◇◇◇
そうして、きたる期末試験。
勉強会の成果あってか、皆の顔色はそこまで悪くは無かった。
あと、残るは実技訓練だ。
・・・なんか先生が多くないか、
「それじゃ、演習試験を始めて行く。」
三奈と上鳴は、ロボット退治なら楽勝だ!と盛り上がっているが、ただのロボット退治にこの数の雄英教師は必要ないだろう。
「残念!諸事情があって今回から内容を変更しちゃうのさ!」
なんか、相澤先生の捕縛布から校長がひょっこりでてきた。
なんか、可愛い。
捕縛布で相澤先生の身体をちょこちょこ降りてる、え、可愛い。
「これからは、対人戦と活動を見据えた、より実践に近い教えを重視するのさ!」
「というわけで、諸君らにはこれから2人1組でココにいる教師1人と戦闘を行って貰う!」
ペアと対戦教師は先生方が協議の結果すでに決めてあるらしい。
おそらく、彼らの課題点に対して天敵となる相手を割り振っているのだろうが、
・・・私は、どうなるのだろうか。
・
・
・
数日前
「ヒーロー殺しステインと敵連合のつながりによるヴィランたちの活性化のおそれか。」
会議室に集まったのは、
1A担任イレイザーヘッド、
副担任オールマイト、
校長である根津、
さらに、
ミッドナイト、
13号、
プレゼント・マイクm
スナイプ、
パワーローダー、
セメントス、
エクトプラズム。
対ヴィラン戦闘が激化すると考えれば、
ロボットの戦闘訓練は実践的ではない。
よって、今回の期末テストの実践試験では、
生徒二組に教師一人と闘わせることに決まったのだが、
最期に問題なのは、「[i:鷹目凛]」についてだ。
「・・・鷹目さんについては、最早プロ顔負けの戦闘能力なのよね。」
「すでに、エッジショットやベストジーニストがその実力を信用して、ヴィラン組織犯罪にも関わらせているぐらいだ。」
「その中での動きも実に見事だったと、様々なヒーローから評価が来ているし。」
「正直、彼女に見合う試験内容なんて考えられませんね。」
「・・・今の私では、彼女に勝てないだろうな。」
悩む、教師陣を見ていた根津が
「少しいいかい?」と声を上げた。
視線が集まり、根津はどんな感情を表しているのかも読めない顔で「提案がある」と言った。
「・・・実は、雄英体育祭以降、彼女を[[emphasismark:鍛えたい > ﹅]]とおっしゃる方から連絡を受けていてね。」
相澤ですら初耳で目を見開いた。
教師陣営も「[[emphasismark:あの > ﹅]]鷹目を鍛えるだけの実力があるのか、」と目を剥く。
「・・・ヒーロー・Zという人物をしっているかい?」
その言葉に全員が唖然とした。
オールマイトがガタンと大きな音を立てて立ち上がる。
「こっ、Zって!あの方はもう随分と前に引退されたはずでは!?」
「え、ヒーローZってって実在するのか!?」
「ウソデショ、伝説だと思ってた。」
「・・・私も。黎明期、オールマイトが活動するよりもずっと前に、何千人もの凶悪と言われたヴィラン達を一人で葬り去ったというあの、伝説は有名ですから。」
セメントスがいう通りの伝説を、相澤を耳にしたことがある。
本当に作り話だと思っていたのだが、
「それは、全て事実さ!!彼は、ご家族を大切にしたいとオールマイトが活躍するようになってからは隠居生活を送っていたんだが、体育祭の後に連絡が来てね。鷹目凛というヒーローを育てたい、と。そのためなら、他のヒーローたちを育てても良いとまで言ってくださっているんだ。」
伝説のヒーローが、あの鷹目凛を育てる、?
