。思っていた感じとは違うと言われてフラれるのだ。不馴れなりに。相手に頑張ってあわせる努力をしたのだけれども完全に空回りしていたらしい。

失望されてお別れされる。それを繰り返していたらすっかり恋愛に臆病になりました。好きな人に失望されるのってつらいんだよぉ~っとかふりと明太子バターバゲットにかじりつく。

梓さんはそれは相手の見る目がなかったんですよと淹れたての珈琲が入ったカップを置く。そうだろうか。私は私の書く作品には自信はあるけれども。作品を書く自分にはまったく自信がない。

詰まらない人間だものと肩を落として珈琲を飲んでいるとスマホが鳴る。最近まで折り畳み式の携帯ばかりだった筈なのにいつの間にかスマホが普及していたし。

なんなら購入した記憶がないスマホを所持していて戦慄した記憶。サザエさん時空に近付きつつあるなとスマホを操作し。研二君のママさんから警視庁に居る研二君に着替えを持っていって欲しいとラインで頼まれた。

了解しました。着替えを取りに行きますねと返信して、お会計をしてポアロを出た。爆処の研二君は今年から刑事課に移動した。

小説の効果か。例の爆弾魔の事件で爆死しなかった研二君。ちなみに爆弾が設置されたマンション。私が住んでるマンションでした。避難する時に研二君と鉢合わせたので。

絶対絶対絶っっ対に死なないでね!?と念押しました。その甲斐もあったのか爆弾を瞬く間に分解して生還した研二君だけど脱いじゃいけなかった防護服を脱いでたとかで処罰があり。

前々から配属を希望してた刑事課に異動され。日々、犯罪率バリ高な米花町の安全を守る為に頑張ってます。

生来のコミュニケーション能力の高さと洞察力を発揮して検挙率が高いとは同じく刑事課に配属されてる研二君の友達の伊達君の弁である。

伊達君の恋人のナタリーさんは偶々大学時代の同期だったので顔見知りでよく一緒に遊びに行く仲だ。まあ、小説の締切に私が追われていなければという注釈がつくけれども!

それは一旦横に置き、萩原家に寄り。研二君の着替えを預かり警視庁に行く。何度か研二君に着替えを持っていってるから慣れたものだ。

ややあって何時もより元気がなさげな研二君がロビーに現れ、お疲れさま。着替え預かってきたよと紙の手提げ袋を渡すと研二君はありがとう、秋姉ちゃん。助かるとへにゃりと笑う。

あら、可愛い。背丈は伸びたし体格も機動隊だったこともあって良いけれど。笑った顔は変わらないんだもんな~と研二君の頬をもにもにと揉むと心地よさげに目を細めた研二君は。

あー、このまんま秋姉ちゃん抱えて眠りたいとボヤく。研二君にまだ帰れないんだねと聞くと。とーぶん無理そうと研二君はへちょりと眉を下げる。
あらま、だいぶ参ってる感じかな。相当な修羅場中と見たぞぅ。

