俺はあの日、お前たちを守れなかったことを永遠に後悔するのだろう。
銀杏の帳が上がり、白銀の世界に包まれつつある大和では今日、四季会議が行われる。冬の代行者である浪星と護衛官の凍蝶は琉球から北上し、現在帝州まで顕現を終えていた。
「浪星、今日は四季会議なんだ。早く準備しろよ。」
「分かってるよ。雛菊たちの前でカッコ悪い姿を見せるわけないだろ。」
凍蝶は呆れたように笑い
「いつもそのぐらいやる気を出して欲しいものだな。」
「うるさいぞ。ほら時間だろ。行くぞ。」
「ああ」
ーーーーーーーーー
in 四季会議
「今日はーー、、、
四季会議の進行は大体浪星が行う。四季の祖だからというのもあるが浪星は頭の回転が早い。だからこういった会議の進行に向いている。
(顕現の時が1番美しいがな、、笑)
凍蝶は先日の顕現を思い出す。浪星を中心に空気が冷え、踏み出すと氷の花が咲き舞を舞うごとに雪が許しを得たように降りる。この冬を降ろす主の姿が最も美しく
、凍蝶がこの現人神に魅せられる理由でもある。
まあ余談はさておき、会議は順調に進み終盤に差し掛かった。この数週間浪星は顕現の旅で疲れていることだろう。(今日は早く帰って休ませなければな)
そんなことを考えていると急に外が騒がしくなった。
ガタッ浪星が立ち上がりドアを見る。
私もドアに目をやるとドアが少し開き銃口がこちらを向いていた。「!!!浪星!!」バンッッ
「「「「!!!!!」」」」
「浪星!!無事か!!」「ああ問題ない」
浪星は氷で弾を止めていた。
その直後浪星はドアに手を向け氷の壁を作った。
「皆さん今のうちに部屋の端に!」
唖然としていた護衛官たちはすぐに凍蝶の言葉に反応し、主を守るように部屋の隅に移動した。
「雛菊様大丈夫です。さくらがついています。」
「うん!きっと、大丈夫!だって、ここには、春夏秋冬全員が、揃ってる、から!」
「そうだよ!それにジメジメブリザードマンが雛菊様のことしっかり守ってくれるよ!ねぇー」
「瑠璃!!今は緊急事態なんだからやめなさい!!」
「はいはい分かったよー」
「竜胆、、!!」
竜胆は撫子を抱き上げ
「大丈夫です。撫子。俺が必ず護ります!!」
(よし全員避難したな)
「浪星。どうする?」
「外の状況が分からん。それにこのまま籠城してもあいつらを倒さなければ埒があかない。凍蝶、俺たちで倒すぞ」
「分かった。ただ一つ約束してくれ。浪星、無理はし過ぎるな。」
「分かってるよ。ほんと過保護だな笑」
「当たり前だ。何度も言ってるだろ。私はお前が1番大事なんだ。」
浪星がじっと私を見てまた目線を前に向ける。
「待ってください!私も一緒に戦います!」
「さ、くら、、」
さくらが言う。それを合図に他の護衛官たちも
「そうです!冬のお二人は強いかもしれませんが俺も一緒に主を護ります!」「、、竜胆、、!」
「私では力不足かもしれませんが、少しでも役に立ちたいんです!」「あやめ、、」
「いやダメだ。お前たちは主を守っていろ。ここは俺たちだけで十分、ベシッッ、、イッッダ!!!
