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「世一、お腹の子供の様子はどうなんだ」

えびせんえびせん

BMストライカーカイザー×アナリスト世一♀ カイザーの爆弾発言により混沌と化すBMのチームメイトによるお騒がせラブコメkiis♀ *女体化、キャラ崩壊注意 *誤字脱字注意 Twitterで呟いたネタツイを短編小説にしました。すれ違いコントのようなラブコメが好きです。お粗末さまでした。 bll関係のツイート多めの雑多Twitter/X →@ebi_ebi_619

「世一、お腹の子供の様子はどうなんだ」
_______その日、バスタード・ミュンヘンに激震が走った。
練習合宿最終日、ホテルのディナービュッフェ会場で事件は起きた。
男子チームのエースストライカー、ミヒャエル・カイザーの放った言葉を聞きつけた周囲の人間は時が止まったかのようにその場で静止し、ホテルの名物として有名な肉厚ミートボールを頬張ろうとしていたアレクシス・ネスはあまりの衝撃に口に運んでいたそれをポロリと落とした。幸いにも真下に取り皿を用意していたことでミートボールが床で潰れることはなかったが、取り皿に落下した反動でネスのスーツにはミートソースが数滴飛び散っていた。
そしてそんな放心状態のネスの近くには同じく意気消沈しているチームメイトの姿があった。ある者は飲んでいたワインを盛大に吹き出し、ある者は手にしていたカトラリーを床に全て落とした。
そして、その場にいた全員の視線はカイザーから声をかけられたこのチームの紅一点、バスタード・ミュンヘン専属アナリスト、潔世一へと向けられる。
先の発言の真偽はすべて潔世一のリアクションにかかっていると言っても過言はない。
ここで潔が「なにバカなこと言ってんだよ!みんなびっくりしてるじゃんか」と笑えば、カイザーがタチの悪い冗談を言っただけでことが済む。
その場にいたチームメイトの心は一丸となっていた。____頼む潔、カイザーの発言は冗談だと笑い飛ばしてくれ。

けれどもそんなチームメイトたちの願いは虚しく破れ去り、潔世一はケロッとした顔でカイザーにこう言葉を返した。

「ああ、お腹の赤ちゃんね。順調だってお医者さんも言ってたよ!ほんと楽しみだよなぁ」

ホクホクと幸せそうに笑う潔を見て、チームメイトの数人が膝を地につけて崩れ落ちた。
______潔世一。
彼女は数年前に日本で行われたブルーロックプロジェクトで発掘された才能の原石の一人。ブルーロックメンバーを導く専属のアナリストとして絵心甚八にスカウトされたブルーロックの幻のメンバーである。
卓越したサッカーIQとフィールドを支配する神の眼を持ち、U20W杯ではアナリストとして日本の優勝に貢献した。
その後はバスタード・ミュンヘンからの熱烈なオファーを受けて渡独し、バスタード・ミュンヘン専属のアナリストとして一軍と二軍のサポート業務に携わっている、サッカー界のファム・ファタール。
どうやらバスタード以外のチームからも常日頃オファーが殺到しているようで、直近ではブルーロック出身の糸師凛から「俺のチームに来い、来ないなら殺す」と殺害予告を受けていた。当の潔本人は「凛は相変わらずだな〜」なんて呑気に笑っていた。いや笑っている場合か。男からの熱烈なラブコールや執着にまるで気づいていない、そんな鈍感さも潔世一をファム・ファタールたらしめていると言っても過言ではない。

