「何かが起きればトップヒーロー達がすぐに応戦できるよう、招集をかけています。なので香山さん……ミッドナイトには当日、ソラちゃんの保護だけ、お願いしたい。個性の出力は弱ってないんですよね?」
「……私の個性は弱っていないようだから、ソラちゃんを抱いた状態ならすぐにでも眠らせられると思うわ。でも……流石に危険すぎないかしら?」
「危険ですよ。まだ2人しか例がない以上、個性の弱体化を前提とするにはこの作戦はリスクが高すぎます。それでも使える手を全て使って、処理しておきたいんです。不慮の事故が起こる方が怖い。今のままだと関わりのある人間と遭遇してしまうだけで、とんでもない事態を引き起こしかねない……昔の体制のままだったら、いっそソラちゃんの方を処分した方がいい、という意見の方が大きかったはずです。それだけの個性で、それだけの脅威なんですよ、彼女は」
「……でも、あんなに小さい子にそのリスクを、」
「ソラちゃんの情報の管理ができているうちに、済ませないといけない。せめてもっと個性の情報がわかっていれば良かったんですが、いくつかの個性診断の専門家を呼んでも、どんな個性を使っても……揃って情報が欠け落ちている……あの子を見て誰も彼も、全容が見えない、異様だ、と言うんですよ。そんな状況で、いつまでも隠し通せるかわからないままのソラちゃんを自由にしてやることは、できないんです」
「……それは」
「だからこそ、貴女にも力を貸していただきたい。今となっては俺も無個性ですから……ヒーロー達に救けて貰う側になってしまったんです。今回は情報の封鎖を行う以上、現場では信頼できる適役の人間を少数しか集められない。それでも、やらなければいけないことなんです。未来のために」
「……わかりました。今の私に出来ることなら、やらないわけにもいかないわ」
「ありがとうございます。何事もなければ、いいんです。杞憂で済んだなら、それが一番いい」
備えあれば、
「ねぇッ!!ヒーロー!!きょうあえるぅっ!!??」
「ジャンピング……いやホッピングソラちゃん、ステイ!!ストップだ!!一旦止まってくれ残像で見えねェ。なあ相澤、俺ちょっと悲しいわ……一応俺らもヒーローなんだけどナー……ん?アレ?もしかして一回も言ってなかった?」
「言ってねえな」
有り余る元気を力に変えて、びょんびょんと跳ね回っているテンションのアップした私。
そして周りにはびょんびょん跳ね回る私を抑えることもできず、ただ見つめるだけの大人たち。
今いるのはいつも通り、私たち一家と個性で生き返った人達が匿われている(予想)建物の中。
そう、今日は同期組がまた揃って訪ねてきたのである。
もう少し待ってね、とか返ってくることは想定済みだが、せめて勢いでどうにかどのくらいの時期に来るのかと予定だけでも聞き出したいところ。心の準備ができないと死んでしまう。もし私が幼女じゃなかったら許されないムーブだ。
「おーい言ってなかったのかよ!?ひざしもショータも言っとけよぉそこは!えーなんか複雑……俺だってヒーロー科だったのに……!ソラちゃん見ろ!そう!俺こそがヒーロー、ラウドクラウドだ!!」
「ヒーロー!!かっこいい!!!!」
「ウッ素直に目キラキラさせられるとなんか申し訳なくなる!?」
きゃーラウドクラウドさんよー!!ファンサしてぇ!!かっこいい!!すき!!……ゴメン、やっぱつれえわ。
プロヒーロー、ラウドクラウドはデビューすることなく……ウ゛ゥ゛……!!
