注意
*捏造妄想死亡キャラ生存
*名前付き男主
*時間軸迷子
*作者は漫画未読アニメ多少映画は毎年追っかけてる程度のニワカです
何でも許せる方のみお進みください。
小さい頃から手先が器用だった。
そのせいなのか、一般的に頭の良い人とかがやるようなパズルだとか知恵の輪とかは手先の感覚と勘で全て解くことができるし、機械のような細かいものの分解や修理も得意である。
体を動かすことも得意だ。
学校の勉強も同じくらい得意だったら良かったのに…
……
…いやまあそれは置いといて!運動神経はなかなか良いほう。
筋力と持久力は運動部員程度だが、バネや柔軟性、動体視力なんかは同級生どころか大人からも頭ひとつ抜けていて、なんなら現在もグングン伸びている。アクロバティックな動きもできるので、ちょっと怖いけどパルクールみたいなこともできるっちゃできる。
コンクリにヒビ入れるっていう空手部の毛利さんには普通にパワーで負けるけども。
と、以上二点が俺の周りに自慢できる長所なのだが。
実は助かる部分もあればちょっと困る部分もあったりなかったりラジバンダリ。
「おいおい、ゆーちゃん。考え事なんて余裕じゃないの。」
「逆だ。余裕がねえから現実逃避してんだろうよ。」
「思考を何処ぞへ飛ばそうが現実から逃げることは叶わん。不毛だぞ。」
「ちょっと静かにしてて下さいって!!」
その困ることの代表こそが、今現在俺に向かって切り付けてきてるお侍さんとその横で囃し立てる赤ジャケ黒ジャケである。
彼らとの出会いは数年前のこと。
俺はその当時まだ小学生だった。
偶々立ち寄った河川敷に壊れたラジカセが不法投棄されていたので、家で何度かラジカセを解体して戻してを繰り返して遊んだ記憶を元に弄り倒していたのだ。
そんな俺の隣に、気がつくと赤ジャケのおじさんがしゃがみ込んで手元を覗き込んでいた。
そんで、しばらく俺の手つきを観察した後に口の片側だけ上げてにやりとして言った。『お前さん、才能あるぜ』と。
あとはもう、あれよあれよという間に黒ジャケとお侍がいるところに連れて行かれて顔を通され、その日以降彼らの手が空いた時に何処からか現れては俺に“修行"をつけていくようになった。
やれ、「それを解体しろ」だの「これを組み立てろ」だの「この暗号を解け」だの「あれをあそこから取ってこい」だの「銃を撃って的に当てろ」だの、逆に「銃弾を避けろ」だの、仕舞いには「飛んでくる斬撃を避けろ」だのとんでもないモンばっかり。
時にはいきなり爆弾の前に連れてこられて「なんとかしろ」なんてこともあった。
全く何度死にそうになったことか。
「とかなんとか言いながらも死なずについてこれてるじゃないの。」
「結果論!結果論ですから!現に今また死にかけてます!」
「隙あり!」
「ヒエッ!?」
ギリギリで避けた拍子に眼鏡(伊達)が斬られた。
本体が死んだ!この人でなし!
「なんで伊達眼鏡なんてつけてんだよ。しかも洒落たデザインでもない安物。」
「だって!眼鏡頭良く見えるじゃないですか!」
「理由がアホ丸出し」
「そこ!」
「ぎええ!!」
ギリギリ以下略ゆるキャラのぬいストが死んだ!この人でなし!
「このゆるキャラ気持ち悪くねーか?ゆーちゃん趣味悪いな。」
「かわいいから!かわいいから!」
「ハッ!」
「ほげー!!」
ギリ以下略死んだ!この人でなし!
こうして結局この日の地獄の修行は向こう数時間続き、俺はとっぷり日が暮れた頃に漸く解放されることとなった。
トホホのホ。
常日頃海外を飛び回ってお宝探しをし、ついでに彼らを執念深くストーキングしてくるおっさんからも逃げているという超有名(?)トレジャーハンターである師匠3名は、同じ場所に長居できないという理由から時々俺の前に現れてはとんでもない密度の修行を課してくる。
俺の各種能力がぐんぐん伸びているのはそのおかげもあるのだろうが、なにぶん先程も述べたように内容がアレ。そのせいで毎回ボロボロで両親にも心配をかけるわ、同級生からは数週間に一度派手に怪我をするポンコツだと思われるわ。ひでえ話である。
トボトボと帰途につき、集合住宅の階段を登って自宅へ。
途中顔を合わせた近所の奥さんには「あらあらゆうちゃんったらやんちゃもほどほどにね」と呆れられるし、大家のおばあちゃんには「元気ねえ」と微笑ましそうな顔をされるし…ひでえ話である!