もちろん、潔世一に狂わされたのはブルーロックメンバーだけではない。
このチームの中にも潔に恋心を抱く男は何人もいた。食事に誘ってみれば「今日はカイザーと試合分析する約束だから!」と断られ、休日にデートを申し込めば「なんかカイザーがサッカーのことで大切な相談があるみたいでさ、ごめんな出かけるのはまた今度で!」とドタキャンされる。
そんなことが度重なれば、潔に想いを寄せる面々もようやくカイザーがわざと「人の恋路にクソお邪魔します」をしていることに気がついた。
潔に想いを寄せる人間にとって最大のライバル、それこそがミヒャエル・カイザーだったのである。
恋人にしたいスポーツ選手ランキング国内第一位、抱かれたいアスリートドイツ代表、将来有望なBMエースストライカー、いくつもの肩書きを持つカイザーが恋のライバルとなれば、勝機はほぼ皆無に等しい。
そう頭で理解していても、やはり皆の憧れ兼癒しの存在である潔世一とカイザーのスキャンダルを目の当たりにするのは耐え難い。
____ましてやただの交際宣言や婚約発表とはわけが違うのだ。
『カイザーが潔を妊娠させた』という事実はあまりにもショッキングでその場にいた面々の生気を奪っていった。なかには床に崩れ落ち「嘘だ…」頭を抱えるメンバーもちらほらと見受けられるほどだった。

けれどもそうと知ってか知らずか、カイザーは平然と潔との会話を続行させる。

「まさか子供ができていたとはな…それで引き取り先はもう見つけたのか?」
「そ、それはまだ……」
「お前では育てられないだろう。早めに引き取りてを探せ」

気まずそうに視線を下に泳がせる潔を一喝するようにため息をついたカイザーに絶望していた各人はありえないものを見たといった驚愕の目でカイザーを見上げた。
______この男、潔に子供を孕ませておいて責任を取らないつもりなのか。
父親としての責務を放棄して、その子供を養子に出そうとしているカイザーに対して、怒りを募らせる者、唖然とする者、潔に同情して泣きそうになる者、皆それぞれ三様のリアクションをとる。そして、カイザーのトンデモ発言が響き渡ると同時にペタリと床に座り込んだ男が一人いた。

「か、カイザーが……そ、そんな…ありえません、これは何かの間違いです…嘘だ……」

青ざめて床にへたり込んだカイザー信者のネスにとってはさぞショックな出来事だったのだろう。ネスはブツブツと現実逃避の言葉を繰り返していた。
あのネスですらこのリアクションなのだ。この一連の出来事はカイザーと潔の悪ふざけではない。まごうことなき真実。
周囲には「これガチなやつか…」といった緊張感が張り詰めていた。いっそのこと何も聞かなかったことにしたい。誰か自分の頭を強めに叩いて記憶を飛ばしてくれ、そう願うメンバーの願いをよそにカイザーと潔の掛け合いは続いていく。

「引き取り先を探すっていっても…やっぱ俺にはできないよ…親子が離れ離れになるのは辛いじゃん…」
「だが、お前一人では育てるのは無理だろう。愛着が湧く前に手放した方がいい」

「ならテメェも責任を取って子供を育てろよ!!」と胸から込み上げる怒りをどうにか飲み込み、その場にいた全員が怒りに震えた。カイザーへの殺意を滾らせる面々は憎悪あまり潔の反応を見るのに遅れてしまった。そして、ふと顔を上げて潔へと視線を向け、気づいてしまった。
潔が今にも泣きそうな顔で目を潤ませて俯いているという事実に。
潔は試合中どんな酷い野次を飛ばされようと、相手チームの選手に嘲笑われようと勝ち気に対応していた潔が涙を堪えている。
強く凛々しい彼女の弱々しい姿を見るのは初めてだった。
そして、その顔を見た瞬間、チームメイトの心は一丸となった。
______この暴君から潔世一を救えるのは自分たちしかいないと。
プレイヤーではないとはいえ潔世一はバスタード・ミュンヘンの大切なメンバーだ。
ここ最近のチームの好成績だって潔がアナリストとしてチームを導いてくれた功績と言ってもいい。
いくら相手がチームのエースストライカーであっても、負けるわけにはいかない。
カイザーの非人道さにおえおえと泣き噦るネスを放置して、チームメイトはアイコンタクトを取り立ち上がった。
そして言い合いをしているカイザーたちの元に煮えたぎる闘志を胸に近づいていく。

