「……[b:ッハ!!オールマイト!?]」
妙な夢を見ていた気がして飛び起きた。オールマイトが……オールマイトがいた気がする……!!いやそんなまさか。力を失ったとはいえ彼は元平和の象徴ですよ。幼女相手にそんなサプライズあるわけ。
「なんか既視感のある勢いだなァ……!?」
「!!!!!!!!!!」
おるやんけ!!!!!!
オールマイト!!オールマイトがいる!!!!????
「あわわわっぁ、おっおわ、おる、わわわあわ」
オールマイトが……今、私の目の前に生オールマイトが……!!!!!!!!
「oh、表情は変わってないようだけど、なんだろう。なんか懐かしいな、この反応……!!」
「おおおおおおわ、お、おー、おるッ、ひゃわ……」
アッ声良ッ顔良ッ格好良ッ背高ッ可愛ッ尊ッ神ッ!!!!
「どうしたんだい?大丈夫、そんなに焦らないでも私は逃げないし、ちゃんと本物だよ?」
「[b:オワァアーーーーッッ!!!!!!!!]」
「ぅぉっ声デカ」
「ちょっとオールマイトさん、気を付けてくださいよ。ソラちゃんは気絶したばかりなんだから、無理させるのは……」
んああーーーー!!元気そう!!嬉しい!!!!かっこいい!!!!えっほんと無理なんだけどマジでやべえってマジ……えっ、ハァ〜!?限界オタクにそんなサプライズしちゃう!!??あー無理すき……だいすき……アカンですほんまもうあの……ウッおめめ綺麗……!!心臓が止まる……!!止まっちゃうって……!!もしくは全てを振り切ってダンシングオールナイトフィーバーしちゃうってぇ!!
「叫んだっきりソラちゃん動かなくなりましたけど」
「えっ、あっ……」
「……多分顔に出てないだけでめちゃくちゃ喜んでる……はずです。そういう子みたいなので……」
その通りですゥ〜!!態度に出ねえからフリーズしてるだけですすいませんね!!思考もめちゃくちゃだよ!!!!あーあオイオイオイオッ、オール、マイトが目の前に……あっああっダメ無理無理無理ほんとむり、限界ですもう無理ですアカンですアーッ好き!!??なんっなんで傾いてるの!?首傾げて覗き込むとかもうっヒロインの挙動じゃんっ……!!んぎょわああああ好きすぎてダメですファンですマジで世界ありがとうこの世界一生愛しますもう愛してた!!!!
「喜びすぎて勢い余ってまた気絶してませんか?」
「おーい……ソラちゃん??」
「無言、無表情で涙流してる……」
「極まってるな……」
涙くらい出るでしょあのオールマイトが目の前ッ、目の前に居るんですよッ!!??気が狂ってても正常でしょ!?
「え、ええと……大丈夫?」
「キョア!!!!」
「あっ!?」
オールマイトが手を差し伸べてきたという事実に驚いて恐竜みたいな悲鳴を上げてしまった。というか腰抜けてて尻もちついた。むりですすき……つら……!ファンサ死ぬほど嬉しいんですけどお触りはちょっと……あの……!!まだ私のっ覚悟が!!できてないっていうか!?
なんだその表情オイオイオイこの生ける伝説かわいいがすぎるぞ……!?なんかもうかわいい……かっこいいのにかわいい……!!
ぐぅううう目がッ、あのキラキラお目目が……!!ア゛ア゛ア゛ダメ無理マジで気が狂うッ!!!!このっ……気付いたらみんなが好きになっちゃうNo.1めがッッ!!ヒィェアー元気で生きてるぅう……!!命がある……!!いきてる……オールマイトが……!!
「目かっぴらいて悲鳴あげるだけの生き物みたいになってますけど」
「刺激が強すぎたかな……」
「熱烈なファンの前に突然ご本人をお出ししちゃいけないってことですねぇ」
「それは割と常識だと思いますよ?」
「喜んでくれると思ったんですけど」
「え……あの、本当に大丈夫?なんだか怯えられてる気分になってきたんだけれど……」
ごめんなさい違うんですウワ困惑顔尊ッッッ!!!!
