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稲荷崎高校文芸部所属12

てらだてらだ

いつも読んで下さりありがとうございます!!続きです。 文化祭編前編です。 なんか長くなりそうだったの分けました。次の話で後編書きます。

「…」
「そんな顔しても可愛いだけだからね。はい、こっち向いてー可愛いね~」

 ぱしゃぱしゃとまるでグラビア撮影のように写真を撮る角名にナマエは睨みながらも大人しくしていた。冷たいナマエとそれでも構い倒す角名の光景に慣れたのか、1組の生徒はまたやってるよと半分呆れたような表情を浮かべていた。

 体育祭や新人賞の授賞式も終わり、時が流れ季節は文化祭シーズンとなった。校内がどこか浮ついた空気で満ちる中、あからさまに嫌そうな表情をするナマエに、角名はにんまりと悪そうな笑みを浮かべていた。

 体育祭をサボったのがバレた。授賞式に参加する為なのでサボった事はどうでもいい、だがハチマキ交換を狙っていたこの男は許さなかった。
 あーあ、俺ら頑張ったのに体育祭サボったんだ~ふ~ん、そういえばナマエちゃんのお母さんってこの事知ってるんだっけ?もしかして内緒だった?あーあ、別に言うつもりはないけど口が滑っちゃうかもしれないな~。

 殺す。ナマエの目が訴えていた。子供はいつだって親に弱いのだ。以前ナマエの家に遊びに行き、ナマエが母親にたじろぐ様子を見て、「お母さんには逆らえないんだな」と察していた。
 文化祭楽しみだね、とにんまりと笑う角名を睨みつけた。

 そして文化祭、ナマエ達のクラスはメイド喫茶になった。女子達はメイド服楽しみ~、ナンパとかされんちゃう?と浮かれ、男達は普段制服の女子がメイド服を着て給仕をする姿を想像して浮足立っていた。正直楽が出来るなら何でもいい、ナマエはどこか他人事で窓の外を眺めていた。

「ナマエちゃんはメイド服着てね?」
「は?」
「そうそう、ミョウジさんはメイド要員やからな~」

 まとめ役の委員長がよろしく、と言っているがナマエの頭にはハテナが浮かんでいた。何故私が??立候補していないが。まさかと思い目の前の丸い背中を睨みつける。

「おい」
「怖w」
「角名くんの差し金?」
「まあまあ、文化祭頑張ろうね」

 絶対コイツが委員長に何か言ったに違いない。何度前の席に座る角名の椅子を蹴り飛ばしてやろうかと思ったことか。ナマエは毎日角名の背中を睨みつけ、角名はナマエちゃんのメイド服楽しみと浮かれていた。

 ちなみにナマエがメイド服を着ることはほぼ決まっていた。何故なら顔が可愛いからだ。クラス委員は可愛い女の子が大好きで、可愛い女の子にはメイド服をなんとしてもメイド服を着せたかった。
 だが相手はクラスでも静かだが癖の強いミョウジナマエ。嫌なことは嫌と言い切り絶対に頷かない。体育祭のチアリーダーの応援服が良い例だ、応援合戦の時に着て欲しいと頼んだが勿論断られた。メイド服嫌がるやろうなぁと頭を抱えていた所に、颯爽と角名が現れた。
 ナマエちゃんにメイド服着せる秘策がある、と。そう言い切ったのだ。

 黒板にメイド喫茶で出す料理の案を書いて、ちらりとナマエ達を見る。ナマエは角名を睨みつけ、角名は身体を少しナマエに向けながら笑っていた。うーわ、角名くんもようやるわ、でもGJ。文化祭が終わったらナマエが角名に取る態度が変わるかもしれないが、彼女にメイド服を着せれるならオールオッケーだ。

 そして、二日間にかけて行われる文化祭が始まった。初日は一般客がおらず、生徒だけで気兼ねなく楽しめる日となっている。女子達はメイド服を着て、男子達も親から借りたジャケットを着て各々が着飾り準備万端だ。

「じゃあ次は足組んで座って?」
「そろそろやめたれや角名」

 いつにも増して死んだ目をするナマエを見てそっと治が角名を止めた。終わりの見えない撮影会はようやく一旦中止となり、ナマエは大きな溜息をつく。始まってもないのにどっと疲れた。

