ツイステ二次創作です。
腐向け、捏造、特殊設定、原作改変の要素がありますので苦手な方はご注意ください。
もしトレイ先輩が妖精族で、茨の谷で騎士として長年仕えていたらという特殊設定になります。
妖精も人間も、こんな争いは望んでいなかったろうに。
自身にせまる弓矢を剣で切り伏せ、目の前の敵を蹴り飛ばす。
「死にたくないのならば逃げるがいい!命までは奪わない!」
蹴り飛ばした相手に叫べば、彼は悲鳴をあげて逃げていった。探知魔法で探っても、他に敵がいる気配ももうない。どうやら退散していってくれたようだ。息をついて、剣をしまう。辺りには同胞達の死体が転がり、火薬と血の匂いがこびりついている。
「こちらは、…終わっていたようだな。流石じゃなトレイ」
「…リリア。そっちは大丈夫だったか?」
「なんとか、な」
気づいたら横に立っていたリリアに言葉を返す。この同胞が神出鬼没なのはいつもの事だ。リリアが見つめる中、もう事切れている同胞の傍にしゃがみこみ、その濁った目を閉じる。
「そやつも逝ったか」
「せめて、安らかな眠りを。…これで同期はお前と俺だけになったな」
「わしもお前も。…そやつもまだ子供だというのに」
いつになったら終わるのであろうな。そう呟いたリリアに答えは返さず、立ち上がる。同胞達を丁寧に弔ってやりたいが、その時間さえ俺達には許されていないのだ。
「戻ろう、リリア」
「あいわかった。…トレイ、お前は死んでくれるなよ」
「お前もな」
歩き出した俺に合わせて、リリアも俺の横に並ぶ。リリアを見るが、リリアの顔は伏せられていて表情はわからなかった。それでも、リリアの感情はなんとなく理解できた。
お前も死ぬなよ。俺はくしゃりとリリアの黒髪を撫でた。
「…戻ったら食事をしたいのう」
「食糧があればな」
「もう何日もまともな物を食べておらぬというのに…」
「リリア!!盗み食いをするなと何度言えばわかるんだ!!」
「育ち盛りなんじゃから、少しぐらいよいであろ!」
「お前の分はもう渡しただろう!!」
「ふかし芋1つなど足りぬわ!!」
水浴びを終えたらそのまま少し寝ようかと考えながら廊下を歩いていた時だった。わあわあぎゃあぎゃあとやたら炊事場が騒がしい。またリリアが盗み食いでもしたのかと様子を見に行ってみれば、案の定リリアが炊事長に逆さ吊りにされていた。何をやっているんだお前は。
「炊事長、これは」
「ああ、トレイお前か。こいつが置いてあったパンを食ったんだよ。これで20回目だ!」
「腹が、腹が減っているんじゃ…」
「そんなもんみんな同じなんだよ!食えるだけ有難いと思え」
炊事長が深くため息を吐く。彼の言う事は正しい。
此処、妖精族が暮らす茨の谷は人間との戦争がもう50年以上続いていた。当然人間達が敵に食糧を送る筈もなく、ここ最近は作物の育ちも悪いため茨の谷の民は飢饉に苦しんでいた。それは城の兵士達も例外ではない。俺だってどうしようもなく腹が減った時はそこら辺の草花をかじっている。皆が苦しいのだ。
「炊事長、リリアも腹が減って辛いだけなんです。許してやってください」
「!…まあ、トレイが言うなら仕方ねえな。リリア、もうやるんじゃねえぞ」
パッと手を離されたリリアがべちゃっと力なく落ちる。痛そうだなとその姿を見つめていると、リリアが恨めしそうに俺を見た。
「なんで、トレイとわしの扱いはこんなに違うんじゃ…!」
「そりゃトレイはよく手伝ってくれるしな。盗み食いもしねえ」
「うう…!」
俺は手伝いをしたりしてるんだよ。まああわよくば飯をわけてもらえないかという魂胆だが。ふふんとリリアにしか見えない角度で笑ってやる。諦めろリリア。人望の差だ。
炊事長に頭を下げて、愚図るリリアを引っ張る。リリアの腹はきゅるるる…と切なげに鳴ったままだ。怒られたのはリリアの自業自得だが、このままはあまりに可哀想だ。…はあ、仕方ないな。
「…リリア、どうしても腹が減った時は俺の分を分けるよ。血だって必要なら噛めばいい。だから盗み食いはしたら駄目だ。…あれは小さい子供達にわたる分なんだよ」
「…すまぬ、そうだな」
「ん、気にするな」
腹が減った時は寝てしまおう。そう笑ってリリアの手を引っ張る。