怯えてるわけじゃないですあっ好き。いやマジで大好きですっ!!!!ただめッッッッッッちゃくちゃ好きすぎて逆にダメなだけで!!
「ッッ、ォ、ぉ、オル…ッぉ、おぉ……ッ!!」
「えッッッッッッ」
アカンなんかもう一周回って拝みたくなってきた。祈りのポーズだけさせて頂いても????崇めたい。内なる末期のオタクがとりあえず推しは拝んどけって。
止まらない滂沱の涙。前が見えねェ。焼き付けたいのに。さっきまでの分はもう永久保存してるけどそれはそれ、これはこれ。
すいません心の整理つくまでここで土下寝させてください。唐突すぎてほんと死んじゃう。貴様ら供給過多ってご存知か!!??
「……泣きながら土下座始めましたね」
「平伏してるし感極まりすぎちゃってるのかな」
「ねぇ本当にッ!?もうどこからどう見ても私に怯えてるようにしか見えないんだけど!?」
「重度だとまあ……これくらいの反応は許容範囲なのでは」
「……4歳なんだよねッ!!!???」
「ハイ」
「普通4歳の子がそうはならないと思うんだ!?」
「なってるじゃないですか」
「……ッ、なってるねッ……!!くっ、あの緑谷少年ですらここまで重症じゃあ無かったぞ……!?」
ぐっっっっっかわいい……!!もっと弟子の話してくださいオールマイト!!
え?一周回って吐きそう……オールマイトのことが好きすぎて……!!
「……はじめまして、私はオールマイトだ。お嬢さん、キミの名前を聞いてもいいかな?」
さらに一周回って涙引っ込みました今すぐに顔上げますハイ!!
這いつくばる私の前に、しゃがみ込んで優しい声をかけるオールマイト。は?宗教画じゃん。宗教乱立しすぎだろこの世界。国宝にすべき光景がぽこじゃか生まれてくるんだけど!!
「ソ、ソラです!!夜星、宙!!はっ、はじめましてオールマイト!!」
「えっ、ソラちゃんがフルネームで自己紹介したの俺初めて見たんスけど」
「さっきはソラちゃんとだけ……」
「えぇ……普通に敬語使ってる……」
うるっせぇ流石にしっかり名乗らせてくれ!!流石に……!!ああああ笑顔!!??笑顔になってる!!!!ダメだぁときめきが止まらない!!!!!!!!
「うん。教えてくれてありがとう、ソラちゃん。私は君と、お友達になりに来たんだ」
「ぇ、ぇぁ……えぇ……??」
「ずっと挙動不審」
「かわいい……」
コラざわついてる外野!!コソコソ集まってぼそぼそ喋ってるそっちの方が可愛いからな!?
幼女の身でありながら、限界オタクの感情を持て余してうっすら血の味のする唇を噛み締めて万感の想いを込めた涙を溢す。なんかもう……尊い。ファンです……永遠に健やかで幸せであってください……!!
すっと差し出された手とオールマイトの顔を交互に見る。
「私と、お友達になって、くれるかな?」
は??なにこれ????これ現実??????????
「サプライズプロポーズ受けた女性みたいな反応してますけど」
「でもあのオールマイトさんに友達になろうって手を差し伸べられた重症のファンなんてここで卒倒してもおかしくないですよ」
「だからさっき卒倒してるんですって」
「ここに彼女の父親がいなくて良かった」
…………アカン、アカン……そういうファンとの垣根を超えてくるのはちょっと……!!いやでも正直めちゃくちゃお近づきになりたいというかガン見させていただきたい気持ちと私のちっちゃな心臓の平穏のためにある程度の距離を置きたい気持ちが!!心が二つに裂けるぅ!!!!