「ただいまー…」
「おかえり、ちょっとやだァ!アンタまたボロボロじゃあないの!今日は何したのよ。」
「ちょっと…えっと、刃物振り回してる人がいて。」
「あらまた?全く物騒よねこの辺って。」
刃物持ちが闊歩してるのを物騒の一言で済ませるのは果たして正常なのだろうか。
以外ッ!それはYES!俺の住む街に関しては割りかし正常と言える!
改めて自己紹介をしよう。
俺の名前は蓮原優雨、帝丹高校に通うちょっと手先が器用なごく普通の男子高校生!
身長は四捨五入して180!体重は秘密♡
好きな食べ物はタコとイカとクラゲ、嫌いな食べ物は特に無し。趣味は音楽鑑賞と映画鑑賞。
得意なことは上述の通りだが、逆に苦手なことは勉強と人の顔や名前を覚えることである。
師匠たち3人…赤ジャケはなん…なんとか3世…黒ジャケは……事件?トン助?なんだったかな…お侍さんは確か名字が石原かなんかだったのでさとみさんで覚えた。俺は天才かもしれないね。
「あれ?後藤くんじゃあないか。こんなところで何を?」
「ッ!?」
その日、小五郎のおっちゃんと蘭とオレ、それからおっちゃんの弟子である安室さんの4人は、鈴木相談役が所有する博物館に来ていた。
というのも、なんと数日前にまた怪盗キッドから相談役のもとに予告状が届いた為だ。
だが…
「安室さん、どう思う?」
「…まあ、十中八九騙りだろうね。」
「やっぱりそうか…」
燃えている鈴木相談役や中森警部たち、目をハートにしてメロついている園子には悪いが、これはおそらくキッド本人からの予告状などではなく名を騙った別の人間が作成したものだ。
そもそも今回ターゲットにされたものはビッグジュエルではなく、小粒の宝石が散りばめられた精巧な黒馬のオブジェ。予告状も印刷した文字をつぎはぎにして作られており、いつもの予告状とは余りにも雰囲気もメッセージ性も違いすぎる。
とはいえ、予告を受けたからには警戒しないわけにはいかない。そんなこんなでオレたちは厳重な警戒が敷かれた博物館の展示スペースで時間を潰していた、のだが。
ここで冒頭の出来事。
気配も何もしなかった背後から唐突に声をかけられ、驚愕しながら勢いよく振り返る。
キャラメルブラウンの癖毛に安っぽい作りの眼鏡をかけた見覚えのある青年が、しゃがんでこちらを覗き込んでいた。
彼は工藤新一の同級生…蓮原優雨だ。
「後藤…って、誰?」
「ん?君だ、君。えっと…後藤、正一くんだっけ?」
「…それ、もしかしてだけど、工藤新一?」
「あー、そう、たしかにそんな感じだった気も…うん、そうだ。工藤新一くんだ。」
蓮原はなるほど!と言うかの如く手のひらに反対の拳をポン、と置く。
「えっと…ボクは江戸川コナン。新一兄ちゃんとは親戚でよく似てるって言われるんだ。ていうか、新一兄ちゃんとは体格が全然違うと思うんだけど…」
「うん…うん?うーん…そういえばそうだな。おかしいな、パッとこうひと目見て『あっ、加藤くんだ!』って思ったんだがな。確かにサイズ感が違うぜ。」
「だから工藤…」
コナンを見てすぐに工藤新一が思い浮かんだあたり、とてつもない勘の良さとでも言えば良いだろうか。
凄いというか恐ろしさすら感じる、筈の出来事なのだが。余りにも人の名前を覚えないというのと、彼本人の雰囲気のせいで緊張感がカケラもない。
突然現れた第三者に驚き、警戒していた気持ちが一気に萎んでしまう。
「…お兄さんは誰?どうしてここに居るの?」
「俺は蓮原優雨。その、佐藤陽一くんの同級生だよ。ここでバイトしてるんだ。」
「今一般職員はここに居ないはずなんだけど。」
「ああ。今日は急遽休みだったけどウッカリ忘れて来ちゃったんだ。今さっき気づいた。」
「ええ…」
思わず半目になったところで、オレの様子がおかしいことに気づいた蘭と園子がやって来る。
見覚えのない人影と話し込んでいるのが気になって来た2人は、オレの話し相手を見てやはり驚いた表情を浮かべた。