「よし、疲労困憊な研二君に元気が出るものをあげよう。此方、某チェーン店のドーナツです。」

「ドーナツ。」

「なんと期間限定三種類と定番四種の詰め合わせだ。沢山、お食べ!!」

「それ秋姉ちゃんが元気になるセット。」

「ふっ。おねーちゃんはこれから締切と戦わねばならぬのさ。」

糖分を取らなきゃ頭が回らないのだよ。しかし、私より糖分を必要としていそうな研二君にドーナツを進呈致そう。

「ふはは、遠慮はいらないぞぅ。受け取ってくれたまえー。」

「そんじゃ、貰おっかな。お礼に今回のヤマが片付いたらご飯食べに行こうよ秋姉ちゃん。良い店みつけたんだ。」

イタリアンバルのお店でノンアルのカクテルが豊富。お酒が苦手な秋姉ちゃんでも楽しめそうなトコでさ。

「今から秋姉ちゃんの予定。先行予約させて。」

「良いけど。そーいうよさげなお店は好い人と行きなよ、研二君やい。」

「ん。だから秋姉ちゃんを誘ってるんだって。」

俺はそーいうよさげな雰囲気になれそうなお店には秋姉ちゃんとしか行く気はないよ。

「そんじゃ、アクセル全開で頑張るとしますかね。着替えと差し入れ、ありがとな。秋姉ちゃんも原稿頑張って。」

(びっっくりしたな。研二君的に深い意味はないんだろうけど。本当に深い意味はないのかな。いや、ない。あるわけがないぞぅ。距離が近いのは幼馴染みだからで。今に始まったことじゃない。)

着替えを渡して警視庁を出る。スマホで研二君のママさんに着替えを渡したこと。洗濯物を持って寄っていくとラインで送信し。帰ろうとして交通課だという綺麗な女性三人に声を掛けられた。

萩原君の身内なの?と聞かれたので力一杯に肯定すると。女性たちは顔を綻ばせて。恋人じゃないのよねと更に聞かれたのでまたまた力一杯に肯定すれば。

ほら、言ったじゃない。恋人の空気じゃないって!と。女性たちは安堵したように一際綺麗な。でも愛らしい雰囲気のハナさんという女性の肩を叩く。

目で問うとハナさんに代わり同僚だという二人が萩原君の恋人よと答え。ハナさんは、違う。まだ違うよと慌てて訂正し。そーなるのも秒読みでしょーと同僚さんはハナさんをからかう。

このひとが研二君の恋人···。研二君に恋人が居たとは初耳だなと。聞きたいことを聞き出したら立ち去る三人を見送り。胃の辺りが酷く重いとお腹を擦った。

そこから私は理由不明の全不調に陥った。間近に迫る締切、白紙の原稿に頭をがしがしと掻く。なにも思い付かない。

奇しくもいま追われている締切は警察学校同期組のミステリ作品で研二君が主役の『桜、未だに五分咲き』だった。作中にも研二君の恋人を出すべきだろうか。

いやいや、待て。私よ、落ち着け。フィクションに現実を持ってくるのはダメだろう。
既に現実のあれそれを織り込んでるのにとパソコンを閉じる。

あぁ、完全にスランプだ。まっったく書けない!!と薄手の夏物のカーディガンを羽織って財布とスマホだけを持って外に出る。

気分転換をしようという腹積もりだったのだけれども、マンションのエントランスでビニール袋を持った研二君と鉢合わせて目を丸くすることになる。

研二君は人懐っこく微笑んで秋姉ちゃん。事件が片付いたから遊びに来たとお酒とおつまみ各種を詰め込んだビニール袋を掲げた。そのまま部屋に上げた訳だけど。

勝手知ったる他人の家とばかりにテキパキエプロンを着てお酒のおつまみを作る研二君に主夫力高いなと戦慄する。

顔もよくて声もよくて料理まで出来るハイスペとか死角が無さすぎやしないだろうか。研二君、恐ろしい子──ッ!!

「あ、秋姉ちゃん。これお袋から。鶏肉多目の筑前煮といなり寿司ね。」

「わぁい!!萩原のおばさま、最高!大好き!」

研二君のママさんが作る筑前煮は鶏肉がほろっほろで。いなり寿司は味がしみしみのふっくらした油揚げがすごく美味しいから嬉しいなとはしゃぐと。
研二君は複雑そうな顔で俺は?と聞くので。好きのベクトルが違うよと返す。

ムスリと不機嫌。いや拗ね始めた研二君は俺にも大好きって言ってくれなきゃ。これは渡せないなと煮物の入ったタッパーを遠ざけるので。私、研二君大好キ。本当ダヨと片言で返した。じゃれるように言葉を交わす。それを楽しいと思うと同時に。