鷹目を見ていて、何か感化されるところがあったのだろうか。
相澤は「どうかな。」という根津校長の言葉に少し迷いを見せた。鷹目をこれ以上育てたくないという思いはまだ健在だった。
だが、最近、他の生徒たちともふれあってきて、
「このままではいけない。」と思うようにもなってきている。
生徒達とふれあう鷹目を見て、鷹目はこのまま強くなっていっても、
きっと仲間と一緒にいることを選択するだろう、
勝手に消えたりはしないだろう、
と思ったのだ。
もし、今の鷹目では叶わないような敵が現れたとして、アイツらが一人でも欠けることになったら今度こそ鷹目はどこかへ言ってしまうような気がしていた。
何より、相澤と同じような思いをあのコにして欲しくはない。
鷹目が職場体験から帰ってきて一月ほどがたった。鷹目とアイツらと過ごすことが増え、鷹目への異常なほどの不安や庇護欲は薄れつつある。精神状態が落ち着いてきたのだろう。だが、それと同時に、鷹目とアイツらに向ける感情の違いに戸惑うことが増えた。
辛い、とかではない。
苦しくもない、
ただどこかソワソワした何かが、鷹目を視界に入れる度、鷹目が誰かと話している度に身体を駆け巡るのだ。
・・・まあ、ともかく、
相澤も一歩進むべきだと考えたのである。
____[i:「分かりました。」]
相澤もまだヒーローZという人物にはあっていなかった。
どんな人物なのか全く検討もついていないが、根津校長が紹介するのだ悪い人物ではないのだろう。
「・・・私は、どうすれば良いのでしょうか。」
鷹目のもっともな発言に校長が「まっていました!」と言わんばかりに手を上げた。
「鷹目さん、君に紹介したい人物がいるのさ!
彼は、体育祭を見て鷹目さんを育てたいとおっしゃっていてね!今回からこの雄英高校の教師として加わって貰うことになった!!」
「私を、?」
「さぁ!貴方の出番なのさ!!」
鷹目がパッと上を向いた。上から何か大きなものが凄まじい速度で落ちてくる。
「凛!」
鷹目が地面を蹴って避けたと同時に、鷹目がさっきまで立っていた場所に大男が降り立った。
紫の髪に黒いサングラス。
濃い紫のスーツを着た見るからに筋骨隆々の男だ。
「で、でけぇ、」
「な、なんかクッソ強そうな人来たァ!!?」
「なんかよく分からねぇけど、こう、オーラがヤベェ!!!」
盛り上がりを見せる生徒達と同様教師陣も伝説のヒーローに目を輝かせる。
伝説に相応しい強さをヒシヒシと感じた。
耳郎が血相を換えて鷹目を振り返り、そして絶句した。
「り、ん、?」
ぽた、
地面に雫の跡がついた。
鷹目が、泣いていた。
相澤も目を見開いて言葉を失った。
救出してから、一度たりとも涙だけは見せなかったあの鷹目が泣いているのだ。
[b:[i:
「やはり、お前だったか!プラタ!!」
「ッ、・・・おじいさま、」
]]
「「「「「「「「「「「ええっ!?」」」」」」」」」」」」」
「エッ、ちょっと校長!?知ってたんですか!?」
「いや・・・私も初耳さ。二人は知り合いだったのか、」
大男が鷹目に腕を広げると、鷹目はかけ出してその巨体に飛びついた。
「おじいさま、」
「ハハハ、大きくなったな!」
どいうことだ、二人は知り合い、なのか?
鷹目に家族は居ないはずだ。
男は、体育祭を経て鷹目の所在を知ったということになる。つまり、
[b:[i:・・・つまりは、件の事件よりも前に鷹目とこの男は知り合っていた、?]]