「世一、お前がどうしても育てたいというなら…こ、これを機に俺の家で…同棲を……そうすれば親子一緒に飼える……」

カイザーは頬をぽりぽりと掻きながら潔の機嫌を伺う。俺たちはごにょごにょと言葉尻を濁すカイザーの前に立つと、潔を守るように二人の間に立ち塞がった。

「おい!カイザー!!見損なったぞッ!!」
「妊娠させておいて責任を取らないとは何事だ!!このヒトデナシっ」
「それでいて子供を養子に出そうだなんて…お前に人の心はねぇのかッ!!」
「イサギはみんなの癒し枠だから抜け駆けすんなって約束だっただろうが!このクソ野郎ッ」

突然チームメイトから盛大なブーイングを受け、さすがのカイザーも驚きのあまりタジタジと後ろに後退りした。
だが俺たちは言い逃れする隙すら与えずに、さらにカイザーを追い詰めていく。

「テメェはイサギと接近禁止だッ!!」
「文句があるなら言ってみろ!クラブとコーチとノアに言いつけてやるからなっ」
「イサギの子育ては俺たちが全面的にサポートするっ、養子になんて出させるかよ!!」
「イサギは俺たちが幸せにするっ!!」

何の脈絡もなく喚き出したチームメイトに戸惑っていたのも束の間、カイザーは「イサギは俺たちが幸せにする」といった発言を耳に入れた途端に、「あ"あ?」とドスの効いた声と今にも人を殺しそうな眼力で睨み返してくる。

「しゃしゃり出んなよ、クソモブが。これは俺と世一の問題だ。テメェらには関係ねぇ、つーか邪魔したら殺すぞ」

ブチ切れの肉食獣の如き睨みを効かせてくるカイザーに前衛にいたチームメイトは「ひぇっ」と情けない声をあげて背後に後退する。たぶんカイザーがガチで暴れたらその場にいる全員では抑えきれない。チームメイトの一人が唯一カイザーを止められる戦力であるノアを呼びに走ろうとした瞬間、先程まで床にへたり込んで落ち込んでいたネスがバッと立ち上がり、一触即発のチームメイトとカイザーの前に割り込んだ。

「お、お前ら落ち着いてくださいっ、カイザーが、カイザーがそんな非道なことするわけないじゃないですかっ」
「………………はぁ?おいネス、俺が一体何をしたっていうんだ」
「うっうっ、ですからカイザーが女性に子供を身篭らせておいて責任を取らないなんて、非道な真似…す、するわけないじゃないですかっ〜〜!!」

絶望する相棒に泣き縋られたカイザーは先行していた怒りよりも困惑が上回ったのか、ネスと俺たちを見比べると頭にはてなマークを浮かべて首を傾げた。

「俺が女を身篭らせた……?お前ら一体何を言っているんだ………ついに全員頭がおかしくなったのか…」

俺たちはシラを切ろうとするカイザーの腕を捕まえて、とぼけようとしても無駄だと説得した。
____カイザーが潔を孕ませたこと。その上で婚姻関係も結ばずに父親としての責任を果たさずに子供を養子に出そうとしていること。
自らが行おうとしていることがいかに鬼畜な行為かをその場に集ったチームメイト全員で責め立てた。
しかしながらカイザーは俺たちがどれだけその非道さを説いても改心するように促しても状況がさっぱり理解できていないのか、目をぱちくりさせて、押し迫る俺たちから後退りする一方だった。