「えっ!蓮原くん!?」
「なんでここに!?」
更にその声に釣られて、次々にその場にいた面々がやって来る。
オレと同じく、皆は何故蓮原がここにいるのかと尋ねた。
そして、オレの時と全く同じ返答をした彼に呆れた表情となる。
それから念の為相談役の指示で部下の人が職員のデータベースを調べると確かに彼はここでアルバイトをしていることがわかり、場の空気が弛緩した。
「でも、ここは今かなり厳重に警備されている筈です。それなのに、よく入り口で止められずにこんな奥まで来れましたね。」
しかし、安室さんが唱えた疑問により再度蓮原へと視線が集中する。
「警備?」
「ええ、見ませんでしたか?武装した警官や警備員がたくさん巡回していたでしょう?相手は怪盗キッドですから、普通の警備よりも尚のこと厳しく、しっかりと警戒体制が敷かれている。」
「そんな中、どうやってここへ?」と安室さんは蓮原に鋭い視線を向けた。
オレたちも彼の言葉を聞き、確かにそうだと改めて蓮原の方を見る。
緊張が走る中、まず真っ先に中森警部が飛び出し彼に掴み掛かった。
「キッドか!キサマ、キッドなのかァ〜!?」
「い、いひゃい!いひゃい!やめてくださいよォ!」
頬や耳どころか頭全体をグイグイ力任せに引っ張られまくり、髪はめちゃくちゃに、眼鏡は吹っ飛ぶ。
しかし顔がマスクとして剥がれることはなく、先ほどよりも全貌が顕になった顔で蓮原は赤くなった頬を抑えた。
彼の涙が張った目は思いのほか睫毛の長いアーモンドアイで、通った鼻筋と薄い唇、よく見なくともかなり知的な美形だ。
「ああ眼鏡が…俺の知力の証が…」
しかし悲しいかな本人の知力はコレ。ヨレヨレと情けない姿で吹っ飛ばされた眼鏡を拾いに行った。
突然のイケメンに目をハートにしかけた園子がスッと真顔になる。
一連の流れに安室さんも流石に多少警戒を削がれてしまったらしい。苦笑いしながら「えっと、それで…」となんとか軌道修正に持っていった。
蓮原曰く、
「警備?ああそういえばいつもより多かったような…特に気にせず通ったんですけど、偶々見つからなかったのかな。」
などと。
心なしかすこし歪になった眼鏡をかけ直してから、ぼんやりのほほんとした口調で話す。
中森警部は苦い顔で頭を抱えながら「帰ったら訓練し直しだ…!」と低く唸っていた。
そんなこんなで、結局蓮原はオレたちと一緒にいることになった。
追い返した後にまたキッドになって戻って来るかも、なんて疑心暗鬼になると面倒だからと。
彼にとっては急にあまり知らない人たちの中に放り込まれたような状況下の筈だが、やはり緊張感のカケラもない。
のんびり近くの展示品を見て回って「この辺担当じゃないからあんまりしっかり見たことないんだよなー、高そう」と呟いている。
「蓮原の兄ちゃんはなんでここでバイトしてるの?美術品とか文化とか歴史に興味があるとか?」
「いや、時給高かったから。」
「お客さんに説明求められた時はどうしてたの?」
「担当フロアの展示品の説明文はほとんど暗記してるから、それっぽく読むだけだな。」
「へー!暗記が得意なんだね!」
「そうそう!……勉強以外ならね…」
「ああ…」
そういえば小さくなる前、学校のテスト返却時に蓮原の横を通った時にチラリと見えた点数は…
*******************
それから数時間程経っただろうか。
なかなかに長い時間の経過、変わらない状況に少しずつ皆の警戒が緩み、欠伸をするひとたちが目につき始めた頃。
バチンッと音が鳴り響き、あたりが一気に暗闇に包まれる。
「停電だ!」と皆が騒ついた瞬間、硬質なものを破壊する音と同時にけたたましい警報音が鳴り響いた。
マズい、と焦ったその時。
鈍い音と聞き覚えのない男の呻き声が聞こえた。
慌ててその方向_黒馬が展示されていたブースへと各々の懐中電灯を向けると、地面に倒れ込む警備員服の男と何かを持って立っている蓮原の姿が。
