ビビリな作者の為のワンクッション!
妄想捏造盛りだくさん。
キャラ崩壊あり。
口調迷子。
流血表現、欠損、痛い描写あり。
オリ主転生設定の為死ネタ。転生あり。
土井先生の過去カエンタケ設定一部使ってます。
視点がコロコロ変わります。
書きたいとこだけ書いた駄文!
誤字脱字は気づいた時に直していく低クオリティ。
オリ男主
林根天青(りんねてんせい) 輪廻転生より
騒がしさで気付きにくいが恐ろしく気配が薄い。本気で隠すと誰も分からない。
何番煎じだっていいじゃない精神で書いたオリ主転生繰り返しネタ。
あんだけ組頭ガチ勢の部下ばっかだったら雑渡昆奈門って友達いなさそう〜。もしもいるとしても絶対変人だろと言う偏見しかない妄想の結果の駄文です。
もったいない精神で土井先生ときりちゃんとも絡ませました。
なんでも許せる人向け!!
タソガレドキ忍軍黒鷲隊の押都長烈は戦況の確認の為、周辺を見回っていた。
焼け崩れた家屋と軍馬で踏み荒らされた小さな田畑。
焼かれ煙を上げる刈り取り直前だった僅かばかりな稲穂はすぐに土へと還っていくだろう。
敗色濃厚な戦場から逃げた侍達が村を襲ったようだった。小さな村は見る影もなく荒らされ所々老若男女の死体が転がる。
悲鳴も呻き声もない村は静かでパチパチと燃え残りが爆ぜる小さな火音がするだけだった。
ぼんやりと村を眺めていた押都は顔を隠す覆面を風に靡かせ村に背を向けた。
その時、袖を引かれた。
なんの気配も感じていなかった押都は驚きと共に臨戦態勢で振り返った。そこいたのは薄汚れた幼子だった。細い手足は傷だらけで泥だらけだった。着物は質素な村ではありふれた継ぎはぎだらけの服。泥だらけの小さな手が押都の袖を握っていた。煤けて薄汚れた顔がジッと押都を見上げて、大きな黒い目が日の光を反射していた。
「ねぇ。おっさん。
いや?おにいさん?
まあ、どっちでもいいや。
俺のこと雇ってくれねぇ?」
「・・・は?」
「は?じゃねぇよ。見ての通り俺は今さっき天涯孤独になったんだよ。俺だけ生き残っちまったから。生きていくには金がいる。けど、金を稼ぐには野菜か米育てるか町に働きに出るくらいしか俺はしらねぇの。この畑で1人で農家は無理だから。おっさん。俺のこと雇ってくれよ。そでふれあうもたしょうのえんだろ。ここで会ったが100年目?いや違うか。まあいいや。ここで会ったのが運の尽きだと思ってなんか仕事くれ。あ、けど、しなねぇやつな」
日の光を浴びてギラギラと黒い目を光らせた子供はとても見てくれの年とは思えない言葉を吐いた。
「私はタソガレドキの者だ。お前の住む国と敵対している。それでもいいのか?」
子供は初めて年相応にパチリと瞬いた。
そして首を傾げ、忍び装束の押都とは違い足軽の格好をしている同僚が背負っていた旗を小さな指で差した。
「だってドクロってカッコよくね。
つうか俺みたいなガキに国だなんだなんて関係ねぇじゃん。
だいたいこの村焼いたのもアンタじゃねぇし。
おっさん忍者だろ?その格好。
忍者とかかっこいいし。忍者になるのもいいよなぁ」
今さっき村を滅ぼされたばかりの子供にしてはどう考えたっておかしい子供の言動に気でもふれているのかと押都は子供を探る様に見つめた。
「復讐でもする気か?」
「え?しねぇけど。
したってみんなは生き返らねぇし。無駄なことはしない主義だもん。
怒ったって腹が減るだけ。まあ、ふくしゅうしたらちょっとは胸がすくかもしれねぇかなぁ?でもそれだけだし。
それにさ、俺明日山に捨てられる予定だったんだよ。ある意味命拾いしたのかもなぁ〜。まあ、山に捨てられても生きる気満々だったけど。だから他の奴が出される前に親なしの俺から志願したんだし」
押都は子供の言葉に絶句した。
押都はそこで初めて日の光を浴びてギラギラと輝く黒い瞳の奥が恐ろしいほどに凪いでいること気付いた。
背筋を怖気が走る。この子供はおおよそ普通の子供とは違うのだ。希薄すぎる気配も、おおよそ普通のこの年頃の子とは思えぬ言動もある種、化け物と言ってもいいかもしれなかった。そんな押都の様子に気付いたからなのか、いないのか。子供は押都の袖から手を離し、泥に汚れた小さな手のひらを差し出した。
期待すら浮かばない凪いだ目が押都をじっと見つめる。
「で?仕事くれんの?くれねぇの?」
ゴクリと唾を飲み込んだ押都はその小さな手を取った。この行いが吉と出るか凶と出るかわからなかった。けれど、この子供を逃してはいけない気がした。だから、怖々と小さな手を取った。
すると子供はさも意外なものを見たようにパチリと一度瞬くと嬉しそうにニカっと破顔した。
「やっぱ俺の目に狂いはなかったぜ!おっさんちょういい人だな!」
その顔があまりにも年相応の子供の笑顔だったから、押都は盛大に息を吐いて肩から力を抜いて小さな手を握り締めた。
『雑渡昆奈門の好敵手と書いてライバル、とかは読まない。』
タソガレドキ忍軍忍び組頭の子息である雑渡昆奈門は幼い頃から将来を有望された子供であった。同世代に比べて高い背も、強い力も、俊敏性も、忍びとしてのセンスも将来を期待されるに十分であった。現組頭の子であり将来その後を継ぐのは確実だと既に言われていた昆奈門は周りに過度な期待をされていた。それは幼い頃から子供であることをよしとされないほどであった。周りの子は雑渡を立て自分達とは隔絶したその力量に羨望の眼差しを向けた。大人達は既に周りから抜きん出ている力量にさらにさらにと鍛錬を積ませた。幼い頃からそう言う環境だった昆奈門自身も何を言うこともなくそれを受け入れ日々をこなしていた。
今日とて木で組んだ人型を相手に組み手の練習を積む。
周りには誰もいない。
日暮間近のこの時間まで残っているのは自分くらいだ。家の仕事を手伝う為に他の子はもう帰った。家柄もあって家の手伝いをしないでも怒られないのは昆奈門くらいである。それがなくてもここまで鍛錬を積むのは昆奈門くらいではあるが。
ひとりぼっちのその背に呆気に取られたような声がかかった。
「は?」
何の気配を感じていなかった昆奈門はバッと振り返る。
そこには背の背負子に自身の身の丈以上の木の枝を積んだ子供がひとり立っていた。黒髪を一つに束ね、これと言った特徴のない平凡な顔に黒い目、黒一色の服を着ている子供は自分より背が低かった。服から除く手足も肉付きが悪くかなり細く見える。忍者としての訓練の一環で人の特徴をつぶさに確認する癖がついている昆奈門は記憶にない子供の出現に警戒しながら懐に忍ばせている苦無をいつでも取り出せるようにほんの少しだけ身がまえた。昆奈門の警戒振りに気付いているのかいないのか。子供は眉根をこれでもかと寄せて嫌そうな顔を隠しもせず昆奈門を見返した。
「いやいや。やり過ぎだろ。
俺が薪取り行く時からしてたじゃんお前。
疲労骨折って言葉しらねぇの」
何の気負いも警戒もないその言葉と声色に昆奈門は警戒は解かず平坦な声を返した。
「・・・誰だ」
「人に名前を聞く時はまずは自分からってしらねぇのかよクソガキ。
俺は林根天青(りんねてんせい)。押都さん家に厄介になってんの」
明らかに自分より小さな子供の言い分に内心ちょっとムッとしながら思い当たる存在にああと声を溢す。
「押都の小姓見習いか」
「そうそう。小姓ってか、やってることは下男?下働きって感じだけどな。
で、お前は?」
何の気無しに溢されたその問いかけに昆奈門はパチリと瞬いた。それほどに予想外の問いかけだった。タソガレドキ忍軍の関係者しか居ないこの場所で昆奈門の存在を知らないものなどいない。そう思っていたからだ。しかし、押都の所に最近引き取られたと言う存在なのだから知らなくても当然だったと遅ればせながら気付いた昆奈門は自分の考えが急に恥ずかしくなって素っ気ない声で答えてしまった。
「雑渡昆奈門」
「あぁー。あの噂の子だったの1番くん」
得心がいったと言うような子供の声に昆奈門は首を傾げた。
「?」
「今日のかけっこお前1番だったじゃん」
「見える位置にいたか?」
子供の言いように昆奈門はさらに首を傾げる。さっきの気配のなさといい、いつも気を張っている昆奈門に気取らせない気配の消し方など忍軍でも上層部の手練れでなければ無理だ。だからこそ昆奈門は期待を掛けられているのだから。
「いたから言ってんだけど?」
「・・・気づかなかった」
「へぇー。1番くんでも気付かねぇんだ」
不服そうに答えてしまった言葉の返事は随分と揶揄っているような声色で子供の顔を見れば愉快げに真っ黒な瞳が弓形にこうを描いていた。今までに感じたことのない気持ちが浮かんだ。しかし、昆奈門はそれを形容できるだけの人間関係を今まで培ってこなかった。モヤモヤとする心情のまま名で呼ばれぬからかと訂正を試みた。
「昆奈門だ」
「は?」
名だけでは分からぬのかと察しの悪い子供に何故だかムカムカする。視線を外して伝える。
「1番くんじゃない」
「ふーん。お前嫌がれるんだな」
「は?」
淡々とした子供の声に目を合わせた。
「易々諾々と大人の言う通りにしてっから意思なんてねぇのかと思ってたわ。1番くん」
夕日を背にした自身より小さな子供がニタニタとまるで小馬鹿にでもするような顔で声色でそう言った。
自分がこれまでこの場所でどれほどの期待と重責を背に頑張って来たのかまるで知らぬその言葉と顔が無性に腹立たしかった。
雑渡昆奈門はその日生まれて初めてキレて他人と取っ組み合いの喧嘩をすると言う恥すべき行為をしてしまった。
組頭の邸宅で並んで座った子供2人は片やボロボロであちこち包帯巻きで頬に大きな湿布を貼り口元には血を滲ませた切れた跡があった。もう片方は薄汚れてはいるが頬に湿布をひとつ貼っているだけでほぼ無傷だった。
その2人の子供の正面に同じように2人の大人が座っていた。片や覆面で顔を隠した男、押都。もう片方は面白そうに2人を眺める壮年の背が高く体格のいい男、タソガレドキ忍軍忍び組頭雑渡。
押都が顔を覆う覆面ごと手で顔を覆う。
「天青お前と言う奴は」
「さーせん。押都さん」
全く悪びれるふうもなく天青が軽く頭を下げる。
その様子に大きく溜息を吐き押都が組頭へと向き直り頭を下げた。
「組頭。何とお詫びすればよいか」
組頭が声を出す前に天青が気の抜けた声を上げた。
「えー。ガキの喧嘩に首突っ込む系の親なんすか組頭って。ドン引きだわ〜」
「天青!口を慎め!」
「さーせん。
でもやられまっくたの俺なんで慰謝料請求してもよくないすっか?
