Novel1 months ago · 1.7w chars · 1 pages

欠地王ジョン成り代わりは全て知っている

D.C.D.C.

n番煎じ ジョンラックランド成り代わりもの 厳密には「未来の知識がログインしたけど凡人には何もできなかった話」みたいなそんな感じです うっすい解釈による解釈違いの可能性 ありがとうfakeコラボ、心ばかりの気持ちです(課金の音) ようやく開いたプロフを見て思いついただけですが 誰かこんな感じの話を恵んではいただけませんか、私に。 正気に戻ったら消える可能性があります 正気ではないので続きました →novel/28070348 感想や誤用等、何かありましたらこちらでも →https://wavebox.me/wave/3uru5vs31mtm22p2/ 読了後推奨のこぼれ話                       息苦しそうなやつだった。 何を見ているのか分からないと、何を考えているのか分からないと。民は俺を評したが、本当に理解されていなかったのはお前の方だ。 考えれば分かる、いずれ分かる。 その時に私が生きているかは分からないけれど、必ず役に立つ。 当たり前のようにそう言って、口を閉じた弟はきっと、誰も信じていなかった。 「仕方ないやつだ!なら此度の謝罪は受け入れよう。これで手打ちだ。俺はお前を許すとも。ああ、だが一つだけ」 「だが……?」 俺と合わせる顔がない?見殺しにした? 全く。お前こそ何を言っているのやら。 お前が遥か遠くの未来を見据えて行動していたなんてこと、とうの昔に知っている。 王位を簒奪しようとしたことも許そう。何かを見た末の行動が、俺を見殺しにしたことだというのならそれも許す。 お前になら殺されてもいいと。塔で飼い殺されるのだって構わないと伝えたはずだ。最愛の弟よ。 だが一つだけ。どうしても、俺には許すことができなかったことがある。 「なぜ、自ら毒を煽った?」 息を呑んで、反応が一拍遅れた。視線が右に動いている。幼い頃から、唇を噛む癖は変わっていないんだな。ああ、やはり。 「俺に、嘘をついているな?」 潔癖のきらいがあったお前が、民たちに衛生という概念を教えようとしたお前が。 病死なんて死に方をするはずがないだろうに。

注意

歴史上の人達の名前似ててわかんねぇ!と歴史の勉強から逃げた人間が頭を抱えながら書いております

リチャード1世のメンタルわっかんねぇ!!となっているため解釈違いの可能性があります

全体的にふわっとFakeコラボのネタバレが含まれています

ジョン成り代わりものです

以上、ご了承の上で先へお進みください

「おわった」

 自己の意識が確立した時の、一言目はそれだった。
 詰んでいる。何がって全てが。

 暗君、愚王、史上最悪の王。
 どんな評価も悪評ばかり。生まれながらに領地を与えられなかった欠地王、に気がついたらなっていた。
 前世の記憶が鮮明に残っていることが、更にこの状況を悲観させる。

「どうする……いやどうしようもない………」

 本当にどうしようもないのだ。この後何が起こるか知っていても、[[emphasismark:それを変えてはならない>・]]。
 だって私はこの先の未来において、必ず存在する道化でなければならない。

 かの王が唯一評価されたこと。
———マグナ・カルタを認め、イギリスの民主主義の発展に貢献する

 これがなければ、この時間軸がとんでもない特異点になってしまう。

 そう、特異点。ずっと先で待ち受ける残酷な未来を、異物たる私は知っている。だって兄上の顔の造形見たことあるし、声もどこか聞き覚えあるし。ここ型月世界でしょう。

 ということは、だ。全てを燃やし尽くされ白紙化された星で、人理を取り戻さんと抗う、一般人だった誰かが現れることになる。

 前世の私は、彼らに背を押された一読者だった。彼らの選択を見た、冒険を見た、数多の出会いも別れもエピローグまでも。全てずっと見続けた。
 かつての言葉で言うのなら、認知されたくない厄介ファンとかそんな感じ。

「めいわくには、なりたくないなぁ」

 メンタルが特別強いわけでもない、何か突出した才があるわけでもない。そんな平々凡々な人間が私。嘲りも侮蔑も、誰が好き好んで受け入れるだろうか。

 嫌だなぁ、お先真っ暗だ。全部やめて逃げてしまいたい。

 でもこの先、もっと過酷な旅をする君がいるのだと知っている。
 ただ逃げるだけの弱さは見せなかったと、前世の私が声を張り上げている。

「いちどだけ、一度だけだ」

 彼らのように何度も冥界下りをするわけでもない。命を賭ける瞬間なんてもっと少ないはず。何をすべきかが明確な人生なんて、ある意味ボーナスステージのようなもの。
 既に幕は上がってしまったのだ。

「やってやる」

 哀れな欠地王ジョンとして、愚かな失地王ジョンとして。この二度目の生を正しく終わらせる。ただそれだけを考えた、息の詰まるような劇の始まりだった。

 父、ヘンリー2世は有能であった。
 長い内戦を行なっていたイングランドを平定し、私の母であるアリエノールとの婚約によりアキテーヌまでも手に入れた。
 イングランドは問題ではない。問題なのはこの手に入れたアキテーヌ領だ。何せここは不安定で反乱が多い。
 父も兄達もイングランドではなく、フランスにいた時間の方が長いのは、海を隔てた不安定な領地を治めるため。またフランスとの小競り合いに目を光らせるため、という側面が強いだろう。それでも英語が話せないのは、王族としては致命的だと思うが。

