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「萩原千速です。趣味はバイクです。一年間よろしくお願いします」そう高らかに挨拶をした彼女ー萩原千速ーを見た瞬間に悟った
ここコナンワールドかーーー!!!!
さて、改めて、私は一ノ瀬凛、現在小学校3年生の転生者である。
ここに至るまでの人生はいたって普通、というか超絶楽しかった。
前世はゲーム会社の広報部門で働いていた。愉快な企画が求められる世界だったから、わりと自由にやらせてもらえた。プライベートも高校の同級生の彼氏がいて、その彼がコナン検定もとるくらいの原作ファンだったから、毎年一緒にコナンの映画を初日に見に行く余裕があるくらい充実してた。にもかかわらず、いつの間にかこの世界でバブバブしていたのである。
だからこそ、最初自分の視点の低さに気付いたときは、絶望した。総合職採用とはいえゲーム業界の就活はかなり大変だった。だから内定が出たときは大騒ぎしたし、面倒なことがあっても楽しんでやれてたから、なんで死んどんねんこんにゃろー!くらいには自分に激怒した。
まぁ、自分の死因を覚えていないことには、ほっとした。絶対知らない方が幸せでしょ。
そんな私であるが、新学期のクラス替え後特有の自己紹介タイムにて衝撃の事実が判明した。
同じクラスに萩原千速がいるのである。ハイウェイの堕天使は見た記憶があるので、彼女の素晴らしさはよーく理解している。最高である。同じクラスに萩原千速だぞ???そんなの、ありがとう神様でしかない。
だが、だがしかし、どうしても許してはいけないことがある。
それは、ここが殺人ラブコメの世界であるということだ。
今の今まで自分が転生したことを悲しく思いつつも、優しい両親に恵まれ、そこそこ楽しんできたのである。それが一瞬で生死の危機到来。普通に嫌すぎる。でも死んで世界から逃げる勇気はないし、なにより千速様と同級生というポジションを遊びつくさずに終わるなんてできるもんか。ならば選択肢は一つ
計画的に生きる。
もう彼女以後に自己紹介している人の情報は全て右から左に耳を通過してる。かといって新学期初日にクラスメイトと話をしないのは、一年間の学校生活を大きく左右するので、適当に話をきいてうなずく程度のことをして一日をこなした。千速様とお話をしたい、とは思うものの今喋れば何を口にするかわかったもんじゃないのでファインプレーである。
〇〇〇
そうして新学期初日特有の時短授業に感謝しながら帰宅し、ノートを開いて人生プランを考える。
基本スタンスとしては、自分の生存戦略と千速様の幸福計画の両立である。
この世界、基本的に殺意が高いうえに、江戸川コナンが誕生すればサザエさん時空に突入する厄介極まりない世界である。他人に恨まれながら死ぬのも、テロに巻き込まれて死ぬのも嫌な以上、生存戦略は必須なのだ。
しかしこの戦略を練るというのがなかなか難しい。なぜなら私は、映画のみの視聴勢のなだ。もちろんアニメや原作マンガも見てないわけではなかったが、彼氏に「予習しろ」と薦められたエピソードのみしか視聴していなかったのだ。なので変に覚えている話のみを参考に計画を練った場合、拾い忘れたフラグが刺してくるなんてことがありえてしまう。
かといって、保守に走った計画の場合、あの松田陣平や横溝重吾を翻弄するアグレッシブガール萩原千速様の残像ですら拝めるか怪しい。つまり、一定の行動値を保ちつつ身を守らなければならない。いや難易度ルナティックすぎるだろ。
それと、千速様の幸福計画。
私は前世から強くてかっこいい女が好きだ。フィジカルが強いのも惹かれるが、心が強い人に惹かれる。例えば、エルザ・〇カーレットとかね。だから映画を見たときは弱さもあるけれど、それでも自分を曲げずに貫き通す姿に目を奪われた。
常に強い人間なんているわけもなく、垣間見える弱さがその人の魅力を引き立てていることは身をもって理解している。けれど、千速様の場合はどうだろう。弱さにもいくつかの種類があると思うが、自分の力不足からきた弱さはともかく、手を出すことすらできなかった、そんな喪失による弱さは必要なのだろうか。一回人生喪ったからこその考えだけれど、そんなのクソくらえだと思う。それを知れば強くなれるかもしれないけれど、知らなくてもいい弱さだと思う。
ので、彼女の喪失を少しでも減らしてあげたい。エゴだし、自己満足の極みだけれど。
というわけで、自分の身を守りつつ千速様の最大幸福を目指す。
到達点が決まれば次は、覚えている分の原作知識を書き出して、とりあえず大学卒業までの具体的な人生プランを練りますか!