先に手ェ出したのコイツっすよ」
怒鳴る押都に首をすくめた天青は隣で黙ったままの昆奈門を指差した。
その言葉に申し開きもせず昆奈門は粛々と頭を下げた。
「申し訳ありません父上。押都」
「ほら。コイツもこう言ってることですし、
喧嘩両成敗で不問ってことでどうすっか?組頭」
頭を下げ続ける昆奈門をうっわ優等生とでも言いたげな冷めた目で見ていた天青は戯けた顔を作ると押都と組頭に顔を向けて言うものだから、押都は背中に冷や汗をかきながら叱りつけた。
「天青!!お前はもっと反省しろ!!」
押都の大声に耳を塞いだ天青を忍び組頭は愉快と笑った。
「ははは!全く面白い子だな。
良かろう。
天青。お前の言う通り喧嘩両成敗。
2人の責とする。1週間医務方の手伝いとして山で薬草取りに励め。
天青も昆奈門もその間鍛錬は禁止だ。
2人で一緒に薬草取りをするのだぞ。組頭としての厳命だ。
それで此度の件は不問としよう」
「はっ!」
「うげー。はーい」
頭を下げすぐに返事をした昆奈門とちがい天青は嫌そうに呻いたが押都の覆面越しの鋭い視線に気付き気の抜けた返事を返した。
2人を退室させた押都は組頭へと深々と頭を下げた。
「申し訳ありません組頭」
「よいよい。こちらが感謝せねばならぬほどだ押都。
ふふっ。よもやあやつがそこらの子供のように癇癪を起こすとは、
明日は槍でも降るかもしれんな」
未だ十にもならぬ子供が一度も癇癪を起こさぬなど普通ならありえない。しかし、昆奈門は物心ついてから唯の一度も癇癪を起こしたことなどなかった。此度が初めてなのだ。それほどに昆奈門は我儘も言わず、周りの思惑を全て察するいい子過ぎた。押都の思いに気づいた組頭がフッと笑う。
「子が賢すぎて悩むなど贅沢だとは思うのだがな」
「組頭」
「押都。お前には本当に感謝している。
結婚もまだなお前が子を拾って来た時は驚いたが、
良い拾いものをしてくれた」
深い安堵を滲ませるその声と微笑みに押都は組頭の親としての顔を見て静かに目を伏せた。
手加減をせずに打ちのめしたにも関わらず一瞬の隙をついて昆奈門に1発入れた天青は怪我を痛がる素振りもなく雑渡家の玄関で草履を履く。まだ最近鍛錬を積み始めたばかりだと言う天青に1発入れられるなど自分もまだまだ鍛錬が足りないと思いながらぼんやりとその背を眺める昆奈門に天青が声をかけた。
「お前いくつ?」
「九つ」
「ふーん」
気のない返事に眉を顰めながら昆奈門も問いかける。
「お前はいくつだ」
「十一」
「つくならもっとマシな嘘を吐け」
「あ?嘘じゃねぇーし。お前より俺が年下なわけねぇだろうが」
「その背でか?」
「はぁ?世の中の人間が全員お前みたいにニョキニョキ縦に伸びるとでも思ってのか?雨後の筍じゃねぇんだぞ。全くこれだから箱入りお坊ちゃんは世の中ってもんをしらねぇ」
「・・・」
未だにここ以外を知らない昆奈門は何も言い返せなかった。
「お前より年下だなんて嫌だからな。俺は今日から十一だ」
「は?」
「本当の年なんてみなしごの俺はしらねぇからな。
自己申告でいいんだよ。だから今日から十一。
よろしくな年下くん」
立ち上がり振り返りざまニンマリと笑う天青にムカついた。
それからと言うもの年が近いからか天青と昆奈門は一緒くたにされることが増えた。鍛錬であったりなにがしかの手伝いであったり。天青と言う子供は騒がしく、人の懐に入るのが得意だった。だから天青より皆との付き合いの長い昆奈門よりよほど上手く皆と付き合っていた。一緒くたにされる天青と行動することが増えた昆奈門も昔よりは少しずつ皆と気安いやり取りが増えていくのを感じていた。
鍛錬の組み手の順番を木陰で待っていた昆奈門は木の幹に背を預けた天青に気怠げな顔を向けられていた。
「昆奈門さー。お前いっつも固っくるしすぎ〜。
側にいると息詰まるんですけどー。
もっとゆるっとしてくんねぇ〜。
お前と俺年ちけぇからいっつもペア組まされんだからさー」
「お前はもう少し気を引き締めたらどうだ」
「わかってねぇーなー。1番くんは。
一分も隙がねぇと敵が手を出しずれぇだろ」
「その為だが?」
「だからわかってねぇっていってんの。
いいか、飄々として隙を作っとけば、
こうやって敵さんがわざわざそこを突いてくれるわけよ」
天青はそう言うと、木の幹に隠れるように背後から天青に近づいていた小さな手をガシッと掴んだ。もみじの様な小さな手の主が小さな声を上げる。
「え?」
「そしたら、俺はそこを取っ捕まえるわけ」
天青は力任せにその手を引っ張った。
「うわっ⁉︎」
細い両手首を掴んで持ち上げた天青は驚きに目を丸くする小さな子供にクワッと大口を開け叫んだ。
「おらぁ!捕まえたぞ!高坂さんとこのチビ!
俺に不意打ちかけようなんざ百年はえぇぞ!」
「ぎゃー!はなせー!ばかてんせー!!」
バタバタと短い足を動かし天青に蹴りを入れようと頑張っていた子供はブワッと上に放り投げられヒュッと息を呑んだ。ギュッと身を縮ませた子供が上から落ちてくる。それを天青は危なげなく片腕でキャッチして、空いている方の手で脇腹をこそぐり大笑いをさせた。
目の前の男は子供が好きなのかとぼんやりと昆奈門はその様子を見つめていた。
「やまもっさーん!
おっつー!」
ブンブンと音が鳴りそうなほど腕を振りこちらに小走りで掛けてくる小柄な少年と静かに隣を歩く背の高い少年を山本陣内は微笑ましく出迎えた。
「やあ天青、昆奈門。
今日は薪拾いか。
私が留守の間に何をやらかしたんだ?」
「聞いて下さいよー!やまもっさん!」
「任務お疲れ。陣内」
凸凹の背のように正反対の顔で正反対の声音で正反対の反応をする2人に山本は吹き出した。
実の所山本は昆奈門が心配だった。恐ろしいほどに忍者と言うものに向いている昆奈門が。体も心もすり減らし忍者になろうとする昆奈門が心配だった。幼い頃からピンと張った糸の様にずっと気を張っている昆奈門に子供らしくあって欲しいとすら思った。しかし、それを指摘することは憚られた。自分が口出しすべき領分でないと。立場でないと。代わりにいつでも頼って貰えるようにと嫌がられない程度に世話を焼き気を回した。今思えばそれも逆効果だったのかも知れない。周りの期待を組頭の子息としての重責をその背に負った子供には。しかし、山本の心配は全て杞憂となった。喜ばしいことに。
元気に手を振る天青の隣を歩く昆奈門はもうピンと張った糸のような気配をさせない。そこらの子供のように天青と軽口を叩き合う。天青の隣でだけ彼は唯の昆奈門としてあれるのだ。それが嬉しい。
本人達にその自覚はなくともよかった。
「昆奈門!お前!いい加減にしろよ!
なっげー足でゆっくり歩いて俺の小走りについてくんじゃねぇーよ!
この嫌味野郎!」
「天青が走れば小走りくらにはなるんじゃないか?」
「あぁ?やんのかコラ?」
「また一日中薪拾いしたいのならどうぞ」
「俺より薪拾えなかったくせに言うじゃねぇか。お坊ちゃん」
「だって俺より天青の方が地面に近いだろ?有利だ」
「よっしゃ!表出ろ!この野郎!」
「もう出てるよね」
いやまあ、喧嘩するほど仲がいいっていうから。
諸泉は大人になれきれぬまだ小さな背に声をかけた。
「天青」
「あ、諸泉さん!お疲れ様っす!」
「どうしたのこんなところで」
「あー。いやちょっと休んでただけっす」
「へー。怪我して?」
「はぁ〜。やっぱ騙されてくれないすっか?」
「当たり前だろ。ほら観念して傷見せなさい」
「へーい。お手柔らかにお願いしまーす」
袂を開いて現れた青痣に諸泉は眉を顰めた。
「誰にやられた」
苛立ちと共に殺気が抑えられず低い声で聞く。
「黙秘で」
痛みでなく小さく肩を震わせた天青はそれでもヘラッと笑った。
「押都に言うよ」
「どうぞ」
「チッ」
「おー!珍しい!諸泉さんの舌打ち」
「茶化してないで言いなさい」
「嫌だなぁ〜。諸泉さん。忍者なんですから自分で調べて下さいよ」
ニヤーっと笑う天青にニコリと笑って返す。
「尋問しようか?」
「おっと、そう来たか。
んー。そうっすね。
押都さんの名前出されても言わない俺から引き出せそうならお好きなように」
「チッ!」
「おっ。さっきより大きい」
「わかった。昆奈門連れてくる」
「はい⁉︎ちょい待った!