 話が逸れた。

 有能であったが故に、父は権力に固執した。息子に領地の実権を与えることを拒んだのだ。
 長男、若王ヘンリーはイングランドの共同統治者に。次男、リチャード1世は母の出生地アキテーヌを、三男ジェフリーは婚約者をあてがってブルターニュを与えていた。そして、上の兄三人は騎士道教育を受けていた。
 彼らは父に反感を持ち、反乱を起こした。お飾りの主でいることを、受け入れられなかったからだ。

 我が子が反乱を企てたことが堪えたのだろう。末子の私には騎士道精神を植え付けないためか、イングランドの修道院へと送り出した。それが5歳から10歳までのこと。

 そうして全く違う教育を受けた私を、父はそれはそれは溺愛した。公務に連れて行ったり新たな教育係をつけたり。
 母アリエノールが自らの領地を治めていたリチャードを可愛がった一方、私を疎んでいたのも溺愛に拍車をかけてしまった。

 コレはかなり主観が入るが、大体父が悪い。妾を王宮に連れ込んだから、多少の浮気を許していた母がキレてしまったのだと思う。

「ジョン!いるか!」
「はい、にいさま」

 だが、そんなリチャード1世こと兄上とは不仲ではなかった。九つも年の離れた僕を、これでもかと可愛がってくれる兄を誰が疎めるだろうか。

「今日はな、母上から円卓の騎士たちについての話をきいたんだ!」
「……またですか?にいさまはそのお話が本当に好きですね」
「ああ!いつかおれも彼らのような英雄になると決めている!」

 与えられた枷なんかを喜んで身につけて、自ら檻へと閉じこもる。
 兄さま、兄様、兄上。

「英雄になんて、ならないで」
「どうしたんだ?何か怖いことでもあったのか?」

 怖いことなんてひとつだけだ。英雄の死は苛烈で凄惨だ。穏やかに息を引き取ることができた者なんて一人もいない。
 でも私はそれを止められない。もしも違えてしまったら、その後どうなるのかなんて考えたくもない。どこまでも保身に走る我が身が、ひどく悍ましい。

「ごめんなさい、兄さま」
「何も謝る必要はないぞ、ジョン。お前が恐れるものは、この俺が倒してやる。例えそれが竜でも魔物でも大丈夫だ。お前は特に喧嘩が弱いからな!」
「言い過ぎです。僕だって少しは」
「この前ジャンヌに口喧嘩で負けてたろ」
「うっ………」
「ははは!ほらお前は弱い!だがそれでいい。いつか俺とは全く違う王になるお前が、喧嘩に強くある必要はない。それまでに、全て俺がカタをつけておく」

 そんなことしなくていい。生きてさえくれればそれでいい。だがその願いは叶わない。私はそれを許してはいけない。
 兄上には、苛烈な獅子王として歴史に名を残してもらわなければならない。ああ本当に最悪だ。英雄に当て嵌めて持ち上げる、母よりも愚民よりも、ずっとずっと僕の方が醜悪だ。

 若王ヘンリーが二度目の反乱で死に、ジェフリーも不慮の事故で死んだ。次の王位継承者は兄上だったが、既に与えられていた領土のアキテーヌを私に譲るように命じられると、王たる父へと剣を向けた。

 全て、歴史の通りに。

「なぜ、なぜだリチャード。なぜ私を裏切ろうとする」
「父上」
「おお、ジョン!来てくれたか!我が最愛の息子よ。お前の兄を宥めておくれ。お前に別の領地を与えることを拒んだ、狭量な兄を止めるのだ」
「父上、もうやめましょう。あなたはあまりにも権威にしがみつきすぎた」
「なにを、」
「兄様に、リチャード1世へ王位を譲るべきだと申し上げております」
「ああ、神よ……こんな、こんな試練をなぜ私に………。ジョン、どうかうそだと、」

 可哀想に。目の前で光を失った目をした父に、もうかける言葉はなかった。

「聖地エルサレムを奪還する」

 ほら、始まった。王に即位した兄上は、後世において第3回十字軍と呼ばれる軍を指揮し、他国の王と手を組み聖地を目指してしまう。

「一応聞きますが、資金は?」
「城を売る、必要ならロンドンも売るか」
「はぁぁぁぁぁ………………」

 頭が痛い。アンテーヌ領は未だ不安定のまま。それにブルターニュはジェフリー兄上の息子、私からすれば甥に当たるアルテュールが治めているのだが、この地が少し少し不穏な動きを見せている。そんな中で王が聖地へと出向けば、フランスだけでなくイングランドの統治も不安定になる。

「僕がイングランドへ残りましょう」
「できるのか、お前に?」
「ウィリアムが側におりますし、父に連れられていた時、多少の政は見てきています」
「そうか!では俺が留守の間は頼んだ」

 あなたが滞在する期間は半年しかないのに。その生涯のほとんどを、戦争と愚かな冒険に捧げてしまうのに。分かっていても口にすることはできなかった。

「兄上、もしも。もしもです。戦で捕虜を捕まえた際は、どうか慈悲を与えてあげてはくれませんか」
「なんだ?ジョンは優しいな!敵対する相手のことを思い遣るのはいいことだが、その優しさがいつか足下を掬うことになるやもしれんぞ?」

 優しい?どこが。最初から最後まで私利私欲だ。こんな優しさという名の偽善すら、私は二人にしか向けられない。
 無意識に唇を噛んだ俺を見た兄上は仕方がないやつだ、と言いながらわしゃわしゃと頭を撫でてきた。

