雄英高校に入学して、早くも一ヶ月が経過した。その間教師姿のオールマイトとはただ一度のエンカウントも無しである。かなしい。
いや、わかってはいたよ。覚悟もしてた。だってオールマイトのマッスルフォームは維持できる時間が限られてるもんね。その限られた時間はヒーロー基礎学で使われるんだものね。そりゃ休み時間にオールマイトが廊下を闊歩するわけないし普通科とは関わりなんてないわよね。……でも一目くらい見れるかもって思うじゃんー!!期待するじゃん!!トゥルーフォームすら見かけないってどうなってるの!?ねぇー!!
推薦一位でヒーロー科に入学をキメた自慢の片割れから様子を聞くことは出来ても、それだけだ。接点などほぼ無いに等しい。あとなんか知らん間に敵連合が片割れのクラスを襲撃してきていたし、それによりオールマイトが負傷していた。は?許さないんだけど普通に。彼と片割れを傷つけるというなら、それすなわち私の敵なのだけれど。テメェらトットムジカぶつけんぞ。こんなところで原作ミリしらの弊害が出てきてる…。なんてこった…。もっとちゃんと読んでおけばよかった…。
「はぁ……。っよし!」
ぱち!と頬を軽く叩き、気合を入れなおす。過ぎたことは仕方ない、切り替えていくぞ私!!
長くて邪魔な髪をきゅっとポニーテールに結んで、椅子にかけていたジャージを羽織る。運動靴の靴紐も再度確認して、解けないようにきつく結びなおした。転んで退場なんて無様を晒すわけにはいかない。だって、今日は絶対にあの人がいるのだから。
本日晴天、絶好の体育祭日和である。
***
サッカースタジアムのような形状のステージは、各学年ごとに分けられる。例年通りならば三年生のスタジアムが大盛況となるらしいが、今年に限っては敵連合の襲撃の件もあり一年生スタジアムは満員御礼って感じだ。
ぐるっと周囲を見渡して、目的の人物を探す。望遠鏡が欲しいわ、切実に。ええと、……何故いるのかしら、轟炎司。燃え盛ってるからめちゃくちゃ目立つな。まぁいいや、ええと……
「!!、いた……!」
観客席の一角。黒いスーツに身を包んだ、トゥルーフォームのオールマイト。あの姿を見るのは初めてだけれど、きっと、原作を知らなくても見つけられた。だってあそこだけキラキラしてるもの。はーかっこよ…。すき…。
あの日と変わらぬ、誰かを案ずる優しい瞳。その視線の先には、緑谷出久。いいなぁ君!!オールマイトと仲良しで!!いいなぁ!!
ガチガチに緊張している彼を見つめていると、不躾なそれに気づいたのか視線が絡む。ニコッと笑って手を振れば、可哀想な程に狼狽え動揺していた。すまんな、私が天下一の美少女なばかりに。
「なに、知り合い?」
「ううん、一方的に知っているだけ。オールマイトに目をかけられてるんだって、片割れが教えてくれたから気になって」
「あぁ、轟焦凍…。そういう話もするんだ」
「というより、基本的にオールマイトの話しかしないかな。私の知らない人の話されても反応に困るし、向こうもそうだと思うよ」
「春歌って他人に興味薄い感じ?人間のこと音が鳴る人形か何かだと思ってる?まさか俺のこともじゃないよね」
「やだな心操君ったら、貴方は他人じゃなくて友達じゃない。安心して、C組の皆のことは大好きだわ!そしてそれ以上にオールマイトを愛しているだけよ!」
「うーんブレない」
単に話したこともない赤の他人にそこまでの興味関心がないというだけだよ!ちゃんと目を見て話してみたら好きになると思うよ。だって可愛い片割れのお友達だもの。良い子達だというのは知っているからね。
まぁいいけど、と種目発表のモニターに目を向ける心操君は私の所属するC組で最初に出来た友人だ。洗脳の個性なんだって、めっちゃいいよね。
本人はヒーロー志望だというし、救助にも制圧にも使える良い個性だと思う。いいじゃん!って褒めちぎってから急速に心開かれた感じがするんだけど、もしかしてこの子も自分の個性で悩んでたクチかしら。その素敵な個性のどこに悩みどころがあったのか私にはわからないのだけれど、まぁ本人の肩の荷が下りたのならそれでいいと思う。
第一種目は障害物競走、ルートはこのスタジアムの外周4キロ。コースさえ守れば何をしたって構わないと主審のミッドナイトは言うけれど、本当に何をしてもいいの?全員眠らせてウタワールドに閉じ込めて、私だけ悠々歩いてゴールしたら流石に炎上するかしら。やめとこ。
スタートの合図と同時に走り出した生徒達の最後尾を歩いてついていく。スタートゲートは狭く、もうこの時点でふるいにかけられていると考えていいだろう。もみくちゃの団子になっている集団をひょいひょいと避けながら外に出れば、ひんやりとした空気が肌を撫でた。
「うわ…。絶対焦凍の仕業じゃん…」
スケートリンクのように凍りついた道。巻き込まれてしまったのか、膝から下を凍らされてしまって身動きのとれない生徒達が大勢いて、思わず引いた声が出た。これ安全性とか大丈夫?重度の凍傷は壊死に繋がるけど?