直後、電気が復旧した。
懐中電灯の僅かな灯りでしか見えなかった光景が、明るい電灯の下であらためて衆目に晒される。
状況の理解が難しく困惑した者が多い中、蓮原は平然と抱えていた何かこと消火器を放り捨て、近くの壁に向かおうとする。
「ちょ、ちょっと待って蓮原の兄ちゃん!」
「ん、何?」
何?なんて尋ねながらも彼の動きは止まらない。
暗闇の中で何故幾らか離れた位置にあった消火器を手に取れたのだとか、泥棒らしき人物を正確に殴打できたのかとか、色々と聞きたいことはあったのだが。
それよりも今、目の前で周辺にあった清掃用の脚立を使って天井を弄っている彼が何をしようとしているのか、それが先決だ。
「今、何してるの!?何をしようとしてるの!?」
「天井裏に行こうとしてる。」
「何で!?」
「最短で監視室に行く。まだ館内に仲間がいるから。」
「何でわかるの!?」
「勘だな。」
そう言いながら、彼はあっという間に天井板を開き、まるで煙が昇るように音もなく天井裏に消えていった。
その場にいた人々はコナンと蓮原のやり取りを呆然と見ていたが、彼が天井に上がったあたりでハッと我に返り動き始めた。
警察官たちは倒れていた男の身柄の拘束。他の警察官や警備員たちは本当に泥棒の仲間がいるのか確かめるため館内へ散開。
そして、安室をはじめとした探偵組は近くの警備員に中央監視室の位置を尋ねてそこに向かった。
展示室を出ると、其処彼処で警報が鳴り響いている。
ランプが点滅して非常事態を伝え、外に繋がる出口は軒並み電子錠で施錠されているようだった。
コナンたちは何とか通れる道を探し、中央監視室へと走る。
果たして、辿り着いた先の中央監視室。
その真ん中あたりで蓮原は呑気に椅子に座って、職員用のコーヒーメーカーで淹れたらしいカフェオレを啜っていた。
「おお、足速いな皆。」
「何を飲んどるんだ!というかお前、どうやってここに!」
「どうやっても何も、天井伝って…毛利さん見てたじゃないか。」
「見てても訳わかんねーんだよ!」
「そんなことより蓮原くん、どうやって博物館内の警備システムを動かしたんだい?アルバイトの君にそんな権限はない筈だ。」
「バイト初日に館内案内されたときに、偶々ここのシステム触ってる人見たんで。ホントは良くないんだけど、IDとパスワードを、ちょっと。」
「…その程度見ただけで、覚えたのか?」
「暗記は得意。」
「そんなレベルじゃないでしょ…」
彼の規格外な行動に全員が唖然とする中。背後から警報音に混じってガタリと物音が聞こえた。
振り返ると、息を切らし目を血走らせた警備員らしき男が2人。その手には金属質な光を放つ拳銃。
明らかに普通ではない彼らを見れば、犯人の仲間であるとはすぐに気づいた。
「そうなるだろうな。」
皆が警戒し構える中、ことが起きる前にコナンと話していた時と変わらない呑気なトーンで蓮原は話す。
「今この博物館から出ることはできない。で更に時間が経てば恐らく中にいる人員は1人ずつチェックされる。そうなればアンタらは終わりだから、最終的には多分ここに来ると思ったよ。」
犯人たちはコナンたちには目もくれず、博物館を閉鎖した蓮原に照準を合わせた。
「ところで、この博物館の上級警備員の装備、知ってる?」
バチバチッと鋭い音が連続して響き渡る。
犯人たちは引き金を引く前に、痙攣しながらその場に倒れ伏した。
蓮原の手に握られているのは、小型のテーザーガン。
「珍しいよな。海外じゃ結構使われてるっぽいけど、日本じゃ見かけない。ここはなんか特別に許可取って、海外より若干威力低めのを採用してるらしい。」
「上級警備員って…確か蓮原くんはアルバイトじゃ…」
「……さて、多分犯人はこれで全部だから鍵開けなきゃ。」
蓮原は目と話を逸らした。
が、結局そう簡単に逸らせる筈もなく。
犯人を全員確保したあと、蓮原は警察と警備員と小五郎と安室と諸々の大人たちにこっぴどく怒られた。
