Novel5 days ago · 4.6k chars · 1 pages

密売人の末路はロシアンルーレットと白百合

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密売人の女の子がローエンに捕まって尋問される話です。 最後まで容赦はないです。 ローエンのキャラクタートレーラーのあの場面を夢小説にしたくて書きました。 恋愛要素なし&夢主の名前は出てきません。

注意
・ローエン実装前に、キャラクタートレーラーで脳を焼かれた人が勢いで書きました。
・キャラクタートレーラーの場面をもとに、前哨戦を加えて、ところどころ変えています。
・フォンテーヌ関係の単語を使っていますが、間違った使い方があるかもしれません。
・夢主が痛がる描写があります。

何でも許せる方だけどうぞ。

人生史上最大の危機だ。

私は今、息を切らしながら全速力で地下水路を駆け抜けている。
喉はからからで焼け付くように熱くて痛い。
水路に響き渡る慌ただしい足音は、2人分。

「まさか、逃げ切れるなんて思ってねぇよなー?!」

後ろから聞こえてくるその男の声には、一切乱れがない。呼吸も私と違って余裕そうである。

恐らくまだ5メートルくらい距離の差はあるものの、数分前より縮められている。
このままのペースで走り続けても追いつかれるのは時間の問題だ。

ならいっそ、一か八かやってみるしかない。

ポケットから小型の爆弾を取り出し、一瞬だけ振り向いてそれを勢いよく奴の足元に叩きつけた。

奴は素早く爆弾を認識したあと後退しながら、私に視線を向けた。

その顔は爆発音と同時に、あっという間に黒い煙で隠され見えなくなる。

私はすぐ全力疾走を再開し、目標のポイントまでたどり着いた。
壁に突如として存在する小さな扉を開けて空間に入り込み、背中で扉を閉じた。
大量に積み重なった箱の影に隠れ、やっと一息つくことができた。
ここはサーンドル河の住民のための物資貯蔵庫。
地元民にもあまり知られていないが、今の私のような逃走者にはうってつけの場所だ。
いくらあいつでも、さすがにあんな目立たない扉に気づくことはないだろう。

それにしても。

「なんであんな奴に追われなきゃいけないんだよ......!」

奴との出会いは唐突だった。
今日の私はいつも通り、他国に流す分のロシを持って、フォンテーヌ廷発の巡水船に乗ろうとしていた。
そこへ急にあの男がやって来て、自らを西風騎士団の第5小隊副隊長『ローエン』と名乗ったあと、紳士ぶった笑顔で荷物を改めさせろと言ってきたのだ。

警察隊でもない人間に従う義務はないと断ったら無理矢理荷物をひったくられ、用意していたフェイク分とロシの瓶がその場に散乱した。

人目についてしまったので通報される前に逃げ出したら、奴がずっと追ってきた。
気がついたらサーンドル河まで追い込まれた......のではなく、私が人のいない地下水路まで誘導した。
そして今この状況に至っている。

なんでモンド人、しかも西風騎士がこんなにも執拗に追ってくるのか。
フォンテーヌ警察隊のロシ回収に協力しているのなら執律廷に報告するだけで済むはずなのに。
そもそも西風騎士がフォンテーヌにいていいのか?
モンドを守る騎士なのでは?

いやしかし、爆発前に一瞬だけ見えた奴の顔は、お世辞にも騎士とはいえない表情だった。
あの血走った目は明らかに悪党側だろ。

心の中でツッコミを入れながら、さっきまでの緊張がだんだんほぐれていくのを感じる。

今日は散々な目にあった。フォンテーヌ廷でまぁまぁ目立ってしまったし、しばらく外出は控えておこう。
来週あたりに変装して璃月の国境まで運べれば、今月のノルマは達成できる。
儲けは減ってしまうけど、無理はしない。

こんな神経をすり減らすような目に合うのはもうこりごりだ。
喉が乾ききっている今こそ、大好物のフォンタをがぶがぶ飲みたい。
と、ため息をついたときだった。

ーーカチャリ。

扉の開く音がした。
思わず漏れ出てしまいそうだった声をとっさに手でおさえる。
ありえない、足音は何も聞こえてこなかった。
コツ、コツとこちらに近づいてきている。
必死に息を殺していても、心臓はうるさく鳴り続けている。
箱の山に寄りかかっている背中は凍ったように冷たい。
何かに祈るような気持ちで、その人間がローエンでないことを期待する。