なんでアイツ?」
諸泉の言葉にギョッとして叫ぶ天青に微笑みと共にしれっと返す。
「尋問得意だろ?この間の試験も1番で1発合格だったしね」
「笑顔でエグイこと言いますね。
俺隣でその尋問見てたんですけど?」
「だからだよ」
「うっわ。いい笑顔ー」
目の前の子供の悪癖に諸泉は眉根を寄せ溜息をついた。
押都が戦場から連れ帰った子供は普段の騒がしさで見落としがちだが、随分と自分を蔑ろにする。自身の怪我に何処か淡白だ。死ぬ気はなくとも。それはこの子を引き取った押都をはじめ大人達が頭を抱えるほどだった。子供達にはまだ知られていない。目の前の子が上手く隠してしまうから。忍者に大層向いていると思う所以でもある。タソガレドキの1番の有望株に唯一喰らいついていける2番手だ。体術も忍術も大人と引けを取らない。しかし、こんな所でまでそんなものを発揮して欲しくない。押都も苦労するだろう。家族にすらなってくれないこの子は今や押都の家を出ている。自分が居るから嫁が来ないとか言われるの嫌ですもん。と言ったらしい。引き止める間もなく忍軍の単身寮に入ったそうだ。ちょくちょく顔は見せに来てくれるらしいが。大体、まだ忍者の卵と言える年齢で寮に入れたのはひとえに鶴の一声ならぬ次期城主の一声だった。いつの間に知り合いになって気に入られたのか甚兵衛殿のお口添えらしい。忍軍上層部は頭を抱えた。
「あー。諸泉さん。
いくらアンタら上層部が仲良しこよしでも、これだけ大きな組織なんです。多少の不仲はありますよ。大体俺と昆奈門だって仲悪りぃでしょうが。そこまで目くじら立てることじゃないですよ。骨だって折れてないし。まあ俺も言い過ぎた?ような気もしないでもないですし?怪我治ったら十倍返しにしますから。それでどいつか判断して下さい」
「はぁー。今日はウチに泊まれ」
「えー!新妻のいる新婚家庭に泊まるとかゼッテーやだ!ちょーヤダ!
ソワソワしながら夜寝たくない!まだ墓場で寝た方がマシ!!」
「ほーう。じゃあ今夜は昆奈門の部屋に泊めてもらえ」
「そこは押都さんでよくないですか⁉︎」
「あそこも新婚家庭だろ。気を利かせてやれ」
「諸泉さんがそれ言う⁉︎
つうか寮の自分の部屋で寝ますー!」
昆奈門が十二を超えると次第と任務を任されるようになった。とはいえ初めは引率がついた。しかしながら昆奈門は引率に見守られるだけで全ての任務を問題なくこなしていった。歳を重ねるにつれて段々と任務は難しくなる。子供のお使いのような任務ではなくなり、2人での難しい任務が増えた。昆奈門についてこれる力量を持つものは同じくらいの年では天青だけだったので自然と2人はいつも同じ任務につくようになった。引率はすでににいなかった。大人達と数人で組むような任務も滞りなく行える。
それは、忍者の卵と言われなくなった頃。
それは、とある敵対する城より密書を奪う任務であった。
いつも通り2人での任務。
全てはいつも通りつつがなく遂行された。
二手に分かれて城から出た昆奈門と天青は集合場所の松の木の下で落ち合った。
追っ手もなく城は静かで、未だ忍びが入ったことすら気付いていないだろう。
その夜は月明かりがあった。
忍び込むには不向きな月夜。
しかし、時間的余裕がなかった為今日決行された任務だった。
松の木に背を預けていた天青は遅れて現れた昆奈門に手を挙げて答えた。
「よ。俺が先だったな」
「勝負ではないだろ」
ニヤッと笑った天青に昆奈門は溜息をついた。
「さーて帰りますか。無事に帰るまでが任務ってね」
木の幹から背を離した天青はその瞬間、昆奈門の背の奥で月明かりを反射した何かに気付いた。
「伏せろ!」
天青に入れ替わるように腕を強く引かれた昆奈門はタタラを踏むが、すぐに体勢を立て直し後ろを警戒した。しかし、天青の飛ばした苦無が刺さった男が遠く木の上から落ちているのを見ることしか出来なかった。気配を探るが側に他の敵はいないらしい。しかし今いる山の裾野から騒めきが聞こえてくる。早く逃げなければならない。
天青に声を掛けようとした昆奈門は息を呑んだ。
月明かりに照らされて天青の胸に刺さった棒手裏剣を見たからだ。
その時昆奈門の胸を満たしたのは、グッと息を詰めている天青の傷の心配よりも、手当の方法よりも、天青が自分を庇って怪我をしたと言う事実への憤りだった。
「なんで庇った!」
苦しそうに呻く天青の胸ぐらを掴んだ昆奈門は倒れそうになる天青の体を引き摺り寄せ叫んでいた。重症を負う仲間にすべきでない。そう思っているのに感情が抑えられなかった。
いつもいつも、全てをそつなくこなせる昆奈門はこの男の事になると失敗ばかりだった。
昆奈門の歪む顔を困惑しか乗せていない黒い目が見返した。
「は?」
それはひどく静かな凪いだ声だった。
「死なせたくねぇからに決まってんだろ」
息が止まった。
声と同じ静かに凪いだ黒い瞳がジッと昆奈門を見ていた。はくはくと息だけが口から漏れた。何か言うべきだ。でも何を言えばいいかわからない。いや、そんなことより治療を。早くここから離れなければ。恐ろしいほどゆっくりと思考が回って体が動かない。任務では失敗など一度としてしていない。手が震える。それが何によってなのかわかならない。
だって、コイツが。
この男が。
自分をよく思っていないだろうこの男が、どうして自分を死なせたくないなどと言うのか昆奈門にはさっぱりわからないのだ。この男が情の深い人間だと知っている。ならば昆奈門にだってそれを向けても不思議ではない、そう思うのに納得がいかない。だって、この男にとって自分は例外だ。里の子供達と同じような優しい顔も優しい手つきも一度だって自分には向けなかった。他の大人達に向ける年相応の甘えた顔も信頼も自分には向けられない。自分だけ他の誰にも向けない顔で他の誰にも向けない態度で言葉で相対して来た。
会った時からずっと。
今までずっと。
自分はこの男の特別だった。
だから他の人間にするのと同じように自分を庇うなどあってはならない。
昆奈門の目をジッと見つめいた天青がニヤッと笑った。
いつものように。
「なーんてな。嫌がらせだよ嫌がらせ。
将来有望なナンバーワンの雑渡くんが2番手の俺なんかに庇われちゃってマジウケる」
ニヤニヤと傷など受けていないように天青がいつも通り笑う。
いつもと違い名ではなく苗字で呼ぶ。
昆奈門は今自分がどんな思いでいるのか、どんな顔をしているのか、どんな感情が胸を満たしているのかちっともわからなかった。
「ほーら、すっとぼけてる暇あったらさっさと密書持ってけよ。どう見たって俺がタソガレドキまで持たないのわかんだろ。俺らの任務はお前がちゃんと密書持って帰れば任務完了。問題なし。つーことでさっさと行け」
呆然と立っているだけの昆奈門の胸をポンポンと軽く天青が叩いた。
密書は昆奈門が持っている。天青の言う通り行けばいい。
この男を置いて。
忍びとはそうあるべきだとずっと学んできた。
天青は動かない昆奈門から視線を外し自分で自分の手当てを始めた。頭巾を脱いで解いて広げる。胸に刺さった棒手裏剣を一気に引き抜き、吹き出した血を頭巾で素早く抑え、傷口に巻くと抜いた棒手裏剣を使って傷口を縛り上げる。痛みに呻きながら全てを1人で行った天青は困った子供でも見るような目で昆奈門を見た。それを呆然と昆奈門が見返す。そんな顔を俺に向けてくれるなと思いながら。
はぁーっと深い溜息をついた天青はバキッと力の限り昆奈門の顔を殴った。
受け身も何もなくその拳を受けた昆奈門はその場に倒れ尻餅をついた。
そんな昆奈門を天青が見下ろす。
ハッと鼻で笑い小馬鹿にするような顔で見下ろした。
「おいおい。雑渡くんよ。
俺の命はお高いんだぜ」
血の気の引いた青白い顔にニタニタと笑みを浮かべる。
「タソガレドキ忍軍次期組頭を助けるくらいになぁ」
昆奈門はまだ動けない。
「お前がこれから成すこと全てが俺の命の価値だ」
淡々とした声にビクリと昆奈門の体が震えた。
「つまりここでお前が俺と一緒に無駄死にすることは俺の命をドブ川に捨てるも同義なわけだ。
わかるか?わかったんならさっさと行けボケ」
なんだか随分と投げやりな声だった。
それが不快で昆奈門は眉根を寄せた。
尻餅をついたままの不様な格好で天青を見上げるだけの昆奈門を天青が見下ろした。
黒い目がヒタと昆奈門を見据えた。
「雑渡昆奈門。
お前は俺の命を捨てるのか?」
責める声色ではなかった。
ただ問うだけの声だった。
その声がどうしようもなく大事な気がした。
この男が自分にだけ向ける声なのだと思った。
他の人間には渡さない自分だけの声と想いだ。
この男の命を自分以外に使われるのは嫌だと思った。
たった今そう思った。
だから昆奈門は立ち上がった。
それを見ながら天青は徐に懐から苦無と半紙を取り出し、自分の髪を少しだけ切って半紙に包む。
「ああ、そうだ。
お前は俺の真似すんなよ、雑渡さん家の昆奈門くん。
お前には今日から俺の命が乗っかんだ。
お前が庇った誰かが俺とお前の命の重さで潰れるとこなんざぁ俺は見たくねぇからな」
何処までも軽い口調で居るかもわかない誰かを心配する情の深い男を見下ろす。
背の差は埋まらなかった。
この男が自分で決めた年の差も。
月明かりの下、男をジッと見る。
目に焼き付けるように。
半紙を小さく折りたたむ天青が小さく溢した。
「あーしまった。血がついた。まっいいか」
その小さく丁寧に折り畳まれた半紙を昆奈門に差し出した。
「押都さんに弔いしたかったらコレ使ってって言って渡しといて」
何処までも軽い、本当にムカつくほどに腑が煮え繰り返るほどに何処までも軽い声色であり言葉だった。
コイツはムカつくが押都に罪はないので素直に受け取り懐に忍ばせる。
「じゃあな」
何処までも軽いいつも通りの声と素振りで片手を上げた天青が昆奈門に背を向けた。ひらりと手を振り今来た道を戻る。騒めきの大きくなる裾野に向けて歩いていく。
まるでまた明日も会えるような気軽さで歩いていった。
その背に自分も背を向け昆奈門は走り出した。