犯人確保に多大に貢献してくれたことは兎も角、犯人の殺意を自分に向けるようなとんでもなく危険な行動と状況が状況でなければまず間違いなく犯罪である所業の数々のためだ。
唯一庇ってくれたのは鈴木相談役くらいだったが、流石の彼も姪っ子と同い年の子供が危険を冒したことについては柔らかめに諭していた。
結局、全てが終わる頃には蓮原はショボショボと萎れていた。
*******************
後日、毛利探偵事務所の下階にある喫茶ポアロにて。
看板娘の梓に向かって挨拶をしながら入店した蘭と園子、世良の少し後に、見覚えのある姿が扉越しに現れた。
「いらっしゃいま__ああ、そっか!今日からだっけ!」
穏やかに笑って梓に挨拶を返しながら店の奥に入っていった彼の姿に、3人は目を丸くする。
「今のって…」
「嘘ォー…」
「彼確か、同じクラスの…」
「これ、エプロンね。各業務については随時教えるから、そうね、いきなりだけど折角だし注文取ってみようか!あそこにいるJK3人組のところにいってらっしゃい!」
新品のエプロンをつけた青年が、ゆっくりと蘭たちのもとにやってくる。
それから、僅かに緊張した笑顔でペンと注文メモを掲げた。
「ええっと、ご注文、お決まりでしたらどうぞ。」
俺がまだ中学生だったとき、師匠に変な課題を課された。
曰く、「お前が貴重だと思ったものを試しに取ってこい」と。
「金とか、宝石とかですか?」
「そりゃー、ゆーちゃんがそれを貴重だと思ったんなら良いんでねえの?」
「ええ、そんな曖昧なこと言われたって…」
「何に価値を見出すかなんざ人それぞれさ。」
「期限3日な」と赤ジャケ師匠はそれっきり、グラビア雑誌に視線を落として何にも言わなくなった。
黒ジャケもお侍さんも各々自分の武器を手入れするばかりで黙り。
俺はその日結局、自分の中の貴重って価値基準について悩みながらも答えを出せないまま帰途についた。
次の日、期限まで残り2日。
普通に朝起きて、学校に行って、家に帰ってメシ食って寝た。
その間両親や友達や近所の人にその人の思う貴重なものってやつを尋ねてみた。
金、伴侶、宝石、ブランド品、チャリンコ、恋、愛、友情、家族、子供、犬、猫……
その日は全世界一律バブルで世界平和な夢を見た。
更に次の日、期限まで残り1日。
普通に朝起きて、学校に行って、家に帰ってメシ食って寝た。
ひとしきり悩んだけど、俺は悩むの苦手だから5分も考えれば頭が次の次のメシに行ってしまう。
晩ごはんはお家焼肉だった。肉最高。
その日は牧場主になる夢を見た。
更に更に次の日、期限最終日。
その日は休日だった。俺ってば長期休暇の宿題は溜めちゃうタイプであるが、やっぱり答えはまだ出ない。もう松阪牛とか神戸牛とかでいいんじゃないかなと思う。
ただまあ師匠からの課題だし、明日も休みだしやれるだけやっちゃおうと思って一日中出かけた。
近所だけじゃなくてちょっと離れたところまで足を伸ばして色々見て回って、夕方には一回帰って、メシ食って寝るフリして窓から外へ。
明日休みなので夜更かししちゃってもいいのだ。
それで、寝ないようにエナドリ飲みながら夜の町を散策した。
一応顔も体格も隠せる服装だが、補導されては面倒なので人目につきにくい道を歩いたりちょっとパルクールっぽい動きしたり。
酔っ払いのゲロとか、屯してるヤンキーとか、アレなホテルに出入りしてる明らかに不倫っぽい人たちとか、キャバクラの裏でタバコ吸いながら愚痴ってる姉ちゃんたちとか、猫の集会とか色々見た。
しかし、やっぱり大切とか好きとかならあれだが、貴重なもの1つって言われると困る。猫じゃだめかな。
結局数時間は収穫無しで、面倒臭いからもう適当な人から財布でもスッて帰ろうかなあなんて思ってたら、休憩していたビルのお隣の廃ビルから何か言い争うような声が聞こえてきた。
多分どっちも男。
耳を澄ませ!俺の地獄耳イヤー!