千速side
「一ノ瀬凛です。趣味は読書です。一年間よろしくお願いします」
そう告げた彼女は綺麗な黒髪をまっすぐ伸ばし、名の通り凛とした声をしていた。
趣味や見た目、名前だけを聴くと、おとなしそうな印象をもつが、背筋がよく目線もまっすぐで、ただものではないなと期待感を抱かせるようで、ちょっと話してみたいと思った。
だがまぁ、自己紹介が終われば皆自分の席の近くの奴に話しかけるので、「い」から始まる一ノ瀬と「は」からはじまる萩原では席も遠く話す機会もなく一日を終えた。
その後の学校生活も席替えを頻繁にするクラスではなかったことと、くじ運のせいでじっくりと話す機会はなく、まともに会話のラリーをしたのは夏休み明けの2学期以降だった。
だが、1学期の間に何も収穫がなかったわけではない。あれはあれで非常に愉快な奴だということはわかった。
休み時間に本を開いていたが、読んでいたのは児童文学の中でもデルトラ・〇エストや、空想科〇読本のような一般的な女子が読むようなものではなかった。なんなら、本屋でもらえるブックカバーに包んでこ〇亀を読んでいたこともあった。
こいつは天才だと思った。
それだけじゃない。運動はできる方ではあるのだろうが、やたらとドッジボールに対する熱意が高い。くねくね避けたと思ったら取れそうなボールには素早く反応して相手の主力を積極的にねらい打つボールを投げるのだ。
それに、勉強もできる。桁数の多い足し算や引き算もスッと答えている。
話しかけない理由がなかった。
だから2学期に入って今までが嘘のように席が近くなると、よく話しかけにいった。何を読んでいる、面白いと思っているものは何だ、と。
こちらの質問にもきちんと答えてくれるし、向こうからも私のことを聞いてくれる。バイクのような同じクラスの女子たちに話してもあまり関心を示さない内容にも、凛は「バイクってそんなに種類あるんだ。すごいね」とか「直せるの!すごいね!」なんて言って興味を持って聞いてくれる。
楽しい。楽しすぎる。
一緒に帰ったときにお互いの家が割と近い距離にあったとわかった時には嬉しかったし、なんとなくこれからも一緒にいるんだろうなと思えた。3学期になって席が離れることがあってもお互いに機会を見つけて会話をする。春休みには家に誘ってバイクを見せた。エンジンの音が面白いと一緒にバイクを楽しんでくれた。なかなかに見どころのある奴を友達にできたことが嬉しかった。
あの衝撃的な出会いから夏休みを挟み、現在は秋の暮れの頃である。
1学期の間はタイミングの問題で彼女と関わる機会は多くなかった。交わした言葉は、挨拶くらいである。これには非常に助かった。彼女の存在を日常の存在として自分の中に落とし込むいい時間になったのだ。
授業中は積極的に参加する彼女を眺め萌えを摂取し、休み時間は近くの席の子と喋るか本を開いて精神統一、帰宅後はイレギュラーが起きても対応できるように、選択肢を狭めることがないように勉強するか習い事に努めた。
ちなみに習い事はピアノである。え?運動系にしなかったのかって?いや、前世はバリバリ文系女子の新体操部だったから、身体の使い方はわかるんだよね。なら当時センスのなかった音楽系をやるっきゃねぇ!という理屈である。
その分体育の授業はガチでやった。殺意の高い街で生きることになる可能性があるから、動体視力と必要最低限の筋力は鍛えるべし!の精神だった。特にドッジボールは凶器をもって近づいてくる奴の速度と球の速度が同じように思えたから頑張って避けまくった。
これを1学期の間繰り返し、夏休みに千速様との別離を経験したことで、常人としての立ち振る舞いをマスターした。
そして来たる2学期、神はいた!!