こーいうやり取りを恋人さんともしてるのかなーと考えたらまた胃の辺りが重くなる。無意識にお腹を擦っていると研二君がふはっと笑い。そんなにお腹へってた?と問う。

食欲はあんまりないけど。それを言ったら研二君が心配しそうだったから。うん、お腹ぺこぺこなんだよ~と緩く笑う。

なんだか今日は飲みたい気分だと研二君が持ってきたビールを手に取った。ところで私はお酒が苦手。というよりもアルコールに弱い。度数が3%の甘いカクテルで酔っ払うし、なんなら醜態を晒してしまう。

千速ちゃんには酒を飲んだ状態で研二の前に出るなよ。確実に研二が暴走するからと言い含められていた。だから普段はお酒は飲んでも自宅で一人飲みだった。

長々と前置きしたけれども酔っ払った私がやらかしました。謎の倦怠感で目を覚ました朝。ガッッチリと研二君に抱えられていた。それは良い。いや、まったくよくないけどもお互いに裸なことを前にしたら些事というものだ。

そう裸。昨日、私たちになにがあったと凄まじい強さで抱えられているから身動きすら出来ず、ただただ固まっていると寝起きの少し掠れた声音で。おはようと研二君が笑う。

そのまま自然な動作で額に口付けられた。その色気はどこから来るのだろうか。まだ寝惚けてる?と聞かれて言葉に詰まり。

兎に角、離れねばと胸を押しやって距離を取ろうとすると蜜が滴るような甘くてなんだかどろどろした声で。

離さねぇよ。やっと捕まえたんだから。なぁ、秋さんと研二君はくすくす笑い。私の肩口に頭を預けたかと思うとガブーッと噛みついた。痛い。情け容赦なく噛まれたー!?

「···昨日の夜みたいに言って欲しいな。研二君、大好きってさ。」

「け、」

「うん?」

「研二君が悪い男になっちゃったァ~~っ!!」

「おっと。泣かれるかもな~っとは思ったけど想定外の反応が来たな。」

びたびたと鮮魚の如く暴れる私を悔しいことに一切、動じず。私を抱えたまま身体を起こした研二君に。研二君には彼女さんが居るのに!!なんで私なんかと浮気しちゃうのッ!?と半泣きで抗議すると。

はァ?とド低音の冷たい声が研二君の口からまろび出た。ひょええと怯えると研二君は私の肩を掴み。俺の彼女は秋さんでしょうがと一字一句はっきりと語る。

「···熱でもある?」

「熱が出て錯乱してる訳じゃない。まぁ、子供の頃の約束を持ってくる俺も俺だけど。あの日、約束しただろ。どうしても人生をドブに捨てるって言うなら俺に秋さんの人生をくれってさ──。」

「あれってそーいう意味だったの。てっきりこれからは研二君の為だけに物語を書けーってことかとばかり思ってたよ。」

「そっか。俺の気持ちは秋さんに伝わってなかったかー···。秋さんの思考回路はたまーに変な方向に繋がるよなぁ。」

「えっと。その。なんかごめんなさい研二君。」

「いいよ。そーいう鈍感で。天然ぽやぽやだけど妙な思いっきりの良さがある秋さんを好きになったのは俺なんだから。」

「······研二君。もしかして私のことかなり好きな感じですか。」

「そうだよ。松田や千速姉ちゃんに揃って匙を投げられるぐらい、もう手遅れだ。どーしようもなく秋さんが好きだよ。だから、秋さん───、」

なんで俺に彼女が居るって誤解をしたのか。じっくり弁明を聞こうかと研二君はうっそり笑って私を押し倒した。雲行きが怪しい。

あわあわと弁明を口にする前にガブリと唇に噛みつかれ。研二君が納得するまで離して貰えなかったし。うっかり締切を超過しそうになって泣きながら原稿を書く嵌めになったのはたぶん良い思い出になるハズ。

— End —

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えだまめ。1 天前
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紫苑14 天前
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葉月15 天前
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奏多15 天前
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海月16 天前
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ホシ16 天前
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ヨモギ16 天前
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鳳珠16 天前
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しのせ17 天前
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R
Ren17 天前
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バラ17 天前
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ナツキ17 天前
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Sakuria
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