きっとこの後救助はされるだろうけれど、寒さに震える子供達を見捨てていくのも心苦しい。勝負といえどそれはそれ、学校のイベントなんだから楽しくいこうね。
「このままだと危険だから、氷は溶かしてあげる。でも、妨害はさせてね!」
ぱちん、と指を鳴らして生み出した赤い音符が氷の道に吸い込まれ、その表面をどんどん溶かしていく。あと数分もしたら全部溶けきるだろうから、あとちょっとだけ辛抱してね!その間に先行かせてもらうわ!
靴の底にアイススケートの刃を具現化させて、まだ凍っている道をアイススケーターのように滑っていく。音符に乗って移動してしまえば楽なんだけど、それって障害物競走としてはレギュレーション違反かなって。何してもいいと言われてはいるけど、空を飛ぶのはズルくない?ただでさえチートなんだから、せめてそのくらいはね。
合間合間に邪魔してくるロボを避けたり音符で撃退しつつ、次に辿り着いたのは綱渡りのエリア。岩場と岩場の間が一本のロープで繋がれており、それを何度も繰り返しながら向こう岸まで辿り着けばいいらしい。
「ごめん!ムリ!」
即座に足元に八分音符を出現させ、真っ直ぐ最短距離を飛行で攻略する。前言撤回です、無理無理。だってこのロープめちゃくちゃ細いもん、いくら体幹鍛えてたって普通に怖い。
背後からズルーッ!?と非難の声が聞こえてくるが、聞かないふりして前を向く。だってミッドナイトは何してもいいって言ったもん!!私悪くないもん!!
とはいえずっと個性を使っているのは疲れるので、向こう岸に着いたらちゃんと自分の足で走り出す。順位的には今どのへんなのかしら。上位何名まで予選通過なのか教えられていないし、可能な限り前の方にいたほうがいいんだろうな。
轟家の遺伝子なのか、そもそもの身体的スペックが高いので普通に足の速さだけで何人かを抜かしながらやってきた最終関門。怒りのアフガン、と呼ばれたそのエリアは一面の地雷原。いや馬鹿なん???威力は大したことがない、というが、体が少し飛ぶ威力は普通に危ないでしょ。安全意識どうなってんのよ、この世界。
よく見れば地雷がどこに埋まっているかはわかる。しかし、他の人がそれを踏んだら巻き込まれる危険性がある。連鎖的に爆発すればかなりのタイムロスだ、本当にいやらしいエリアである。誰よこんなん考えた人。普通にエゲツなくていっそ笑うわ。
「えっと、」
周囲を見渡す。入口付近は皆警戒していくのか、地雷が大量に残っているようだ。えっ、マジでめんどくさいな。やっぱ飛んでっちゃおうかな。でも二回戦の内容もわからないし、あんまり個性使いたくないんだよな…。疲れておねむになって寝ちゃうから…。
ぴょこぴょこ飛び跳ねステップを踏みながら地雷を回避しつつ後方を確認すると、入口のところでなにやらでかい鉄の板で地面を掘り起こす緑谷君の姿があった。え?あの子なにして、
「っわぁ!?」
突然の爆音。地雷ひとつじゃ起きるはずのないその爆風と熱に、ヒヤリと背中に汗が伝う。……み、緑谷君の仕業か、これ!!えっ!?さっき地面掘り起こしてたのって、まさか地雷掻き集めてその爆風で飛んで…いやイカれてんのか?好感度爆上がりなんだけど。おもしれー男…。
彼が先頭二人を追い抜いたことで、片割れもなりふり構っていられなくなったようだ。後続に道を作ることになるとわかっていながら地面を凍らせた彼に内心でサンキューとウインクをかまし、ありがたく利用させていただく為に再びアイススケートで駆け抜ける。よし、あとちょっと!
戻ってきたスタジアムには既に何名かがゴールしていて、呼吸を整えながら先に到着していた焦凍君に近づく。向こうも私に気づいたようで、手を振る私に応えるように片手を上げた。
「大丈夫か、春歌。さっきの爆発」
「うん、全然平気。緑谷君って凄い子だね」
「む……」
麗日お茶子さんとお話している緑谷君に目を向けながら焦凍君にそう返せば、なにやらご不満げな声。どした?と顔を向ければ、眉間にシワを寄せてちょんと唇を尖らせる片割れがむっつりと不機嫌顔。え?なに?可愛い顔してどうしたの。もしかして私が緑谷君を褒めたのが気に入らないの?うーん……この末っ子メンタルがよ……。可愛さビルボードチャートってないのかな?即ナンバーワンとれるポテンシャルなんだけど、うちの子。どう?
