「今日の欠席は?また佐々木?」
「学校には来てるよー、朝見たもん」
学校の教室。ぽっかりと空いた窓際の席。
私は、今日もいないのかーと他人事のように思っていた。
佐々木さん。下の名前はなんだったっけな。話したことないから忘れた。
この子は始業式の日から神出鬼没で、明日声かけようと思っていたら次の日学校に来ない、お昼話に行こうと思ったらその前に早退など、本当に自由。
まあ、私には関係ないまま卒業するんだろうな、きっと。
「ねーえ衣織ぃ。なんで佐々木さん教室あんま来ないんだろうね。まだグループとかあんま出来てないのにさぁ」
話しかけてきたのは、去年から同じクラスで友達の髙松瞳。
「ね。今来ないとグルーピング終わってしんどそうなもんだけど」
「体調でも悪いのかなぁ」
「さぁ?サボりじゃないの?」
なんてことを話していた時だった。
ガラガラと音を立てて教室のドアが開く。今の時間は授業開始2分前なので、教室に入ってくるのは先生以外ほぼありえない。
だから私は目も向けず教科書へ目線を落とした。
「…あれ、衣織。噂をすれば」
「……え」
佐々木さんは、片方の肩にリュックを持って、眠たそうに目を細めながら教室に入ってきた。
そのまま誰にも目もくれず、迷いなく席につこうとした
と思った。
「…あれ、えーと、野口さんだっけ」
「えっと…なんですか?」
佐々木さんに声をかけられた。そういえば初めてまともに声聞いたな〜、意外と可愛い声、なんて思いながら。
てか名前、覚えてたんだ。私は忘れてたのに。
「……もしかして、席替え、した?」
「あ、したよ。昨日の6時間目に」
「最後じゃんもー。昨日4時間目まで頑張ったのにー…。えと、野口、さん。」
「衣織でいーよ、呼びにくいでしょ」
「ありがとう。あの、私の席教えて貰ってもいい?」
「えっとねー、佐々木さんの席は、窓際の…ってあれ、そうだ私の隣」
そうだった。佐々木さんが教室こないせいでペアいなくて困ったんだった。もう学校いつ居るかわかんないからペアワークは諦めてた。
「え、隣野口さんなの…?」
「……そうだけど」
「…野口さん隣でよかった。…私友達いないから」
それは学校サボるからだろう、という言葉は飲み込んでおく。
というか、この子は誰に対してもこんなことを言うのだろうか。もし話しかけたのが私じゃなくて瞳でも、同じことを言うのだろうか。
(……なんか、やだな)
自分の抱いた感情に自分で驚く。
今まで話したこともまともに姿を見たことも無かったのに、私は多分、佐々木さんに自分を見て欲しいって思った。
どうして。
「てか、なんで教室こないの。もうお昼食べる人とか決まってきちゃったよ?」
「あー、だって私、学校嫌いだもん。お昼は屋上で食べてるからいいの」
だろう、そうだと思った。てかこんなに可愛いのに、友達できない訳ないじゃないか。しかも思ったより話しやすいし。
「じゃあ、お昼は私らと食べようよ。ひとりは寂しいでしょ」
そこまで話した時、キーンコーンカーンコーンと聞きなれたチャイムがなった。
「あ、やば先生来る」
佐々木さんはそう言うと、自分の席の引き出しから課題やらプリントやらを取り出した。そしてそれを下ろしたリュックに適当に詰め込んでいく。
「え、なに授業でないの?」
「うん、帰る。じゃね、野口さん」
彼女はリュックを雑に背負うと、慌ただしく後ろの教室のドアから走り去っていった。
私は唖然としてしまう。なんだあの人。
でももう帰ってしまったから、今日はもう話せないんだ。次話せるのは一体いつになるんだろう。
背中にツンツンという刺激を感じて私は振り向く。
「なーに、衣織佐々木さんと知り合いだった?仲良さそうにしちゃってさ〜」
瞳がニヤニヤしながら聞いてくる。いつもは頼りになるのに、こういう時はウザったい。
「ちがうってば、席替えしたの忘れてただけだし」
「またまたぁ。このクラスで佐々木さんあんなに笑ってたの私初めて見たよ」
「嘘だぁ」
「明日学校来るといいね、舞香ちゃん。」
「舞香ちゃん?」
「佐々木さんの名前。私も確信なかったからさっき近く来た時ネームプレート見たの。佐々木舞香ちゃんだって」
「……ふーん」
私は前を向いて座り直す。
顔がすこしにやけてしまうのを感じる。てことは、私がクラスで佐々木さんの1番笑った顔を見たってことか。なぜだか、胸がドクドクと高鳴る。
……一目惚れ、した?私が?あの学校来ない不良に?