なんと席替えで千速様と前後になれたのだ!!
彼女からも話しかけてくれるから、こちらも話しかけやすく楽しい日々を過ごすことができた。バイクの話も見た目がいかつくてかっこいいというのには賛同できたし、マフラーの違いで音が変わるのがなんか面白かった。それに、家に帰ったら勉強とピアノをメインにしていた分、学校で本を読むことが多かったことに気が付いた彼女は、私が読んでいる〇ち亀に大いに興味を示し、一緒に読んだりもした。彼女に笑顔をもたらした両〇勘吉はやはり天才である。(ちなみに漫画は別のクラスメイトに告げ口されて回収も何度かされたが、諦めずに読み続けた。先生の小学生に対する注意の口調は、優しいものなので全く怖くなかった。ラッキーである)
しかも一緒に帰ることもあった。
うちの小学校は学年ごとに時間数に差があるので、学年単位で帰る日と全学年混合の通学班で帰る日があるのだが、学年単位で帰る日に一緒に帰ろうと誘われたのだ。しかも話をすれば途中まで帰り道が同じだという。いや、よくこれ1学期の間気が付かなかったな。
そんなわけで彼女と普通に喋れるようになったし、席が離れても帰りを一緒にすることもあったので仲は深まっていく一方だった。
にっこりである。
それだけじゃない。学校が終わった後も学校に再集合してグラウンドで遊んだり、他の友達と一緒に公園でおにごっこもした。
口角の天元突破である。
だが、お互いの家にお邪魔することはなかった。映画の萩原研二曰く彼女はどんくさいようだが、普通にアウトドアだし、私も元運動部。公園のジャングルジムでのおにごっこが一番楽しい遊びだったのだ。
ちなみに、このジャングルジムおにごっこで私が足を滑らせて頭から落っこちる事件があった。
それまでは互いに「一ノ瀬」「千速ちゃん」と呼び合っていたのだが、彼女は落ちる私を見ながらひどく焦った顔で「凛!」と呼び手を差し伸ばしてくれたのだ。
まさかの呼び捨てに落ちる以上の衝撃を受けた私は、脳内ショートし、落下後すぐに声を出せなかった。この時間かなりの心配をかけたと思っているので、まじごめん案件ではあるのだが、嬉しかった。だから正気を取り戻した後は「大丈夫。続きあそぼ、ちーちゃん」と言った。その時の彼女は一瞬目を見開き、いい笑顔で「ああ!次は落ちるなよ!凛!」と返事を返してくれ、遊びを再開したのである。たんこぶはできたけれど、それ以上の幸福感を得た瞬間だった。
そんなこんなを3学期も繰り返し、クラス替えでまた同じクラスに慣れるといいねと誓い合って、3年生は終了した。これはかなり印象に残る小学校の同級生にはなれたのではないかと思う。順調な滑り出しといえよう。
さて、私が練った具体的な人生プランの最終ゴールは「千速様、いや、ちーちゃんが寿命で亡くなるまで生きる」である。そのための中間ゴールは、
「萩原研二&松田陣平は絶対に助ける。他はごめん。」である。
たぶんきっと、他の転生者なら警察学校組や宮野姉妹含め全てを助けようとするのだろう。でも無理。
理由その1
聖人君主にはなりたくない。
私はあくまでも彼女と同級生として親しくなりたいのだ。その領分を多分に超える行動はきっと友人のままではいれなくなる。
理由その2
そこまでする理由がない。