「俺に任せておけ。優しいお前が戦に赴くことがないよう、ちゃんと片付けまでやっておくさ」
「……兄上、仲間の旗落としたりして、僕に余計な火種を残していかないでくださいね」
「勿論だ!」

 それから数ヶ月後、おどおどとした部下が部屋へ駆け込んでくることが増えた。

「…ジョン様、リチャード様がキプロスを占領したと」
「放っておけ、先に手を出したのはキプロスの方だろうからな」

「ジョン様、フランスのフィリップ2世がこちらに」
「クソ蝙蝠め……兄上と共に行軍していたはずだろう……。出迎える、支度を」

「ジョン様、リチャード様が捕虜を殺したとの報告が」
「放って、待て。殺した?捕虜を?」
「はい、2700名全て、女子供も関係なくです」
「そ、れは」

 僕の言葉一つで止まるわけがない。当たり前だ。そんな人であれば最初から、英雄という鋳型に当て嵌められなくたって生きられた。

「一応聞く、殺し方は」
「壁際に集め首を落としたとのことです」

 慈悲は!?いや兄上のことだ。「拷問にかけることもなく、致命の一撃で終わらせた。お前に言われたとおり、慈悲ある殺し方にしておいたぞ!」とか言うんだろうな。いや間違いなく言う。
 兄上のかっとび具合を忘れていた。慈悲とは殺すことではなく、命あることを許すことだと言及しておかなければならなかった。
 あああ、俺も従軍すべきだったんだろうか、そうすれば止められた?いやあまりにもフランス領から離れてしまえば防衛がガラ空きだ。攻め込まれたら誰が指揮を取るんだ。それに王族が揃って戦死なんてしたりしたら、この後の歴史に大きな影響が……。

「………止めるか」
「その、誰をです?」
「兄上に決まっているだろう」
「それは、王に反乱を起こすということでは」
「フィリップ2世の甘言に乗るのは癪だが、今が好機であることに変わりはない」

 やはり止めるべきだった。兄上をこれ以上好きにさせていては、本当に怪物となってしまう。そうなることをずっと前から知っていたのは、私なのに。それでも、今以上の怪物になんてなってほしくはなかった。英雄になんてならなくてよかった。
 ただ、僕の兄上が、冒険が好きなあなたが生きていてくれれば。

 優柔不断だ。何もかも中途半端だ。歴史を変えてはならないと思いながらも、こうもそばに居て言葉を交わしてしまった。心の底から私に信頼という二文字を明け渡す兄様を、ただの偶像として消費させたくないと思ってしまった。
 決めたことすら揺らいでしまう。弱い、よわい、兄上に言われたとおりだ。俺は弱い。意思も力も何もかも。

「兵を集めろ。人の道に反するような虐殺を行った王を野放しにしていては、我が国の存続に関わる」

 かの美しき、哀しき獣を止めろ。二度と人目につかぬよう、高い塔にでも幽閉してしまえ。

「決して殺すな、必ず生きたまま捕えよ。傷を少しでもつけたものは、所属していた部隊諸共、八つ裂きにして海へ投げると釘を刺しておけ」

 ああ、でも。兄様と、戦場で相対するのは嫌だなぁ。

「ジョン様、その、リチャード様がオーストリアにて捕虜に……」
「兄上!!!!!!!」

 その助言だけは聞いて欲しかった。

 もうそのまま兄上を閉じ込めておいてくれ、と言ったのに母が重税を課して民から金を巻き上げ解放させてしまった。本当にあの人、兄上のこと好きだな。わざわざあの暴君を、自由にさせた方が不幸せになるとなぜ分からない。
 一人殺せば悪人で、千人殺せば英雄?そんなわけがない。殺せば殺した数だけ、業は積み重なるものだ。
 どれほど恨みを買っている。
 どれほど死を願われた。
 それが母には分からないのだろう。あの人を自由にすれば、冒険という名の蹂躙を繰り返し、血の海の中で息絶える未来しか残されていない。

 でも、僕なら。未来を知っている私なら、もしかしたら、彼を生かすことができるのではないだろうか。だって既に、獅子心王としての功績はできた。キプロスの占領、アッカーの処刑。捕虜になって僕らに多額の身代金を支払わせたことも。
 なら、これで終わりでいいじゃないか。僕が兄上をこれ以上好きにさせずに、閉じ込めてしまえば。歴史の舞台から引き摺り下ろせばそれで。

「ジョン様!」
「なんだ騒がしい。どうし、」
「王が、リチャード様が弓兵に射られ重傷を負われたと!!」

 そうだ。そんな甘いこと、この世界で許されるわけがない。

「…………兄上は、その下手人をどうした」
「それが……」

「許そう、射手は敵を射るものだ。たとえこの傷で死ぬことになったとして、何の悔いがあるものか」

 そう言って笑うと、金まで与えて逃したのだという。

「ああ、そうだ。次の王は弟のジョンに頼む。アーサーはフランス側に寄り過ぎている。これではこの国を守るどころか、早々に明け渡すことになるだろうからな」

 どうして、どうして。どうして受け入れる?