ない、そんなこと、絶対ないはず。
(……明日、佐々木さん学校くるといいな…)
朝8時半頃、遅刻寸前で私は教室に滑り込む。
あぶな、久しぶりに寝坊した〜なんて呑気に考えながら。
すると、ちょうど廊下のロッカーに教科書を取りに行こうとしていた瞳と出くわした。
「あー衣織!遅刻したかと思った〜!!」
「おはよー瞳。死ぬかと思った」
そのまま瞳の教科書取りに付き合って、一緒に自分の机に向かおうとしたとき。
「えー!?佐々木さんって〇〇中だったの!?一緒なんだけど!?え何組だった?」
「2組。あでも学校ほとんど行ってないからあんま覚えてないや」
「佐々木さんさ、下の名前で呼んでい?ずっと仲良くなりたかったんだ〜!」
「え!うん、ありがと…!!」
昨日私と仲良さげに会話したからだろうか、私の隣の席にはたくさんの女の子たちが集まっていた。
なんだよお前ら、今まで佐々木さんに会おうとも話そうともしなかったくせに。
でもなぜだろう、佐々木さんに友達が出来て安心したはずなのに、どこかモヤモヤと曇る。
「あそうだ!!佐々木さんさーうちらとお昼食べない?もっと佐々木さんと話したいんだけど!」
「いいねそれ!!どう?佐々木さん」
あ、。
それは昨日私が誘ったのに。もう予約済みなのに。
でもそうだよね、こんなに可愛くて話しやすくていい子だったらもっと仲良くなりたいって思うよね。
きっと佐々木さんもそっち行くんだろうな。
「あー、えっと、お昼は野口さんたちと食べる」
「…え、」
「えー!衣織もう約束してんの!?早すぎー」
「じゃあまた今度ね、誘ってい?」
「うん、もちろん…!!」
「なんで、断ったの?あっちの方賑やかで楽しそうじゃん」
自分でも怖くなってしまうくらい低い声が出た。私はほぼ無意識で、隣にちょこんと座ってスマホをいじっている佐々木さんに声をかけた。
「え、っと、1番に誘ってくれて、嬉しかったから…もしかして、だめ、だった?」
そう言って、首を少し傾げて悲しそうな顔をするな。かわいい。
「…別に、私から誘ったわけだし。だからお昼まで学校いてよ」
「……うん、!!ありがとう野口さん」
「だから、衣織でいいってば。…舞香」
舞香の顔が、ぱあ、と音が鳴ったように明るくなる。全く、この子はわかりやすいったらありゃしない。
「え、お名前、!?ありがと、衣織…!!」
「同級生だし、普通だからね」
そう言ったけど、すごく恥ずかしい。人の事呼び捨て
するなんて今まで何気なくやってきたけど、こんなに緊張することだっけってくらい。
あーーもう。
たった一日で私の心を掴んでいかないでほしい。佐々木舞香。
多分私は、貴方に自分が思っている以上に夢中。

















ぱぁって笑う🦑ちゃん想像ついてかわいいです! 続きがあったら拝見したいです。