密書を受け取ったタソガレドキ忍び組頭雑渡と黒鷲隊押都、狼隊山本諸泉、月輪隊高坂の5名は目の前に座り今回の任務の報告を終えた雑渡昆奈門の憂いも悲しみも苦悩も怒りも全くない凪いだ顔を絶句して見ていた。昆奈門の赤く腫れた頬だけが今報告された全てが事実だと証明している様だった。
「天青から押都にコレを渡すよう頼まれました」
淡々と凪いだ声が告げ、胸元から血のついた丁寧に小さく折り畳まれた半紙を押都の目の前に差し出した。震える手で押都は半紙を受け取り震える指でそっと開いていく。
中身に息を呑んだ押都は凪いだままの昆奈門を見返した。
「中身を見たか?」
「いいえ。髪を忍ばせるところは見たので。
弔いをするならそれを使って欲しいと」
「・・・そうか」
「昆奈門。此度の任務ご苦労。下がってよい」
「はっ」
組頭の言葉に昆奈門は深々と頭を下げると部屋を後にした。
「組頭これを」
重苦しい空気の中、押都は手に持つ半紙を組頭達に見えるように広げる。
全員がその中身に絶句した。
半紙にはほんのひとつまみ程度の黒髪が包まれており半紙の内側には血がついていた。
その血は文字を書いていた。
『ナイツウシャアリ』
掠れた血文字は確かにそう書かれていた。
そうでなければ天青が昆奈門を庇って死ぬわけがない。
それほどまでに2人は強かった。城内に気付かせるヘマなどするはずがない。ならば、落ち合う場所を誰かが敵方に知らせ潜ませ待ち伏せさせた。天青はその可能性が高いと判断した。攻撃されるまで2人が敵の接近に気付かぬはずがないのだから。
どうしようもないほどの事実が疑いたい血文字の内容を肯定していた。
致命傷を負ってその事実をこちらへと伝えた天青がそれでも昆奈門には隠した。
普段であれば昆奈門も天青と同じタイミングで気付くはずだった。
しかし、そうはならなかった。
それほどまでに昆奈門は冷静でなかった。
天青が死ぬと言う事実に昆奈門は冷静でいられなかった。
しかし、それもいつまでも続かないだろう。
あの雑渡昆奈門ならいずれ気付く。
そして、気付いた時に昆奈門がどうなってしまうのか誰にも予測出来なかった。
そのことが5人に重苦しい空気を背負わせ続けた。
内通者の発見は早かった。
2人の任務を知る者は限られていたのだから。
拷問をして全てを芋蔓式に吐かせる為に集まっていた5人は、その場に現れた昆奈門に生きた心地がしなかった。父親である組頭でさえもだ。
濃厚な殺気に気付かないのか、尋問で感覚が麻痺しているのか内通者が昆奈門を見てゲラゲラと笑い出した。大笑いをした内通者は急に糸の切れたように静かになって昆奈門をドロリとした暗い目で見上げた。
「ああ、残念だったな目障りなお前を殺せなくて。天青は絶対お前を見殺しにすると踏んでいたのになぁ。だってお前ら仲悪かっただろ?天青も可哀想だよなぁ。ずーっと天才様の引き立て役になってさぁ。なあ。アイツの最後ってどんなんだった?最後だからお前に罵詈雑言でも浴びせた?あーあ、残念だった。アイツも嫌いだったからさぁ。不様に死ぬとこ見たかったよ。特製の毒を塗り込んでたからさぞ喚いて見苦しかっただろう?それともお前が介錯してやったか?」
息が出来ないと思うほどの殺気が部屋を満たした。
やっとそのことに気付いたのか内通者はカクリと気を失って地面に転がった。
耳が痛くなるほどの静寂に声が落ちた。
感情の一切こもらない声が。
「毒」
その一言にビクリ肩が跳ねた者は何人いたのか。
昆奈門の報告の中の天青にそんな反応はなかった。つまり、天青は致命傷を受け毒に耐えながら昆奈門に隠し切ったと言うことに他ならなかった。
「組頭。コレの尋問、私が引き継いでもよろしいでしょうか?」
有無を言わさぬ声で問いかける息子に組頭は否は言えなかった。
「任せる。
内容は全て報告しろ。
他の者は全員出ろ」
組頭に従い部屋を出た4人は部屋を随分と離れるまでずっと無言だった。
「押都すまん」
やっと立ち止まった組頭が押都に頭を下げた。アレは子供のように可愛がっていた天青の仇だ、押都だって昆奈門同様の想いはあっただろう。しかし、あの状態の昆奈門を放置も出来なかった。どちらに余裕がないかは一目瞭然だった。忍軍を背負って立つ人間をここで潰すわけにはいかない。
「お気になさらず。組頭。
あの状態を放置は出来ますまい。
まあ、もう少し尋問したかったですが昆奈門に譲りますよ」
覆面の下、随分と力ない顔で押都は笑った。
部下を庇って大火傷を負い、生死を彷徨う昆奈門は十数年ぶりに懐かしい人物と夢であった。夢でくらい会いたいと思っても中々どうして会えない男はこんな時ばかり現れる。
それが彼らしいと言えば彼らしいのだが。
ふと目を開け昆奈門は側に控えていた諸泉に声をかけた。
「もろいずみ
あいつにあった」
「・・・彼は、なんと?」
「俺の真似をするな、
俺とお前の重さで助けた奴を潰すな、
と言っただろう。
そう言って怒られた」
「つっ⁉︎」
「ふっ。あいつより俺の方が優秀だな。
俺は死ななかった。
今度会ったら自慢でもするよ。
だからお前は2番手なんだと」
「・・・はい。
はい。
それがいいと、私も思います。
きっとあの子は、大層悔しがりますよ」
雑渡昆奈門は時折彼を思い出す。
ふとした瞬間であったり、青い晴天の空を見た時だったり、月明かりの夜だったり、様々な時にふと彼を思い出す。未だ彼を自分がどう思っているのか、彼が自分をどう思っていたのかわからない。けれど、昆奈門の思い出の中の彼はいつだって楽しそうだ。だから自分も負けじと楽しく日々を過ごさねばと思う。意地のような、どっちが楽しいか張り合うような。相手は既にこの世にいないのにそんな子供じみた思いで彼を思い出して日々を過ごす。今の自分の部下達のような関係性は望めない相手だった。尊敬なんてお互いしていない。好敵手やライバルなんて柄でもない。だが嫌いあっているとは言えないそんな間柄だった。お互いを嫌悪するには情があり過ぎた。
十数年彼と言う人間を自分の思い出の中に住まわせ続けた昆奈門になんとなくだが彼を分類するならばコレかもしれないという思いが浮かんだ。
何かと一緒に過ごしたせいでどちらかが何かをやらかせば罰も一緒に受けた。やらかすのは九割方彼だったが。けれど、思い返せば楽しかったのだ。彼と過ごす騒がしい日々は。
だから、彼はきっと悪友だったのだ。
雑渡昆奈門の唯一の友であったのだ。
何かを考えるまでもなく体が動いた。
胸に受けた棒手裏剣に、あ、死んだなっと思った。
こんちくしょうと気合いで持って敵に苦無を投げ、気合いで倒す。
ザマーミロ!と内心叫ぶも絶対死ぬわーと確かな確信があった。
だって多分毒塗ってる。
ガタガタ体が震えるほど寒かった。
激痛が毒のせいなのかただ単に刺さった棒手裏剣のせいなのか判断がつかなかった。
まあ、昆奈門がいるから任務は遂行出来るしまあいいかと思っていたら、ガッと胸ぐらを掴まれた。
はぁ〜?いてぇし殺すぞと思っていたら叫ばれた。
なんで庇った!と。
は?とマジで本意気の困惑が漏れた。
こいつマジかと思いながら答えた。雑渡さん家の昆奈門くん死なせたら俺が怒られんじゃんと思いながら。もういいだろ離せよと続けようとしたが、昆奈門の顔を見て不味いなと思った。
完璧1番くんはコレまで一度も任務を失敗していない。初めての失敗が自分が庇われてペアを組んでいた人間が死ぬとか、初めての失敗にしては酷すぎる。完璧主義のけがあるコイツにはハードすぎて思考が停止しているらしい。マジで勘弁してくれよ。俺もう死ぬんですけど?ここからお前の面倒見んの?ここから入れる保険なんてないよ普通。
なんとかいつも通りにおちゃらけてみた、なんで死にそうな俺がでっかい子供のお守りしなきゃなんねぇんだよと内心泣きながら。でもコイツを生きて帰さなければいけないから仕方ない。庇ったのにココで死なれてみろ俺の庇い損じゃねぇか。くっそ、泣いて詫びろと思ったがそんなコイツは解釈違いなので泣く泣く我慢した。俺心内で泣きすぎじゃねぇと現実逃避しながらニヤニヤ笑ってやった。さっさと行けと密書を隠してる昆奈門の懐を軽く叩く。強く叩くと傷に響いちゃうから。
超絶痛いの我慢して傷口を塞ぐ、気をやりそうな俺をただ呆然と見つめる馬鹿に腹が立ってきた。思考停止したまま俺を見続ける昆奈門をどうしたもんかと思って見てると昆奈門はそんな顔向けてくれるなって顔をする。だからテメェは一生俺より年下なんだよと言ってやりたくなった。俺と違って年上の余裕ってもんがねぇのよ。山本さん達が甘やかすもんだからガキっぽさが抜けねぇたらねぇ。
はぁーと息をつく。毒のせいなのかメッチャいてぇし、馬鹿は動かねぇし、腹が立つ。
俺の頑張りを無視し続ける馬鹿に腹が立って思いっきり頬を殴った。
多分殴られた奴より俺の方が絶対痛かった。異論は認めん。一瞬死ぬと思ったもん。息もしづれぇのに頑張って喋って疲れてきた。めんどくせぇなぁーと思いながらあの手この手で馬鹿を立ち上がらせる。早よ立てボケ。バカ。アホ。内心の罵詈雑言に気付いたのか気付いていないのか奴は眉根を寄せた。
やっと頭が回ってきたのかよと息も絶え絶えはぁーと内心溜息ついて痛いのを我慢する。ちょっと表情筋にも休んでもらう。どうしたって中々立ち上がらない馬鹿に聞いてみた。
純粋な質問だった。
コイツが俺のことどう思っているかなんてこの際どうでもいいが、聞きたかった。
コイツにとって俺の死はなんなのか。
ポイっと捨てれるもんなのか。
しょうがねぇから完璧1番くんを投げ捨てて生き恥晒してもいいから意味のあるものにしてくれるのか。
どうやら意味のあるものにしてくれるらしい。
やっと立ったお馬鹿さんに念の為の注意事項を言っておく。何気に俺の真似しぃなお坊ちゃん雑渡さん家の昆奈門くんに俺と彼の命の重さについて講釈を垂れる。お前に庇われた人がどんだけ重荷を背負わされるかを。ついでに俺の軽い命も乗せとく。軽い命を高値にしてくれるかはコイツ次第だけど。
はぁーやっと本題に入れるわと手早く髪をちょっと切り半紙に包むフリして血文字で真っ赤な恋文を押都さん宛にしたためた。俺の仇討ちはどうでもいいけど内通者は刈っとかないと大問題だ。初めての失敗がショックでまだ気付いていない昆奈門には内緒だ。コイツなんだかんだ言って仲間に甘いからなぁ。ショックは分散させた方が良かろう。年長者の気遣いってやつだ。