「__予選通過は上位42名!!残念ながら落ちちゃった人も安心なさい、まだ見せ場は用意されてるわ!!」
全員無事にゴールはしたのか、予選の通過人数が発表される。結構ふるい落とされたな。これ元々の原作では何人だったの?私が通過したせいで落ちた人とかいるのかな。だとしたらすまないな。でもこれって現実なのよね。
続いて発表された第二種目は騎馬戦。二〜四名で騎馬を組み、先程の結果にしたがい振り分けられた各々のポイントの合計値がその騎馬の持ち点になる。終了までにそのポイント数が表示されたハチマキを奪い合い保持ポイントを競うという競技だ。えっ、おもしろーい!!たのしい!!
特殊なのが、ハチマキを取られても騎馬が崩れてもアウトにはならないってこと。フィールドから敵が減ることはないってこと。成程ね、相性やら相手の個性の把握やらがめちゃくちゃ重要ってわけか。
「それじゃこれより十五分!チーム決めの交渉タイムスタートよ!」
ミッドナイトの掛け声と同時に走り出す。えっと、あの子どこにいる?えーと……あ!いた!
「心操君!組も!」
「え」
「え。ってなに。嫌なの?冷た…友達なのに…」
「いや、そうじゃなくてさ。いいの?片割れが凄い顔でこっち見てるけど」
アレアレ、と心操君の指差す方向へ顔を向けると、…!?……!!?みたいな顔でこっちを見ている焦凍君がいた。あら可愛い。仕事から帰ってきた飼い主がまた買い物で外に出てしまう時の不意打ち食らった猫みたいな顔してるわ。どこいくの!?の表情ねアレ。
「だってあの子は負けないし、私は勝つもの。強いカード同士が組んだってつまらないじゃない」
「うわ…傲慢なまでに凄い自信じゃん…」
「事実だもん。それに、どうせ組むなら仲良い人と組んだほうが良いでしょう?折角の機会だからね、私は勝ちたいし、ちゃんと楽しみたいの」
心操君に右手を差し出し、強気に笑う。私、己のビジュの良さは正しく理解しているし評価してるわ。だってウタちゃんの顔だもの。某、タレ目ツリ眉の美少女が不敵に笑うのめちゃくちゃ好き侍と申す。対よろ。
「行くでしょ、本戦」
「……!、当然!」
握り返された手は力強い。君がどれほどヒーローに憧れを抱いているか、私はきっと正確にはわかっていない。でも、私、君がヒーローになったら救われる人が沢山いるんだろうなってビジョンが見えるわ。応援してるよ、心操君。
「…けど、後で轟の機嫌とっておいてくれよ。こんなことで恨まれたくないから」
「あはは。ごめんね、うちの兄姉達って揃いも揃って妹が可愛くて仕方ないみたい」
「特にトーヤにはただの友達だってちゃんと言っておいてくれ。本当に」
「ふふ、こんな天下の美少女に向かって心底迷惑そうな顔すんじゃないわよ。燈矢にぃの目の前で偶然装ったラッキースケベかましてやろうか?」
「洒落にならないから絶対やめて」
***
そんなわけで、二回戦は三位で無事突破です。え?話すこと?なんもないよ。だって心操君、私が声をかける前に既にA組とB組の子を洗脳して仲間に引き入れてたんだもん。もう!!言ってくれれば私が交渉したのに!!あの手この手の話術で仲間にしたのに!!もう!!
騎馬が組めさえすればこっちのもんだし、あとは私が個性でハチマキを奪われるのを妨害しつつ心操君が狙った騎馬の子達を洗脳して点数稼ぐだけよ。遠くの方で緑谷君と焦凍と爆豪君がバチバチに盛り上がってたけど、マジで蚊帳の外だったわ。つまんないの…せめて帰ったら配信のアーカイブ見よう…。
「はーるかっ!すごいじゃん、心操も!最終種目進出おめでとー!」
「よっ!C組期待の星!」
「轟、初戦では氷溶かしてくれてありがとな。死ぬかと思った」
「なんかお前の片割れすげぇこっち見てるけどいいの?」
「迷子の仔犬みたいな顔してるわよ」
「ねぇ、あんた達双子のツーショット写真とかないの?欲しいんだけど」
「悪用しないから。なんか御利益ありそうだから欲しいだけだから」
「ツラがマジで好み」
クラスメイト達にわちゃわちゃ囲まれながら、皆でお昼ご飯を食べに一時間の休憩だ。焦凍君との写真?ないよ。燈矢君とのツーショットならあるよ、見る?二人でお揃いのふわもこパジャマ着てるやつ。多分金になるよ。
昼休憩が終われば、レクリエーションを挟んで最終種目。トーナメント形式の対人バトルだ。去年はスポーツチャンバラだったんだっけ?今年ちょっと個性の能力によって有利不利がありすぎない?
