Novel3 months ago · 5.8k chars · 1 pages

元普通科生徒とある少年達の話

田中田中

原作軸よりも早く生まれた成り主の話。これはこれで好き勝手にやってる。 最悪な未来はどんな形をしているのかな? 恐らくこの世界線はメリバ。世界は救われるけど、救いきれなかった人が多数いる。

※年齢操作

※救済済

お月さまみたいだなと、疲れ果てた頭でそう思った。

『君、どうしたの?』

「ぁ、…、」

『1人でここまで来たの?もしかして迷子?』

「…ぇ、っと、ぁ…」

ぐるぐると丸が浮かんだ不思議な瞳を見つめていたら、声をかけられたことに気付くのが遅くなった。

急いで返事をしようとしたけど、喉が乾いていて上手く言葉が出なかった。焦って顔を見上げると、その人は変わらずに金色の瞳で僕を見つめていた。その人は僕が声が出せないことに気が付くと、思わず安心してしまうようなやさしい笑顔を浮かべて目の前にしゃがみ込んだ。
笑ったことで瞳が細められたその動作が、月の満ち欠けに似ているなとぼんやり思った。

僕の顔を見たその人は、一瞬だけ驚いた顔をした。

『ふーん…まさかここで出会えるとはね』

「ぇ、?」

『"志村転弧"君』

「、な…」

『私と一緒に暮らさない?』

その人は白くてきれいな手で僕の頭を撫でてくれた。

それは母がしてくれたような子を愛でるものというより、愛玩動物に触れるそれに似ていた。

「…ぅん、」

この人が僕をどうしたいのか分からなかった。

それでもこの人と一緒に行くのが正しいのだと、強くそう思った。

.母親とは

『色々とズレてるなぁ。』

「なにか言った?」

『ううん、何も』

『さ、もう行かないと入学式遅れちゃうよ』

「うわっ、もうこんな時間だ、行ってきます!!」

『いってらっしゃい!』

慌てて家を出た息子の背中を見送り、彼女はゆっくりと挙げていた腕を下ろした。

『まさか私が"母親"なんてね』

鏡の前で髪を結いながらわざとらしく笑ってみせた。

ここ数十年老いを忘れた顔は20代か、10代と言われても納得出来る程若々しかった。新品のシャツに腕を通しスーツを着ると、彼女は息子を追う様に家を出た。
入学式くらい一緒に登校しても良かったかな?でも高校生にもなって母親と一緒なのは流石に嫌かな?
母親らしく子供のことを考えながら通勤してみる。母親役を始めてから10年程経つが、未だに何をするのが母親として正解なのか分からないでいた。

『おはようございます。…あれ、相澤君は?というか1年A組は?』

「おはようございます。イレイザーなら個性把握テストをすると言っていたので恐らくグラウンドかと』

『相変わらず自由だね』

「入学式早々遅刻の貴女が言います?」

『はは、朝は苦手なんだ』

「そう言えば、マキマさんの息子さんはA組でしたっけ?」

『うん。イレイザーヘッド先生に除籍されないか心配だよ』

「いやいや、貴女の息子に限ってそれは無いでしょう」

『そう?だと良いんだけど』

相変わらず食えない人だな、と思いながらセメントスは目の前で行われている入学式に意識を向けた。

除籍されるなんて、1ミリも思っていないくせに。

そんな彼の思考を読んでか、彼女は僅かに口角を上げて笑った。

.

『今年の1年生は何人除籍にするの?相澤先生?』

「……入学式、参加しなくていいんですか」

『私が居ても変わらないから』

「はぁ…まだ何とも。」

『ふぅん』

気配もなく自分の横に現れたその人に、相澤はいつものように溜め息を吐いた。
特徴的な瞳は彼女が何を考えているのか更に分かりにくくさせているな、とふと思いすぐに頭を切り替える。この人に関しては考えるだけ無駄だ。どうせ何も分からない。

「…あれ、マキマちゃん!」

『ふふ』

彼女の息子である"早川転弧"がこちらを見て小さく手を振った。自身の母親を見つけた彼は花が咲いたように笑ってみせた。彼女の方を盗み見ると、いつもよりも柔らかな笑顔を浮かべていた。