「無免ヒーローか、大層な肩書きだな」
「ひっで!もーショータったら近頃ほんと冷たいんだから……」
無免……今は諸事情で免許取れないし仕方ない……なんて言うしかない現状が悲しくなるところだが、一旦スルーで。なんてったって今の彼は生きている。それに勝る喜びなんて無いですよ、ええ。
ちなみに冷たいとか言ってるけど実際は元気に飯食ってるところを微笑ましく見守られたりさりげなくちょっといい感じの日用品とかプレゼントして貰ったりしてるから蜜月も蜜月だよ。全然本気じゃない発言だよこれ。ベッタベタですよ。日々健やかであってくれ。私が幸せになる。
「はーい、おてんばなお嬢さんはこっちよソラちゃん。おねーさんのとこにおいでー?」
ミッドナイトおねいさん!!!!うぉあああその胸に飛び込ませてくれぇ!!!!……っ!?ボリュームが……増してる……!?たったの一週間でこの成長だと……!?某コスチュームと違ってまともな服を着ている今、外見ではそこまで違いがないように思えるが触れれば確かな成長……ッ!!一体何があったんだ成長期スゲ〜!!
「すげえ勢いで突っ込んでいったな〜」
「身体能力◎」
「おい馬鹿共あまり見るな。今のソラちゃんを注視してたらセクハラ野郎にしか見えないぞ」
見るな、と私たちからだいぶ目を逸らしつつ言う相澤先生。
ジト目の相澤先生たすかる。大体ジト目な気もするけどそれはそれ、これはこれ。
「えー、露骨に目逸らすのも違くね?逆に失礼だぞ!」
顔だけ二人の方を向き、目はこっちから全然離れない朧兄ちゃんの言葉に、二人が半目で朧兄ちゃんを見返す。逆に二人はなんで目が吸われないんだ。年の功か??枯れてんの??
「え、朧が見たいだけだろ?」
即答するマイク先生。
「見たいだけだよな?」
追撃する相澤先生。
「……そうですがッ!?」
そして2秒で自白する朧兄ちゃん。
「ほんと正直者なのも考えものだよ」
「流石に誤魔化していいところだろ今の問いは」
「高校生の頃の俺らってこんなバカだったか?いや今白雲は中学生くらいか?じゃあこんなもんか……」
「それ、体に中身も引き摺られる前提ならだけどな」
中身も引き摺られるか、と言われると、多分そんな気はする。というか、燈矢くんが別に引き摺られてないって言うなら普通に彼が心配になる。ミッドナイト先生もだいぶはしゃいでいる……が、それは前からそうだった説があるから多分、が付く。
朧兄ちゃん、ちょいちょい雰囲気が違う時があるからなあ。長年黒霧として過ごした影響なのかもしれない。その反動でこう……精神年齢が下がっていても不思議では……ない、のか?いや無理あるか。
やいのやいのと言い合っている3人を尻目に、ミッドナイト先生を見上げる。
「おねえちゃ、ヒーロー……」
表情は無理だが渾身の上目遣いだ。くらえー!美幼女の至近距離上目遣い!!
「ん〜、私もヒーロー……って、今聞きたいのはそういうことじゃないわよね。ソラちゃん、いい子だから良くお聞きッ!あと1週間……7回朝になったらヒーローがこのお家に訪ねてくるわ!悪い子だったらやっつけられちゃうかもしれないから、それまで良い子でいるのよぉ〜!」
うりうりうり、とほっぺたをむにむにこねくり回されながら、って1週間!?マジで!?近ッッ!!えっほんとに会えるの!?えっあの、確か予定だと……えーと、先に来るのが緑谷出久さんですよね??あっそうかうちに来るの!?1週間で!?えーッ!!??思ったより近い!!どうしよ!?
「ま、ソラちゃんはいつでも良い子だからお姉ちゃん心配してないわよ〜♡はーかわい……ほっぺもちもちじゃないのよぉも〜っ♡♡」
頬っぺたをぎゅーっと突き合わせてわっしゃわっしゃ撫で回される。あー若ミッドナイトかわいい……!相思相愛ですね!
朧兄ちゃんからの視線が刺さるけどどっちに嫉妬してるんだこれ。どっちも??
「先輩、ソラちゃんが削れて減っちゃうだろ!返して!!」
「私今日予定があるから今のうちにこのもちもちほっぺを全力で摂取しておかなきゃなの!ソラちゃんもお姉ちゃんと一緒がいいわよね?」
えっ。
しわしわピカさんのようなツラした朧兄ちゃんとヨダレ垂らしそうなデレデレのミッドナイトの二択ですか??
え……?どうしよ……?