 ちなみに授賞式で金髪ウィッグにゴスロリを着たナマエだが、あれは好きな作家に買って貰ったものだから自ら着たのだ。だが文化祭のメイド服は違う、着たくない+学校という知り合いばかりの場所で着せられているという状況が嫌なのだ。

「それにしてもナマエちゃんかわええなぁあ」

 でろ、としまりのない笑みを浮かべる治は改めてナマエを上からじっくりと眺めた。

 艶やかな髪はゆるりと巻かれ、いつもより高いツインテールになり可愛いリボンで結ばれている。膝にかかるくらいの黒いスカートが上品な広がりを作り、フリルのついた白いエプロンが重ねられふわりと揺れていた。袖口にも細やかなフリルがあしらわれているのは、メイド服を作成した1組の被服部のこだわりだった。

 華やか過ぎず、けれどもちゃんと整えられた可愛さ。清潔さと可憐さが同時に感じられるメイド服姿に治は胸をときめかせた。

「こんな可愛いメイドさん常連になってまうやん…」

 他クラスのお化け屋敷や巨大迷路などの出し物で客の出入りが途絶えない中、1組のメイド喫茶も中々に繁盛した。やはりメイド服に釣られた生徒達が足を運んでいた。

「ナマエかんんんわえええ!!」

 山田さんのクラスは謎解きをしている。看板を持って宣伝と称して歩き回る中、寄るのはやはりナマエがいる1組。メイドをやることは事前に知っていたが、まさかこんなに可愛いなんて。スマホでパシャリ。ニコリともしないがこれも良し。

「萌え萌えキュン出来んの?」
「ない」
「メイドさん特製おむらいす頼んだらいけんで」
「チェキは」
「ない」
「1枚500円。あとメイドさんがOKしたらな」
「休憩また来るわ」
「来なくていい」

 委員長の合いの手を聞いて笑顔で頷いた後、颯爽と山田さんは去って行った。ナマエがぎろりと睨むが素知らぬふりだ。メイド服で予算をオーバーしたので回収をしなくてはいけない、尊い犠牲だ。
 そして、一人来たらまた一人と客は来るのが文化祭の醍醐味。

「ナマエちゃんホンマにメイドさんやん!」
「うるさい」
「ツンデレメイドやん…最高や…ンッフッフ」

 笑顔の侑にデレ…とは…?とクラスの何人かは首を傾げた。今のところツン部分しかない。
 嫌そうな表情を浮かべるナマエに委員長がミョウジさんお客様にご挨拶!と声を上げる。おい、まさか…!侑の心臓がどきどきと高鳴っていく。定番の、アレか...!?

 渋々という言葉がそのまま形になったような動きで侑の前に立つ。ほんの少しだけスカートの裾を摘まんで持ち上げ、軽く頭を下げて、言い切った。

「…おかえりなさいませ、ご主人様」

「はうっ」

 めっちゃエエ…可愛い、最高、至福、可愛い、嫌がってても可愛い、なんや分からんけどとにかく、なんかエエ…!様々な感情が入り混じり、それを人は『萌え』ともいうが、侑はそれを理解していない。きゅんきゅんとときめきながらナマエを見つめていた。
 一方ナマエはというと、練習した(させられた)挨拶を終わらせさっさと侑を案内しようとした時だった。

「おっ、ミョウジさんホンマにメイドさんや」
「アイドルみたいやなぁ」

 ひょっこりと顔を覗かせたのは二年の赤木にアランだった。ウキウキと顔を綻ばせる二人に対してナマエの表情はスン、と真顔になる。予想通り、二人の後直ぐに顔を覗かせたのは、予想通りの人だった。

「随分かわええ恰好しとるな」

 メイド喫茶が世界一似合わない人来た、北だけに。なんちゃって、おもんないわ。目の前に本物がいるがナマエの心の中で尾白先輩がツッコミを入れる。
 何しに来たのこの人達、まって赤木先輩さっき「ホンマにメイドさん」と言った。ということは、事前に聞いたのか?角名か治か、それとも侑か。銀島は良いヤツなので除外した。