私の場合、どのくらい個性を披露するかの匙加減も難しいんだよな。全力でやると本当に能力が万能すぎるし目立ちすぎるでしょ。でも手加減したら負けるでしょ。負けるのは癪だよね。オールマイトが見てるし。負けるのは癪だよね。
うーん…と頭を悩ませている間に、なんか尾白君と庄田君が辞退していた。えっ?ごめん全然話聞いてなかった、どうして?なに?…アッ…洗脳されてたから記憶がなくて…そう…何もしてないのに本戦に挑むなんてプライドが許さない…そっか…なんか…なんかごめんな……。
結局繰り上がりでB組から二名が進出。くじ引きで決定したトーナメントの初戦は、
「初戦じゃん心操君。がんば!」
「春歌も二回戦目じゃん…嘘でしょ…勝ったとしても絶対轟兄妹と当たるわけ、俺…」
俺の個性知られてるの不利すぎない?と心操君は苦々しい顔をするが、それは私もなんだよな。焦凍君とかぁ…手加減で勝つとか絶対無理じゃん…。
さて、どうしたものかな。
***
心操君の試合を見終え、深呼吸。……大丈夫。彼は強い。その瞳は光を失わず、ヒーローへの道を見据えていた。本当に格好いい子だな心操君って。将来有望すぎる。ハートの強さが桁違い。
大丈夫。心操君は決して折れない。彼は真面目で実直で諦めの悪さと冷静さも兼ね備えた凄い子だ。……いやマジで改めて彼って凄いな?ヒーロー向きだよ。
彼の心配より自分の心配しなさいね、私。はい。
『続いての試合は双子対決!!予選二位・一位と強すぎんぜ、ヒーロー科A組轟焦凍!!vs!!笑顔を絶やさず体育祭を楽しんでるぜ、普通科C組轟春歌だァ!!ここまで氷しか使わなかった轟焦凍に対し、轟春歌は音符を生み出し空を飛んだり氷を溶かしたりと個性の幅は未知数!とんでもないハイスペック兄妹達は、一体どんな戦いを見せてくれるんだァ!?』
プレゼントマイクの実況が響くスタジアム。緊張の面持ちで相対する焦凍に目を細める。……なんか、トーナメントが発表されてからずっと様子がおかしいのよね。どこか不調?でも怪我をしている様子もないし、疲労が溜まるにしては前半戦でそこまで消耗しているとも思えない。
でも、これだけはわかる。この子またなんか思いつめて勝手に曇ってるわ。おい、どこに曇る要素があった?第二試合が始まるまで普通だったでしょ?なに?そんなに私が他の人と騎馬を組んだのが尾を引いてるの?それともお昼ご飯でクラスメイトを優先したから?貴方そんなに私にべったりじゃないでしょ、燈矢君じゃあるまいし。どうしたの。
「第二試合、スタート!!」
先手必勝。焦凍君が個性を使う前に大量の音符を出現させる。壁にするように己の周囲に配置させ、残りを弾丸のように撃ち出す。彼が足元を氷結させたのを見て即座に音符に乗って宙に浮くことで避難し、そのままステージの上を滑るように移動する。
ちょこまかと移動する私に狙いがうまく定まらないのか、どんどん氷漬けになっていくステージ。……そう。彼が使うのは、氷だけ。
「っち……!」
自分の身体から数センチの位置に氷柱が走り、一旦足場にしていた音符から飛び上がり焦凍君の死角へ。彼の左手後方に着地の為の大きめな音符を出現させ、着地すると同時に音符の連打。振り返り様にその音符も凍らされてしまったが、やはり彼は炎の個性を使わない。……え、なに?縛りプレイでもしてんの?炎と氷で体力の消耗ゲージが違う感じ?力の温存したいにしたって、今のは炎で良かったでしょう。
「何故、今、氷を使ったの。炎を出すのが最適だった筈だよ。なんか焦凍、ずっと変だよ。どこか具合でも悪いの?」
ぐっと眉を寄せた焦凍君を見据えながら、攻撃の手はゆるめない。いやぁ…まさか観客席に轟炎司がいるからって反抗期かましてるわけじゃないでしょう?そんなにエンデヴァーの息子って呼ばれたくないの?まぁ気持ちはわからんでもないけれど、
「俺はっ……俺は、炎は使わねぇ。あいつみたいに、春歌を傷つけたくねぇ」
「…………、ハァ?」
いま、なんて言ったの。この子。
思わず攻撃の手を止めた私に、焦凍君が軽く呼吸を整えながら向かい合う。あれだけ前後左右に走らされておいて、少し疲れたな程度なのね。流石に毎日鍛錬しているだけのことはある。
で、なんだって?そんな、毎日毎日個性の制御訓練をしているような貴方が、何を使わないって?