萩原研二は言わずもがな弟ですから、助けたい。その親友兼おそらくちーちゃんもただの弟の親友とは思っていなかった松田陣平も、彼女の幸福には必要だと思う。将来、横溝重吾と松田陣平のどちらを選ぶのかはわからないが、選択肢は残せる分だけ残した方がいいに決まっている。
ここまできたら他の警察学校組もいけよと思う人もいるかもしれない。けど無理でしょ。繋がる接点がない。
ハロウィンの花嫁を見るためにアニメの警察学校編を見たけど、萩原研二の姉であるちーちゃんと5人が接点を持った描写はなかったはず。なら、彼女のよき友人(予定)でしかない私が繋がれるわけがない。
それに諸伏景光は組織案件での死亡なので、下手に手を出せば私の命も危ないし、伊達班長に関しては張り込み中とか、米花町で張り込みがいる事件なんていくつあると思ってんだって話なわけで。5人全員を救えるとしたら、同期になって連絡を保ち続けるか、生き残った萩原研二か松田陣平自身がミラクルで救うとかしかない。
要は、私が介入できる道筋が見えないので、諦めることにしたのだ。
私は、あくまでも彼女の傷を”友人”の立場から減らしたいのだ。なのに危険と関わってしまってもしものことがあれば、本末転倒だろう。
もちろん私がいなくなったことを傷として認識してもらえるかはわからない。けれど彼女は情に厚い人だと思う。なら、友人が消えれば少しは悲しむと思うから、明確に線引きはすべきだと考えたのだ。
というわけで私は、2人を超自然に、助けられた自覚を薄いままに救済してみせると決意した!!!
私のエゴで命の選別をして勝手に行動するのだ。それに感謝されるのは何か違う気がする。それに何度も言うが、私は彼女のよき友人になりたいのだ。なので2人を助けたことで吊り橋効果的な状態になって、彼女とイチャラブ♡は解釈違いも甚だしいのである。
さて、重い話はここまでにして、具体的な大卒までの人生プランの一部を紹介しよう。
ちーちゃん幸福計画の最初の大きな山は、萩原研二爆散事件である。
もちろん実家の工場の倒産を防ぐことも考えたが、娘の友人に経営状況を話す父親なんているわけないし、なにより景気の影響だったはずなので私がどうこうできる範囲を超えている。なので、倒産回避は断念し、彼女が落ち込んだときに傍にいる人間でありたいと思った。
それと、松田陣平の父親の誤認逮捕事件。あれもちーちゃんの心を痛めるような案件だと思ったものの、いつなのかがわからないし、そもそも萩原研二と松田陣平が仲良くなった時期も知らない。なので現時点の情報では対策のしようがないのだ。
よって、原作軸の7年前、高層マンション爆破の方を最初の山にした。
萩原研二が爆弾処理班に配属される頃には、私は25になるはず。つまり社会人としてどこかで働いている頃だろう。彼と松田陣平は公式のお気に入りだったのか、劇場版でも2人は何度か登場していた。だから彼氏が予習リストの中に揺れるシリーズを入れておいてくれたので、事件の概要も記憶している。高層マンションがどっかーんするのだ。