ホモの修羅場なら学校での良い話のネタになるな、とか割と最悪な野次馬根性でこっそり覗く。
すると、なんか思ったよりだいぶ緊迫した雰囲気だった。
「自殺は諦めろスコッチ…お前はここで死ぬべき男ではない…」
「何!?」
「俺はFBIから潜入している赤井秀一…」
な、何ィーッ!?自殺!?
えっホモの修羅場とか言ってごめん、なんか逃げてる感じだったし言い争ったかと思ったらすごい距離近くなるから…
というかなんかFBIってアレだよな、アメリカのなんかすごい警察みたいな…しかも自殺ってことはもしかしてお相手のすこ…すのこみたいな人が持ってる黒いのはもしや拳銃!?……いや黒ジャケ師匠が普通に目の前で出してくるしその辺の強盗も持ってるし別に珍しくはないか…
だがしかし!俺はここで閃いた!
どんだけ拳銃が珍しいくなかろうと、目の前にいるのは自殺志願者。つまり、彼の自殺を止めれば“貴重なもの”を取るって課題は達成できるのではないか!だってほら命だもんな!
というわけで思い立ったが吉日。
気配を消し、音を立てないように建物の影を伝いながら隣のビルから廃ビルに飛び移り、2人のそばに移動する。
そしてカン、と聞こえた第三者の足音に2人が同時に意識を向けた瞬間!必殺スピードスリ!
「うわっ!?な、誰だ!?」
「何者だ!?」
いやまあ2人のクソ狭い足の隙間を通りながら握りしめられた拳銃スッたんですよ。流石にバレます。
でももう遠距離武器取っちゃったもんね。俺と2人の間には距離があるし、拳銃は俺が持ってるから2人は俺に迂闊に近寄れないし、アドバンテージアリアリだ。
2人が混乱している間にさっきの足音の人もクソデカ扉開閉音と「スコッチ!」という絶叫と共に到着し場がさらにカオスを極めているが問題ないね。
ただ、あくまで俺は自殺志願者を止めるって名目なのだ。
一旦落ち着いた風な3人がかなり警戒して見てくるけども、誤解してもらっては困る。
「…何が目的だ。」
「目的は済んだ。」
「お前は何者だ。組織の人間か。」
「何者でも…強いていうなら君の“命”を頂きに来た人間かな。」
「なっ!?やはりスコッチの暗殺を…!?」
後から来たキンパさんが銃を向けてくる。いやお前も持っとんかい!
「誤解しないで貰いたい、目的は済んだと言っただろう。」
「まさかこのビルに爆弾でも仕掛けたのか!?」
そんなわけないだろ(ドン引き)
なんかもう相手が冷静じゃなさすぎて話がまともにできない。
いやわかるよ、知り合いが銃持った人間に殺されそうって思い込んじゃったらそうなるよな。
だがそれはそれとしてなんか段々賢そうな口調保つのしんどくなってきたし、めんどくさくなってきたし、エナドリのカフェインも切れて眠くなってきたので帰りたいのだ。
帰ろう。
「さあ?とにかくもう用はない。」
「なっ、待て!」
ずるりんと手すりから外に体を落として下の窓にIN。次いでサッと移動し角の窓から別のビルに飛び移り、そのままビルからビルを移動して家に帰った。
外は割と寒かったので汗はあんまりかいてない。
窓から自室に入り、取ってきた拳銃を机の引き出しに隠してからサッと着替えてベッドに戻った。
おやすみ3秒!
その日は宇宙で巨大ロボが戦う夢を見た。
更に更に更に次の日、つまり3日後。
「宿題提出ターイム!で、何とってきたの?ゆーちゃん。」
「これです。」
テンション高く宿題の結果を尋ねてくる赤ジャケ師匠に拳銃を渡す。
「む。」
「おー拳銃じゃねえか。悪くねえな。」
「フーン、ゆーちゃんが貴重だと思ったのがコレってこと?」
「いいえ。」
そこから俺は、昨日の夜の経緯を熱く語った。
夜の町、暗くて高ーいビル、その屋上でのFBIと自殺志願者(仮)による涙ちょちょぎれるやりとり(誇張)…そしてその危機を救った俺の行動!