「俺の炎は、あいつとそっくりだ。燈矢兄みてぇに、綺麗な蒼じゃない。……俺は、あいつになりたくない」
焦凍君が、真っ直ぐに私を見る。その無垢な瞳に他意などないだろう。わかってる。頭では理解している。
そしてそれ以上に、胸に沸き上がるこの怒り。炎が似てる?当たり前じゃない、親から引き継いだ個性なのだから。私を傷つけたくない?立派な志ね、片割れとして鼻が高いわ。あいつになりたくない?ならなくていいわよ。貴方は貴方でしょ。こんなぴゅあぴゅあ天然ご意見ドストレート剛速球美少年が、口下手拗らせおじさんになるわけないじゃない。……、で?
「ふざけてんの」
氷のように冷え切った声。そんな声が己の口から出るなんてと我ながら吃驚したけれど、己の声帯には誰が住んでいるかを思い出してすぐに納得した。出るわな、そのくらい。
動揺に肩を揺らして目を見開いた焦凍君の目に、今の私はどう映っているのだろう。口元だけで薄く笑って見せれば、今度こそびくりと大きく焦凍君の肩が跳ねた。
「私に、氷だけで勝とうって?半分だけの力で、私に勝つつもりなの。私なんて本気で相手するに足りないっていうのね」
「!?っちが…!!そんなんじゃなくて、」
わかってる。気遣いなのよね。私が未だに轟炎司を視界に映すと怯えてしまうし、ずっと恐れているままだから、彼を思い出させるような要因は見せないようにしようという精一杯の心遣いなのよね。貴方の優しさなのよね。そうよね。……そうよね。
「っ舐めプしてんじゃないわよ、青二才!!」
「っぐ…!?ま、春歌っ!!俺は、」
まだ何かを言おうとする焦凍君の言葉を遮るように、ハンドクラップを二回。発生させておいた大量の音符を、槍で武装した音符の戦士に変化させる。突如現れた戦闘員達にぎょっと目を剥いた焦凍君に追い打ちをかけるように、次々と音符を発生させては戦闘員へと変化させる。
一対一の勝負だった筈なのに、今や一対無数。一撃で消滅するくらいに耐久力が紙だとしても、この数は鬱陶しいだろう。それでも頑なに炎を使おうとしない焦凍君に舌を打ち、能力を解除した。泥仕合だわ。
ぜ、と呼吸が乱れる。大きく体力を消耗する私の個性は、長期戦には向かない。けれど胸に燻るこの怒りが、悲しみが、悔しさが、私の内で暴れて叫ぶ。
そうだね、私ちゃん。悔しいね。腹が立つよね。守られてばっかは、癪だよね。大切な片割れ君は、また視野が狭くなってるみたいだ。じゃあ、どうしよっか?…決まってる。
「……いいよ。焦凍がそのつもりなら、」
「春歌っ…!!」
両腕を上に、頭の上でクロスさせる。一瞬だけ目を伏せて、ぎゅっと眉間に力を込めた。
「焦凍がやらなくても、私はやるよ!!」
会場内に響き渡るハンドクラップ。世界の歌姫ウタちゃんのファーストライブ、特等席で見せてあげるわ。
***
突如、会場内の照明が消える。機器トラブルかと身構えた次の瞬間、鳴り響く聞き慣れぬBGMと共にネオン調の光に照らされるステージ。まるでこれからライブが始まるかのようなその光景は、恐らく轟春歌の個性によるもの。
大きな八分音符を足場に宙へと舞い上がった轟春歌の背後には無数に浮かぶ大きなスピーカーがある。会場に流れる曲はあそこから出ているのだろう。彼女が踊りながら手を叩くたびに現れるカラフルな音符は、次の瞬間には大きな槍を持った兵士のようなものへと変化する。一撃食らえば消えてしまうような脆さはあるが、数の暴力は侮れない。凍らせても凍らせても増え続ける兵士達に、轟焦凍の体力は着実に消耗していた。この個性は一体、
「、……歌…?」
拳を天へ突き上げた轟春歌の唇から、歌声が響く。生身の身体から出ているとは思えない、抜き身の刃のような力強く重量感のある歌声。激しく踊っていても乱れぬ歌声は美しく、そして鮮やかだ。
紡がれる歌詞は、怒りや悲しみといった感情の言葉の羅列。ロック調で毒々しさがあり、けれどどこか悲しさを伴うメロディー。
本当の孤独など知らないだろう。そう歌う少女に瞳を揺らした轟焦凍を追い詰めるように、歌声は更に激しさを増していく。
『今だけ箍外してきて!!』
爆発した、怒りの感情の奔流。新たに出現した光る五線譜はまるで意志持つ生き物のようにうねり伸び、轟焦凍の足を絡め取り動きを封じていく。圧倒的な力量差。強すぎる個性。