というかもしかして外出するの?ええ……じゃあミッドナイト一択でしょ。
「おねえちゃん、すき」
「あぁん可愛い!!私も大好き〜ッ!!」
これは相思相愛ですよ。
ほんと猫可愛がりされてるなあ。
「ボロ負けじゃねぇか朧ォ!!!!」
「やめろひざし!!追撃するな!!友達なら俺を慰めろ!!」
不満を露わにドウッ!と音を立ててプレマイの胸元に頭突きをかます朧兄ちゃん、百歩譲って死亡時期のせいだと言っても、とてもじゃないが元高校生の挙動ではない。黒霧として中々の年月の記憶も引き継いでいるはずなんだけど。やっぱり体に引き摺られてるんだろうか。外見相応すぎる。
朧兄ちゃん頻繁に二人が訪ねてきてくれるからって常に上機嫌なんだよな。良いことです。
「あのよォ、同級生だったオッサンに抱き止められて嬉しいのか?」
「割と!!ひざし筋肉すげえな超ムキムキじゃん!!」
「朧は忘れてるかもしれないがこれでもまだ現役でやってるからな?そこそこの有名人だぞ俺ァ」
知ってるゥ〜!テレビで出てるの見てる!朧兄ちゃんと二人で応援上映並みに盛り上がってるよ。原作軸で既にプロヒだった人とか元A組、B組メンツとかも仲良く活動してるところとかがたまに見られるんだけど、もう最高で。この世界、生きるのが楽しすぎるよ。
「よく知ってるけどさ〜、こー見るとなんか学生時代のかわいかったあのイメージが強くってさ、やっぱちゃんと鍛えてんだなって……」
「ソーダネ……ア゛?お前俺のこと可愛いって思ってたの??それ言っちゃうなら、相澤なんて見てみろ、あんな可愛げあったのにムキムキ通り越してバッキバキのゴリラだぞゴリラ」
「オイ、誰がゴリラだ」
「えっ勘違いすんなよ、可愛いのは顔だけな。ひざしも前からムキムキではあったぞー。んじゃ元可愛げがあったショータくんちょっと腹筋失礼……あっゴリラだ……皮膚の下に眠れるゴリラがいる」
「だろー?筋トレやりすぎてザワセンのウエイトヤベー!って最近の生徒から評判YO!!」
「……そのゴリラに会わせてやろうか?今すぐにでも起こせるぞ。あとそれ言ってたの俺の担当クラスか?」
総意でゴリラ扱いされてるの?わちゃわちゃしやがってぇ……!私も触りたいけど流石に許されないだろうな。くっ気になる……!いたいけな幼女だとしてもやっていいこと、悪いことがありますからね……!
……相澤先生ってどのくらいの筋力あるんだろう。実質ほぼ無個性みたいなモンなのに捕縛布と身体能力だけであんだけやってたからな。
「やだー!!やめてくれよ!!前食らったアイアンクロー本気で頭割れるかと思った」
「本気出せば割れるんじゃネーノ?」
「割れねぇよ。俺をなんだと思ってるんだ」
「だからゴリラだって」
「……」
ここで無言のアイアンクローが炸裂!!手にバキバキに血管浮いてるのが良く見える。確かに握力で割れそう。これは間違いなくゴリラの所業。
「あだだだだっっっ!!??割れっ、死ッ!!助けッッ」
「うわコワ。やっぱゴリラじゃん」
「……」
口は災いの元、というわけでアイアンクロー×2。今そんなこと言ったらやられるのわかってたでしょ。なんで言ったよ。お約束??