「お、ァ、お、おとっ、とも……??」
「うん、そうだよ。ソラちゃんと仲良くなるために、私が来た!!……なんちゃって」
「[b:ア゜]」
「あっちょっ、変な音がソラちゃんから!?」
「供給が多すぎたか!?」
ぅ、うわああああああああああっっっっっ!!!!!!!!ダメだダメですダメなンですよォ!!!!!!!!!!無理!!死ぬ!!!!こっ、これ以上は!!爆散する!!幼児のやわらかな脳みそが!!!!
「え゛」
「あっ」
「あっっ」
「うおっ」
「え!!??」
「なんっ」
「きゃっ!?」
私はあまりに意味のわからない展開を前に、自爆するしかねえ!!って感じの勢いで発光した自分の手に気づくことすらなく床を転げ回った。
……再び目を開けた時に、今までにないほどの、とんでもないことが起こっているのを知らないまま。
「……ここで、待っていればいいのかな?」
いつになく緊張するなぁ、と、年甲斐もなくソワソワとしてしまう。
最近過労死しそうな勢いで仕事が増えていると噂のヒーロー公安委員会からの要請、という名目ではあるが、内容自体は堅苦しさからは程遠い、幼い1人の女の子との交流を持ってほしい、という内容で……本来呼ばれていたはずの緑谷少年が外せない仕事ができてしまったため、私だけが今はここにいる。
雄英の敷地内、わかりづらいが厳重な警備の敷かれた一角にある建物。部屋の中には数人のスーツ姿の人間が。時には何故か祭りの日に売っていそうなお面を被った女性なんかもいて、部屋に入ってすぐに目と目が合った(?)時は、どう反応していいかわからなかった。顔を隠しているのはその人だけでは無かったが、祭りのお面だけは本当に異質で目を引いていたから……!!
用意された椅子に座った時に、ほんの少しの違和感を感じて足元を見ると、微かに照明の光を弾く、とても細く長い何かが煌めいている。
「……糸?」
蜘蛛の糸だろうか。軽く触れた感触は髪の毛程度の太さではあるが、蜘蛛の巣に触れた時のような感覚。
……いつだかに覚えがある。
現役時代に、蜘蛛糸の個性を持ったヴィランとの戦闘で触れたことのある、見た目の何倍も強靭な糸の感触だった。
チラリと周りを見渡すと、部屋の奥で立っていた1人と目が合う。糸を差し出して見せると、きょとんとした顔をした後少しだけ表情が緩んで、首肯を一つ返された。
把握しているものなら良いんだけれど……何か理由があって張られているのだろうか。
確かに最近は建築強度を高めるのにそういう強靭な素材を使ったりもするみたいだし、これも問題がないなら触らない方がいいんだろうかと、粘着性は見られないその糸を、元あった場所だろうあたりに戻しておく。
チラ、と扉の方を見るも、特に変化はない。予定されていた時間はもうすぐだと思うんだけれど……?
今日会う子は、ヒーロー公安委員会と根津校長が主体となって保護する必要がある子だという。知られれば間違いなく世界中のヴィランに狙われ、ヴィランでないものですら皆が手を伸ばすような個性の持ち主なのだと聞いた。その影響は凄まじく、会う人間、知る人間すら限定しないといけないほどの、超重要人物。
個性の内容は戦闘能力を保持していない私は詳しく聞いていないが、もし発動条件を満たしていれば、私との対面でもそれが発動するらしい、そうなれば最悪、『ここで』戦闘が起きる可能性すらあるのだという。
個性を持つ当人と対面する私、そしてここに連絡役としてきている非戦闘員達も、有事の際には安全な場所まで避難させられる手段を用意してはいるそうだが、だからといって警戒を解くというのは難しいし、やめておいた方がいい。
今日のためだけにトップヒーローの中でも特に優秀で信用できる、と選ばれた数人が集められ、すぐ近くで待機しているのだから、なんとも物騒な話だ。今やNo.1にすら上り詰めた通形ミリオ……ルミリオンも呼ばれているという。
そこまでの厳重な警戒を、もしかしたら起きるかもしれない、という可能性だけで必要とするような個性であれば、確かにそう人には会わせられない。
そして、その条件の一つに、人との対面があるとするのならば尚更だ。
厳重な警戒……足元の糸も、その一環なのだろうか。私とは面識のないヒーローの個性か何かかもしれない。公式にデビューしているプロヒーローではなく、公安の職員の可能性もある。その辺は今は一線を退いた身である私には教えてはもらえないだろうけれど。
……アレッ、もしかしてあの糸、見るだけにして、触らない方が良かったかな……!?