そんな微笑ましい親子のやり取りに、相澤はどこか違和感を覚えた。

『息子のことをよろしくね。』

「…はい」

釘を刺すように目を合わせた彼女の表情は、普段と同じ作り込まれた完璧な笑みだった。

.私は、

『はじめまして。私が今日の授業を担当します。』

少しだけ顎を上げて目を細めた後、スーツ姿の女性は自分達をゆっくりと見渡した。

『私が君達に教えられることは少ない。個性強化は君達の担任の仕事で、私に出来るのは近接を少しだけ鍛えるか、敵の確保の方法を教えるくらい』

『話しているよりも見せた方が早いね。そこの君。』

「あ?」

『加減は要らない。かかっておいで。』

一瞬の沈黙。
指名された爆豪はお得意の爆破で彼女に詰め寄る。両手を顔の前に掲げ、爆破まであと数秒も無い_______

『伏せ』

「ッ、!」

小さく響いた言葉の後、爆豪は爆破の勢いを消せないまま床に体を打ちつけた。

爆豪本人を含め生徒達は困惑に満ちた顔をした。
今、一体何が起きた?爆豪は彼女と距離を詰め確実に攻撃しようとしたはず。これが彼女の個性?だとしたらどんな個性だ?

唖然とする生徒達を前に、彼女は表情一つ変えることなく見慣れた布で爆豪を縛り付けた。

『私はオールマイトのような強靭な肉体も、エンデヴァーのような派手な個性も、ホークスのような俊敏な翼も持ち合わせてはいません。』

『ただ目の前の敵を無力化する。それだけです』

口角を上げて形だけの笑みを浮かべた彼女

『私はマキマ』

『君達の副担任です。』

緊張感が漂う空気を壊したのは、両手に見慣れない形の手袋をはめた少年だった。

「えっ!?!?!?マキマちゃん副担任なの!?!?!?!?」

「早川ちゃん、声が大きいわ」

「ごっ、ごめん梅雨ちゃん!!!!!!」

「言った側からね」

.教えて転弧くん!

「なぁ早川ー、お前マキマ先生とどんな関係なの?」

「マキマちゃんと、?」

「そうそう!!さっき副担任って聞いてめちゃくちゃ驚いてたし、知り合いなん?」

「マキマ先生、すっげぇ怖かったけどすっげぇ美人だったよなぁ」

「当たり前じゃんマキマちゃんだもん」

「だからお前はどの立場なんだよ」

人差し指と親指のみを覆う形の手袋をした少年。それが早川転弧だった。個性把握テストでは個性をほぼ使用することなく運動神経の良さで上位に立って見せ、クラスメイトからは入学早々注目されていた。やっと手袋を外したかと思えば握力計を塵に変えてしまい、周囲に驚かれ恥ずかしそうに頬を掻いていた。
クラスメイトと打ち解けるのも早く、男女問わず自分から話しかけておりコミュニケーション能力の高さが伺えた。最近は女子達と保湿ケアについて盛り上がっていてよく峰田に僻まれている。

明るくて人格者。それでいて繊細な面もあり、個性は崩壊と災害時に大活躍するであろう強い力まで、ヒーローとしての素質を十二分に持ち合わせている。

「うーん…?」

マキマとの関係を問われると顎に手を当てて悩む素振りを見せた転弧。
今までは自分とマキマの関係について事情を知っている大人と関わることが多かった為、改めて説明するとなると転弧自身少し考えてしまう。マキマ本人は自分を転弧の母親だと認識しているらしいが、それにしてはマキマは若過ぎる。まあ、若いのは見た目の話で実際の所は分からないけど…それに彼女の言動は母親と言うよりは仲の良い姉、という感じに近い。
どちらにせよ、マキマは転弧にとって大切な家族だ。