 許すなよ。
 抗ってくれ。
 こんなことでわらわないで。
 私が、俺がもっと早くにあなたを閉じ込めてしまえばよかった。

 何を言っても後の祭りだ。既にことは起きてしまった、だから私は愚かなのだ。

 秘密裏に命を出し射手を臣下に捕えさせた。
 フードを被って牢に繋がれた愚か者に会いに行けば、俺が誰だか分かっていないらしい。好都合だ。

「お前が王を撃ったと聞いた」
「ああ、撃った。父も兄もあの王に殺されたのだ。正当な権利を行使しただけだ」
「そうだな、お前には家族を殺された。ならばその仇を討つ権利がある。実に筋が通っている」

 であれば。

「俺にも、同じ権利があるな」

 楽に死ねるなどと思わないことだ。

 リチャード1世は撃たれた弓の傷を悪くして亡くなった。しかし彼はその射手を許し、周りにも許すよう言ったのだと言う。

 だがその後、王位についたジョンはこの約束を反故にし、射手を皮剥ぎの刑に処したと言われている。

 兄上が死に、王位が私に回ってきた。未だ獅子心王などと持て囃す群衆から目を逸らす。なんてくだらない。あのような虐殺を、地獄絵図を作り出した人間を。よくも英雄などと持て囃せるものだ。お前たちが死へと誘い、私が見殺しにした。大っ嫌いだ、何もかも。

 それ以上何かを見たくなくて、ぐっと目を瞑る。何もない暗闇の、ずっと遠くの空の果て。あの一等星の輝きは今も鮮明に覚えている。大丈夫、成し遂げてみせる。道導となるようなものは、もうそれしか残っていないのだから。

「余は暗君として死ぬ」

 チラチラと蝋燭の火が揺れていた。

「な、いきなり何を仰るのですか!暗君などと」
「王家のためだ」
「王よ、些かお疲れなのでは」
「気遣いは時間の無駄だ、同じことを二度言わせぬように。さて、今は王たる余が全てを決められる。だがこれは裏返せば、何か失策があった際の責を王族が全て被ることになる。例えそれが、そうなるように仕向けられたものであってもだ。それではダメだ。民は愚かであるべきだが、無知であってはならぬ。民たちにも責を問わせなければ」

 マグナ・カルタってこんな感じだっけ?その数歩手前だったような。まぁいいか。
 私の言葉を聞いた臣下は、何言ってんだコイツ?みたいな目を向けてきた。分かるよ、時代錯誤だもんな。
 しかもその王様が「全部決められるのおかしくね?わざとミス押し付けられたときでも責任がこっちにくるの嫌だよ」って言ってるわけだし。

「何を仰るのです、あなたさまが決めたことに異議を唱えるような民は不要ではありませんか」
「逆だ。逆らうものを一人殺せば三人の反乱者が生まれると心得るがいい。自らに害が及ぶ時だけ顔を出すのではなく、常に声を上げさせよ。民は自分達に被害が出た時、その責を問うためだけに王を殺す。娯楽のように。それは避けねばならぬ。遠くない未来、王家の血が途絶えることになりかねん。ただ頭を垂れるだけの民たちへ、愚かな統治者による圧政の危機感を覚えさせるのだ」

 フランスのあれそれとかね。昔は王族の処刑が娯楽だった、なんて血生臭い話は有名だ。
 だがそれはダメだ。この後の戦争のあれそれが「大体オマエらのせいでは……?」と言われることになろうとも、いつか君が生まれる世まで、王家は存続させなければならない。

「あなた様は、ご自分の発言の意味を分かっておられるのですか」
「無論、全て分かった上だ。だからこそ、この場に呼び出した諸侯らの数はごく僅か。この言葉が分からぬほど、蒙昧しているとは言わせぬぞ」
「は、」
「まずは民に再度複数の税を課そう。その金は全て戦に使え。贅沢はするなよ、余計な怨みを買えば一族諸共殺されるぞ。そなたらには余が亡き後、王家を存続させるために、動いてもらわねばならぬからな」

 正直、悪い王様のイメージってこれしかなくて。あとはお姫様攫うとか、自分の仲間をちょっとミスで殺しちゃうとか?
 いやそれはアリだな。父と同じく領地を得る口実になるし、金だけ啜るカス貴族は生かしておく価値がない。後で名前書いとこ、なんて考えていると、ポツリとかつて伝令兵だった臣下が口を開いた。

「……王よ、あなたは何を見据えて話しておられるのでしょう」

 どこか探るような、理解できないものを見るような目が、こちらを向いていた。
 何を、とはどういうことだろう。そんなの少し考えなくたって分かるだろうに。
 もしかしてあなたたちも、私に似て少しポンコツだったりするのかな。

「愚問だな。愚かな余の臣下であるには不相応な純朴さでもあるが。王が見るのは、常に国の民と未来。それを見ようともしなくなった時、例外なく首を刎ねられる。それが王の責務であり、王が王足り得る所以。……一応言っておくが、この言葉も余の考えも、決して後世には残すなよ?真実を伝えようとした吟遊詩人の口は縫いつけ、智者の本には火を付けろ。二度と現れることを許されぬ、愚王の象徴にならなければ、余が為すことは意味を失う」

 話しすぎたかもしれないので、念のため釘を刺しておく。ついでに、告げ口するフレンズが出てきたらちゃんとその書物は消しとけよとも言っておく。
 こういう考えで、これからこんな感じの馬鹿なことしまーす宣言ではあるけど、少しは協力者がいないと上手くやれる気がしなかった。

「そこまでの覚悟を決めておられるのでは、我らが異を唱えるわけにもまいりませぬ」
「この命、最後まであなた様と王家に捧げましょうぞ」
「必ずや、御力になってみせます」

 なんだか彼らの目がキラキラしているような気がする。今の話に感動ポイントはなかっただろ。これから阿呆として死ぬ王に命をかけてもらうわけにはいかないので、適当に突き放しておく。