歌声に聞き惚れ見惚れていた己に気づき、ぐっと喉を締めて唸り声を圧し殺す。隣に座るマイクは実況の役目も忘れて轟春歌の歌声に集中しきっていた。
なんだ、あの少女は。あの個性は。一体あいつは、何者なんだ。
ミイラのように五線譜でぐるぐる巻にされた轟焦凍がその場に膝をついたのと、轟春歌が歌いきったのはほぼ同時。宙に浮く八分音符からステージに降りた轟春歌は、身動きのとれない轟焦凍を見下ろすように正面に立つ。
「……ねぇ、焦凍。ヒーロー、やめなよ」
「は、……」
静かな声。けれどよく通る、怒りをはらんだ声音だった。
「貴方が炎も使っていれば、私はとっくに負けてたわ。なのに貴方は自分の実力を制限して、勝手に縛りプレイして、このザマだよ。…プロになってもそうするの?そうやって負けたとき、貴方はなんて言い訳するのかな」
「っ言い訳なんてしねぇ!俺は、」
「そうだよ、言い訳なんて出来ないの!!死人に口なしなんだよ!!……ヒーローがヴィランに負けるときっていうのはね、死に直結するんだよ。全部が全部じゃなくても、ヒーローはいつだって、危険と隣り合わせの世界で戦ってくれているの。…なのに、貴方は!!」
泣きそうに顔を歪めた轟春歌が、轟焦凍の胸ぐらを掴む。
「ふざけないで。私が、喜ぶと思ったの。手加減されて、炎を見せないよう気遣われて、嬉しいと思ったの。馬鹿にしないで!!私は、貴方に守られるほど弱くはないわよ、見くびるな!!」
「春歌……」
「似てないわよ、貴方は!!炎も、顔も、なにひとつ!!似ていたとしても、貴方は貴方だ!!この怒りも、悲しみも、向ける矛先を間違えるほど私は愚かじゃないわ。そんなことの為に自分の身を危険に晒すなんて馬鹿な真似して、…っ私は最初からずっと、そのことについて怒ってるの!!」
ぽた、と、轟焦凍の頬に涙が伝う。彼のものではなく、彼女の。そのアメジストのような大きな瞳から止めどなく溢れる涙は雨のように降り注ぎ、身動きが一切とれぬままオロオロと狼狽えるばかりの轟焦凍の肌を濡らす。
「春歌、個性解いてくれ。悪ぃ、俺、また間違えた」
「そうよ、この猪突猛進視野狭窄天然坊主……貴方がひとりで考え込むと碌なことにならないんだから、まず私か燈矢にぃに相談しなさいよ……おたんこなす……ばかものが……」
「悪い」
神妙な顔で頷いた轟焦凍に深いため息を零し、乱暴に涙を拭った轟春歌がその足元をふらつかせる。ぐらりとその身体が大きく揺れたとき、彼女の瞳は既に閉ざされていた。
会場の照明が明るくなる寸前、観客席から蒼い光がステージに向かい駆ける。轟春歌の個性が全て解除されたのか、浮かんでいた音符もスピーカーも消滅したステージの上に蹲る影。
「もー……無茶なことすんのは春歌ちゃんもでしょ。そっくりだよ、お前ら」
「燈矢兄っ…!は、春歌が、」
「寝てるだけだよ。個性の使いすぎィ。……あんな派手なこと出来るなんて聞いてねぇってぇ…」
轟春歌がステージに倒れ込む寸前で、滑り込むようにその身体を抱きとめた影。蒼炎を操るプロヒーロー、トーヤ。轟兄弟の長兄であり、エンデヴァーの長子である彼は今やビルボードチャート十番以内の実力派。
そしてとんでもないシスコンで有名な男でもあった。おい、まだ試合中だぞ。部外者がステージに乱入するな。なにしてんだお前。
「こうなった春歌ちゃんは暫く起きないよ。続行はムリ。試合は焦凍の勝ち。オッケー?わかった?さっさと宣言してくんない、ミッドナイト。早くリカバリーガールんとこ行きたいんだよね」
「そもそも部外者が乱入した時点で反則負けよ。なんてことしたの」
「はー?ぶっ倒れて頭打ってこの可愛い顔に傷でもついたらどうすんの?あの時点で意識がなかったんだ、負けは確定してたろ。春歌ちゃんなら確実に勝ちにいけたのにその道を捨ててる段階で、この子に勝敗の拘りはないよ。愚弟をボコした時点で目的達成。これ以上は蛇足だろ」
轟春歌を横抱きで抱え立ち上がり、ステージを降りて入退場口に向かうトーヤはもう振り向かない。ため息を溢したミッドナイトさんが轟焦凍の勝利を宣言した瞬間、彼の姿もかき消えた。もしかしてあの家全員シスコンか?