これを回避するには、爆弾そのものの設置を防ぐ、解体する、萩原研二を遠ざける、の3択を考えてみた。爆弾の設置を防ぐのが一番安全だが、どのマンションの何階に仕掛けたのか覚えていないし、松田陣平が対応していた分の爆弾の場所もわからない。つまり下手に事件そのものに介入すると、全てがコントロール不可に陥る可能性が高いので得策ではない。なので設置を防ぐことと解体は却下。
つまり私は、SEになって在宅勤務し、避難勧告から逃げ遅れる。その時にどうにかして萩原研二を現場から遠ざける。これ1択である。
ん?理論が飛躍してる?いや、よく考えてほしい。25の社会人がどうやって警官を現場から遠ざけるというのか。
その日に有休をとって現場に張り付くのもありだが、何を理由に現場にいることにするのか、など考慮した結果、あのマンションを自宅兼職場兼事件現場にしてしまうのが最も自然な理由だと思った。
マンションの場所は覚えていないが、あれだけの高さのマンションはそう数があるとは思えない。なら、適当に現場になりそうなマンションの高層階に住み着くのは悪くない賭けではないだろうか。
もちろん、職種によってはSE以外でも在宅勤務は可能だと思う。だが、記憶が正しければ、あの時の萩原研二の携帯はPHSかガラケーのはず。つまり、会議をオンラインでやるのが一般普及してるとは考えにくい。だから一般企業の内勤のおおい職種で就職してしまうと、出社して業務するのが当然の働き方になると思った。
それだけじゃない。私自身がSEになりたいと思ったのもある。
なんてったって令和っ子だった前世。生成AIに何度助けられたかわかったものではない。だが、この世界、技術力が低い。それに原作軸に入れば技術力はどんどんおかしくなっていくのだ。最初はガラケースタートの世界が、いつのまにかスマートフォンが普及してIoTテロが起きるのだ。さすがサザエさん時空。自分が快適な人生を送るためにはAIが必須。でもない。ならつくるしかない!この思考プロセスである。
この世界でAI開発となれば最先端の技術者になれるだろう。ならばそれなりにいい金額を稼げるはず。なら、高層階に住むのだってギリギリ頑張れば行ける気もするのだ。
本当にちーちゃんに出会ったのが小3でよかった。今なら必要な知識をコツコツ積み立てて大学も情報工学系に進める。幸いAIヘビーユーザーだったから、中身のプログラムはわからないが使用感はばっちりである。完成形が頭の中にあるのだから、作り方を理解すれば寿命で死ぬまでには十分につくれると思う。ただ、ソフトウェアのレベルが低いなら、ハードウェアのレベルも低いはず。だからそれの底上げもしなければならない。やること山積みである。
SEを経由してAIエンジニアになる。これを私のキャリアプランにした。ちなみにハードウェアエンジニアはやらない。さすがにキャパオーバーだし、中に積みたいソフトが明確なら手伝ってくれそうな技術者はいるだろうという考えである。
これなら萩原研二の救出も十分に対応できるだろう。
とりあえず今はこのぐらいにして、第二の山や中高どうするか、大学どこいくか、は別の機会に話をしよう。
さて、春休みも明け、新学期。
この春休みの間は大変、それはもう大変に充実していた。令和では廃れた連絡網。だが、この世界ではご存命のようで、これでちーちゃんは私の自宅の電話番号を把握したらしく、電話がかかってきて、家でバイクを見ないかと誘われたのだ!