そしてこのカオスな状況に終止符を打ったのは、俺たちがカイザーに詰め寄ってから一言も発さずに呆然とその現場を見守っていた潔世一張本人であった。

「ふふふ、あはは、あはっ、あっはっはっ、ちょっと待って、お前たち何言ってんだよ、待って笑いすぎて腹筋が苦しいっ…」

パーティー会場であることを忘れて、その場で笑い転げる勢いで爆笑する潔を前に今度は俺たち全員が頭の上にはてなマークを飛ばした。

「あ〜笑った、違うよみんな、俺たちが今してたのは猫の話だよ。俺が先週拾った捨て猫のお腹に赤ちゃんがいたって話!」

「「「………………………は?」」」

「俺が保護してた捨て猫のお腹にさ、実は赤ちゃんがいることがわかって、それをカイザーに相談していたんだよ」

笑いすぎて目尻に涙を浮かべている潔の話を噛み砕くと、先週の練習帰りにクラブの駐車場で捨て猫を発見し、その現場に居合わせたカイザーに猫のことを相談していたらしい。

つまり一番初めのカイザーの「世一、お腹の子供の様子はどうなんだ」という発言は捨て猫のお腹の子供の様子を聞いただけ。

獣医に見せたところ、捨て猫は子供を身籠っていて、潔が猫を引き取ろうとしたものの、潔の住んでいる賃貸はペット禁止物件だったため、カイザーは「お前では(物件がペット不可だから)育てられないだろう。早めに引き取り先を探せ」と潔に言った。
潔が「離れ離れになる辛い」と言ったのは親猫と仔猫たちが離れ離れになるのは辛いため、どうにかしたいという意味が込められていたらしい。

つまりは全てが俺たちの杞憂だったのだ。
俺たちの潔がカイザーの手篭めにされている事実はなかった。俺たちはホッと息をついて、そうだったのか、本当に良かったと笑い合った。
情緒がジェットコースターと化してきたネスも「そうですよね!カイザーがそんな無責任なことするはずないですよね!」と水を得た魚のようにハツラツとした笑みを浮かべていた。
これで一件落着、ハッピーエンド、終わりよければすべてよし、俺たちは皆この騒動をなかったことにして和やかな空気を醸し出す。
そして、怒りの炎をメラメラと燃やしているカイザーから距離を取るように一斉にビュッフェ会場に散った。

「テメェら……クソみてぇな勘繰りしやがって、全員潰す!!!」

逃げ遅れた数名のチームメイトと安堵のあまりすっかり逃げ忘れていたネスが見事にカイザーにとっ捕まり、関節技を決められたり、頭蓋骨をとんでもない力で掴まれたりと、パーティー会場の一角は阿鼻叫喚のありさまとなったのだった。

ーーーーーーー

「クソが……思い返すだけでクソイラつく。彼奴ら人のことを何だと思ってんだ」
「まぁまぁ、落ち着けって。ちゃんと主語をつけなかった俺たちにも非があるよ」

ディナービュッフェを終えた俺たちは宿泊フロアに繋がるエレベーターホールを目指して歩いていた。
意味のわからない因縁をつけられ、チームメイトに揉みくちゃにされていた俺とは逆に世一は余程先の光景が面白かったのか、歩いている途中でも時より思い出し笑いをして頬を緩めていた。ふくふくと丸っこい頬を揺らして笑う世一の横顔を見ていると、無性に抱きしめたくなる。
このホテルはBMが合宿中貸し切っているためクソパパラッチも湧いてこない。ホテルマンも一流ばかりでスキャンダルが露呈する確率は皆無と言ってもいい。
俺は周囲をきょろきょろと見回しながら、世一の隣にぴったりと寄り添い、その肩に手を伸ばす。
世一も俺の意図を察したのか、一度後ろを振り返り誰もいないことを確認したあとで、ぽすりと俺の腕のなかに頭を預けてきた。
俺は自ら罠にハマってくれた愛しの子鼠の腰に手を回すとその華奢な身体をぎゅっと閉じ込める。