鷹目がいっこうに彼から離れる気配がなかったため、一度校長がその場を納めた。
そして、その他の生徒の演習試験が始まったのだ。
[i:
[[emphasismark:元海軍大将 > ・]]である黒腕のゼファーは、
プラタにとって祖父のような男だった。
鷹の目のミホークは王下七武海の中では古参であったため、会議のたびに海軍本部に連れて来られるプラタにとって大将連中はもはや顔見知りであった。
小さな頃から知っており、
さらには「英雄」という呼び名がついている海賊らしくない少女を海軍の上層部は邪険にすることはできなかったのである。
コラソンとローの一件で、センゴク元帥に大きな恩を売ることとなったプラタは、そのつながりでお鶴や英雄ガープに可愛がられていた。
そのガープがしばしば「お前は海軍になって!わしの孫になるんじゃ!!」と海軍の訓練にプラタを放り込んだ。
そんなプラタを不憫に思い毎回助けてくれたのがゼファーである。
すでに教官として数々の海兵たちを扱いていたゼファーの元にプラタはよく避難したし、ゼファーはそんなプラタをどこか孫のように可愛がっていた。
しかし、プラタは頂上戦争を機に海軍には全く寄り付かなくなり、そしてその翌年、ゼファーは海軍を離れ、ネオ海軍として逆賊となった。
どのような運命があるのか、
プラタは[b:ソレ]を見ていた。
ただ近くの島でZについての噂を聞き、会いにきたのである。
[b:ゼファーは死んだ。]
「………プラタ、お前来てたのか。」
ゼファーを囲み、静かに涙を流す将校たちをプラタはじっと見つめていた。
歯を食いしばり、拳を握った。
隣に、青雉が立った。
昔からの知り合いだ、
親友に手を下した赤犬と決闘をして海軍を去ったと聞いていた。
その時の惨状が彼の身体から透けて見えた。
こちらを気遣うような声音だった。
「…………この世界はあまりにも生きづらいね。」
「…………………そうだな、」
]
◇◇◇
凛はゼファーの腕に抱えられたまま、皆が演習試験を受けている間も一言も話さなかった。
ゼファーもまた一言も話さない。
ただ、先生用のモニタールームで先生達の視線をこれでもかというほど浴びながらモニターを見つめていた。
今は、緑谷と爆豪がオールマイトと闘っている。
次は、凛とゼファーの番だった。
「・・・次、おじいさまと闘うのか。」
ポツリと凛が溢した言葉に、ゼファーは豪快に笑う。
「なんだ、怖じ気づいたか!?」
「・・・だって、おじいさま。あの化け物とやり合える化け物でしょう。」
弱気な鷹目を見るのは初めてで教師陣に動揺が走る。
「・・・少しでも油断すれば、この世とおさらばだ。」
「そこまでせんわ。」
この鷹目にそこまで言わしめるとは・・・
教師陣はご老体を見て戦慄した。
◇◇◇
ウチの親友、鷹目凛はいつも優しくて、おおらかで、落ち着いたコだ。どこか周囲とは違って大人っぽい雰囲気の女の子。
強くて、
彼女は絶対負けないから、
だからこそ、絶対的な安心感を感じていた。
だが、時々、
どこか違和感を持たせるコだった。
時折、窓の外を見つめる目が、
時折、離れた所からウチらを見つめる目が、
まるで、ウチが知らないどこか[i:ずっと遠く]を見ているようだった。
その違和感が、あのゼファー先生が現れてからずっと感じる。
次は、凛とゼファー先生の番だ。
凛の泣いた姿なんて初めて見た。
ああ、凛も泣くんだ、なんて当たり前のことに気づいて、それから、
初めて見せられた弱みに、
ウチはチャンスだと思った。
今、このときを逃してしまえば、一生このまま”凛”を知れないような気がしてならなかった。
生徒用のモニターでは声までは聞き取れない。