「と、いうわけで!俺の課題に対する答えはズバリ、命!」
「ひねりがない」
「つまらん」
「おねーちゃんの下着とかのがまだ面白かった」
「酷くないですか!?!?」
あまりにもシラッとした反応に崩れ落ちた。
これが俺に出せる一番それっぽい解答なのに…!
orz状態の俺の肩と頭に、3つの大きな手が乗せられる。
「まあでもいいんでねえの?ガキ丸出しだけど。」
「青臭えが、悪くはないぜ。」
「未熟だがそれもまた一興。」
「褒めるか貶すかどっちかにしてくださいよ…」
より笑顔を深めた3人にもみくちゃにされた。
*******************
4年前のあの悪夢のような1日のことは、今でも夢に見る。
スコッチがNOCであることが組織にバレてしまい、危うく死ぬ所だった…それも、自分が焦りから抑え忘れた足音のせいで。
スコッチを保護し安全を確保した後にその事実を知り、深い恐怖と安堵を覚えた。それこそ夢に見るほど。
そして同時に“彼”のことも思い出すのだ。
『何者でも…強いていうなら君の“命”を頂きに来た人間かな。』
あの時は焦りと動揺から冷静な思考ができなかったが、彼のあの時の行動と言動は結果的にスコッチの命を救うものだった。
徹頭徹尾自分達への害意の類は一切なく、まるで本当に散歩のついでと言わんばかりにスコッチの手から拳銃を奪い、一度もそれをこちらに向けることもなく笑いながら煙のように去っていった。
深く被ったフードとオーバーサイズの服で顔や体形はわからない。
ただ、身長は然程高くない。単に小柄な人物なのか、あるいは_子供だったか。
どのみち情報が少なすぎた。
あの日以降どれほど探せども彼らしき人物は結局見つからず今に至っている。
だが、先日の博物館の一件。
そこで偶然出会った蓮原優雨という少年が、彼と重なって見えた。
「先輩、伝票挟むやつって何処にあります?」
「バインダーかい?それならレジ下の左端だよ。」
蓮原優雨は現在、博物館を辞してポアロでアルバイトをしている。どうやらあの博物館での事件の話が周囲に広まってしまったらしく、居心地が悪くなったのだそうだ。
それでこのポアロに来るというのもなんだか偶然にしては出来過ぎだが、蓮原優雨の正体を確かめたいと思っていた自分にとっては正に渡りに船。思う存分観察させてもらった。
それによって幾つか分かったことがある。
まず動体視力、反射神経、身体能力などが高いこと。
先日なんかは2メートル程度離れた位置にいたにも関わらず、客が落としかけたグラスを中身を溢さず受け止めていた。
次、記憶力も非常に良い。
博物館の事件の時もそうだったが、物事の暗記や近時記憶に大層優れている。…がしかし勉強と名がつくと途端に覚えられなくなる。
次、気配が薄い。
本気で隠れられると自分でさえ気付けるか怪しい。
最後、どうやら蓮原優雨には3人の師匠がいるらしい。彼曰く「3人ともめちゃくちゃスパルタでヤバい、マジ鬼」とのこと。
名前を尋ねたが全員聞き覚えのない人物で、これに関してはよくわからないが現在の彼を形作った上では重要なファクターなのかも知れない。要調査。
「先輩〜、休憩もらって良いですか?」
「勿論。ちょっと待ってて、まかない作ってあげるから。」
「いいんですか!ありがとうございます!」
「先輩のまかない美味いから楽しみ」などとニコニコ笑う彼にうっかり釣られて口元が緩んでしまいそうになる。
本来ならば警戒して接するべき相手だとは理解しているが、人畜無害に見える相手に警戒し続けるというのは案外難しいものなのだ。
男子高校生相手なので食いでのある具が大きめのピラフを拵えてやりながら、こっそり深呼吸をして気を引き締めた。
そして、まるで何でもないことのように彼に問いかける。
「蓮原くん、君は…“組織”について、どう思う?」
チラ、と彼の方を見る。
長い前髪に地味な眼鏡の下の切れ長の目がきょとんと丸くなる。
「そしき、組織?何のですか?」