強めに浪星を叩いた凍蝶に春夏秋の主従はびっくりする。
「言い方に気をつけろと言ってるだろう浪星。」
「ほんとに、、すみません浪星が。大丈夫です。
ここは私たちに任せてください。皆さんのお気持ち嬉しいですが四季の祖として皆さんを護ります。ですが何があるかわかりません。なので皆さんには主を護っていだだきたいんです!私たちを信じてください。」
凍蝶の言葉に護衛官たちは煮え切らない思いもあるが首を縦に振った。
それを見た浪星は自分たちを囲むように氷の壁を作る。
「凍蝶、壁を崩すぞ。」「ああ。」
それを合図にドアの前に築かれた氷の壁が崩れていく。
直後賊が雪崩れ込んできた。そして氷の壁に向かって銃を乱射してくる。「ここだ!!四季の代行者はここにいる!!殺せ!!」
「根絶派か、、なぜここにいるという情報を賊が知っているんだ。」
さくらの呟きに浪星が「考えるだけ無駄なことだ。賊の考えなんか俺たちには一生理解できない」
皆んなそれに下を向いてしまった。
「でも一つだけ言えるのは俺たちはこんな奴らに殺される程やわじゃないってことだ。そうだろう?」
皆んなが顔をあげ、「「「はい!!」」」
(ふっ、立派になったな、浪星)
「だから言い方に気をつけなさい。」
「イッッタ、、ふん、、行くぞ!凍蝶!!」「ああ!」
バンッッッ
凍蝶は氷の壁を一部壊し、そこから賊に向かって一直線に刀を振った。
「クッソ!!バンバン!!」
「ぐわわああ」「そいつをやれええ!!」
「すごい、、!」
護衛官たちは凍蝶の刀捌きに圧倒されていた。
無駄のない動きとしなやかなそれでいて、迫力のある凍蝶の動きに魅了されていた。
「クソッッ、、はっっ??」
凍蝶を撃とうとした賊の体は氷で覆われていた。
すかさず凍蝶が賊を斬り倒す。
春夏秋主従は皆圧倒的な冬主従の強さに圧倒されていた。凍蝶の動きに合わせ、浪星が氷で援護する。
これぞ一心一体という動きに流石は賊狩の異名を持つだけはあると誰もが思った。
室内にいる大半が倒れた所で再び雪崩のように賊が入ってきた。
「チッッ、、四季庁は何をしている!!凍蝶!!」
「ああ分かっている!!」
凍蝶が大きく跳んだと思ったら、浪星が床に手をつき賊に氷の刃を突き立てる。「ぐわああああ!!」
そうして再び凍蝶が刀で賊を斬り倒していく。
「クソッッ埒があかない!!!」
賊は何度も雪崩れ込んできては2人で倒していく。
しかしかれこれ30分以上戦闘しているため、流石の凍蝶にも疲れが滲んでくる。浪星は今すぐにでも賊を倒したかった。それは大事な人達がいるからだ。護らなければならない大事な人達が。心配そうに戦況を見る皆を見て、浪星は焦りを募らせていた。
(早く賊を倒さなければ。早く、安心していいともう、大丈夫だと、皆に言ってやりたい!)
その時、凍蝶の背後に銃を構えた賊がいるのが見えた。
しかと凍蝶は気づいていない。
「!!!凍蝶!!後ろ!!!!」
素早く氷を展開するが
「!!!!、、クッ、、!!」
間一髪で急所は避けたがサングラスを弾き飛ばし、頭から血が流れ落ちる。
「凍蝶!!!!」「「「凍蝶様!!!」」」
「さ、くら!!凍、蝶お兄、様が!!」
「クッッ、、浪星!!私も戦わせろ!!怪我をした凍蝶ではこの量の賊を倒しきれない!」
「ダメだ!!それだけは絶対にダメだ!!」
「ッッッだったらどうするんだ!!」
「さ、くら、落ち、着いて、、!」
「あーもう!!さっさとこいつらぶっ飛ばしたい!!」
「瑠璃、気持ちはわかるけど、、」
「竜胆、、どうしよう、、!」
「大丈夫です。撫子、、大丈夫。」
皆に焦りと不安が募る。
(あああ、、、凍、蝶、、ダメだこれ以上凍蝶が、皆んなが傷つくのは、、ダメだ!!!なにかこの状況を打破できるのは、、!!、、そうだ、あれなら!!)
「大丈夫だ。さくら。皆をこれ以上傷つけ、させない、から。」
「?それはどう言う?、、」
凍蝶が賊の攻撃をかわして氷の壁の側まで後退してきた。(!今がチャンスだ)
「凍蝶!!!動くな!!」
「?!浪星?な「いいから!!」
浪星の気迫に少し圧倒された凍蝶は動きを止めた。
「よし、」浪星は素早く凍蝶を氷で覆った。
「!!おい浪星!!何をするんだ!待て!!」
「ダメだ。もうお前を、皆を、傷つけさせない!!」
(凍蝶、ごめん。もう、誰にも、傷ついてほしくないんだ。)
浪星は後ろにいる春夏秋主従を見てふっと優しく微笑んで
「大丈夫だ。お前たちは俺が護るから、、」
「浪、星様?そ、れは、、どう、言う、、?」
次の瞬間浪星は氷の壁を壊し、再び皆を護るように氷の壁を作った。浪星を除いて。それはさっき作られていた壁よりももっと透明で高度の高い壁だった。
「!?浪星様!危険です!!戻ってきてください!」
「ちょ!ジメジメブリザードマン?!何してんの?!」
「おい!浪星!!!何をしているんだ!!!