「期待はしない、信頼もしない、余に入れ込む必要もない。他の貴族に上手く取り入るがいい。手は貸さんがな」
「「「あなた様の御心のままに」」」

 なんかやばい軍隊みたいな掛け声返ってきたけど、ちゃんと意図伝わってるかな。

 一抹の不安を覚えたものの、そのあとは特筆すべきことはない。全て愚かな歴史の通りに。
 イザベル・オブ・グロスターとの婚約を破棄し、イザベラ・オブ・アングレームとの婚約を行った。彼女の経歴に傷をつけたのは本当に申し訳ないのだが、又従兄弟に対して性的な興奮を覚えられるほど倒錯はしていなかった。

 そうしてイザベラの元夫とのいざこざに巻き込まれた。お互い同意の上だったんだから問題なくない?いつまでも許婚に未練タラタラな方がキモいだろ。
 とすこーしだけ煽ったら、ブチ切れてフランスのフィリップ王に告げ口しやがったくそッ。

 その結果、北部のノルマンディと南部のアキテーヌを両方守るクソゲーが始まった。最悪だよ。
 そもそも敵が悪すぎる。なんでイングランドの歴史における一番ポンコツな王が、フランスを治めることになる初代の王と顔を合わせてるんだ。
 一応この戦では勝利したものの。王位継承でちょっと仲悪かった甥が、捕虜にしてる間に死んだ。しかも私が暗殺を命じたとか噂が流れてしまっている。勝ったのに部下の人心が離れていくとは。コレが運命の修正力とでもいうのだろうか。

「うーん」

 どうしたものか、どうしようか。民たちの不満は高まっている。私への憎悪が向けられている。それは素晴らしいことだ。問題はそちらではなく。

「どうやって、この土地を万全にする?」

 特異点にしないようにするには、この地が魔術王にいいように使われないようにするためには。それだけでは全く足りない。
 神秘や魔術は教会によってそんなものはない、と否定されている時代だ。あまり魔術方面からのアプローチはできないし、そもそも魔術王は召喚式、魔術そのものだ。相手の得意分野で戦って勝てるわけがない。
 と、外から兵士たちが話す声が小さく聞こえた。

「ごほっ、ごほ」
「おい、風邪か?流行病か?」
「少し疲れが出ただけだろう。今日は早く休むさ」

 風邪、病気。使えるのでは?

「病原菌、なんて言うと後世で矛盾が起きる。悪しきもの、魔物、悪魔。それらが体内で悪さをするから風邪になる」

 そういう言葉であれば、この時代でも通じるはずだ。

「悪魔を退けよ。そうだ、これなら」

 72柱の魔神。それはすなわち悪魔としても知られている。
 なら、いけるかもしれない。この土地、この時代に生きるものたちが悪魔を受け入れないように仕向ければ。英雄たちが知名度補正なんてものを受けるように、魔神柱どもがこの地で何かしようとする時のデバフにはなるはずだ。

 適当な召使を呼び、臣下を数人集めさせる。

「民に伝えよ。病に罹患した者の血も吐瀉物も決して触れるな。全て体内で悪さをする悪魔が外に這い出た姿だ。熱した湯で洗い流せ、悪魔を排せよ、とな」
「王よ。一つ、問いをすることをお許しいただきたく」
「構わぬ、言え」
「その、なぜでしょうか……?貴族然り民然り、清潔さにおいては王自ら命じる必要もないのでは」

 臣下が不安そうに問うてきた。また変なこと言い始めたな?と思ったんだろう。中世における衛生観念は不浄なものが多い、とイメージする人は多いだろうがそこまで悲観するようなものではない。

 何せ貴族の間では手洗いにまつわる儀式があったくらいだ。というかフォークとか作れない時代は手づかみでモノ食べるんだし、その辺りちゃんとしてないわけがない。

 が、それはそれ。この後、大流行するペストとかコレラとか、諸々に対しての抑止力にもなる、なるかな?その頃には死んでるんだけど。

「その時に余が生きているかは知らぬ。だが生きるための知恵は役に立つ時がくる。国が国であるために、民がおらねば話にならん。それに税を差し出す民の数は多い方がよいであろう」
「は、」

 誤魔化せたか!?好感度を上げないでというかなんなら恨まれるように行動しつつ、命令を聞いてもらうのなかなかハードなんだよ。

 心配は杞憂だった。まぁ、よく分かんないけど清潔になるならいいか……みたいな感じでみんなやってくれた。長いものに巻かれる精神は偉いぞ。英雄譚を持ち上げるのは許さないが。
 意味分からない命令を出すより、税を減らせよなんて言葉が飛んできたが、まさに正論!だった。まぁもうすぐ終わるから。

 1215年、1月。

「我らはここに、ジョン王に対して不当な税の荷重の取り下げ。及び懺悔王エドワードの法、ヘンリー1世の戴冠憲章へ戻ることを要求する!」

 反乱諸侯が要求をまとめた文書が届いた。

 ああ、ようやくだ!ようやくここまで漕ぎ着いた!!