…いつの日か、起きた時にこの地獄が終わっている事を願って。
また50年という月日が流れた。その間にも多くの血が流れ、同胞達が死に、人間達も死んだ。
俺も人間を斬った。どうしても人を殺したくなかった臆病な俺は、殺さないように急所を外して人間を斬った。斬って、斬って、斬る必要のない人間は見逃して。また斬って。たまに斬られて、弓に射られて。目が覚めた時にリリアがまだ隣にいる事に安堵して。それを何度も繰り返した。
気づいた時には、俺は騎士となっていた。何百、何千と人間を斬り捨て、同胞達を見殺しにした俺が騎士として英雄扱いだなんて馬鹿げてると思った。それでも、お前は私達を守ったのだと頭を撫でてくれる陛下と、お主に罪はないと抱きしめてくれるリリアがいてくれたから俺は騎士であり続けた。
そして、ついに終わりは訪れた。
「平和協定、ですか」
「ああ。やっと、私達の争いは終わるんだよ」
人間達が送ってきた1枚の紙。それは100年以上続いた戦争を終わらせる物だった。
ああ、やっと。やっと。
「もう、誰も傷つけなくて済むんですね。誰も、恨まなくていいんですね」
俺の言葉に、陛下は悲しそうに微笑んだ。
「…トレイ、お前は優しすぎた。そんなお前を私はずっと苦しめた。どうか謝らせておくれ」
「とんでもありません!陛下に仕えたのは他でもない俺自身の意思です」
「ふふ、お前ならそう言うと思ったよ。私の気高い騎士。でも、もういいんだよ。お前とは長い付き合いだ。本当は剣なんかより調理器具を持っていたかった事も、火薬の匂いより花の香りが好きな事も全部知っている」
「っ…陛下、」
頭を下げている俺の頭を陛下が優しく撫でる。いつもと変わらない優しく温かい手だった。
「だからトレイ、もういいんだ。お前はお前の幸せを見つけなさい」
「…!へいかっ、おれは、」
これ以上の言葉は、嗚咽で話す事は叶わなかった。それでも、陛下は全てを察したように頭を撫で続けていた。
「ほお、これは中々良い場所じゃのう」
「そうだろ?こっちだよ」
全てに疲れ、剣を置いた俺に陛下は休む場所を用意してくれた。森の奥にある小さな小屋。それが今の俺の生活している家だ。陛下はもっと大きな家にしたかったらしいが、それは丁重にお断りしておいた。俺には必要最低の生活スペースとキッチンがあれば十分だ。
俺の新居に来たリリアが物珍しそうにキョロキョロと辺りを見回している。何もないぞと笑いながら、景色の見える場所に置いた椅子に座るよう促す。そこからは俺が植えたすみれがよく見えるのでお気に入りの場所だ。
「良い景色だ。くふふ、お主はすみれが好きだったな。腹が減った時によくかじっておったのを覚えておる」
「ふふ、すみれの砂糖漬けは上手いぞ。今度用意してやるよ」
「それは楽しみじゃのう」
笑うリリアを横目に紅茶をいれる。今日はバタフライピー。物好きなリリアのために面白い紅茶を仕入れたのだ。こぽこぽとそそがれるお湯をリリアがぼんやりと見つめている。
「…お主が楽しそうで何よりだ。ずっと険しい顔をしておったからな」
「騎士としての責務があったからな」
「その殺伐とした姿が民の希望だったのだから皮肉なものよ」
ギイッーとリリアが椅子を傾ける。
俺が城を出ると伝えた時、リリアは特に反対する事もなく、そうかとだけ呟いた。俺がリリアの感情を理解できるように、リリアも俺の感情を理解してくれていたのだろう。深く聞いてこなかったのが有り難かった。
リリアは今も城に残り、若人の育成に力を入れている。彼はそちらの方が肌に合っているらしい。
「でも、俺が少しでも茨の谷の民の希望になれたのなら。あの時の俺に意味はあったんだよ、リリア。…ありがとう、ずっと、心配してくれていたんだな」
「よいよい、お互い様よ」
リリアの目がゆるゆると細められる。おだやかな時間が流れていると実感する。ああ、幸せだなあ。こんな風に友とお茶をする事をどれだけ夢見た事か。
もう少ししたら、お茶菓子のマフィンが焼き上がる。青い紅茶を見て驚く友は、俺が焼いたマフィンを見てどんな反応をしてくれるだろうか。その大きな目をさらに見開いて驚いてくれるだろうか。期待に胸を膨らませながら、リリアに笑い返した。