竜胆、瑠璃、さくらが浪星に叫ぶ。
「ダメだ、、!浪星!!私が護るから、お前を護らせてくれ、、!」
「凍蝶、、ごめん。俺は今ここで誰にも傷ついてほしくないんだ。もうあんなことは二度とごめんだ。」
「!!!待て、、浪、星、、!俺だって、、お前にもう傷ついてほしく、ないんだ!!!」
「!、、ふっ、、」
ああ、
「大丈夫だ凍蝶。」
行ってしまう、、
「全員護るから。」
私の冬が、
「クソッッなんで、、、浪星、、!」
「凍蝶、お兄、様、、」
ざっと目の前にいる賊は50人前後。
(大丈夫、俺は強くなったんだ。)
これは10年前、あの事件で救えなかった事が悔しくて悔しくて、どうしようもない自分の無力さを痛感して、自分で編み出した俺の護るための刃。
「やれれええー!!!」
バンバンッッッ賊が浪星に向かって乱射する。
「「「浪星(様)!!!!!」」」
しかし全ての弾は凍蝶達がいる壁に到達することもなく、浪星に当たることもなく浪星が作り出した氷の壁に止められる。「「「ほっっ」」」
それでも状況は変わっていない。
(浪星、、どうするつもりなんだ、、)
(良かった後ろには弾は行っていない。、、さあ)
「始めるぞ。」
(!!、、なんだ?浪星を中心に空気が冷えていく、、
まるで顕現の時のように、、!!!)
「まさか!!あのバカ!!!やめろ!浪星!!」
凍蝶が叫んでいる。まあそうだよな。一度だけ"これ"を使った時凍蝶にはこっぴどく怒られたな。
(「いいか浪星。"これ"はどうしてもの時以外絶対に使うな。いいな。約束だ。」「ああ。分かった。約束だ。」)
この約束を忘れたわけではない。だからこそだ。
「ろうせ「凍蝶、今は"これ"を使う時なんだ。だからいいだろう?」
「!!!、、そうかもしれない、、けど、!!」
「凍蝶!!!!大丈夫だ。俺はお前を信じている。」
「!ずるいぞそんな、、」
「凍蝶様、"これ"、、とは??」
「それは、、見ていただいた方が早いです、、」
深呼吸して、自分の中の冬を巡らせろ。
手を前にかざして頭の中で想像したものを作る。
「、、、!あれは、錫杖、、?」
「わあ!とっても綺麗ね!竜胆!!」
「ええ、、ほんとうに、、、これが冬の代行者の能力、、!生命凍結!!そうこんな事もできるのか。」
氷でできた錫杖は細かい装飾は息を呑む程美しく、氷で作られてるとは思えない美しさだった。
浪星が錫杖で氷を操り、賊に氷の刃を浴びせる。
刃がやむと、浪星はゆっくり賊に向かって歩き出した。
浪星が踏んだ所からは氷でできた花が咲いていく。
(これで雛菊達を護りたかったな。)
「六花の剣を突き立てて」
錫杖を床に突き立てると浪星を中心に氷が賊のいる床全面に広がっていく。
「月の色すら白に濡れ」
それはまるで白銀の世界のようで
「雪月花の夢は永久の眠り病者への慰め」
皆が浪星の四季の祖たる威厳に圧倒されていた。
「秋を殺して春に死ね」
賊が銃を浪星に向けるが体ごと氷に覆われる。
「忌むべき者は諸共に死を」
氷は賊に牙を向くように賊の体を蝕んでいく。
「嘆きは全て白に濡れ」
浪星を囲っていた賊が全員完全に氷漬けになる。
「全ては白に六花の色に溶けて行け」
浪星はその中心で錫杖を巧みに操り美しく舞い歌う。
辺りはしーんと静まり返り、そこにあるのは賊が部屋の隅に氷漬けにされ、その中心に静かに佇む浪星だけだった。浪星が錫杖を上に掲げたかと思うと大きな音を立てて床に突き立てた。それによって賊を氷漬けにしている氷以外が全て綺麗に消えた。
放心していた凍蝶は、それを合図に正気に戻り自分の主である浪星に駆け寄った。
「浪星!!無事か!!!」
こちらを見たと思ったら突然浪星の体が揺れた。
「!!浪星!!」間一髪の所で抱き寄せ、共に床に膝をついた。
(!!これは神痣!!クソッ権能の使いすぎか!!)