「オギャアァー!!??ア゛イタタタタ俺の頭がァ゛!!??」
「俺だけはッ!?親友の俺の頭だけは助けてくれぇッ!!??」
「なんっ、俺だって親ゆっ、イ゛ッッッッッダァ!!??」
やかましい悲鳴に挟まれた相澤先生の顔は私と負けず劣らずの真顔。よく真顔でいられるな。
「懲りないわねぇ。男っていつまでもあのノリのまま……ソラちゃんは見ちゃダメよ!」
「あい!!」
「んまぁ〜良い子!!かわいい!!ちゅーしちゃう!!」
「んみゅ」
うわぁー!!頬にキス貰っちゃった!!一生自慢できるわ!!あのミッドナイト先生にキスしてもらった女だぞ私は!!ってドヤ顔できる!!ミッドナイト先生と飲み会とか行った人間は大半が貰ってそうって偏見あるけど。
こっちがきゃっきゃしている間にも悲鳴は続き……1分くらいで悲鳴を上げ続けていた二人が解放されてどさりと倒れ込む。
「いっっってぇ……頭へこんだ……ぜったいへこんだァ……」
「割れた……俺の頭、間違いなくケツのように割れた……」
「へこんでない、割れてない。あとソラちゃんの前でンな言葉使うな」
「途中で何回か力加減変えてただろぉ……俺らのことなんだと思ってんの?筋トレアイテム?」
「こんなうるさい筋トレ道具は要らん」
「しょうがねえな!!じゃあ友達としていつでもお側に居るぜ!!」
「図々し……」
あ、今ちょっと笑った。クスッときた、って感じのレアなその顔は私だけじゃなく全員がしっかり見てたようで、生暖かく見守る視線が集中した。しかしそれを鋭敏に感じ取った相澤先生はすぐ真顔に戻ってしまう。照れてる??
ニマニマと相澤先生を眺めていたミッドナイトが、突然あっと声を上げた。
「ソラちゃんごめんね!お姉ちゃんもう行かなくちゃ。私の代わりに3人と遊んであげて?」
「まかしぇろ!!」
遊んでもらっ、遊んであげる?どっち?まあいいや!
ドヤ顔気分でサムズアップ。任せてくださいよ!
「いいわね!でもそこは任せて、でいいのよ。言い方が少し良くないわ」
「まかせて!!」
からの両手でサムズアップ。前に突き出した手……ん?これチャージズマの……いやなんでもない。ウェイしてないです。アホじゃないです。
「うーん可愛い!!3人とも!ソラちゃんが寂しがらないようにするのよ!」
「言われなくても。いい子すぎて寂しがる様子見せてくれないのが不満なくらいだぜ!」
「あらもうすっかりお兄ちゃんじゃないの。今日轟さんちの訪問は無いわよね?」
「ないでーす」
「じゃああとは貴方達がトラブルを起こさなければOKね!それじゃ、私はそろそろ出るわよ!ソラちゃん、また後でね!」
「またね!!」
すとんと私を降ろして元気よく部屋から出ていくミッドナイト先生。精一杯手を振ってお別れだ。今日は、ってことはちゃんと今日のうちに帰ってくるはず。すぐ帰ってくるといいな。
ミッドナイト先生の背をみんなで見送り、そこからは(主に朧兄ちゃんが)白熱したおままごとが行われた。
まさか奥さんと隣の奥さんとの間にあんな因縁があったとは思わなかったぜ。学生時代から続く少女漫画のような斬新なストーリーに引き込まれたのも束の間、回想終わった瞬間修羅場に戻る温度差に情緒がだいぶ混乱してしまった。
なんだったんだあのおままごとストーリーの無駄に広がるだけ広がった風呂敷は。昼ドラ展開から回想突入して旦那とくっつくまでにあった話だと思ってたのになんでいざこざから友人だった隣の奥さんと百合に繋がりかけたと思ったら唐突に間男が出てきて隣の奥さんをNTR展開に繋がるんだよ。そしてなんでそこで諦めちまうんだよ奥さん。もう少しだったじゃん。そこから色々あるかと思ったらまた突如スキップして昼ドラに戻るのもなんでさ。旦那どっから湧いて出たんだよその後。
「……なんか、めちゃくちゃ教育に悪い展開じゃなかったか?」
「流石に怒られそうなストーリー展開だったよな」
「え?俺のせい?」
「どう考えても朧が昼ドラ展開に舵切ったのがスタートラインだぜ」