俺の前でひょこひょこと大きな角が揺れている。目の前に置いた山盛りのクッキーがその大きな角を持つ少年の口に消えていくのを頬杖をつきながら見つめる。
「くっきーとはこんなにうまいものなのか…!」
「…あー、もしかしてリリアの手料理を食べたのか?」
「…あれは、たべものじゃなかった…」
味を思い出したのかキュッと顔をしわくちゃにする少年。陛下の御子息、マレウスに苦笑する。リリアの手料理のやばさはよく知っている。よく炭を生成して厨房を出禁にされていたし、味見を迫られて炭をかじった回数は数えきれない。飢饉の時にひもじすぎてかじった木の皮を思い出した。もうあんな思いはしたくない。
「あいつ料理をふるまうのは好きだからなあ…俺からもそれとなく言っておくよ」
「よろしくたのむ」
クッキーを口いっぱいにつめこむマレウスに誰もとらないからゆっくり食べなと、ホットミルクを差し出す。んくんくと両手でマグカップを持ってホットミルクを飲むマレウスを見つめる。
戦争が終わった後に産まれたマレウスがもうこんなに大きくなったのだと思うと感慨深い気持ちになる。彼はリリアが嬉々として俺の家に連れてくるのを繰り返す内に自主的に来るようになったのだ。来る度に菓子を与えていたので餌付けをしたとも言う。やたらがっつくから腹が減っているのかと思っていたがまさかリリアが子供にまで手料理をふるまっていたとは。城の若人達が被害にあっていないか心配である。
「トレイ、おかわりはあるか?」
「ふふ、まだ食べるのか?クッキーはないがマドレーヌがあるよ」
「たべる!」
「夕飯食べれなくなるまでは食べるなよ」
…今度、菓子を多めに作って差し入れしようか。そう考えながら、にこにこ笑うマレウスのためにマドレーヌを取りに立ち上がった。
「…行くのだな、お主は」
「ああ、俺は茨の谷を出るよ」
戦争が終わり、さらに長い年月が経った。妖精と人間との確執は薄れ、お互いに歩み寄りをみせている。だからこそ、俺は今日この茨の谷を出る。
「俺は人間を知りたい。茨の谷は豊かになった、マレウスだって健やかに成長している。そろそろいい機会だと思うんだ」
俺は大勢の人間をこの手で切り捨てた。大勢の人間に同胞を殺された。それでも、もし許されるのなら俺は人間と歩み寄りたかった。人間と種族関係なく共に過ごせる世界を見たかった。
「俺がしてきた事も、人間がしてきた事も消えないよ。…それでも、これからを変える事はできる」
「お主がそこまで言うなら止めはせぬよ。…しかし、寂しくなる」
寂しそうにリリアが笑う。思えば幼い時からずっとリリアは隣にいた。俺が剣を置いた後も、頻繁に俺を訪ねてきてくれた。マレウスを連れてきたのも、俺を案じての事なのだろう。彼には助けてもらってばかりだった。
「一生の別れじゃないんだ、また会えるさ」
「くふふ、それもそうよな。我らの生は長い。…またいつか会おう。お主に出会えて良かった。我が親友、トレイ・クローバー」
「ああ。…お前の隣にいられた事が俺の1番の幸運だったよ。俺の親友、リリア・ヴァンルージュ」
固い握手をして笑いあう。ほんの少しだけ長い別れを惜しんで。
冷たい風が吹く、暗い冬の夜の事だった。
妖精族トレイ
角が生えていたりする訳ではなく、エルフ耳以外に特に特徴はない。両耳にリリアからもらった白詰草のイヤリングをしている。
お菓子作りと平穏を愛する"普通"の男。
リリアと同じ年齢で、戦争を経験している。当時は「月夜の騎士」と呼ばれ歴史にその名を残した。リリアと一緒に歴史の教科書に載せられて頭を抱える。剣術において右に出る者はいない。
この後、薔薇の王国に定住して幼少期のチェーニャやリドルとわちゃわちゃしたり、別の国に観光に行って他キャラとエンカウントしたりします。NRCでハーツラビュルに選ばれては???トレイはディアソムニア一択だろうが!!ってなるディアソムニア組がいたりします。トレイ先輩愛されが好きです。
こんな!!感じの!!話を!!誰か!!書いてください!!作者が読みたいので!!
