「長かった………本当に……………」

 数ヶ月後、ラニーミードにて行われた調印によって、ようやく一番最初の目的であるマグナ・カルタが制定された。王が民の権利を侵害することのないよう、法による手続きを求めるもの。よく出してくれた!これが見たかったんだ!
 第61条?あれは消えるでしょ、私の力を制限するためのものだし。一応、これは流石にさ、他の王に適応するのはやめない?って言っておいたけど。そのせいで今も内乱してるし。

「これが最初で最後であってくれよ」

 もう二度とやりたくない。この後の世界史に大きく影響を与える人物に成り代わるとか、毎日不安に苛まれる最悪の日々だった。助けられたかもしれない人間を、見殺しにする選択は思っていたよりもずっとずっと苦しくなるものだった。やはり俺に英雄なんてものは務まらない。

「安酒の方が美味しいな」

 口に広がる苦味をワインで流し込む。

「これで喜劇はおしまいだ。愚かな王は、民の祈りによってころされる。はは……おわりの、言葉くらいはすこし、きざでもいいよなぁ」

 視界がぼんやりする。アルコールの力だけじゃない。きっともう目が覚めることもない。

 平凡な私には、たった二つの願いを叶えることすらできなかった。一つ目は兄上のこと。
 兄上が生きる世界を諦めた。理解されることを諦めた。歴史から逸れる勇気を持てなかった。だからこの懺悔も後悔も、全て私だけが持っていこう。決して誰にも見せることなく、誰にも知らせることもない。言葉にすることすら赦されない。ただの凡人が抱くには過ぎた夢だった。

 そして二つ目の願いは最初から、私に叶えられるものではなかった。

「どうか、みらいでいきるきみ。この地が安らげるばしょでありますよう」

 この地は、この時間軸は、決して特異点になることはないように。
 君たちカルデアを、阻む壁となることがありませんように。
 万が一、奇跡が起きてこの願いが叶ったとしても。私がその目で見ることはできないのだ。

 兄と違って何も成せなかった己が、英雄として名を刻まれることなどないのだから。

 そうして愚かな王は息を引き取った。
 王でありながら誰かに看取られることもなく、ただ一人で孤独にこの世を去った。

 その後ジョンは、二度と同じ名を持つ王が現れぬ暗君として、歴史に名を刻まれることになる。

 手酷い裏切りであることは分かっています。
 わたくしを信用してくださったあなた様の願いに、泥を塗りつけるような所業にございます。
 どんな罰でも受けましょう。
 地獄へ堕ちろとあらば喜んで。

 ですが、ですが。民の行く末を憂い、王家の存続を願ったあなた様が。わたくしの生きてきた半分も満たぬ齢で、人生を賭した汚れ役を買って出たあなた様が。愚か者と、何も為せなかった無能だと。嘲り、誹られるのをただ耐えるのは、我が身を切り刻まれるような苦しみでございました。

 もしも、この文が見つかったのなら。かの王、欠地王ジョンは全てを見越して動き、その生涯を民と王家に捧げた、誰よりも優しく聡明な方であったと。どうか後世へ伝えてほしい。

 特異の点とならぬよう、布石を打った我が王を。全て知った上で泥を被り、歴史の中へ消えることになるあなた様を、わたくしは見過ごせなかったのです。

———かつて伝令兵だったとある臣下直筆の書より抜粋。

成り主
突然始まった稀代の暗君成り代わりというクソゲーに、「藤丸立香」という人格バリアで耐え切ったバケモン
自分にできることを出来る範囲でって、そういうことだったっけ。

正史をなぞることに徹したため、個としての人格はほぼ切り捨てられている。だから話すときの一人称に僕とか俺とか滅多に出てこない。なお兄上ともう一人に関してはその限りでない。
別ベクトルで捻くれている。

一応、
私:客観視している。未来のことに言及する際は基本これ。最も自罰的。哀。
僕:心の甘えが前に出ている。最も末っ子らしい姿。喜と楽。
俺:兄に対してではなく、兄がそうすると分かっていて止めない己自身への怒り。怒。
余:リチャードが存命の時に表に出ることはない、王としての姿。王様ってこう、こうか?みたいなイメージが強く出ている。感情ではなく仮面である。
こんな感じで使っています。

例に漏れず、兄の光属性に灼かれた結果、捻くれてこんがらがってどうしようもなくなった感情を持っている。
英雄になんてならないでよ、兄様。
見殺しにしてごめんなさい。
どうか許さないで、僕を弟なんて呼ぶな。
私は、私だけは、あなたにそう呼ばれる資格はないんですよ兄上。

後世において、とある文書が見つかったことにより、「必要だと思ったから、自分の人生を賭けて後世に残る道化を演じた変な人」といった評価を受けることになる

が、別に民のことが好きとかそういう気持ちは一切ない。私もお前もみんな馬鹿。兄上を英雄というカタチに押し込めることしかできなかった凡愚ども。目に入れることすら憎たらしい。
だが、その在り方こそ民に必要な愚かさである。
私という暗君を恨み、謗り、蔑むがいい。二度と現れぬよう心の底から願うといい。その果てに兄上が最優、最高と言えるマスターと出会える世界線があるのなら、
「……王として、私はお前たちを赦すとも」

適性クラスにプリテンダーが追加されるけど、召喚されるならアヴェンジャー。
在り方は赦すが、民たちが為したことを赦すかどうかは別問題。
うるせー!しらねー!!物語として歪んだモノだけを見て、憧れた民なんか大っ嫌いだ!型に当て嵌めたお前も嫌いだ!!みんな消え失せてしまえ!!!!!!
なお上記の言葉は、ある一般人の旅路を心の支えにして、一世一代の劇を成し遂げた自分に跳ね返ってくることになる。盛大な自爆。

そしてこの成り主がいた世界線では第一部におけるロンドンの特異点が別の場所になりそう
行動指針の中の「後世のカルデアに迷惑をかけないように、この土地が特異点となることがないように」という願いが染み付いて、ある種の魔術のような、保護のようなものになってる。