「えっと…細胞組織とかそっちではなく、人間の集団という意味での組織だよ。」
「…ひとのグループについてどう思うって話?」
「うーん、何で言えば良いのかな…」
白…に、見える。彼の反応は。
もしかすると自分がそう思いたいだけなのかもしれないが。
「例えばそう、“悪の組織”…みたいな。」
完成したピラフを皿に盛り、彼の前に置く。
そして問いかけながら、正面から彼の瞳をじっと覗き込んだ。
「悪の組織かあ…アニメとかだと結構かっこいいキャラクターが居ることもあるから、実は結構好きです。」
蓮原優雨の瞳は彼の髪色よりもやや暗い色味をしている。
そこには曇りも翳りもなく、ただ真っ直ぐに自分を映していた。
…やはり、彼は白だ。
「あと、しきって漢字は、結婚式の式とか、季節の四季とか色々なのがありますよね。」
「ん?…え?」
と思っていたら急に話が飛んだ。
彼の瞳は曇り翳りどころかなんかキランと得意げに輝いている。
「しかし、中でも敷地の敷や認識とか知識の識、そして組織の織は…漢字の画数が多く難しい。ですよね?」
「あ、うん…まあ…そう、かな?」
「そうですよ。組だってちょっと難しめだけど、織はダンチです。」
「そうかな…」
難しいか?と安室は心底思った。
「だが…俺は書けますよ。」
10人中10人がドヤ顔と断言するであろう、見事なドヤ顔だった。
彼は、小学5年生レベルの漢字を書ける、ただそれだけの事実にまるで『ハワイで親父に習った』並のドヤ顔をかました。
「……????」
「書け…ますッ!」
しかも2回言った。
……。
何というか、公安警察として相応しくない発言だとは思うけど、本当にもう白とか黒とかどうでも良くなってしまった。
なんなら目の前の彼が自分の探している“彼”であるかもというのすら怪しい。
「………それは、凄いね。」
「でしょう!」
「あの、蓮原くん。勉強でわからないところがあったら相談してね…教えられる時には教えるから…」
「ホントですか!ありがとうございます!」
_長年培った勘っていうのは、案外当てにならないものなんだなあ……。
蓮原優雨:一般通過DK2。圧倒的泥棒適性を持って産まれたごく普通の少年。cv.福山○。外見は某ペルソナの怪盗団のリーダーと探偵王子を足して2で割った感じ。勉強が苦手過ぎて勉強と名がついた瞬間理解できなくなる。テストは常に赤点ギリギリ。
名探偵:小さくなる前は蓮原とはクラスメイト程度に仲良くしてた。まさかこんな芸当ができるやつだったなんて。警戒したがあまりのアホ具合に秒で呆れる。工藤だよ(迫真)
あむぴ:暫定あの夜の“彼”だった蓮原に警戒半分感謝半分って感じだったが蓮原がアホ過ぎて色々めちゃくちゃになる。因みに蓮原はあむぴの名前を覚えていないので先輩と呼んでいる。
スコッチ:彼はとんでもないものを盗んでいきました…あなたの命です。
ライ:日本って治安良いんじゃなかったのか?何故あんなにスリが上手い人間がいるんだ…
師匠たち:赤ジャケ黒ジャケお侍さんの3人組。たまに絶世の美女が混ざる。あまりにも才能マンだった蓮原を面白がって教えまくってたらなんか凄いことになった。蓮原の意思は多少考慮するが、まあ成人したら連れて行こうかなと思っている。全然名前を覚えないことに関してはおこ。
大嘘次回予告!
♪〜名探偵コナン メイン・テーマ〜♪
俺は高校生探偵、工藤新一。幼馴染で同級生の毛利蘭と共に遊園地に遊びに以下略。
園子の招待で政治家や芸能人など様々な人たちが集う大規模なパーティに招待された夜、俺は怪しげな人物達の密談を耳にする。
そこで得た情報を元に捜査を行った所、何と彼らが違法な武器などの闇取引を行っている危険な武装組織であることが判明する。
しかし捜査の最中、俺は彼らに見つかり捕らえられることに_!
「そう、つまり…彼らの元から伊藤くんを“盗み出す”…」
「やってみせるさ。」
劇場版名探偵コナン〜月下の幻影〜
2xxx年春、公開!

