そわそわ、落ち着かない気持ちを宥めるように、くるくると前髪を弄ってみたりする。変な癖とかはついてないと思いたいけれど、折角ならカッコ良いと思われる姿でいたい。
まだ4歳の身でありながら、現役時代どころか今はあまり頼れる感じでは無いだろう私の姿を見ても、熱烈なファンでいてくれている、という話だ。あの頃に比べれば衰え老いた身だが、ファンの理想を崩すわけにはいかない。年端も行かない幼子であれば尚更。
そんな子が、会う人も行く場所も制限されて、今までとは違う環境で暮らしているというのなら、きっと不安もあるだろう。
小さな子供と正面から話すことが実は人生の中であまり多くなかった身として、まずこの身長で威圧感を与えてしまわないか、なんてところばかりが気になってしまう。
というか本当に私でいいんだろうか。
私のことも応援してくれているらしいとはいえ、その他色々なヒーローのファンでもあるらしいし、私が現役であったのはその子が生まれるだいぶ前になる。そして今現役のヒーローも沢山いて、それこそ、緑谷少……いや、ヒーローデクなんかが一番の適任だったろうに。
悶々と考え込んでいると、微かに扉の外から複数人での話し声のような音が届きだす。
よく通る、高い子供の声のようなものも聞こえてきて、いよいよか、とガラにもなく緊張してしまう。カメラ慣れとか、全然そういうのとは違う方向性の緊張感に少しだけ気後れしている。想像と違う、と言われたらどう返していいかわからなくなってしまうだろう。
いよいよ扉の近くまで来たのか、ガヤガヤ何人かで話している声が随分と大きく聞こえる。
そして、ついにはっきりと聞き取れる声が扉の向こうから。
「お待たせして申し訳ない。少し楽しくなってしまいました。ソラちゃんが到着しましたよ、ヒーロー」
全容は不明ながらも、世界を揺るがしかねないという個性を持つらしいその子との対面が、目の前まで迫っている。
だがどんな個性を持っていても、私のファンだと言うのなら。せめてその期待を裏切らないように、気合を込めていこう。
「[b:わーたーしぃーがぁー、来た!!]……なんてね!やはり昔みたいにはいかないな、ハハ……」
「ァ゜!?」
「えっ!!??」
……まさか張り切りすぎて気絶されるとは、思わなかったんだ……!!
「……[b:ッハ!!オールマイト!?]」
「なんか既視感のある勢いだなァ……!?」
何の夢を見ていたのか……それとも倒れる直前の記憶が一気に出てきたのか、ものすごい勢いで跳ね起きた彼女を見て思い出すのは、初めて緑谷少年と会ったあの日の記憶。
あの時は確か、私が彼を起こして、寝起きで私を見た彼が……ああ、懐かしい。
「あわわわっぁ、おっおわ、おる、わわわあわ」
「oh、表情は変わってないようだけど、なんだろう。なんか懐かしいな、この反応……!!」
「おおおおおおわ、お、おー、おるッ、ひゃわ……」
「どうしたんだい?大丈夫、そんなに焦らないでも私は逃げないし、ちゃんと本物だよ?」
「[b:オワァアーーーーッッ!!!!!!!!]」
「ぅぉっ声デカ」
懐かしい。懐かしいけれど、これは……なんというか。
コミュニケーションを取れるまで冷静になってくれるのだろうか。
「ちょっとオールマイトさん、気を付けてくださいよ。ソラちゃんは気絶したばかりなんだから、無理させるのは……」
「叫んだっきりソラちゃん動かなくなりましたけど」
ソラちゃんが真顔でカチンと固まって動かなくなってしまった。
ふわりと柔らかそうな青みがかった白色の癖のついた髪と、薄く雲がたなびく空のような、青く澄んだ瞳。どちらも天気の落ち着いた空の色を思い出させるような、静かな色合いだ。
怖がらせないようゆっくりと移動することを意識して様子を伺ってみるも、ピクリとも動かない。え……生きてるよね?