「メイド喫茶の事誰に聞いたんですか」
「治やで」
「へえ」

 あっ、これいらん事言うたか?と赤木は顔を引き攣らせた、正解である。ちなみに部室で俺らのクラスはメイド喫茶やナマエちゃんがメイド服着んねんと喋ったので、後日談だが数日口を聞いてもらえない事が確定している。

「今席が丁度埋まったので待つより別のクラスに行った方がいいですよ。隣のクラスの縁日とかお化け屋敷とか」
「めっちゃ他行かそうとするやん」

 わははと笑うアランに当たり前だと声には出さないが心の中で呟く。クラスの売り上げよりもこれ以上恥を晒してたまるか、先輩だからといって知るかと心の中で帰れと念じた。

「バレー部なら今来た侑くんと相席したらええんちゃいます?」
「侑がええんならそうしよか」
「どうぞ!」

 どうぞじゃないが。気を効かせた委員長が侑が先に座っていた四人席に案内する。ナマエの考えも虚しく、侑、北、アラン、赤木というナマエにとって何とも近寄りがたい席が完成した。絶対注文取りたくない、そそくさと教室の奥、カーテンで仕切られた簡易バックヤードに身を顰めた。
 ちなみに男どもはキッチンに回っていたり、不埒な考えをする他クラスの男子生徒からメイドを守る執事兼ボディーガード役だ。

「サボりですかメイドさん」
「疲れた」
「オッホホ」

 楽し気に笑う角名をぎろりと睨むが全く気にしていないのか注文が入ったクッキーを紙皿に盛り付けていた。今回角名はキッチン役でお菓子(既製品)の盛り付け役だ。そこそこ注文が入るが火を扱う治より楽が出来るのか余裕そうだ。

 角に寄せている自分の鞄からペットボトルを取り出し、お茶で喉を潤す。普段の倍喋っている気がするから喉が渇いてしょうがない。ほっと一息ついていたら、ひょいと奪われ見れば角名が口を付けていた。

「ちょっと、私のなんだけど」
「いいじゃん。俺も喉乾いた」
「干からびてしまえ」
「ひどw」

 ふぅ、と息を吐いてぼんやりとするナマエを角名はちらりと見る。つーか間接キスしたんすけど俺ら、ちょっと照れる位しろよ。顔色一つ変えないナマエに角名はつまらなそうにするが、まあいいかと直ぐに肩をすくめた。

「ナンパとかされてない?」
「ないよ。その為にボディーガード(男子)がいるんだから」
「ナマエちゃんは目離したらすぐナンパされるから心配」

「…その時は角名くんに助けてもらう」

 は?なにそれ急なデレは心臓に悪いから止めて下さい。きゅんと鳴る心臓や上がりそうな口角を必死に隠し、いつも通りの顔を保つ。動揺を悟られたくなくて、必死に格好つけた。

「可愛いメイドさんがちゅーしてくれたら頑張れるかも」
「…」

 これまた眉に皺が寄った思いっきり嫌そうな顔にたまらず笑みが零れた。ナンパされて着いて行く子じゃないのは分かっているけど、海のときみたいなやつがいたら俺が対応することにはなっている。そこは委員長に打診済みだった。

 まあいつも通りスルーして終わりだろうな。注文の入ったアフタヌーンティーセット(既製品菓子盛り合わせ)を紙皿に並べていると、ふわりと視界の端に白いフリルのエプロンが揺れた。人二人分くらい離れていたのに、今は肩がぶつかる程の距離だった。

「…角名くん」

 相変わらず睫毛長いし、光を細かく弾くラメが、瞼の上で淡く瞬いていた。文化祭だからとクラスの女子達に化粧をされて、いつもより少し華やかな目元が鮮明に分かる位、近い。

「ナマエちゃ…むぐッ」

 彼女の名前を呼ぶために開けた口に、ころんと何かが押し込まれた。舌で転がせば慣れ親しんだラムネの味で、唇に指先がちょこんと触れた。
 親指と中指と薬指を揃えた、きつねみたいな形の指先。それがすっと離れていく。

「ちゅ」

 真顔で、そう言った。

 …は?