「・・・リカバリーガール。声ってどうにかして聞けないんですか。」
「エッ、耳郎くん?」
「どうしたんです?」
飯田やヤオモモを初めとしたクラスのメンバーの動揺に振り返る。
「今を逃せば、きっと凛は本当の”凛”をウチらに見せてくれないと思う。」
「ウチは今まで無意識に甘やかしてくれる、守ってくれる凛に甘えてた。でも、それじゃダメなんだよ。」
「凛は、親友なんだ。対等じゃないと、友達でいられない。ウチは凛と対等でいたい。その隣りにいつか立ってみせる。だから、凛をもっと知りたい。」
きっと、クラスの皆も同じことに薄々気づいている。
「だから、どうかお願いします。」
ウチがリカバリーガールに頭を下げると、ヤオモモが隣りに並んで同じように頭を下げた。
「・・・だね。」
「響香ちゃんの言うとおりだ、」
芦戸や葉隠も同じように並んで、そうして、皆がリカバリーガールに頭を下げていた。
沈黙していたリカバリーガールが頭上で「はぁ、」とため息を吐く声が聞こえた。
「・・・仕方ないコたちだねぇ。アンタらも、あのコも。」
「こっちにおいで。」と言われ、リカバリーガールについていく。
ウチも含めたクラスメイトたちの顔は驚く程真剣だった。
連れてこられたのは、教師控え室だった。
相澤先生がウチらを見てぎょっとした顔をする。
「お前ら!なんで、ここに、」
「ここだったら、音声も聞けるって聞いて。」
「!!リカバリーガール!」
先生が、リカバリーガールを咎めるような声を出すので、慌てて口を開いた。
「ウチが頼み込んだんです!!」
前に躍り出ると、先生が目を見開いてウチを見る。
[i:「ウチの友達が泣いてたんです!!
黙って引き下がれません!」
]
「だが、」
「どうしても、今、知っておかなければウチは一生凛の隣りに立てない気がするんです!お願いします!!凛は、ウチらの仲間なんです。泣いてたのに、放っておけない!!そんな仲間じゃダメなんです!!」
「お願いします。相澤先生。わたくしも凛さんをもっと知りたい。いつか、凛さんを支えられるような仲間になりたいんです!」
「私も、ずっと凛ちゃんに助けられてきた。凛ちゃんが辛いとき、側に居てあげられるように、ちゃんと凛ちゃんを知りたい。」
「僕も、助けて貰いました。鷹目くんは人を容易に助けてしまうのに、自分自身のことは一切僕たちには教えてくれないんです!お願いします!!」
皆が口々に先生方に頭を下げた。
「・・・アイツとアンタも、なんか隠してんのは薄々気づいてんだよ。アイツは、普通じゃねぇ過去を送ってるって職場体験の時に聞いてるしナァ。だが、アイツはオレたちにぁ、話す気なんざねーんだ。だったら、こうやって聞くしかねーだろうが!!アイツぁ、ずかずか遠慮無くオレたちに踏み込んでくるくせによォ。」
爆豪の言葉に、先生は口をつぐんだ。
「相澤くん。良いんじゃないかな。」
「校長、」
「君達、そろそろ始まるよ。空いてる席に座るんだ!」
校長の口添えのおかげで、ウチらは速やかに席に着いた。
モニター越しに見える演習場は、特に何の障害物もな場所だった。
刀をすでに構えた凛と、ゼファー先生が離れて立っていた。
[i:[b:『………あの時、みんな泣いてたんですよ。』]]
あの時、とは一体いつのことを指すのだろう。
[b:[i:
『ほぉ、お前はもうアイツらの顔なんぞ死んでも見たくないと思っていたんじゃないのか?』
]]
先生の言葉に凛は、ギッと彼を睨みつけた。
[b:[i:
『知ってたんですね、』
『ああ、あの男はお前の親友だったんだろう?
恨んでいたから離れたのではないのか。』
]]
凛の親友[[emphasismark:だった > ・]]、男、?