「えっ、あっ……」
うっ不安になってきた!!
「……多分顔に出てないだけでめちゃくちゃ喜んでる……はずです。そういう子みたいなので……」
喜んでる……?本当に、?顔に出ないタイプ、にしても行動と表情が合ってなさすぎて流石に不安になるんだけれど。
……え、本当に動かないな??
「喜びすぎて勢い余ってまた気絶してませんか?」
「おーい……ソラちゃん??」
「無言、無表情で涙流してる……」
「極まってるな……」
極まってる、とは感極まってる、という意味なのか、ファンとしての精神が極まっているのか、どちらの意味で言っているんだろう。どちらもなのかもしれない。
「え、ええと……大丈夫?」
「キョア!!!!」
「あっ!?」
悲鳴を上げて後退りをしようとして、尻もちをついてしまうその姿を見ると、心が痛む。
近付いたのが良くなかったのか、と伸ばしかけた手を止めて、一度少し距離を取った。
「目かっぴらいて悲鳴あげるだけの生き物みたいになってますけど」
「刺激が強すぎたかな……」
「熱烈なファンの前に突然ご本人をお出ししちゃいけないってことですねぇ」
「それは割と常識だと思いますよ?」
熱烈な……ウン、熱烈……ッ!嬉しいことだけれど、嬉しいんだけど……!!
「喜んでくれると思ったんですけど」
喜んでるのかもしれないけれど、どちらかというと現状はむしろ、私に怯えているような気がする。
え、怯えられてる?やっぱり目線の高さが良くなかったのかな……!?
「え……あの、本当に大丈夫?なんだか怯えられてる気分になってきたんだけれど……」
じっと見つめるとゆっくりと彼女が震え始める。ぷるぷるとした震えは次第にブルブル、ガタガタと震度を増していく。
「ッッ、ォ、ぉ、オル…ッぉ、おぉ……ッ!!」
「えッッッッッッ」
震えるとか、それどころじゃなかった。真顔のまま、どうっと涙を流して、座り込んだままガタガタ震えながらぺしゃりと倒れ込む……オーマイガッ!!どう見ても土下座だなこれ!?
「……泣きながら土下座始めましたね」
「平伏してるし感極まりすぎちゃってるのかな」
「ねぇ本当にッ!?もうどこからどう見ても私に怯えてるようにしか見えないんだけど!?」
悪いことをした訳じゃない、はずなんだけれども、罪悪感がッ……!悪者になった気分っ……!
「重度だとまあ……これくらいの反応は許容範囲なのでは」
「……4歳なんだよねッ!!!???」
「ハイ」
一体なんの英才教育を受けてきたんだこの子……!!一体どういうご家庭で育ったんだ……!?
[i:(※やや溺愛気味の一般家庭で愛されて自由に育ちました)]
「普通4歳の子がそうはならないと思うんだ!?」
「なってるじゃないですか」
ホークスからくいっと土下座状態の彼女を示されて、ぐうの音も出ない。
実際にこうなってる女児がいるわけだもんな……!