……おままごとで昼ドラ突入するのは割とあることだな。おままごとと言えば!みたいなノリで昼ドラ展開を持ち込むんじゃない!とは思ったけど。
「でもショータが突然回想なんて入れるから」
「そうだよ相澤、なんで回想入れちゃったの?」
……おままごとに回想入ることは少ないけどまあ悪くはないな。意外だった。まさか相澤先生がストーリー性を増す方向性に持っていくとは。
「……なんとなく?でもそこから急展開に踏み切ったのはお前だろ山田」
「じゃあ全員ギルティってワケか」
「一緒に怒られようぜ」
「なんでだ。俺が回想入れた時はまだ平和だっただろ」
……急展開に踏み切ったのはストーリー的に悪くはなかったけど、滑らかに昼ドラ展開になるまでに至るほどの畳み方ができなかったのはアレだったかも。でもそこはストーリー紡ぐ全員の責任だね……?全員無罪か全員有罪か難しいところ。
「ソラちゃん、内容理解できてたか?途中から観客になってたけど静かだし表情変わんね〜からリアクションじゃわからなくってよぉ」
「すごくすごかった」
「マズいな、なんとなく理解できちゃってそう」
「たぶん先輩に怒られるなーこれ」
「ソラちゃん、ご飯食べようぜ。さっきの忘れて?」
「ごはん!たべる!!」
あいむはんぐりー!割と白熱してしまったおままごとに夢中でお腹ぺこぺこです。風呂敷畳みきれなかったのは多分ご飯の時間に途中で気付いたからだな。いつもの食事の時間を少し過ぎてしまった。
「いっぱい食べて大きくなれよ〜!俺たちは会ってから少し、って感覚だけど、もうこんなに背が伸びてるんだなあ」
「子供の成長は早いんだ。見逃したくなけりゃ写真とかはキチンと集めておいた方がいい」
「経験談かァ?」
「……そうだよ」
「見ろよ朧、これが親馬鹿の顔だぜ」
「あ、それ俺が会ったことないエリちゃんって子の話だよな!?まだ詳しく聞かせてもらってないぞ!!」
「イレイザーはエリちゃんのこと話すと長い、って同僚からの忠告をお伝えしておくぜイェア!!」
「っ!?耳元で叫ぶな、山田!」
「アッソーリー……」
「個性使ってまで……」
ンァーッなんですかその中を見ないでもてぇてぇみが溢れ出してる話!!??こっちにも聞かせてください詳しく!!!!
その日の夕飯時、3バカとミッドナイト先生も揃っての食事となったのだが、普通にマイク先生が口を滑らせたことにより全員仲良く叱られていた。
……ちなみにご飯のメニューがカツ丼だったせいでソワソワが戻ってきてしまい、その夜はしっかり眠れなかった。やっぱり体に引き摺られてる、のかも?
「……と、注意事項はこのくらいですかね。質問とか、あります?」
「……そうだなあ。その子の重要性、と言っていいのかな?は、わかったよ。けれども、そんな期待されていることを知ると、私で本当にいいのかな、とは思ってしまうね。予定の問題だとは言え……私だけでとは……ファンでいてくれて、とてもありがたいんだけれど、今の私を見てもあまり楽しくはないんじゃないかと、ね」
「エ、あの子前回訪ねた時、最近出た貴方の記事の写真切り抜いて祭壇に飾ってましたよ?現役時代も含め外見の変化込みでどれもいいって真剣そうな声色で語ってました」
「ちょっと待って祭壇?そこまでしっかりしたファン活動してるとか聞いてないんだけど!?」
「そこはこう、気にせず……外見通りだと思わず、1人のファンとしての扱いを特に意識した方がいいかと。大事でしょう?」
「それは大事だけど……長年ヒーローやってたけどその年でそんな領域に達してる子は私も流石に見たことないかも……!!」
「俺もです。あのちいちゃい手で頑張って綺麗に切り抜こうと奮闘してました。子供用のハサミとかでもあんな頑張れるんだなと驚きましたねー」
「すご、凄いなホント……」
「推し活してる時だけ何故かだいぶ言葉が流暢になるんですよ。素質ありますってアレ」
「私、会ったこともないのにもうちょっと将来が心配……」
「ウーン……どうなっちゃうんでしょうね」
「こわい……」
「怯えちゃった……」

























