Novel4 days ago · 2.6k chars · 1 pages

嘘恋から本物の。

ろぼろぼ

舞香side

「……もう朝……?」

カーテンの隙間から差し込む光に気がついて外を見れば、夜が明けて朝が来ていた。

「最悪……全然寝てないし、」

正確に言うと寝てないじゃない、一睡も出来なかったの。

昨日の夜、衣織に送ったLINE。
既読はついていたけど返事は帰って来てなくて。

「……瞳ちゃんと付き合ったってこと、だよね……」

返信して欲しかったって訳ではないけど、返事が何も帰ってこなかったってことが、よりその事実を突きつけられているようで。朝からとても悲しくて、辛くて、苦しい気持ちになる。

…………ほんと私って恋愛運ない。

自分からそうなるように衣織に別れを言ったのに、今になってやっぱり取り消したいとか、偽りでも恋人に戻りたいとか。そんなこと思うなんて私ってばどんだけ自分本位で性格悪いんだろ。

衣織は瞳ちゃんを選んだのに。

つくづくこんな自分が嫌になる。

「……私だって……好きなのにな………」

衣織への気持ちをすぐに消せるかって聞かれたら、それはできない。

別れを告げた後の今でも、こんなに衣織の事が好きなんだって胸がいっぱいなのに、、そんな簡単に好きじゃなくなるなんてできない。

「………」

今日から学校行くのも帰るのも私1人。数ヶ月前の元の生活に戻るだけなのに、気持ちは元に戻らない。

学校行ったら隣の席だもん、衣織に会うよね……

私としては衣織に会えることはすごく嬉しいけど、瞳ちゃんのことを考えたら複雑な気持ち。

私はどう接したらいいんだろ。冷たい態度?それとも私たちの関係が始まる前の話したことない私たち? お互い名前知ってるだけで他は何も知らない赤の他人みたいな関係。

「……っ…………無理だよ、そんなの、」

冷たくすることも、以前の私たちに戻るのも、そんなことしたくないし出来ないよ、さすがにそれは嫌だよ、、

だけど、無理とか嫌とか言ってちゃいけないんだ。
私がどれだけ衣織の事を想っていても、衣織はもう瞳ちゃんの恋人なんだから、偽りじゃなくて本物の恋人。
2人の邪魔をしないように元カノの立場にあたる私は衣織とあんまり関わらない方がいい。

「………衣織…」

衣織って名前を呼ぶこともきっともうない。
私の心の中で呼ぶことはあっても衣織に向けてはもう呼ばない。というか呼んじゃいけない。

衣織って名前を口にする度に、好きって想いが溢れてきちゃうし、今までの楽しかった恋人生活を思い出しちゃうから。またその日々を求めてしまいそうになっちゃうから。

だからもう衣織とは呼ばない。

それが私が自分でできる衣織への気持ちの抑え方。

こんな抑え方しか私には出来ないけど、、、2人の邪魔するようなことはしないから、まだ衣織の事好きでいてもいいかな……?

誰に問いかけるわけでもなく、1人心の中でそう呟く。

今の時間は7時。いつも衣織との待ち合わせしてた時間は7時半すぎ。

…………まずはこういう所から気持ちを整理していかないとだよね。

今日からいつもと違う道で、もうこの時間から家出て早く学校に行っちゃおう。そうすれば登校中に衣織にばったり会っちゃうこともないし。

「お母さん行ってくるね」

舞香母「え、早っ! 行ってらっしゃい!」

……衣織への気持ち、ちゃんと節制しないと。

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〜学校〜

ガラガラガラガラ

「……あ、私1番のりだ」

学校に着き教室へ入ればまだ誰も来てなくて、それ程私が早く登校しすぎたんだって事を実感する。

そのまま私の席である窓側の1番後ろの席へと向かう。

「…………」

自分の席に座り体を前に倒して、顔を机につけてボーッと空を眺め、衣織との始まりの日を思い出す。

あの日も確かこんな雲ひとつない青空だったな。

あの日は少し面倒臭いと感じていた告白に行って、断って、帰るための荷物を取りに教室に歩いていて。

そしたら空き教室の前で女の子と衣織の声が聞こえてきて。

興味本位で覗き見してたら衣織にバレてて、少し話をして、そこからいつの間にかお互い成り行きで偽りの恋人関係が始まっていて。

次の日には野口さんから衣織って呼び方に変えて、恋人繋ぎをして学校に行って。

隣で手繋ぎながら歩く衣織はすごく照れていて、そんな初心な衣織にひっそりと可愛いななんて思ってたんだっけ。

みんなの前でイチャイチャを演じて衣織を照れさせて、かと思えば衣織も反撃してきて私も照れちゃって。
あの小悪魔みたいに微笑む衣織、すごく可愛かったな。 私、衣織のあの表情すごく好きだったよ。

思い返せば、私は初めから衣織に惹かれていたのかもしれない。

みんなの言う通り高嶺の花で可愛くて、でもそれだけじゃなくて衣織自身の中身を知れば知るほど、あぁ嘘でも衣織と付き合えてよかったなとか、これからも衣織と一緒に居たいなって思うようになっていた。

「…………楽しかったなぁ……」

目を瞑り、かき氷を食べに行った時の5歳児の衣織や、真剣な表情をして授業を受ける大人の衣織を瞼の裏に思い浮かべる。

全部全部、楽しくて幸せで。
衣織と一緒にいる時の私はずっと笑顔だった。

それがこれからはもう衣織の隣は私じゃなくて、瞳ちゃんがいるんだ。

やだなって、私の元に戻ってきてよって、すごく思うけど。
こうして目を閉じれば瞼の裏にたくさんの衣織との思い出が、その時のまま映像のように流れてくる。

「……ふふっ………」

…………それだけで十分だ。

目をつぶった時だけでも、こうして付き合っていた頃の衣織との幸せを思い出せるなら、それだけで私は十分幸せ。

だから、衣織。

瞳ちゃんと幸せになってね。

そんな事をぼんやりと思っていたら、太陽の日差しが気持ちいいのと昨日一睡もしてなかったこともあり、気づいたら私はそのまま眠っていた。

— End —

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