やっと死ねるよと息も絶え絶え軽く軽く声を出し、いつも通りを心がける。綺麗に畳んだ半紙を昆奈門に渡す。そして背を向け手を振る。痛さなんて微塵も感じさせない。だって昆奈門に報告受ける大人達にアイツめっちゃ痛そうでしたとか報告されたくないし。かっこ悪いし。そんな報告コイツにされたらなんかムカつくし。それに俺がめっちゃ痛がってたとか聞いたら諸泉さんと山本さん泣いちゃうじゃん。あの人達身内に甘いから。押都さんはどっちでも覆面してるから大丈夫だろう。組頭は言わずもがな泣かない。高坂さんは泣かないって信じてるけどあの人も結構熱血なけがあるもんなぁ。
だから最後まで痛がるな。
立つ鳥跡を濁さずだ。
どうせあと一刻もない命だろうから最後は派手にいこう。
こちらに向かってくる敵を出来うる限り道連れにしていく。
めっちゃ痛いから八つ当たりも兼ねて。
昆奈門を追わないようになんて思惑はこれっぽっちもないけれど、結果的にそうなったら仕方ない。
とまあそんなこんなでボロ雑巾のような体になって俺は死んだ。
死んだんだけどなー。
一回地獄で休憩くらい挟んで欲しかったわー。
速攻ニューゲームかよ。
しかもブラック城に就職してんのかよ今の俺。
戦火が多くて就職難とは言え他にどっかなかった?
てか、暦考えたら俺って前の俺と被ってる時期あるくね?まあ、時系列的には死んだ後で思い出してるんだけど。まあ、転生なんておかしなことしてるんだからあんまり真面目に考えても仕方ない気もする。
「天青、目が覚めたか?」
「覚めたよ〜」
頭を打って前世を思い出すなんてベッタベタな出来事が起きて、薄いゴザの上で頭を抱える俺に淡々とした声がかかった。ゴロゴロ転がりながら返事を返すと声をかけてくれた少年が足で俺の動きを止めた。扱い雑じゃない?俺君より年上だぞ?渋い顔を向けると、野暮ったいボサボサ頭の忍姿の男が半眼で俺を見下ろしていた。
「夜霧くんさー。もっと年上は敬おうよ〜」
「敬える人間になってから出直せ」
「うっわ、辛辣ー」
「死んでないなら任務だ」
「ほんとここブラックー」
夜霧の足を退かして渋々忍び装束を着る。
てか一回謝ろうか夜霧くん?君のせいで俺頭打ってるからね。手合わせで本気で頭打つなんてことある?寸止めしてよ。頭かち割れるかと思った。馬鹿がより一層馬鹿になんじゃん。
「これ以上は無理だろ」
「心の声に返事すんな!」
「全部口に出てる」
「マジでか。
はぁー。夜霧昨日の晩飯って何だった?」
「兵糧丸」
うぅうーと唸る俺を不思議そうに夜霧くんが見ているが、それどころじゃないのよこっちは。
そうなのだ。昨日の晩飯は味噌を惜しげもなく使った猪鍋!みたいな思い出し方したのだよ前世を。そんなことある?そんな濃い味の晩飯忘れてたの⁉︎みたいな思い出し方だし衝撃なわけだよ。
しかも、今の自分も林根天青である。
名も姿もそのまま。使い回しかい!!
まあ、楽だからいいけどそこは。今の自分も大層変わった人生のようだがそれをちゃんと分かった上でのこれですよ。今の自分を乗っ取ったみたいではないので安心ではあるが。てか転生二度目ってどう言うこと?天青くん二度目ましてでさらに一個生えてんだけど。何これ俺知らない。今世の俺未来人の記憶あんじゃん。こわっ。こんな記憶あってよくこの城に就職したね?未来から見たらこの時代めっちゃ殺伐としてんじゃん。世紀末じゃん。まあ、前世忍者の俺は今世も忍者で特に困んないけど。
はぁー取り敢えず、この城はやめてぇー。
抜け忍になったら即コロ案件だから当分我慢するけどさぁー。
「夜霧、朝飯ちゃんと食べてないなら、
任務の前に飯食いに行こうや」
「朝は・・・」
「朝露や霞ですとか言うなよ?」
「焼き魚とご飯と汁物」
「しっかり食っとる!!」
ちゃんとしたご飯食べててホッとしつつ心のままに叫ぶと何言ってんだコイツみたいな目で見られた。ハイライトないくせに表情豊かなお目目ね、夜霧くん。お兄さんは泣いちゃいそうだよ?
「隣で同じ物食べてたよな?」
あ、そうだった。思い出した。
昨日の晩飯が酷過ぎて腹減って目が覚めたから寝ぼけまなこの夜霧を城の食堂に無理やり連れてって一緒に朝飯食わせたんだった。だって夜霧くん育ち盛りだし。
夜霧くんよ、頭は大丈夫かってその目は俺がさっき頭打ったからだよね?
『夜霧に晴天の霹靂ならぬ拳骨1発。』
「夜霧ってさ、すっげー死んだ魚の目してるよな。
そんな目していいのは銀さんだけだかんな。
カッコイイからって調子乗んなよ。
だいたい目のハイライトどこに落としてきた。
後ろ振り返って探してみろ絶対落ちてるから」
夜霧は初対面の人間相手にそう宣った男を気が触れてると思った。
お互いが逃げない様に監視し合う為にこの城の忍者は2人1組で組まされる。先に入っていた天青と後から入った夜霧は今回初めて組まされた。お互い組んでいた相手が任務で死んだので。監視し合う為の2人1組なので鍛錬でも任務でも城にいる間は一緒にいなければならない。騒がしい男はとても忍者に向いているとは思えなかった。あまりの騒がしさに嫌気がさして本人に聞いたところ、え、だってカエンタケって火炎が名前に入っててなんかかこっよくね?と言った。意味がよくわからなかった。この男はこう言うことがよくある。意味の分からない単語を叫んでみたり、初めて会った時のように誰それがどうだとか知りもしない名前を引き合いに出す。よく分からない男はしかし、鍛錬を積めばそれなりにはなったらしく、色々な任務についたそうだ。もちろん2人1組で。しかし、天青しか生き残らなかった。夜霧は天青の何番目か分からない相棒というわけだ。天青は夜霧よりも強いようだった。確信はなく、さりとてそれはないと言う否定材料もなかった。何より1人必ず生き残っている時点でそれなりではあることは確定だった。だから試したのだ、手合わせで。殺す気でした手合わせで天青は夜霧に頭を殴打された。しかし、その一手前、刃を潰した苦無が夜霧の腹を刺し貫こうとした。手合わせであるのだから彼は寸止めするつもりだっただろう。けれどその瞬間の殺気すら感じさせない一手が夜霧に明確な死を予感させた。だから、寸止め出来ず天青の頭に思いっきり木刀を振り下ろしていた。いってー!と盛大に叫んだ天青はそのまま後ろに倒れ気を失った。
自分が悪い自覚はあったので天青を介抱しながら目覚めるのを待った。
頭を打ったせいかやはり起きた当初は受け答えがおかしかった。いや、元々か?まあ、他に異常はないようなのでいいだろう。気のせいかと思うほど僅かに感じる違和感に目を逸らし、夜霧は日々を天青と過ごした。
任務ではそつなく何でもこなす夜霧は日常生活では意外と怠惰だ。そしていつもちゃらんぽらんな天青はその実、結構世話焼きだった。そんな2人は意外と日常生活でも任務でも息が合った。天青にお前絶対どっか良いとこのお坊ちゃんだっただろと言われた時は少し肝が冷えたが。どうしてそう思うのか問えば世話焼かれるのに慣れ過ぎだと言われた。その言葉に夜霧は首を傾げた。確かに、昔は、幼い頃はそうだった。しかし、あの惨劇があった日から自分は自分のことは全て自分でして来た。世話され慣れてるなんて言われる心当たりはない。納得いかない顔をしていたのだろう、天青は夜霧の顔を見ると大笑いして頭をぐしゃぐしゃに撫で回した。抗議をしようと手を振り払った。おもはゆかったなんてことはない。だが、夜霧が声を出す前に天青が愉快そうに言葉を溢した。
「まさか無自覚だったとはなぁ〜。
まあ、良いんじゃねぇの甘えても」
開いた口が塞がらなかった。
「お前なんて、俺から見たらまだまだガキなんだからさ」
いつもの騒がしさからは考えられないくらい優しい声と微笑みだった。
だから、そんなに言うほど歳は変わらないだろうとか、甘えてなんてないだとか、言いたいことはあったはずなのに、夜霧は何も言えず、天青の顔を見続けることも出来ず。ただ顔を逸らした。どうしていいかわからなかった。こんな時自分はどうしていたのだろうかと遠い昔を振り返っている自分に気付いて愕然とした。そんなふうに昔を思い出すなどもう随分としていなかったから。幸福であったただただ子供として守られていた遥か昔を懐かしむなんてこと今まで一度もしていなかったから。敵を恨むなと言った父上の最後の言葉を守る為に。
固まってしまった夜霧のことをどう思ったのか、天青は振り払われた手をもう一度頭に乗せてポンポンと軽く撫でた。
「過去に縋るのはダメだけどさ。
懐かしむくらいしてやれよ。
じゃなきゃ今お前が思い浮かべた人達をお前は本当に忘れちまうんだぞ?」
息を詰めた夜霧がバッと降り仰いだ顔の先ににあったのは、凪いだ静かな目だった。
天青のコレまでを夜霧は知らない。どんな人生でどんな思いでここにいるのか夜霧はちっとも知らない。
「もう一生その人達に会えないし、
いつか本当に忘れる日が来るのだとしても、
今、懐かしんで思い出すくらいいいじゃん」
ニカッと天青が笑った。
「お前も俺も今生きてるからできる特権だぜ」
まるで子供みたいにあどけない笑顔だった。
だから、夜霧はいろんな疑問や言葉を飲み込んで小さく頷いた。
この城の任務が一度だっていいものだったことはない。
この城の命令に一度だって賛同できたことはない。
でも何も考えなかった。
でないと生きていけなかったから。
数名でついた任務だった。
城主に謀反を起こそうとした一族の討伐。
それが今回カエンタケの忍者達に命じられた任務だった。
上役が斬れと言った。
目の前の子供を。
最近元服したばかりだろうまだあどけなさを残した子供を。
斬れと言った。
命なのだから言われた通りにすればいい。
今までと何も違わない。
今までだって多くをこの手にかけた。
だから、何も考えずに。
今まで通りにするだけ。
それなのに体が動かない。
手に刀を握ったまま。
何処かで赤子の泣き声が聞こえた。
刀を握った手に力がこもる。
その時、
ガツン!!