「どうしたの、なんか急に甘えるじゃん」
「…………」

別に甘えているわけじゃない。小骨が胸に刺さった痛みを労るように、自分の奥底に積もった不満を柔らげたいだけだった。
____世一が渡独して三年。
俺はようやく念願叶って潔世一の恋人という椅子に座ることができた。
鈍感なくせに男を無意識に引っ掛け振り回す稀代のファム・ファタール。
どれだけ異性としての己をアピールしても、口を開けばサッカーのことしか語らない、フットボールジャンキー。
潔世一を落とすのはBMでレギュラーを得るよりもよっぽど難しかった。
だが、俺にとって世一ははじめて心の底から欲しいと思った相手。自分が持てる全ての武器を駆使してでも絶対に振り向かせたかった。初めての海外での生活に目を回す世一を常に気にかけ、買い物や食事に何度も連れ出し、休日も試合分析などサッカーを理由にずっと世一の隣に居座り続けた。
その結果、さすがの鈍感子鼠も俺の気持ちに気がついたようで俺たちは惹かれ合い、恋人関係へと発展した。
世一に気があったブルーロックスどもや他の世界新世代11傑などを出し抜いてのゴールだ。やっとの思いで手に入れた最愛を俺が手放すわけがない。ましてや子供ができた世一を捨てるなんて天変地異が起きてもありえない。俺が世一相手にそんなクソみてぇなことをするわけがない。

「思い返すだけでクソイラつく。彼奴ら次の練習でギダギタにしてやる……」

俺がチームメイトのクソどもに苛立ちと殺意を燃やしていると、横にいた世一がコテンと首を傾げてるように俺の顔を覗き込んできた。

「大丈夫、俺はわかってるよ。カイザーは例え本当に子供ができてもちゃんと責任を取ってくれるって」
「クソ当たり前。むしろお前が逃げようとしても、どこまでも追いかけてとっ捕まえて絶対に結婚する」

世一に子供ができたら、仕事のサポートはもちろんのこと家庭内の家事の負担も全力で減らす。交際の報告をしている世一の両親にも改めて挨拶をしたいし、世一と子供が安心して暮らせる環境を整える。
もちろん、結婚報告は全世界に轟くように盛大にやりたい。俺が恋人の座を得たというのに未練がましく未だに世一に想いを寄せているライバルの心を完膚なきまでに叩きのめすため、また世一のクソ愛らしい花嫁姿を目に焼き付けるために。

そして潔世一の恋人という立場を手に入れた俺が次に目指すもの。
______それは「同棲」だった。
今はオフの日にどちらかの家に泊まることが多い俺たちだが、互いの生活習慣に慣れてきた今、そろそろ次のステップに進んでも良い頃だろう。これは婚姻までの正規の手順。
もっと世一と一緒にいたいとか、同じ家に毎日帰れたら幸せだとかそういった己の欲望も半分ほど動機には入っているが、焦らずスマートに同棲の話を持ちかける、これが今の俺が成すべき最優先事項だった。

そして今回、世一が捨て猫を拾ったのは俺にとって非常に都合が良かった。
世一は猫を引き取りたいようだが、世一の住む賃貸はペット不可。今の家では猫を飼うことはできない。そこで俺の出番というわけだ。俺の家なら親猫も子猫も一緒に飼える。
サッカーの練習ができる十分な広さの庭、世一が好むであろうバスタブ付きの風呂場。
クラブからの距離も近く、立地も申し分ない。俺の家は世一にとって最高の物件と言ってもいい。
猫の件を引き合いに出せば、スマートに同棲の提案をすることができる。これが俺の思惑であった。先程はチームメイトからの茶々でしっかりと世一に伝えることができなかったが、二人きりの今ならはっきりと言うことができる。

「………世一、猫の引き取り手の件なんだが、お前が良ければ、俺の家で一緒に飼わないか。俺たち二人なら育てられるだろう」

俺は頭のなかで世一と猫たちがリビングのソファで寛いでる姿を想像した。
脳裏の想像が現実となるなら、世一と猫のいる空間は俺にとって最高の癒し空間となる。世一にとっても悪い条件じゃないはずだ。
希望を胸に俺は世一からの返答を待った。
けれども、世一の口から出た言葉は俺が望んでいたものではなかった。