「……えっ。あの…、リスナーなんだけど、俺…」
「は?何言ってんだマイク」
無言で突きつけられた端末の画面には動画配信サイトのページ。そこに表示された配信者の名前は、『UTA』。
アカウントのアイコンは片耳が赤い白ウサギのイラストで、『U』『A』が目を、『T』が鼻の部分を表している。チャンネル登録者数は約1500万人、初投稿の動画再生回数は200億回に差し迫っていた。今も尚、そのチャンネル登録者数のメーターは回り続けている。
いくらそういったものに疎い俺ですら、一度は耳にしたその歌。『新時代』。端末から再生された歌声と、つい先程の歌声が、脳内で重なる。
「………マジか?」
スタジアムが揺れるほどの歓声に、俺の呟きはかき消された。
***
ぱち、と目を開く。うーん、よく寝た。おめめぱっちり思考もクリア。ベッドを囲うカーテンと消毒液の匂いに、ここが医務室であることを悟る。
成程ね。私ったら個性の使いすぎでぶっ倒れたのね、爆速理解。まぁ試合に負けて勝負に勝ったってやつよ。焦凍君がまた拗らせる前にぶっ叩いて軌道修正出来たのだ、大健闘でしょ。よく頑張ったよ私。
「ん……はぁ。今何時だろ」
体育祭どんな感じ?決勝戦とかもうやっちゃった?確か原作では爆豪君とうちの片割れがバチバチしてたような記憶はうっすらあるのだけれど、この現実世界線では私というノイズがいたからな…。あっ?ていうか待って、もしかしてメダル授与の時ってオールマイトが来るんじゃないの?は?寝てる場合じゃないわ、行かないと。
身体を腹筋の力だけで起こし、布団をまくり、シャッとカーテンを勢いよく開く。
「わっ…!?、あ、轟少女…!?よかった、目が覚めたんだね!」
「はひゃわ…???」
己の喉から死ぬほど情けない声が出た。えっまってすき。なに?えっ?なんで?まって?
大丈夫…?と小首を傾げて心配げな顔をするオールマイトに、コクコクと赤べこ人形のように頷くしか出来ない私。違うんだ言い訳させて、オタクは不意打ちに弱い生物。皆そうでしょ。カーテン開けたら推しの御尊顔が待機してたら誰しもがこうなるでしょ。悲鳴をあげてないだけ大したものよ、私は。
狼狽えながらも私の視線は周囲から彼に関する情報を集めようとする。どうやら私のベッドの隣で眠っていたのは緑谷君らしく、オールマイトは彼の様子を見るために医務室にいたようだった。えっと…トーナメント表的に、緑谷君と当たったのはうちの片割れかしら。えっ?ボロボロすぎない、緑谷君。あの子一体なにしたの?水蒸気爆発でも起こした?
「トーヤからは眠っているだけだと聞いたけれど…大丈夫かい?気分が悪かったり、痛むところは?」
「だ、大丈夫で、」
は、と気づく。私、さっきまで寝てたのだわ。
ばっと下を向くとジャージはしわだらけだし、髪もボサボサ。自覚した途端に身体の熱が一気に上がってしまって、毛布をひっつかみ頭からすっぽり被って身を隠す。
「えっ?と、轟少女…?」
「み、みないで…!わたし、いま、すっごくボロボロだわ…。こんな、こんな可愛くない格好で……はずかしい…」
「そんなことはないよ、轟少女。君達の試合を見ていたけれど、素晴らしかった。たくさん頑張った証拠じゃないか」
格好良かったよ!と笑うオールマイトの笑顔に心臓がきゅうと締めつけられる。くっ…か、かわいい…まぶしい…。
「す、すきです…」
「エッ」
「けっこんしてください……」
「えっ……エッ!?」
ブワワ、と顔を真っ赤に染め上げたオールマイトがオロオロと両手を彷徨わせ狼狽える。は?かわゆ。すき。
「た、倒れたときに、どこかぶつけたんじゃないかい!?気が動転してるんだね、今リカバリーガールを、」
「大丈夫、正気です」
「そんなわけないだろ!?こんなオジサン相手に、」
「オールマイトはおじさんじゃないです。十年想い続けてるのよ、気が動転しているわけじゃないわ。どんな貴方だって好きよ」
「、は……」
反射的に口にしてしまってから、あ、間違えた。と私の脳の冷静な部分が私の口を両手で塞ぐ。固まってしまったオールマイトは顔を赤くしたり青くしたりの百面相。
ご、ごめんなさい、私、本当に気が動転していたのね。今の貴方はマッスルフォームじゃなかったわ。どちらの姿も私にとってはオールマイトだから、違和感が無くて…。
「……ごめんなさい。内緒なのよね、きっと。えっと、今の貴方は、なんて呼べばいいのかしら。お名前を聞いても?」
「や、八木です……」
「やぎ…、八木さん。八木さんか…」
噛み締めるように、その名を呼ぶ。呆気にとられているこの感じだと、多分偽名ではない。反射的にその名が出てくるくらい普段から偽名を使っているのでない限り。
ふーん…オールマイト、本名は八木さんっていうんだ…。本人はうさちゃんみたいなのにね…。下のお名前なんていうの?いい子だからおしえて?
「ハッ…!?あ、あの、私はオールマイトではないからね!?あの、私はオールマイトの秘書の八木であって…!!」
「あぁ、そういう感じ…。わかりました」
「そういう感じとかではなく、事実としてね!?」
「はぁい」
ニコッと笑って良い子のお返事。うんうん、安心してね。誰にも言わないからね。ていうか現段階で誰が知ってるの?先生方は知ってるんだっけ?