と頭を殴られた。
「いっつ⁉︎」
あまりの痛さに刀を手放し頭を押さえてしゃがみ込んだ。生理的に浮かんだ涙もそのままに殴った人物を睨み上げた。そしたらソイツは随分と呆れきった顔をして夜霧を見下ろしていた。
「ばーか。死ぬほど嫌なことがある時は逃げていいんだよ」
仕方ねぇなぁ〜と言う顔で天青が笑っていた。
「そんな顔してまでここに居なくていいんだよ。
身も心も死んだら全部おじゃんだろうが。
それに、逃げるが勝ちっていうだろ」
ニヤッと笑う天青の言葉に上役が叫んだ。
「貴様ら逃げるつもりか⁉︎」
「あはは!
つもりか?なんてナンセンスっすよ。元上司殿。
戦略的撤退ってヤツですよ」
天青の返しに今まで仲間だった忍者達が殺気立つ。
その程度の関係性だ。無理もない。
天青は呆然としたままの夜霧の側にしゃがむと目の前の縛られた子供と夜霧に向かってニッと笑った。
「悪りぃなガキンチョ。俺らの偽善に付き合ってもらうぜ。
でもさ、どうせ生きるんなら楽しんだもん勝ちだろ?」
そのまま子供の縄を切らずとひょいと暴れる子供を抱え上げる。
懐から素早く煙玉を投げた天青は心底楽しそうに叫んだ。
「生き残ったヤツが勝ち!!ってな!
いくぜ夜霧!」
煙に包まれた夜霧達に天青の顔は見えなかった。
だけど、夜霧には容易にその顔が想像出来た。
それだけずっと側にいたから。
天青は大層楽しそうに笑っていることだろう。
悪ガキみたいにきっと嬉しそうに笑ってる。
そう思うと何故か夜霧も嬉しかった。
掻っ攫ったガキンチョを放流して追ってくる忍者供を引き受けて逃げている。
まあ、1人だけ生き残っちまったけど目の前に元気に生きてる実例夜霧くんがいるからワンチャン生き残れるだろう。夜霧くんから直接聞いたわけではないが察しのいい俺は夜霧くんの抱えてるものを察せるくらいには一緒にいたから。だからと言うわけではないけれど、どうして皆と一緒に殺さなかったなんて泣き喚くガキンチョに弱い奴は死に方なんて選べねぇんだよボーケと言って悪どく笑ってやった。悔しかったら俺殴れるくらい強くなってみなとニヤニヤ笑ってやるとそれはもう面白いくらいに思い通り、強くなってやると闘志を漲らせるもんだから面白くって笑ってしまった。じゃあ捕まらねぇように気をつけろよと自分の懐に入っていた銭袋を胸元にねじ込み、ケツを叩いて送り出した。
忍者達はガキより俺ら2人の始末に力を入れるだろうからあのガキは多分生き延びれるだろう。なんせ城の内部情報をガッツリ持ってる抜け忍だ。それも2人も逃したなんて言えば城の上層部にどんな罰を受けるか分かったもんじゃない。だからあちらは死ぬ気で殺しにくるだろう。何たって煙幕で視界を隠してあの場にいた忍者は全て俺が始末した。流石にガキ抱えてあの数から逃げるのは無理がある。ガキと夜霧くんは気づいていない。なんせ俺前世思い出してから経験値上がって超早く動けるからね!でもまあ、すぐ城にバレるし、圧倒的に数ではあっちが有利。俺達2人は目立つ。だって、夜霧くんかっこいいんだもん。俺みたいに毒にも薬にもならない凡人顔ならよかったのに。
と言うことで囮になるか。
「夜霧くんよ。お前、笑うの下手だから子供にでも教えてもらえ」
林の中で突然立ち止まった俺が話しかけたもんだから夜霧くんはポカン顔して固まった。
「その顔はまだマシだけどなぁ〜。
お前真顔怖すぎ。いっつも半眼だし。
もっと目をかっぴらいて世界を見ろよ。
きったねぇもんばっか見て嫌なのはわかるけどさ。
世界は意外と綺麗だし、良い奴だってわんさかいるんだぜ。
俺みたいにな!」
最後にキメ顔をポーズとってキメると夜霧くんはふっかーい溜め息をついた。
「そうだな」
まさかの肯定に俺が面食らった。
おっと、夜霧くんったらとうとう俺の魅力に気づいちゃったの?なんて思ってたら、結構な力で肩掴まれて側の木に押し付けられた。イッテーしなんなのよ急に。調子にのんなって怒ったの?
「何をする気だ」
こっわい顔で何を聞かれるかと思ったらそれか。素直に答える。
「囮」
「なんでっ!」
え?驚く?いつもの任務もそんな感じだったじゃん。
「俺の方がモブ顔だから」
「は?」
うっわ無自覚ってどうよ。イヤミだわぁ〜。
「俺の方が強いからね!」
ドヤ顔でウインク決めたら焙烙火矢でも投げそうな顔された。こわー。鉄砲じゃないだけマシか?
「・・・死ぬ気か」
「いや全然」
キョトン顔で答えると苦虫を百匹は噛み潰しましたみたいな顔してる。
「・・・一緒に逃げる気はないのか?」
何かを期待するような声なのに顔は俯いたままの夜霧くんにハッキリと答えた。
「まったくない」
だって俺達ただの元同僚じゃんと思いながら言ったら、肩を掴む力が強まった。
地味に痛いのよ、夜霧くん。
「俺が弱いからか?」
謎の質問に首を傾げる。もしや、一緒に逃げたいのか?
んー。でも夜霧くんはきっと定住派じゃん?多分。旅人ってかゴミ屋敷に住んでそう、1人暮らしだったら。あれ?旅人の方がマシなのか?
「いいや。別に違うけど。
お前、逃走中とか苦手そうじゃん?」
「は?」
「あ、ごめん。間違った。捕まえる側の方が性に合ってそうじゃん?」
「はぁ?」
あれ?何言いたいかわかんなくなってきた。
俺がわかんねぇから夜霧くんはなおのことわからなのだろう困惑を浮かべまくる半眼を見ながらああ、と思い至る。別に今の表情筋省電力が悪いとは言わない。いっつもヘラヘラ笑ってろなんてことは思わない。
でもやっぱ。
そう。笑って欲しいんだよなぁ〜。
「俺はさぁー。お前の笑った顔が見てぇんだよ」
俺を見ていた夜霧くんは大きく目を見開いた。
何だやれば出来んじゃん半眼以外も。
何だか嬉しくなって笑ったら、良い考えが浮かんだ。
何だかそれさえ嬉しくてニカッと笑って言う。
「だから宿題な!
俺と今度会うまでにしっかり笑えるようになってること!