その間にも浪星の呼吸は早くなり、苦しげになる。
止まれ!止まれ!止まれ!!!
「凍、蝶、、いて、ちょ、う、、ごめん、、な、、」
「!!謝らないで、くれ、、浪星。大丈夫だ。すぐ治るから。」凍蝶は浪星を強い力で抱いた。早く治るようにと強く願って。
その言葉通り少しずつ首筋に碧く咲く牡丹の花が収束していく。
「凍、、蝶、、無事、、か、、?」
苦しげな息使いの合間に話す浪星は見ていて本当に痛々しかった。
(!!本当にこの子は、、人の心配ばかり、、、)
「ああ!ああ!!皆無事だ!!ほんと、、すぐ無茶をするな、お前は、、」
「ふっ、、そんな、こと、無いだろう、、お前の、方がよっぽど、無茶をする、、」
「当たり前だ。浪星、お前が1番大事なんだからな。」
「!ふふっ、、そう、か、、」
「そうだ。だから今回は怒っている。お前が自ら危険な所に向かったこと。"これ" を使ったこと。」
「それは、、仕方ないだろ、、俺は、お前が傷つくのも、嫌なんだ。」
「だとしてもだ。せめて一緒に護らせて欲しかった。お前を一人にしたくないんだ。」
「!!、、うん、分かった。次は一緒に護る、、」
「ありがとう。浪星。さて、体が熱い。すぐに休もう。」
「ああ、そう、だな、、流石に、つか、れた、、」
「ああ、ゆっくり休みなさい。」
そう言いながら凍蝶は浪星を横抱きにし、立ち上がる。
「浪星、様!!!」
雛菊が叫ぶ。それを合図に皆がこちらに駆け寄ってくる。
「大丈夫ですか?皆さん。」
「はい。大丈夫です。護ってくださり本当にありがとうございます!」
「いや、当たり、前だ。お前たちに怪我がなくて良かった。、、もう、安心していいぞ。」
浪星はふわっと微笑みながらそう言う。それを見た皆は少し驚き、笑った。
「浪星、様、、!本当にありが、とう、ござい、ます、、!」
「うんうん!ジメジメブリザードマンかっこよかったよねー!」
「は、い!!かっこ、よかった、、です!!」
雛菊の言葉に照れた浪星が凍蝶の胸に顔を押し付ける。
「あっれー!照れてんのー笑可愛いとこあんじゃん笑」
「瑠璃!浪星様は疲れているんだから!!
「あの錫杖を持った浪星様お綺麗でした!!」
「撫子の言う通りです!本当にお綺麗でした!」
「ふふっ、、あり、がとう。」
(ああ、俺は護れたんだな大切な人達を)
「、!!浪星、、様、どこか痛い、、んですか?」
雛菊は静かに涙を流していた浪星に問いかける。
「、、グスッ、、大丈夫だ。ただお前たちを護れた事に、、安心しただけだ、、」
「!!はい、、!護って、ください、ました!!浪星様が!!」
「!!雛菊、、」
(良かったな浪星。)
ゲホゲホッッ
「!浪星大丈夫か?ゆっくり息をするんだ。」
「ケホッ、、ゲホゲホッ、、はぁはぁ、、、ん、、大丈夫、、だ。」
「よし、寝てていいからな。」
「、、ん。あとは頼ん、、だ。」スウスウ、、
(相当疲れていたんだな。まあ無理もない。浪星は平熱が低いのに今はカイロのように熱いからな。)
皆が浪星を不安そうに見ている。
「大丈夫です。すぐに良くなります。」
「はい、、凍蝶様もゆっくり休んでください。」
「ありがとうございます。」
私は浪星を抱え、部屋を出た。




