視線を彷徨わせ、わたわたと狼狽えていたオールマイトが急にピタリと動きを止める。天井を仰ぎ、額に手を乗せて唸った彼はやがて大きなため息を吐き出しながら肩を落とした。ずっとひとりでわちゃわちゃしてて可愛いな。
「……轟少女。口は固い方かい」
「拷問されて手足切り落とされて達磨にされても吐かないわ。任せて」
「そ、そこまでは求めてない」
身の安全第一…!!と小さく叫んだオールマイトが、私のベッドサイドにある椅子に腰を下ろす。真剣な表情で私と目を合わせる彼に胸がときめく。ひゃ。え、か、かっこいい…。おめめがきれい…すき…。
「君が察している通り、私はオールマイトだ。……何故わかったんだい?」
「唯一無二の素敵な声も、その瞳の優しさも笑顔の可愛さも全部貴方でしかないからよ。大好き」
「えっ、あっえっ、エ、そ、そう…なの…」
迷いなくそう答えれば、途端に真剣な眼差しがふにゃふにゃになって真っ赤なお顔でテレテレしている。は〜???好きなんてありとあらゆる人間に言われ慣れてるくせに初々しい反応してくれるじゃない、ステータスあざとさに極振りか???幼女みてぇな無垢な瞳しやがってよ、舌ねじ込んでキスしたろか。キレそう。可愛すぎて。
きゅっと頬の内側の肉を噛んで言葉を飲み込み、深呼吸。落ち着こうね私。
「、……言えない事情があるのでしょう。深くは聞きません。誰にも言うなと貴方が言うなら、そうします」
「気にならないのかい…?」
「ならない、と言えば嘘になりますが、貴方を困らせたり悩ませてまで知ろうとは思いません。どちらが本当の貴方なのかはわからないけど、どんな貴方でも好きだもの。一目でわかるくらいにはね」
「ウッ、ウン……そうみたいだね……」
わかっていただけたようで何よりだ。原作知識がミリしらレベルであることも要因のひとつではあるけれど、もし本当に何も知らなかったのだとしても私はきっと気づいたわ。いやだってほぼ本人じゃんこんなん。個性世界なんだからそんなこともあるよねって普通に受け入れたと思うよ。セクシーなのキュートなのどっちもタイプよ。
被った毛布の中でもそもそと髪を手櫛で整え、漸くひょこりと顔を出す。さっきよりはマシな筈だ。いつまでも顔を見せないのは失礼だし、私が恥をかくより礼儀を大切にしたい。くそ…体力を使い果たしてなければ個性でメタモルフォーゼ出来たのに…。
「……なんだか、あの時みたいだねぇ」
「え?」
「あ、いや、君は覚えていないかもだけど…君とトーヤが子供の頃に、私達は一度会ったことがあるんだよ。あの時の君はトーヤの背中に隠れていて、こんな風に私の上着の中に収まって…大きくなったねぇ」
そう、優しい眼差しでオールマイトは微笑んだ。…私、きっと真っ赤な顔をしている。
忘れるわけない。あの日の出会いが、私の運命を変えたと言っても過言ではない。覚えていないかも、なんて、私の台詞だった。あんな小さな子供の戯言、貴方こそ忘れてしまっていると思っていたのに。
「、……おぼえ、てる。覚えています。忘れるわけない。あの日から、私、ずっと貴方が好きなんだもの」
「あぁ、応援ありがとう!嬉し、」
「あと五年で大人になるわ。約束守ってね。絶対貴方と結婚するからね。口説き落としてみせるから、覚悟の準備をしておいて」
「エッ」
あの出来事を覚えているのなら、覚えているんでしょう。私の一世一代の恋心。そんな都合のいいところだけ忘れたなんて言わせないわ。こっちには燈矢君という証人もいるのよ。
「私、頑張るわ。きっときっと、世界に胸を張れるような、誰にも文句を言わせないような、素敵な女性になってみせるわ。見ててね、オールマイト!」
「えっ、う、ウン……っエッ!?」
私史上最高の笑顔を向けて、ぐっと拳を握る。可哀想なくらい狼狽えているオールマイトはかわいそかわいいが、手加減なんてしてやるものか。歳の差?世間の目?知らんな。そんなもんねじ伏せるくらいに文句のない良い女になればいいんでしょ。やってやるわ。
だって、貴方が忘れていないからよ。貴方が、私に火をつけたのよ。私を知ってもらうところから始めなければと思っていたのに、嬉しい誤算だわ。
見ていてね、オールマイト。私は轟家の人間らしく、ちゃんと諦めが悪いのよ!
***
「う、……うぅん……」
「ハッ…!?み、緑谷少年!?目が覚めたのかい…!?」
「……憧れと憧れが結婚する世界線…?ここが…?」
「緑谷少年…!?」
























あーー‼︎🤣最高ですね💃✨堪らない!