子供にでも弟子入りしてしっかり教えてもらえよ!」
目を見開いたまま固まってしまった夜霧くんの頭をぐしゃぐしゃに撫で回した。抵抗しないのを良いことにそりゃもう遠慮なく。俺にとっちゃあさっきのガキンチョも夜霧くんも大して変わらないのだ。なんせ人生2回分の記憶が生えたもんだから精神年齢長寿だよ。1回目10代で死んでっけど。未来で生きてた記憶もうっすらだけど。それでもやっぱ俺よりすっごい年下。俺がそう決めたから。
だから生きろよ夜霧くん。
死ぬ気はないし、もう一度会うつもり。
その言葉にこれっぽちも嘘はないからさ。
お前には俺の分までなんて重荷は背負わせないから。だってそしたらお前上手く笑えそうにないじゃん。年上ってのは年下にカッコつけるもんなんだぜ。
泣きそうな顔を俺のせいでボサボサ頭になった髪で隠した夜霧くんとじゃあなと言って別れる。
まあ、何だかんだ器用な夜霧くんなら心配ないんだけど。
ひとつだけ気掛かりがあるとすれば俺を探すなと言えなかったこと。
だって、あの城の忍者に捕まったら拷問されてその後晒し首くらいされんだろうから、もしも夜霧くんが見たら泣いちゃうじゃん。
はぁー。結構疲れる。
「なぁ、今何人目?」
頬を掠った手裏剣に舌打ちして刀を弾き返しながら殺す気満々のカエンタケ忍者に聞いてみた。
「化け物め!」
会話のキャッチボールをしようとボールを投げたらバットで場外ホームランにされた。ヒデェー。
まあ、あっちにしてはそう言いたくなるのもわかるが。俺が強すぎるのか、相手が弱すぎるのか悩むくらには凄惨なこの場は血の匂いが充満している。
「それはちょっと俺も思うかも。
てか、ワンチャンそっちが弱い説は?」
フッと笑うと鉛玉が飛んで来た。殺意高いねぇ〜。鉄砲の銃口目掛けて棒手裏剣を投げ銃口を塞ぐ。何丁持って来てるか知らないがコレでひとつは使えなくなった。殺意の高さを見るに尋問される可能性が減るのは俺としても嬉しい。絶対言わないのに痛い思いはしたくない。どうせ聞かれるのは夜霧くんの居場所だろう。今はもうまったく知らんし。なんて思ってたらガクンと膝が地面についた。やっぱ毒かー。しかもコレ致死量以上塗ってねぇか?掠っただけでこんなに効く普通?毒と相性悪いわ俺。今度があったら毒耐性必須だな。
歪む視界の中手当たり次第持ってる手裏剣だか何だか投げる。下手な鉄砲数撃ちゃ当たるじゃねぇけど、今死ぬなら後生大事に持っていてもしょうがないし、1人でも多く道連れにする。
パンと鉛玉を腹に1発喰らう。
はぁー。やっぱまだあったか。
もう無理そう。
ごめんな。夜霧くん。
会いに行けそうにねぇや。
夜霧くんがあの世に来るまで笑顔はお預けってことでとびっきりの笑顔ができるように長生きして死ぬまで頑張ってよ。
楽しみにしてるからさ。
「怖いわねぇ。殿様を暗殺しようとしたんですって」
「恐ろしい」
「晒し首にされて当然だろ」
「怖いわ」
「単独犯らしいな」
ザワザワと人の騒めきの中、強く強く手を握り締める。
顔を隠す為に深く被った笠の下、視線は囲いの中の晒し首に釘付けだった。
心中を様々な感情が駆け巡り共すれば殺気が溢れてしまいそうだった。
でも、全てを押さえ込んだ。
目を閉じれば思い出せるから。
思い出すから。
ちゃんと全てを忘れずにいる。
彼の言葉を、約束を、あの笑顔を。
だから、生きなければ。
なくしたくないから。
もう、これ以上奪われたくない彼を。
一欠片だって。
だから、自分は生き延びなければならない。
一生掛けたって到底実現出来るだなんて今は思えない宿題を出されたから。
今死んだらあの世で拳骨をもらいそうだ。
死ぬほど痛かったアレをもう一度だなんてもらいたくない。
それよりあの笑顔を返して欲しいから。
生き延びて一生をかけて宿題をちゃんとやってどうだと胸を張って彼に会うのだ。
そうすれば彼はきっととびっきりの子供みたいにキラキラ輝く笑顔を俺に向けてくれるから。
そう確信できるだけの時間を一緒に過ごして来たから。
その思い出を誰にも奪われたくないから。
だから、生きなければならない。
ゆっくりと足を引く。
そこらじゅうにいる野次馬達と同じようにもう興味は無くなった、そう見せてこの場を立ち去る。その背を追ってくる数名の気配を感じながら生き延びることだけを考える。
彼は復讐を望まない。
あの時あの子供に復讐以外を選ばせたように。
父上のあの言葉は彼の出した宿題と本質は一緒だったのかもしれない。
そう思ったから、ただ逃げることだけを考える。
ただ生きることだけを考えた。
もう、自分の中にしかない思い出達を守る為に。
『二度も三度もかわんねぇけど、やっぱ年下には長生きして欲しいんだよ。』
パシャリ
パシャリ
水が顔に掛かる。
しょっぱ!!
口に入った水の塩辛さに目が覚めた。
ゴッホゴッホと咳き込んでゼーハー息をする。
砂浜を匍匐前進して力尽きる。
二度も三度もかわんねぇけど、やっぱ年下には長生きして欲しいんだよなぁ。
それにしたって思い出すのが遅すぎる。
もっと早く頭打ってれば良かった。
そしたら・・・
たらればなんて大嫌いだったのに。
歯痒さに歯を食いしばったところで俺は意識を失った。
その日もいつも通りだった。
きり丸はいつも家の手伝いを兄として、終わったら近所のにいちゃんに兄と一緒に遊んでもらうのが常だった。
だってそのにいちゃんはこんな村では珍しく字の読み書きが出来たから、村の親達は他に手伝って欲しいことがあってもできるだけ子供達に読み書きを覚えてさせることにしたのだ。読み書きが出来るのと出来ないのでは将来の幅が格段に違う。ただの農家だけでなく他に仕事を持てる可能性が出てくるからだ。そのにいちゃんは確かにこの村の生まれで今はもう両親は亡くなったがその両親だってただの農家で読み書きなんて出来なかったのに気づいた時にはにいちゃんは読み書きが出来ていて大人達を驚かせた。何故できるか聞いても、んーわかんねぇけど読めるし書けた、なんて言葉を返すものだから適当じゃないかと不安になった大人が近くの他の村で読み書き出来る大人に相談した所、きちんと理解していると太鼓判をもらったものだから神童だなんて騒がれた。けど、にいちゃんはそれ以外はやんちゃ坊主のいたずらっ子でやっぱただの悪ガキだと大人達が敬うなんてことは起きなかった。それににいちゃんはそこらの食べたらいけない草をよく食べた。大人に毒だからと言われるものばかりほんのちょっと食べてよく吐いた。そりゃもう大人達に怒られた。けど、にいちゃんはやめなかった。毒耐性必須とうわ言のように言って唸って寝込んでいるのを何回か見た。そんな変で変わったにいちゃんだけど村のみんなはにいちゃんが大好きだった。いろんな面白いことを起こしてくれるから俺たち子供はもちろん、悪ガキだって怒る大人だってにいちゃんをしょうがないって顔して叱るばっかで本気で嫌ってる人なんていなかった。だから町に野菜を売りに行った帰りに野盗に襲われ両親を亡くしたにいちゃんを村全体で助けて、そんな村のみんなをにいちゃんだって大好きだった。
そんな小さいけれど愛に溢れてる狭い世界がきり丸の全てだった。
「てんせーにぃー」
「おう、どうしたきりちゃん」
「またそこらのくさくってんの?」
「んー」
「おこられるよ」
「平気平気。最近耐性ついて来たからな」
「たいせい?」
「そうそう。毒食えるようにしてんだよ」
「うげぇー。なんでー?」
「ん?んー?わからん。
けど必要だって思うんだよなぁ〜」
「へんなのー」
「変だよなぁ〜
お前は真似すんなよ」
「しないよー」
「そうか!きりちゃんは良い子だなぁ〜!」
にいちゃんはわしゃわしゃと頭を撫でる癖がある。髪がぐしゃぐしゃになるけどきり丸はその撫で方が好きだった。調子にのるから内緒だけど。
「やめてよ」
「ふふっ。そう言うことはなぁ。
そのニヤケ面我慢出来るようになってから言うんだな!」
「うわっ!」
どうやら顔がニヤけていたらしい、にいちゃんはそう言うと俺を抱き上げてグルグル回した。うぅ、面白いけど早過ぎて目が回る。にいちゃんは野生児だから力が有り余ってるんだ。この間も猪と戦って勝ったなんて言ってデッカい猪引きずって村に帰ってくるからみんなを驚かせてた。
振り落とされないようにギュッとにいちゃんに抱きつくと、ピタリとにいちゃんが回るのをやめた。どうしたのかと見下ろすとスンスンと鼻を動かして村の方を見ていた。今は俺とにいちゃんの2人だけで近くの森で薬草や山菜取りに来ていて村は見えない。
「きりちゃん。焦げ臭い。村に戻るよ」
「うん」
にいちゃんの静かな声に不安になってギュッと服を握り締めると、にいちゃんがニカッと笑った。
「大丈夫!きりちゃんは俺が守る!」
村に近づくに連れて喧騒が大きくなる。
俺にもわかるくらい焦げ臭い煙の匂いがして只事じゃないんだと思えた。
沢山の悲鳴が聞こえて身を縮める。
にいちゃんはそれ以上村に近付くのをやめて森に逃げた。
大きな木のウロに俺を押し込んでにいちゃんが笑った。
「きりちゃん。ここで待ってろ。みんなを助けてくるから」
「やだ!おれもいく!」
「ダメだ。待ってろ」
初めて見るにいちゃんの真剣な顔に俺は怖くなって叫んだ。
「やだよ!ひとりにしないで!」
にいちゃんは情けない顔になって俺の頭を優しく撫でた。それが別れを惜しんでるみたいに思えて俺は泣き出した。なのに、にいちゃんは笑う。なんで笑えるんだと恨めしく泣きながら見上げると、優しい笑顔が正面にあった。小指を差し出したにいちゃんが優しく言う。
「きり丸。じゃあ約束。
必ず戻ってくるから。絶対に生き延びろ。
お前が死ななきゃまた会えるから。
いいな。
どんなに辛くたって俺に会うまで絶対に死ぬなよ。
約束だ!」
最後にニカッと笑ったにいちゃんの小指に自分の指を絡めて泣きながら頷いた。
きり丸を隠して、村へと駆けた。
村は酷い有様だった。
家々は燃えて田畑は荒らされて斬り殺された村人が転々と転がっていた。
まだ生きてる村人を襲う野盗だかどっかの兵士崩れだかわからない男達に突進して体当たりした。もみくちゃになりながら奪った刀で叩くように切り付ける。刀の使い方なんて知らないから。助けた村人は息も絶え絶えになんで戻ったと泣きながら叫んだ。それを背にして血に濡れた刀を片手に、大事な村を壊し大切な人達を殺そうとする男達に突進した。がむしゃらだったから自分がどう動いたなんてわからない。でも、守りたかった。大切なみんなを村を。でも、俺は強くなくて。ただのガキで。どうしようもなくただの子供で。守れなかった。いっぱい遊んだ友達も大事な弟分妹分達も、いつも俺が毒草食ったら怒って看病してくれた爺さん婆さんも、イタズラを叱るおっさん達も、優しいおばさん達も。大事な宝物はぼろぼろと俺の小さな手からこぼれ落ちていった。きり丸の両親も兄ちゃんも助けられなかった。村で立ってるのは俺だけで、ボロボロな俺は血まみれでそれが返り血なのか自分の血なのか全身痛くてわからない。俺の大事なものを奪った男達は激怒していて俺を殺す気で取り囲む。でも、ここで死ぬわけにはいかない。ひとりぼっちで残したきり丸に俺の死体は見つかってはいけないから。あの子が死なない為に俺はここで死んではいけない。だから川へと走った。数人残っただけの男達が追ってくる。それでいい。この村から、きり丸からこいつらを離さないと。それだけを胸に痛みを無視して走った。
川へついて男達と相対した。手にはボロボロになった刀。耳鳴りがして男達の声はよく聞こえない。聞きたいとも思わないけれど。思いっきり腕を振り上げて刀を投げた。1人に深く刺さり、反動でぐらりと揺らいだ体は川へ落ちた。俺に近づく男達に突進する。川へと目掛け男達へ体当たりして、水柱が上がった。
ザザァーン。
ザザァーン。
近くて遠い波の音がして、意識が浮上した。
身を起こそうとして、全身の激痛でちっとも動かせないことに気付いた。
「起きかた坊主」
「・・・ここは?」
「俺の漁師小屋だ」
「うみ?」
「ああ、そうだ。お前何処から流されて来た」
「・・・せっつ。たぶん?」
「はぁ?摂津だって?