「……ッ、なってるねッ……!!くっ、あの緑谷少年ですらここまで重症じゃあ無かったぞ……!?」
まさかここまでとは。いやまさかだよ本当に。どうしてここまで極まってしまったのか。
それでも、やっぱり挨拶は大事だ。出鼻を挫かれてしまって、ちゃんと話せていない。返事をもらえるかはわからないけど、できるだけ落ち着いた声を意識して、声をかける。
「……はじめまして、私はオールマイトだ。お嬢さん、キミの名前を聞いてもいいかな?」
「ソ、ソラです!!夜星、宙!!はっ、はじめましてオールマイト!!」
ものすごい勢いで跳ね起きた。態度には出さなかったけど内心すっっっごい驚いた。切り替えが早すぎる。早すぎて反応できなかった。
「えっ、ソラちゃんがフルネームで自己紹介したの俺初めて見たんスけど」
「さっきはソラちゃんとだけ……」
「えぇ……普通に敬語使ってる……」
ソラちゃん、普段はやっぱこうじゃないんだよね、そうだよね??今はちょっと不思議なことになっているだけなんだよね??多分普段は子供らしい反応を返してくれる、はずなんだね??
「うん。教えてくれてありがとう、ソラちゃん。私は君と、お友達になりに来たんだ」
「ぇ、ぇぁ……えぇ……??」
「ずっと挙動不審」
「かわいい……」
「私と、お友達になって、くれるかな?」
少し待って、再度声をかけながら手を差し出す。
真顔のまま、ふるふると震えて口元を覆う彼女の姿は突然にサプライズを受けた時の模範的な反応のようだった。
「サプライズプロポーズ受けた女性みたいな反応してますけど」
「でもあのオールマイトさんに友達になろうって手を差し伸べられた重症のファンなんてここで卒倒してもおかしくないですよ」
「だからさっき卒倒してるんですって」
「ここに彼女の父親がいなくて良かった」
「お、ァ、お、おとっ、とも……??」
「うん、そうだよ。ソラちゃんと仲良くなるために、私が来た!!……なんちゃって」
……弁明をさせてもらうと、先ほど彼女が気絶した原因が何だったか、私はすっかり忘れてしまっていたんだ。
「[b:ア゜]」
「あっちょっ、変な音がソラちゃんから!?」
「供給が多すぎたか!?」
どこから出たのかわからない奇声を上げたソラちゃんの手が、目が潰れそうな程の光を放つ。
「え゛」
「あっ」
「あっっ」
「うおっ」
「え!!??」
「なんっ」
「きゃっ!?」
瞼の裏まで貫くような、強烈な光。不思議と目に負荷は感じなかったが、目を開けようとも思えないほどの光が10秒近く消えず、ようやく光が収まった頃、瞼を開く。
「…………オールマイト?」
「……マス、ター?」
目を開き切る前に、呼ばれた。どちらも聞き覚えのない声。
しかし、間違いなく覚えのある響きで呼ばれた名に、何かを理解する前に、言いようのない感情が込み上げてくる。
まず見えたのは人影。先程まで誰もいなかった場所に、二つの人影があった。
1人は少年、1人は少女。
見覚えがある。
一番記憶に残っている、見覚えのある姿からは変わっていた。それでも、自らが見間違えるはずもない、2人だった。
どちらも、自分の無力さと共に、深く心の奥底に刻まれた後悔。
「……ぁ、」
周りの何もかも、目に入らなかった。
二度と逢える筈のない、2人だった。
全てが終わったあの戦いの後、何度も思い返しては、夢にすら出てきてくれないのか、と苦しんだことだってあった。
今や全てが過去に置き去りになっていくだけの、過去になってしまった2人で、私にとって、大事な人達だった。
気づけば駆け寄っていた。2人はお互いを見ることもなく、ただ私だけを見て、良く見知った姿よりも随分と小さく、幼くなった丸い瞳に涙を浮かべて、細く頼りなくなってしまった私の腕に抱きついて来た。
「[b:……ッ、ナイト、アイ……!キャシー……!!]」
強大な敵との戦闘で命を落とした2人。私が救いに行けたら、もしもがあれば、生きていてくれたかもしれなかった2人。
理由も何もわからないけれど、今だけかもしれなくても。
目の前にある2人の命に、目一杯の愛を込めて、2人を抱きしめた。



