【START】
凛と先生が同時に地面を蹴った。
まるで隕石でも落ちてきたかのように地面が割れて浮き上がった。
先生の黒い拳と凛の刀がとてつもないパワーをもって拮抗していた。カメラが爆風に揺れる。
[b:[i:
『恨んだか、だと?ああ、恨んだよ。唯一の親友が、父親が大罪人という理由だけで、あの人達に殺されたんだ!!』
]]
「え、」
ヤオモモが隣で口元を押さえ息をのんだ。
クラス連中は誰も何も言えなかった。
今、聞いた言葉があまりにも信じがたくて、
もう一度、凛の刀が振り落とされる。カメラはもはや残像しか見ることが敵わなかった。
[b:[i:
『あの人たちを嫌いになれなかった。人として色んなことを教えて貰った。普通を知らない私に普通を教えてくれたのは、あの人たちだったから。』
『だが・・・どうしても許せないのは、私自身だった。』
]]
小さな音をマイクが拾った。
[b:[i:
『私は、力を持っているのに、なのに弱かった!目の前で奪われる命を救えない!』
]]
猛攻が途切れた。
轟音が響いて、砂埃が舞う。
先生が立っていた。
そして、
「凛ッ、」
凛が先生にぶん殴られて、吹っ飛ばされていた。
隅にあった瓦礫に突っ込んでいく。
「鷹目が、」
「ウソだろ、」
男が叫んだ。
[b:[i:
『何故!お前はヒーローを目指す!!お前は弱いんだろう!?そんなに辛いなら、やめてしまえ!!』
]]
瓦礫から、凛が出てきた。
切り傷を作り血に濡れながら、凛は刀を構える。
[b:[i:
『ココで、強くなれば、救っても救っても手からこぼれ落ちていった子供達をちゃんと救えると思った。』
]]
血に濡れた顔で、その鋭い眼差しには強い光が灯っていた。
[b:[i:
『おじいさまは、もう私のコトは知ってるんだろう?8年前の事件で、兄さん達と相澤先生以外のヒーローが私たちに言ったんだ。「[[emphasismark:かわいそうに > ・]]。」って。』
]]
8年前の事件、
[b:[i:
『失望したよ。こんなのが、死んでいった子供達がずっと待っていたヒーローという生き物かとね。』
]]
凛は頬に着いた自分の血を拭いながら、走り出した。
[b:[i:
『アンタなら分かるだろう!?
地獄を知らない人間と地獄を知る人間は違う!
あの子達の、気持ちを「かわいそうに」なんて粗末な言葉で踏みにじったヒーローに私は未来を託せない!!
「もっと泣いて良いんだよ」なんて陳腐な言葉を並べ立てる奴らに言ってやりたかったよ。
泣けば、過去は変わるのか?
泣いていれば、現状は変わるのか?
「泣けば良い」なんて思ってるのは、泣いたら救われる当たり前があった人間だけだ!!』
]]
辛そうに泣き叫んでいる、凛に、
ウチはなんて声を掛けたら良いんだろう。
凄まじい気迫で凛は先生に迫る。
一進一退の激闘は到底目に負えるモノではなかった。
ただ、砂埃の果てでまた凛が地に倒れていたから、
今度こそ、心臓が握りつぶされたように感じた。
[b:[i:
『お前は昔から本当に変わらないな。
絶対に悪には染まらない。
普通ならば、性格がねじ曲がってもおかしくないというのに・・・
だから、お前は・・・英雄なんだ。
お前は本当に強い子だ。
俺なんかよりずっとな。』
]]
試験は終わった。
制限時間は超えている。
だが、誰も動けなかった。
[b:[i:
『・・・まあ、それはそうかもね。』
『フン、言ってくれる。』
]]
二人の空気は先程まで激闘があったおは思えないほど、柔らかかった。
[b:[i:
『おじいさまが、ヒーローを育てたいと言っていたのは覚えているけど、いろいろあったでしょう。・・・どうして、でてきたの?』
『【前】から、お前を育ててみたいと思っていたのが1つ。もう一つは、お前の仲間達を強くしようと思っているからだ。』
]]
・・・ウチら、も?