もちろんOKし、下校時に分かれる交差点で集合した後、はじめてのおうち訪問をした。萩原研二もいたので、挨拶をしてしまった。ちなみに呼び方は「研二君」「凛ちゃん」である。2年生に上がる前の彼の姿はとてもかわいらしかったことを記しておく。さすがちーちゃんの弟である。
本題のバイクだが、ちーちゃんのお父さんに、さすがにまだ乗り遊ぶのは危ないといわれたので、2人で修理している様子を見たり、エンジンの音の違いでキャッキャ言って遊んだ。最高に楽しい時間だった。
しかもこれ、1回じゃない。ちーちゃんを家に呼んで遊んだり、公園で遊んだりと着実に仲のいい友達ルートに進めているのだ。我が人生に一片の悔いなし。
これだけ仲良くなると、クラス分けでクラスが離れた後、遊ばなくなったりしたら寂しいなとか思っていたが、まさかの同じクラスだと発覚。
「ちーちゃん、もう1年よろしくね」
「あぁ、よろしく。楽しみにしている」
なーんて会話もしちゃったりして、4年生も3年生と同じく遊びつつも、クラブ活動ができるようになったので、私は吹奏楽でトランペットを、ちーちゃんは陸上をやるようになった。解釈一致すぎる。
4年生は特筆するようなことはなく、ただちーちゃんと遊びまくっていた。学校で読む漫画は変わらずにこ〇亀であった。嘘。途中であた〇ん家とかド〇えもんとか読んでたわ。
なんなら、5年生も同じクラスだった。クラブがあるので遊ぶ頻度は減ったが、相も変わらずちーちゃんのお家の工場でバイクを眺めたり、身長がある程度に達したからか乗せてもらったりしていた。風が気持ちいいはマジだった。
あと、5年生にもなると、ませた子が出始めるので、告白なんかもされた。好きな相手というわけでもなかったが、嫌いというわけでもなかったので付き合った。けど1か月も経たずに別れた。まぁ小学生の恋愛なんてこんなもんである。
もちろん、ちーちゃんも告白されてたが、断ってた。好きじゃないからだって。かっくい~。
そして6年生もまた同じクラスになった。ここまでくると作為的なものを感じるが、いい波には乗っかるべきである。4年連続で同じクラスに中学も同じなので、これは良き友人という名の幼馴染ルートがありえるのでは?なんて淡い期待も出てきた。
しかも夏頃には衝撃的な出会いもあった。
私たちが6年ということは研二君は4年生。同じクラスに松田陣平がいたようなのだ。いつも通り学校終わりにちーちゃんの家の工場に行くと、ちーちゃんと松田陣平、研二君コンビがいたのだ。
「凛!来たか!」
「凛ちゃんいらっしゃーい!」
工場に入れば2人が気が付いてくれたので、「お邪魔します。・・・ん-っと、誰?」と尋ねた。
「こいつは松田陣平って俺と同じクラスの奴!バイク見たいって言うから連れてきた!」
「・・・どうも」
「しかもさ凛ちゃん聞いてよ!陣平ちゃんさっき姉ちゃんに告ったんだよ!しかも初対面なんだよ!」
「・・そ、それはなんというか、すごいね・・・」
いや、ほんとすげぇよ。初恋がちーちゃんなのは知ってたけど、小4が初対面の年上女の子に告白?欧米の血でも入っとるんか??というか、人が恋に落ちるシーンを見逃したことが悔しい。
「ちーちゃんなんて返したの?」
「もちろん断ったさ。好きじゃないからな」
「いつも通りすぎてさすがわ。」
そのあとは結局4人で工場で遊んだ。松田陣平とも会話して、「陣平君」「凛」と呼ぶくらいの関係値は築いた(初対面の初恋の女の子の友達でも呼び捨てかい、と思ったが、私は大人なのでスルーしてあげた)。
ちーちゃんは告白されて振ったことを感じさせないくらい陣平君で遊んでたし、研二君も同姓の同じような趣味をもつ子と遊べて楽しそうだった。私もちーちゃんが楽しそうなのを見て楽しくなってたし、なかなかいい時間を過ごせたと思った。
だが家に帰ればそうはいかない。
生存計画ノートを見返さなければならない。