そして先に魔術をかけたから後から魔術をかけるやつ=魔術王ソロモンは余分にリソースを割かなきゃいけなくなって、なら別の時間軸にするか……ってなった。

魔術王ソロモンとの対面は本来第四特異点のロンドンなので、別の場所になった時に
「くだらぬ道化め。只人の分際で私に楯突くなど。アイツさえいなければ、あのロンドンを特異点にできたものを」
とかこぼして道化……?誰のこと?ってなってて欲しい
亡霊パワーとかカウンター召喚で邪魔したけど、魔術王ソロモンにボッコボコに負けてる。
で、その死体だか霊核だかを使われて、偽の十字軍として第六特異点に侵攻させられた上に円卓にも負けてる。負けすぎ。
喧嘩弱いから仕方ないね。

多分ドクターだけは分かるんじゃないですかね。
最後の最後、人になる直前で焼却の未来をチラ見した時に「この地だけは、守り抜いてやる」って吐き捨てるジョン成りかわりを視ていてほしい、その後誰にも言わないけど。
だって彼が誰にも知られたくない、と願ってたことまで見通してしまうから。
そういうとこだぞロマニ。

妖精國ブリテンは異聞帯であって特異点ではないので、対応できません。凡人の成り主にそこまでカバーできる力はない。

ちなみに、どこかの終末装置とは絶望的に反りが合わない。
妖精王の混ざり物は人の癖に機構になろうとする、というかその役目をまっとうした成り主のことを心の底から気持ち悪いと思ってる。

道化を演じた成り主は「自分の生きた土地はせめて君の迷惑にならないように」と願っていたのに、その後のメンタルにとんでもない傷を残すことなる失意の庭を踏ませた異聞帯、それを作り上げた終末機構を受け入れられない。

少しミスったら全部パァ、みたいなクソゲーを乗り越えたのはよく似てるのにね。

「愛の言葉すらまともに紡げない虫よりは、私にしておいた方がまだマシだと思うぞ、マスター」
「へぇー?誰一人信用しないでことを進めた王様は、随分と耳触りのいい言葉を吐けるんだぁ。それで愛しい兄上には破滅の道を歩ませたんだろ?すごーい、俺も見習いたいなー」
「表に出ろ標本にしてやる」

ただ君とキミに対しての考えは一致しているので、そこだけは認めてやらんこともないみたいな感じ。

成り代わる前、どこかの一般人の始まりから終わりまでの旅路を全て見届けていた。
だが一度も[[emphasismark:それをよしとした>・]]なんて言ってない。

一番最初に、厄介ファンと言っただろ?

どこかではぐれサーヴァントとして仮契約してたらの話

「わざわざ名を隠す必要もないか。ぼく、いや余はジョン、ジョンラックランド。無能な王として名を知っている者も多いだろう。不名誉な名しか残らなかった王が仲間になったところで、と思うが。目的は同じだ、せいぜい使いこなしてくれ」
「ジョン、ラックランド?」
「欠地王ジョン、引き継げる土地がなかったことにより、父であるヘンリーII世がつけたあだ名です。彼には三人の兄がおりリチャードI世の後王位を継いだ、のですが」
「ですが?」
「説明しよう!」
「うわびっくりした」
「「ダヴィンチちゃん!」」

 本当にびっくりした。いきなり入り込んでくるんだもの。それにしてもすごい技術だな、時も場所も異なるのにブレることなく通信ができるなんて、とわいわいと話している少女の映像を眺めていると、どうやら恥ずかしい身の上話は終わりそうだ。

「というわけで、色々なやらかしはしているけど、マグナカルタによって民主主義の発展に貢献したとされていたのが欠地王ジョンの話さ」
「へぇ〜」

 そう、大正解。その認識になってくれて良かった。ん?されていた?

「だが」

 だが!????まだ何か話している少女の言に、思わず口を挟みそうになったが気合いで耐える。

「近年見つかった、彼の臣下だったものが書いた文書には、その評価を受けるように敢えて行動していたという言葉が綴られていたのさ」

 おい、裏切りやがったな!?誰だよ。臣下Aか?わざわざ数減らして話して、ちゃんと釘も刺したのにこのザマ?

「は、くだらぬ戯言を残した馬鹿がいたものだ。愚かな王だった、それ以上のことは何もない。民を圧政で苦しめ、先祖から受け継いだ土地を取り返すことも叶わなかった。それが事実だ」
「もしかしてこの人、」
「うん。少し話しただけでもわかる。自己肯定感が低い。それもものすごーく」

 うるさいぞ一般人ども。不敬罪で首を刎ねてしまおうか。

「で、でも!ジョン王は衛生観念を広げたとか、そういう逸話もありますよね」
「病気は悪魔によるものだから、患者から出たものは熱した湯で洗い流せ。と流布した話は有名だ。徹底した綺麗好きだったこともね。お陰で男たちが身綺麗になった!なんてお手伝いさんが喜んでた話もある」
「おい、誰だそんなものを残したのは」
「君、結構臣下から好かれてたことに気がつかないなんてニブチンだよね〜」
「好かれる?彼らの土地も権利も金すらも全て奪い、なんの成果も出せず無に帰したのが余だ。恨まれることはあれど、好意を抱かれる道理はない」
「マスター。この王様、なんというか。大変悲観した考え方をされてらっしゃいます……」