[b:[i:
『あの体育祭でお前が楽しそうな顔をしていたのが、俺ァ嬉しかったんだろうなァ。小さい頃、お前は強さを一身に求める子供だった。笑ってるとこなんぞ、初めて見たぞ。』
]]
凛はその言葉にはにかむようにして小さく頬笑んだ。
[b:[i:
『・・・仲間といると、心が。すごくぽかぽかする。』
『ああ、それが仲間ってもんだ。
だから、お前がまた何かを失うことがないように、俺ァ私情であの子供達を強く育てる。』
]]
・・・・・・そりゃ
「願ったり叶ったりだ。」
走り出した。
教室を飛び出て、一目散に凛のいる演習場に向かって走り出した。
「凛ッ!!!」
演習場に飛び込んで、地面に転がる凛に駆け寄る。
「響香、?」
凛は急に現れたウチに、びっくりして目を見開いた。
凛を優しく抱き起こして、響香は凛の身体をぎゅっと抱きしめた。
「ごめん、ウチ。凛のこともっと知りたくて、勝手に試験中の音声聞いてた。」
小さく息を飲む声を耳が拾った。
「ウチ、凛に頼ってばっかりだったよねぇ、ずっと凛に甘えてたよねぇ、」
情けなくて、不甲斐なくて、
自分が本当に愚かで、
涙がこぼれ落ちた。
止まれ、と思うのに涙は止まらない。
「響香、?」と凛が戸惑うようにウチの背に手を添えた。
「凛さん!」
「凛ちゃん!」
「鷹目くん!!」
「鷹目ェ!!!」
「鷹目さん!!」
「凛ーッ!!!」
・
・
・
背後から、皆が追いついてきて、ヤオモモがウチとは反対側から凛を抱きしめた。芦戸に麗日も飛んできて、上からどんどん覆い被さっていって、団子状態になった。
「ウチ、ゼファー先生にもっと強くして貰いたい。ずっと、思ってたんだ。いつか、凛の隣りに立って、凛と一緒に闘いたいって。」
「!」
「凛の過去に何があったかは、聞かない。
もし凛が話したければその時に話してくれたら良い。
ウチは、凛が、もっと幸せそうに笑うところがみたいんだ。だから、死ぬ気で、いや絶対死なないけど、それくらいの気持ちで頑張るから。
だから、これからも凛の側にいても、いいかな。」
「私ももっともっと精進いたしますわ!!」
「私も!!リンちゃんに頼って貰えるようになる!」
「私も!!」
「俺も、もっと強くなって鷹目の盾にでもなってやるぜ!!」
「え、俺は何の役したらいい!?」
「自分で考えろヤ!!爆破すんぞ!!」
「ココで、爆破すんのはやめて!かっちゃん!!」
「俺も、早くお前に追いつかねぇと。」
「みんな!凛ちゃんのこと大好きなんだからね!!」
凛が、また少し泣いていた。
背に添えられた手の力が強まっているのを感じる。
「良いに、決まってる。」
鷹目凛:ライジング
彼女は、あの人身売買に捕まるまでの五歳までの間。
おそらく、ゼファーさんと交流があったのだ。
[b:[i:『恨んだか、だと?ああ、恨んだよ。唯一の親友が、父親が大罪人という理由だけで、あの人達に殺されたんだ!!』]]
彼女にも人を恨む心がちゃんとあった。
[b:[i:『どうしても許せないのは、私自身だった。』]]
弱い自分が許せないと彼女は言う。
[b:[i:『ココで、強くなれば、救っても救っても手からこぼれ落ちていった子供達をちゃんと救えると思った。』]]
あの事件で、彼女は起きている間は子供を守り、眠っている間にはその子供が殺されているという地獄を生きていた。
[b:[i:『失望したよ。こんなのが、死んでいった子供達がずっと待っていたヒーローという生き物かとね。』]]
今すぐ見つけ出して、一人ずつぶん殴ってやりたい。
そんな安い言葉で、彼女を傷つけた奴らを。
失望するよ。
そんなものを見せられたら、
[b:[i:『アンタなら分かるだろう!?
地獄を知らない人間と地獄を知る人間は違う!