わかっていた。いつだってそういう淡い期待は、裏切られるものだ。

今回も例外ではなく。

「捕まえた」

瞬きの直後、顔の真横に槍の切っ先があった。
震える肩を少しだけ動かして槍の持ち主のほうに顔を向ける。
奴は不気味な微笑みを浮かべていた。

「お疲れの様子だな。だから教えてやったろ? 俺からは逃げ切れねぇって」

私は槍の柄が上から振りかざされた光景を後にして、意識を失った。

「ん......? ここ、は......」

目を開けると、そこは質素な屋根裏部屋のようだった。

手足を動かそうとすると、麻縄に阻まれる。手首が擦れて痛い。

四肢が縄で椅子に縛りつけられている。

直前の記憶を思い起こすと......そうだった。ローエンだ。
心なしか頭部に鈍い痛みが残っている。きっとあの槍の柄で気絶させられたんだろう。

外から雨と雷の音がする。だいぶ時間が経ったのか。

喉が渇いた。
これからどんな目に遭うかを考えると、そんな悠長なことは言ってられないのだけれども。

しかしこれまでの経験で縄抜けに自信があった私でも、この拘束は解ける気がしなかった。
仮に解いたとしても武器はもちろん没収されていて丸腰。つまり打てる手はない。

「よう、お目覚めか」

扉が開いてローエンが現れた。
改めて顔をまじまじと見てみると、とても端正な顔立ちで美少年だが、この状況では見惚れるよりも恐怖心が圧倒的に勝っていた。

乾いた声を絞り出す。

「私を、どうするつもり?」
「尋問だ。素直に答えてくれさえすれば、どうもしない」

ローエンは目の前の机に膝をのせ、その上でナイフを研ぎ始めた。

「お前のボスの名前は? 単独犯じゃねぇだろ?」
「............」
「組織の活動範囲は?」
「............」

流れる沈黙に、ローエンは冷たい表情でこちらを見る。

「利口になったほうがお前のためだぞ?」
「どうだか。騎士様だから、手なんて出せないんじゃない?」
「強がんなよ、声震えてっぞ?」
「っ......!」

どうすればいい?
どういう筋書きを用意すれば、この男を懐柔できる?
恐怖で押しつぶされそうな脳みそをフルに稼働させる。
考えろ、考えろ。

私がうつむき続けていると、頭上から
「はぁーーー」
と、重たいため息が聞こえてきた。

ローエンが目の前に立ちふさがり、机に置かれていたピストルを手にして、くるくるとまわしている。

「女に手ぇ上げるなってファルカに注意されたから我慢してたんだけどな、限界だ。手っ取り早くゲームと行こう」
「? ゲーム......?」

ローエンはリボルバーを回転させてから、ピストルの銃口を私の膝にぐいっと押しつける。
金属の冷たい感触が服越しでも感じられた。

「6発分の薬室に、弾が1発」

重厚な引き金の音と同時に、激しい痛みが襲ってくる。

「っあああああ”あ”っ!」

痛い、痛い、痛い。
膝を見てみると、弾丸は肉を貫き骨に当たっている。
溢れてくる涙で視界がぼやけた。

「おっと、わりぃ。まさかいきなり6分の1引くとは思わなくてよ、まずは膝で感触を試そうとしたら......ハハッ! お前、ラッキーだな」
「はっ、っあ、ぅあ”あ”っ......!」
「安心しろよ。ちゃんと弾は装填し直すから」

ローエンは楽しげに弾を装填し、再びリボルバーをまわした。
そしてそのピストルを自身のこめかみに向けて、引き金を引いてみせる。

「カシャ」とだけ音が鳴り、弾が発射されることはなかった。

こいつ、狂ってる。
私は痛みにうめきながらそう思った。

「お前の番だ。次こそ本番だからな」

私の背後にまわったローエンは、肩に優しく手を置いてくる。
顔を近づけ、私の耳元でささやいてきた。

「俺のカウントが0になったら撃つ。まぁ、いつ弾が発射されるかは......知らねぇけどな」

吐息が耳に触れ、全身に悪寒が走る。

「はぁっ、はっ......!」

銃口が私の頭に当てられた。
ローエンは頭上から見下ろしてくる。
氷のように冷たい瞳で。

「さて、組織について吐け」

それからどれくらいの時間が過ぎただろうか。
私は涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、ローエンの質問にひたすら答え続けた。

「ふーん......なるほどねぇ。本拠地がエリニュス島ってのは、盲点だったな」
「あ、あの、お願い......もう全部話したの......! だから、どうかっ............」

ローエンは私の顔を一瞥した後、ピストルを持ち直してもう一度頭に突きつけてきた。
「じゃ、最後の質問だ。最後に輸送したロシはどこに行った?」
「え......? さい、ご......?」
「お前が最後に運んだロシ、どこが配送地だった?」
「えっと、確かモンドだったはず......」
「モンドの、どこだ?」

ローエンの声が一段と低くなった。
私は最後の記憶を思い出そうとしたが、ラベルにはモンドとしか書いていなかった気がする。
それっぽい嘘をつきたかった。けれど悲しいことに、私はモンドの地理をまったく知らなかった。
精一杯頭を働かせて地名を絞り出す。

「ヴィ、ヴィマラ、村......? みたいな? そんな名前だった、気が............」
「......3」
「へ?」
くぐもったローエンの言葉がよく聞き取れなくて、間抜けな声が出た。
ローエンはそんな私に反応してか、目を細める。
手に力が込められたのが、ピストル越しにわかった。

「2」
「ちょ、何そのカウント......」
「モンドのどこなのか、答えねぇと0までカウントする。0になったらどうなるか......最初に言ったよな?」

ヤバい。
引き金が引かれるまで秒読みだという事態をようやく飲み込んだ。
もう一連の質問には答え終わったと、油断していた。

「待って! 私、本当にその村の名前しか知らないの!」
「平然と嘘吐きやがって。モンド人の俺には、もうちょっとマシな嘘にしとけよ」
「いや、嘘じゃない! 本当にっ......!」
「1」

冷酷に進められるカウントを、何が何でも止めたかった。
その一心で、私は饒舌になる。
頭で考えるよりも先に口が動いていた。

「お願いっ、命だけは助けて! 私は幹部に家族を人質に取られて、仕方なくやってたの!」
「へぇ......それは大変だったな」
「そうなの! だからっ」
「残念だが、死ぬほど興味ねぇ」

絶望するには十分な一言が、嘲笑うような笑みと共に放たれた。
頬に一筋の涙が流れる。

肩をすくめてからローエンは、私の髪をわし掴みにして、ピストルをおでこに押し当てた。
その整った顔が目と鼻の先までの至近距離に入る。
ローエンはにこっと笑った。
まるで一日中遊び尽くした子どものように。

「情報提供、ありがとな」

そっか。私、本当にここで死ぬんだ。

もう一度、フォンタを飲みたかったな。

「そん じゃ」

間近に響いた銃声の後、世界が真っ白になった。
片隅には白百合だけを残して。

— End —

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Sakuria
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