 頭が痛くなってきた。後から実はいい人だったんだ!コーナーの時間は私にはいらないんだよ。

「いいか?我ら歴史の亡霊は、後世に伝わったことが全て。余が最も愚かな王として名を残したのなら、それで話は終わりだ」
「でも、本当はいい人だったかもしれないし、ちゃんと話は聞いておきたいよ」
「はぁ……………」

 ため息が出る。そうだ、こういう人間だった。その善性を垣間見たからこそ、私は私として終わることができたのだが。

「うん、そのことなんだけど。ジョン王、君に一つ聞いておきたいことがあるんだ」
「質問することを許そう、なんだ?」
「どうして『病気、つまりは悪魔を排せよ』なんて命を出したんだい?君の時代にはキリスト教があったとはいえ、まだ悲観するような病気が流行っていたわけじゃない。黒死病や天然痘は君が生きていた時代よりも後の話だ。わざわざ君が命じる必要性はなかったはずだろ?」
「くだらぬことを聞くのだな、万能の天才よ。王が民の数を減らさぬように動くのは当然のこと。打てる策があったから使った、それだけだ」
「そう、そこがおかしい。民のことを考えて、打てる策を使う。その先に税を課すためだと言われれば納得はできる、一応ね。それでも、国民たちからも諸侯からも恨まれて、誰も信用しなかったとされた君が。わざわざ、自分を殺そうと憎んでいた相手に塩を送るような命令をした理由が分からないんだ」

 天から与えられた才を持つ英雄は、こうもやりにくいものか。

「言う必要があるか?今そなた自ら言ったように、更に税を課すためだ。健康でなければ取り立てるものも取り立てられん」
「そうかな?君の時代は歴史の中で見れば、繁栄と飽和の時代だ。取り立てようとすれば、そんなことをしなくたってできただろう。それに、わざわざ[[emphasismark:悪魔>・]]なんて名称を使う必要はないよね。話は変わるんだけど、魔術王ソロモンが人理を焼却をする際、ロンドンを特異点にしようとしたのに諦めたらしいんだ。なんでも邪魔が入ったり、無駄なリソースを使わされることになりそうだった、とか」

 クソッ!話変わってないじゃないか!というか全部分かってるだろこいつ!!
 そんな焦燥すらも見抜いたのか、万能の天才は手がかかる子を見るような視線を向けてこう言った。

「君の臣下が残した文には特異の点なんて文言が出てきた。ねえ君は一体、どこまで先を見てたんだい?」

全然特異点のこと思いつかないので没。

カルデアに召喚された時の話

「ジョン!」
「……兄上」

 召喚されてしまった。こんな私のために、ピックアップが仕事をする必要はないだろう。いつもみたいに昼寝しててくれよ。

「ごめんね、ちょっとダヴィンチちゃんに呼ばれてるから30分くらい話してて欲しいんだ。いいかな、リチャード?」
「もちろんだ、マスター。積もる話も沢山あるからな!」

 本当に最悪だ。私は兄上と合わせる顔も、言葉を交わす資格もないのに置いていかないでくれ。
 とは言えなかった。一番新参者である私が、マスターに楯突くようなことをすべきではないことくらい、重々承知している。

 唆したのも、王位を奪おうとしたのも、その先の未来を知って何も手を貸さなかったのも全て。例え二度と口を聞いてくれない可能性があったとしても、兄上には誠実でいたかった。だから、

「兄上。私は、」

 あなたを、と続けようとした言葉は唇に当てられた指で押し留められた。

「もしその先の言葉が謝罪であればその口は閉じたままでいろ。お前が謝るようなことなど何もない。お前は正しい。何も間違っていない」

 そんなわけがあるか。間違いも間違い、大間違いだ。二者択一すら投げ捨てて、泥沼へダイブした愚か者が、間違っていないわけがないだろう。

「いえ、私は裁かれなければならない。申し訳ありません兄上。私はあなたを見殺しにし、あなたの功績を無きものにした暗愚な施政者だったのです。何の申開きがありましょう」
「仕方ないやつだ!なら此度の謝罪は受け入れよう。これで手打ちだ。俺はお前を許すとも。ああ、だが一つだけ」
「だが……?」

 なんだろう。兄上に許されないことがあったなんて驚きだ。良かった、あなたもまだ私に対して怒るという、

「なぜ自ら毒を煽った」

 なぜ。あなたが、知っている?
 どうして、どうして?どうして!あなたがそれを知るはずはない!
 資料は燃やした、諸侯らにはなけなしの金で口を閉じさせた。後世に伝わるはずがない。ずっと前に死んでしまった兄上が、知るはずなんて。

 そんなことを考えていたから、またも私は間違えた。

「、なんのことでしょう」

 一拍反応が遅れてしまった。兄上の前で、一拍の遅れは命取りに他ならない。

 そうだ、ずっとそう。

 武力も、智力も、遊戯すらも。何もかも兄上に勝てたことなぞ一度もなかった。
 そんな私が面と向かったこの状況で、兄上との騙し合いに勝てる道理なんて存在しなかったのだ。

「俺に、嘘をついているな?」

欠地王ジョン成り代わりの考えを兄は全て知っている

— End —

Comments 139

キャラメル3太郎19 小时前
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ピヨルド6 天前
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猫木乃伊9 天前
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M
mukurousan9 天前
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ケイ20 天前
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A
Almisael23 天前

壁|w・)ヒェッ…。 獅子心王の圧とか怖すぎ。 ジョン王、強く生きて。

夏吉27 天前
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龍龍28 天前
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ハル1 个月前
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める1 个月前
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酸素と冷麺1 个月前
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れい1 个月前
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Sakuria
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