あの子達の、気持ちを「かわいそうに」なんて粗末な言葉で踏みにじったヒーローに私は未来を託せない!!
「もっと泣いて良いんだよ」なんて陳腐な言葉を並べ立てる奴らに言ってやりたかったよ。
泣けば、過去は変わるのか?
泣いていれば、現状は変わるのか?
「泣けば良い」なんて思ってるのは、泣いたら救われる当たり前があった人間だけだ!!』]]
怒りで目がチカチカしてきた。
「なんてこと、」
ミッドナイトが息をのんだ。
「誰だよ、
・・・どこのどいつだよ!そんなクソ野郎は!!!」
マイクが怒りに叫び声を上げた。
「shit」
オールマイトが珍しく怒髪天を衝いている。
「そんな偽善的な言葉を、かけるヒーローが、」
13号は唖然としていた。
「ヒーロー ガ キズツケタ ノカ。オサナイ タカメ ヲ。」
「なんという、ことを、」
「・・・クソだな。」
エクトプラズムにスナイプ、パワーローダーが怒りに打ち震えている。
「・・・その失望が、あの子にあそこまでの強さへの執着と、脅迫概念にも近い責任感を植え付け、そして他者を頼るという弱さを奪ったんだね。」
校長が静かにそう言った。
聞きたかった。
彼女が本当は何を思っているのか。
何をもってヒーローを目指しているのか。
当時チームアップを組んだヒーローたちへの猛烈な怒りと失望とともに、
安堵を覚えた。
彼女の心が、壊れていないことに、
彼女が泣けたことに、
耳郎たちが先程演習場に走っていった。
俺も立ち上がろうとして、
だが、聞こえてきた言葉にもう一度座った。
[b:[i:
『お前、あの担任。イレイザーヘッドだったか?かなり信頼しているだろう。だから、あの男もみっちり鍛えるぞ。』]]
俺、を、鷹目が、
信頼、?
心がざわついた。
彼女はどこか唖然とした様子でゼファーさんを見上げていた。
[b:[i:
『え、・・・なんで、相澤先生、』
『子供はともかく、大人は基本的に嫌いだろうが。
・・・まあ、あれだけ、大人の汚い部分を見て、
ヒーローたちにされた仕打ちを考えれば、
信用なんてできないだろうがな。』
『・・・・・・・・・・いや、だから!どうして、私が先生を信頼していることになる、?』
]]
彼女は困惑したような表情をしていた。
そんな彼女の頭に、ゼファーさんがポンと大きな手をのせる。
[i:
[b:
『なんだ、気づいてないのか。
お前、あの男には気にせず背中を見せて居るぞ。
それに、モニターを見ていた時の表情も柔らかい。
横に座っても、一切の警戒もしていない。
誰がどう考えても、心を許してる証拠だろう。』
『・・・・・・えっ、』
]
]
捕縛布を口元に引き上げた。
ダメだ、これは、
口元の緩みが収まらない。
彼女にとって信頼できる数少ない大人に、
俺は入っていたのか。
その事実が嬉しくて、とにかく嬉しい。
心がじわじわと温かくなっていく。
[b:[i:
『な、』
]]
モニターから、彼女の聞いたこともないほど弱々しい声が聞こえて、顔を上げる。
「ッ、」
なんだよ、
どうして、そんな顔をするんだ、
ーほんのり染まった赤い顔、
ーわなわなと震える口元、
ー見開かれた目、
その全てに、こっちの顔まで熱くなってくる。
心臓が、うるさい。
なんだ、
なんなんだ、
なんでこんなに五月蠅いんだ、
「・・・あら、この展開は予想外。」
「マジで、?相澤はともかく、マジで?」
「えっ、えっ?」
外野が五月蠅い。
_______愛おしい、なんて。
「・・・相澤くん。流石に在学中は気をつけて欲しいのさ☆でも、合意の上のお付き合いまでなら構わないさ!」
「ちょっと、・・・黙れください。」
