「ミョウジさんおむらいす指名や!3番席やで!」
「…」
「嫌そうな顔すな!」

 やれやれとナマエはバックヤードから出て行った。ナマエを呼びに来た委員長はちらりと角名を見る。

 顔を真っ赤にして、手の甲で唇を押さえていた。委員長が見る角名といえば、いつも飄々としていて掴みどころがないが、静かなナマエにとにかく絡み、写真を撮ってスルーされている見事な片想いの図。先程のナマエが角名の口に指でちゅっ、奪っちゃった♡と某CMのようなことをしていたのを目撃してしまい、気分はなんとも甘酸っぱい。

 脈がないように見えて意外とミョウジさんも角名に…!?とソワソワしてしまう。人の恋愛事情に首を突っ込むのはあまりよろしくはないが、面白いのでどんどんやって欲しかった。

 角名に頑張れよと密かなエールを送った後、バックヤードから出てナマエがいる3番席に視線をやった。ちなみに侑や北達がいる席だ。

「なぁなぁ、メイドさんのあーんとかないん?」
「痛客入りまーす」
「「「ハイ喜んでェ(ド太い声)」」」
「待ってやナマエちゃん!ちゃうねんて!そういうサービスあるんかなって思っただけやって!」
「は?痛客って侑かよ」
「角名は真顔でハサミ持って来んな!」
「おい侑!俺らまで痛客になってまうやろ!」

 凄、ミョウジさんの一声で角名がバックヤードから飛び出してきた、オモロ。それにしてもあの宮侑を痛客扱い出来んのはミョウジさんだけやなぁ。

 さぁ、文化祭は始まったばかりだ。他人の恋愛事情もいいが、まずは金稼ぎだ。クラス一の守銭奴はにんまりと笑った。

オマケ(会話だけ)

委「ご注文は何にしましょう」
北「おすすめはなんやろか」
委「メイドさん(治)特製おむらいす♡です。今ならメイドさんにケチャップで絵も描いてもらえますよ」
北「おすすめならそれにしよか」
赤「(信介がメイドさんのオムライス注文すんのオモロ)」
侑「なあ、それってメイドさんの指定って出来るん?」
委「(そわそわしとる…)今出勤しとる子の中からなら、ご主人様の希望メイドに描かせますよ」
ア「(出勤…設定割としっかりしとんな)」
侑「ほんならメイドさんはナマエちゃんで、俺もおむらいす!」
委「ではメイドさん特製おむらいす♡二つですね」

 ・
 ・
 ・

 「…お待たせしましたご主人様何を描きましょうか」
侑「すがすがしい程真顔やな!ほんならバレーボールがええ!モルテンの方な!」
 「…」
赤「また難しいモンを」
ア「せめてミカサにしたれ」
 「…」ブチッブチチチチチ
侑「ブッ、アッハッハ!へたくそやなぁ!バレーボールやなくて隕石みたいや!!(カワエエ!!)」写真パシャ
 「…」
赤「(侑ー!ミョウジさんの顔見ろボケェ!)」

北「ほんなら俺はミョウジさんの好きなモン書いてもらおか」
 「好きな物…わかりました」ブチッブチチチチチ
赤「三角と、四角…?」
北「おにぎりと小説やな」
 「ハイ」
ア「なんで分かんねん!!」

 ・
 ・
 ・

 「以上でご注文はお揃いですね、ごゆっくりどうぞ(さっさと食べろ)」
赤「(さっさと食うて出ていけって目しとる気がする)」
委「お待ちください。ミョウジさん、おむらいすご注文のご主人様に呪文は唱えましたか?」
 「…」
委「はいミョウジさん、美味しゅうなる呪文を言いなさい!」
 「…(文化祭終わったらアイツぶん殴る)」
ア「(まさか…メイド喫茶の、アレか…!?)」
赤「(萌え萌え、ってやつ…!?)」
侑「!!」
北「(呪文?)」

 「…ご主人様のおむらいす……ッ、おいしくな~れ…も、萌え萌え、きゅん…」

 「「「「!!」」」」

委「(恥ずかしがっとるから頬赤こなって目逸らしながらやる萌え萌えキュン…これは…売れる!!)」

— End —

Comments 7

���
🦐フライ2 个月前
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アーモンド小魚2 个月前

スゥウウウウウーーーー…(この充足感たまりませんな)

まぃ2 个月前
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I
Isahaya2 个月前
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セン2 个月前
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2 个月前
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Sakuria
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