「僕の、とっても大切な家族だよ」

「家族ってことはお姉さん!?」

「姉というか母親というか…」

「えっ、母親?……え"!?!?若っっ!!!」

「嘘だろ…人妻子持ちかよ…いや逆に燃え、」

「峰田くん。そろそろ僕も怒るよ」

ていうかマキマちゃんは人妻じゃないし、僕ら血は繋がってないよ、と訂正すると皆揃って目を丸くした。

ああ、説明って面倒だな、と転弧は思った。

「ごめん、話しづらい内容だったよね」

「ううん、大丈夫だよ」

「実は、小さい頃に"個性事故"があってさ」

「家族で僕だけが"生き残って"…そこをマキマちゃんが保護してくれたんだ」

「そうだったんだ…」

「うん。だから僕にとってマキマちゃんは世界一大切な人だよ」

やわらかく微笑んだ転弧に、これ以上を聞く必要はないと皆思った。思いがけずに転弧の過去を知ることになったが、本人も上手く消化出来ているようだった。

この場にいた誰も、転孤の話した内容が事実と異なるとは決して知り得ない。

.先生といっしょ

揺れる赤い髪を見上げながら溜め息を吐く。

この人は、後ろ姿ですら少しの隙もないのか。

『休憩は終わり。ほら、立って相澤君』

「…………はい」

『時間は有限。一番吸収力の高い学生時代に鍛えるから意味があるの。』

『君も私もこの時間を無駄にしたくはない。でしょう?』

「…………………はい」

『返事が出来る間はまだまだ大丈夫そうだね』

捕縛布、という物を扱い始めて数週間。
今の所全く形にもなっていないと思うが、先生の想定よりは良く出来ているらしい。自身の体に何重にも巻き付いた布を解きながら急いで立ち上がった。

マキマ先生と、彼女は生徒達からそう呼ばれている。

ヒーロー名なのだと思っていたが、本名も同じ名前らしい。
合理主義、リアリスト_______この恐ろしくスパルタで厳しい教師は、何故か俺を俺以上に信用している。俺の個性が最大限に活用出来るよう、今もこうして生き残る為の術を教えてくれている。正直、死ぬ程しんどいし何故俺なんだと思う。まあ、これを口にしたら最後、話すことすら出来なくなるまで扱かれるのが目に見えているので大人しく黙るが。

『"何故俺が?"と思ってる?』

「……………」

『相澤君って案外分かりやすいよね』

図星だ。たまにこういうことがある。まさにその時考えていたことをピタリと言い当てる。もしかしてそういう力もあるのだろうか。いや、考えるだけ無駄か。

『君の個性が必要不可欠なんだ。君無しでは勝てない。例え私が身を捨ててもね』

『だから相澤君には強くなって貰わないといけない』

「…あの、理由になってないです」

『生意気言えるならまだやれるよね』

言わなきゃ良かった。どうせ、何を聞いても彼女を理解するなど無理なのだから。

『相澤君、頼んだよ』

「待っ、!!」

理解出来なかった彼女の言葉が、遠い未来で絶望という形で姿を現した。

俺がもっと強ければと、この先何度悔やむことになるのだろうか。

成り主マキマさん

原作よりも早く生まれた成り主。マキマ被りを辞める機会を得ないまま大人になるのでずっとマキマさんのフリをしている。
ヒーローになったのは消去法。一人行動を突き詰めたらいつの間にか自分の事務所を構えていた。ホークスみたいに成り主が事件解決してサイドキックが後処理する形。これが一番上手くいく。
オールマイトと出会って原作を思い出し、未来やっべえなと思い雄英で教師になった。ヒーローの卵を育てた方が効率が良い。教師になって日が浅い時期に相澤君と出会うので加減が分からず鬼スパルタ。なんかずっと相澤君にジト目で見られてる。相澤君の為だけにゼロから捕縛布を習得した。人から教わった方が早く身につくよね。と究極の合理主義。
たまたま志村転弧を拾ったので都合悪い記憶を弄ってヒーロー目指させた。愛情無いように見えたかもしれないけどちゃんと愛してるし大切に思ってる。正解が分からないだけ。
この世界は岸辺さんはいないんじゃないかな。だからこうなった。何かが欠けてる。

早川転弧くん

事故で家族を亡くし、成り主に救われたと思っている。それが一番幸せなのかもしれない。
個性の関係で特殊な手袋を常にしている。身体能力が鬼高いし成り主に鍛えられていたのでかなりつおい。
転弧くんが歪まずそのまま育った感じだから表情も語尾も柔らかいし人格者で明るい。動物が好きな良い子。
成り主が正解の母親を追い求めているのは知っている。別に今のままで良いのに、と思っている。
たまに表情は変えないまま心の中で「めんど」と毒を吐いている。 
それなりに最悪な未来が待ってる。

相澤くん

怖い先生に捕まってスパルタ指導されてる。なんで俺?
成り主に教わっているので原作より捕縛布の習得が早いし、全てのステータスがちょっと高い。有能くん。
学生時代を思い出すので教師になった現在も成り主がほんのり怖い。今の成り主の指導法はかなり優しくなったな…と遠い目で見てる。それでもスパルタ。
最悪な未来が待っている。

なんかずっと暗くて嫌。これ番外編ね!!!!!!

— End —

Comments 6

M
MU3 个月前
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D
drrk3 个月前
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柏村うさぎ3 个月前
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R
ro23 个月前
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K
Kiryou3 个月前

とても面白かったです!ありがとうございます!!

甘い水3 个月前
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Sakuria
Where every work blooms
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