「ありがとうカイザー、でも猫の件は引き取り手をもう少し探そうと思うんだ」

なぜ、どうして。
困ったように眉を下げて微笑する世一を前に俺の頭は真っ白になった。
俺では頼りにならないというのか。
同棲の提案をするには早すぎたのか。
世一はまだ身を固める気がないのか。
俺は世一に拒絶された事実を受け入れることができず、その要因の必死に考える。
俺に不満があるなら今すぐに直す。俺の家ではなく新しい家に住みたいというなら明日にでも不動産を見に行こう。
世一には伝えていなかったが、猫たちの面倒も責任をもって見れるように、世一が猫を拾った日から欠かさずに猫飼育のための勉強だってしている。
何を言えば考え直してくれるのか、どう伝えれば俺を受け入れてくれるのか、俺がハクハクと口をもがつかせていると、パチリと上目遣いでこちらを見つめる世一と目が合った。

「これから俺たちの赤ちゃんも育てなきゃいけないからさ、猫たちの面倒をちゃんと見れるか、少し不安なんだよね…だから猫たちの引き取り手をもう少し探そうと思ってさ」

えへへと照れ笑いを浮かべる世一と、パチクリと瞬きを繰り返して立ち尽くす俺。
俺は恐る恐る、世一の発した言葉を復唱した。

「…………………おれたちの、あかちゃん?」
「そう、俺たちの赤ちゃん」
「………お、おれとよいちの、こども?」
「そう、実はさ、本当に子供できたみたい」

世一はケロッとした調子でそう言うと、俺の手を握って自分の腹にそっと持っていく。

「ここにね、赤ちゃんがいるんだって。会えるのが楽しみだね、ミヒャ!」

「…………………」

世一はにぱーっと顔を綻ばせて笑った。
一方のカイザーは衝撃的なカミングアウトをまだ飲み込めず、困惑と歓喜と愛おしさが爆発した結果、頭から蒸気を発してその場で仰向けになって倒れた。

担架で運ばれたカイザーが目を覚まし、世一の体調や両親への挨拶、同棲の準備と婚姻の手続きについて興奮状態のままノンストップで熱弁するのはそれから三時間後のことであった。

潔世一♀
BM専属のアナリスト。ブルーロック時代から同性異性問わずに人を惹きつける魔性の女。渡独後、カイザーからの猛アタックを受けて交際開始。ここのところ体調が悪く念の為病院に行ったら妊娠が発覚した。誤解したチームメイトに問い詰められて揉みくちゃにされているカイザーを横目に「妊娠報告、どのタイミングでしようかなぁ…」と少し困っていた。妊娠を告げた後はカイザーの怒涛の囲い込みにより、即座に婚約・結婚ルートに突入した。カイザーのことを誰よりも信頼しているため、妊娠を知ってもさほど焦らず、「ミヒャ喜ぶだろうなぁ」と呑気に考えていたBMが誇る天然鈍感アナリスト。

カイザー
世一の恋人であり、BMのエースストライカー。「やっとの思いで手に入れた世一を自分が蔑ろにするわけないだろ!!」と今回変な誤解をしてきたチームメイトにブチ切れ。
世一の妊娠を知ったときにはあまりの衝撃で気絶してしまい、駆けつけたホテルマンに担架で運ばれた。後日、世一との交際・婚約を堂々と発表し、全世界のフットボーラーにドヤ顔でマウントを取った。
猫の飼育は子供の教育にも利点があると世一を説得し、猫たちも引き取った。それから一年後のカイザーのスマホの待ち受けは世一と赤ちゃん、そして猫親子が一緒にお昼寝をしている写真らしい。

— End —

Comments 8

つぶて4 天前

カイザーさん、その待ち受けおいくらで売ってくださいますk⋯((((( 幸せなお話をありがとうございます😭

藤猫5 天前
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W
www6 天前
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M
momoo06 天前
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蛇羅覇7 天前
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黒樹海 月7 天前
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N
nacky7 天前
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Sakuria
Where every work blooms
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