最初の山は研二君爆死事件で問題ないと思う。今日この日に至るまで、陣平君のお父さんの話は聞いたことがないから、まだ事件は起こっていないと思う。ただ、回避するのはさすがに情報が少なすぎで無理。けれど、弟の友達が苦しんでいるのを見て何も思わないわけがないので、そうなったとき、ちーちゃんになんて声をかけるのか考えなければならない。
さぁなんて声をかけようか―――
千速side
凛はやっぱりとんでもないやつだった。
普段は大人っぽい雰囲気があり、実際に丁寧に物事を進めていくタイプだった。表情筋もないわけではないが、微笑が似合うというか、あれは、ほほえみだな。とにかく、口を開けて笑うようなタイプではなかった。
だが、2人で遊ぶようになり、公園や家で遊ぶことが増えると、口角をしっかりあげて、笑い、目の表情も豊かになった。けれど他の奴もいくらかいる時に遊ぶと、そいつらの前ではほほえみスタイルになるのだ。
おそらく自分の内側と外側に明確な線引きをしていて、内側にいる人間の前では仮面のようなものが外れるタイプなのだと思った。
かといって外側にいる人間に対して自分を全く見せないとか、そういうわけではなかった。
こち〇が先生に没収されたとき、最初の数回は「もう持ってきてはいけませんよ」の一言お叱りを受けて解放されてたが、何回か続くとさすがに職員室に呼ばれていた。
私も凛が読んでいるのを隣で読んでいたから、叱られ過ぎていたら助けられないかと思い、中を覗いていた。先生が「なんで学校で読んでいるのか」と聞けば、
「家では勉強したりしてるから、学校で読んでいるだけです」
「家で全く読めないの?」
「いえ、読んでます」
読んでるんかい、と思った。絶対先生も思った。
「なら、学校ではやめましょうね」
「・・でも、学校には他にも漫画あるじゃないですか、なんでこれはダメなんですか」
「ありませんし、学校に不要なものは持ってきてはいけないというルールがあるから、ダメなんです」
・・・これは凛の負けか?と思ったら、凛は涼し気な顔で、なんならちょっとドヤ顔ぎみに
「図書室には漫画あるじゃないですか」
と言い放った。最初はあったか?と思ったし、先生もそう思ったみたいで、「いや、ないから、こ〇亀はもうもってこないでくださいね」と返答したのだが、凛は
「え、日本の歴史って名前の漫画があるじゃないですか」
やっぱりこいつは天才だった。
結局、日本の歴史は特例でOKでこ〇亀はダメだという結論で落ち着いた。職員室から解放された凛に「残念だったな」と声をかければ、
「ちーちゃん、私ダメみたい。学校で漫画を読むという背徳感に脳みそが焼かれたかもしれない」
なんて言い出した。全くもって反省してないし、実際次の日は「こ〇亀がダメなんでしょ?」と言って、あたし〇家を読み始めた。しかも読むタイミングも先生に告げ口する奴がいないタイミングを狙って読み始めるような小賢しさを見せ始めた。
凛は別に猫をかぶっているわけではく、ただ、世渡り?みたいなものが同級生よりちょっと上手なだけなんだと思った。テストの点数も高く、やることやってんだから文句は言わせない、というかなんというか、見かけによらず自由な奴だった。
夕飯の時に、凛の学校での様子を両親や研二に話せば、もっと聞かせろとせがまれるし、研二に関しては凛の小賢しさに尊敬し始めたのか、バレなきゃいい、のスタンスになり始めた。気持ちはわかるし、私もバレれば謝るふりをすればいいと思い始めている気がする。
6年生になってしばらくして、研二が友達を連れてきた。告白されたときは驚いたが、大胆な奴は嫌いじゃない。見どころがある。なかなかいい友人を見つけたもんだと研二を見直した。ちなみにその話を聞いた凛の顔は、驚きつつ、ちょっとむすっとしつつ、でもわかるぞみたいな変な顔をしていた。そんな顔もできたんだな。
凛は見ていて飽きないし、バイクだけじゃなく大体何でも一緒に楽しんでくれる奴なのだ。それに小6になると、中学の話もちらほらと出てくるようになったが、凛は私と同じ中学に行くようだ。中学になれば面倒な校則も増えるだろう。そんな中で凛がどう泳ぎ切っていくのか楽しみで仕方ない。





