冗談言うな。ここは瀬戸内だぞ」
「えーうそだー」
「そりゃこっちのセリフだ」
「俺の人生今何度目なんだー!!」
海に向かって叫んでみたけど答えなんて返って来なかった。
精々俺を助けてくれたお人好しの爺さんが漁をしてる船の上からうるせぇぞー!って返してくれるぐらい。
はぁーとため息をついて砂浜に座った。綺麗な海はムカつくくらいキラキラと太陽の光を浴びて輝いていた。立てた膝に肘を乗せ手のひらに顎を乗せてぼんやり光り輝く海を眺める。
1度目はタソガレドキ忍者。林根天青1回目。
2度目は多分未来人の記憶を持った?前世未来人?のカエンタケ忍者をやめた抜け忍。林根天青2回目。
3度目は摂津のどっかのちっちゃい村の村人。林根天青3回目。
じゃあ今は何度目なのだろう。
あの時俺は死んだのか、まだ3度目なのかわからない。
だって普通に考えて摂津の川に流されて瀬戸内には来んだろう。海流どうなってんだ?来るとしたらワンチャン死体だろ。しかし、俺は重症でこの浜に流れ着いた。奇跡的に助かったのはひとえに爺さんの看病のお陰だ。足向けて寝れない。4度目なら4度目の人生を覚えていないとおかしいと思うのだが特にない。重症で流されて記憶を失った可能性がないわけでもないが。わからんものはわからん。奇跡だろうが4度目だろうが確かに俺は今、生きている。それだけが覆しようのない真実だった。
目を閉じれば多くの人の顔が浮かぶ。
何度も生きた人生で出会った人達の顔だ。
懐かしくて、会いたくて。
でも、死んだ人間には会えない。
そして、死んだ人間は会うべきじゃない。
彼らの知る林根天青は死んだ。
覆しようのない事実としてそれはある。
最後にきり丸の泣き顔が浮かぶ。
目を開けて自分の小指をみた。
約束をいっぱいしてきた。
これまでの人生で。
守れなかった約束がいっぱいある。
死んだから。
竹蜻蛉を作ってやると里の子供達と約束してた。
笑顔を見る約束をした。
帰って来ると約束をした。
その全てが果たせなくなるとわかっていてもやっぱり俺は自分の思う通りの行動しただろう。
今までの人生に後悔はないなんて言えなくても、悔いはない。
その時の自分に出来る限りのことはやってきた。
立ち上がって海に叫ぶ。
「うみのばかやろー!」
悩むなんて性に合わないことはやめた。
時間の無駄だ。
せっかく今を生きるなら楽しまなくっちゃもったいない!
罰当たりなこと言うな!と爺さんが返事をしてくれた。
全くもって本当にお人好しでいい爺さんだ。
助けてもらった恩を返せたら旅人にでもなるか。
3度目の途中ならきり丸の元に帰らないと約束破っちまうし。
あれ?でも。
俺に会わない方がきり丸は死に物狂いで生き続けてくれるのか?
『酒は飲んでも呑まれるな、一生涯の黒歴史を刻むぞ。』
爺さんに拾われてから4年後爺さんは寿命で死んだ。内2年は俺の方が怪我の療養してその後一年はリハビリしてたけど。死に水を取って爺さん看取って簡素な葬式あげて墓を作って旅に出た。爺さんには他に行きてぇとこあるなら早く行けと邪険にされつつずっと側にいた。お人好しの爺さんには俺の恩を返せたらなんて思い見透かされていたのだろう。でも、追い出しはしないかったから少しは何かを返せていたのだと思いたい。
取り敢えず、旅の目的地は故郷の村にした。
朧になりつつある記憶を頼りに一年かけ摂津に向かい探した。
探し当てた村は廃村になって草むらだらけだった。
でもその村あとに質素な墓を見つけた。
確かに墓だった。
数々の小さな墓を見つけた。
泣いてしまいそうだった。
いや、正直に言おう。
大泣きした。
ひとり残されたあの子を思うと泣けた。
1人で全ての村人を埋めたのだろうあの子を思うと泣かずにいられなかった。
優しすぎるあの子を思うと泣かずにいられなかった。
ごめんと謝り続けた。
俺が思い出していればと思わずにいられなかった。
1日でも早く帰れていればと思わずにはいられなかった。
その日1日泣き続け、どうしていいかわからなくなった。
あの子に合わす顔がない。そう思うのに、俺の勝手なその思いをあの子に押し付けることは出来なかった。どうして早く戻って来なかったとあの子に罵られても俺はそれを受け入れて思いの丈を聞いてあげないといけない。もう、それしか出来ることはないから。そう思ってしまったら動かずにはいられなかった。
村の墓の周りを草むしりして、花をかき集めて供える。
両手を合わせてみんなの冥福を願った。
きり丸をこれからも見守って下さいと俺がお願いするまでもないことをみんなに願った。
それからは日銭を稼ぎながらきり丸を探した。
ひと月ふた月とあちこち行って探す。
そんな中アルバイトに精を出す子供の話を小耳に挟んだ。
天啓のようにきり丸だと思った。
理由はないけど勘だ。
すぐにその子供がいるらしい町に向かった。
町での聞き込みの結果、きり丸だった。きり丸は大人の男と一緒に住んでいるそうで、普段は何処ぞの学舎にて寮生活しているとのことだった。休みの日など町に降りてはアルバイトをするそうだ。
よく世話になると言う団子屋では本当によく働くいい子だと聞いた。洗濯や子守を頼む奥様方にも評判がいい。一緒に住んでいる男もよく手伝うらしく2人は仲がいいそうだ。流石に住んでいるところまでは調べなかった。元気そうでよかったと思った。いっぱい笑っているようで嬉しかった。
ああ、なんだよもう俺なんていらねぇんじゃんと思わなかったと言えば嘘になるけど。それ以上にあの子が楽しそうに暮らしていると聞いて嬉しさが勝った。今は1人でないあの子にホッとした。ここれまできっと辛い思いも悲しい思いもいっぱいしただろう。それでも、約束通り生きてくれた。それが嬉しくてあの子の頑張りがどうしたって誇らしくて嬉しすぎてその日は久しぶりに酒盛りをした。未来人からしたら酒を飲める年齢ではないがそこは時代が違う。ノープロブレム。無問題。居酒屋に入って一人どんちゃん騒ぎで飲んだ。店にいた客を巻き込んで。今日はこれ以上ないほどいい日なんだ一緒に祝ってくれと大盤振る舞いした。その中に占い師がいたらしく驕りの礼に占ってくれるそうで占ってくれたのだが、占い途中からドンドン顔を青くしていく占い師に店の中がしんと静まり帰った。厳かと言うには大分青い顔で震える口で占い師が告げた。
「アンタ。酒で人生最大の失敗をするよ。
今すぐ家に帰って酔いを覚ましな。
後悔したって遅いんだからね。
一生離してくれなくなるよ。
いいかい。悪い事は言わない。
このまま酔っ払ってたら、取り返しのつかない事が起こるよ」
占い師の言葉を笑い飛ばそうとした俺より先に、そう言う占い師の尋常でない様子に居酒屋に居た全員が俺を、家へと帰れと叩き出した。ひでぇ。店の主人はちゃっかり料金を請求して金をしっかり払わせてから早よ帰れ兄ちゃんと追い立てた。せっかくいい気持ちで飲んでたのにヒデェ占い師だ。ムカついたから別の店で酒を買い歩き飲みにする。お行儀が悪いが仕方ない。俺家ねぇもん。経費節約で野宿してんもん。いつかきり丸に会ったら慰謝料として払おうと思ってたっぷり貯めてんだぞ。それなのに嬉しくて久しぶりにハメはずして飲んでたのに。小さな荷物を肩に下げ酒瓶片手にブラつくと言う結構アレな見た目のまま町をぶらつく。きり丸のアルバイト常連さん情報によると次は一週間後くらいかなとのこと学舎の場所がわからない以上この町で張るほかない。もう俺は必要なさそうだけどやっぱり約束だけは果たしたい。
ぶらぶら歩いてると懐かしい気配がした。
キョロキョロと辺りを見渡す。
言い訳させてもらうなら。
この時俺は強かに酔っていた。
そりゃもう久しぶりの酒で酔ってたし、きり丸見つけて浮かれてた。
それ以前に今世は今まで忍者じゃなかった。
いや鍛錬とかはちゃんとしてたよ?前前世レベルにもってくつもりだったからね?しかもリハビリ死ぬ気で頑張ったからもう結構戻ってるよ。でも、今は忍者してなかった超酔ってたから。
言い訳にもならないが言わせて欲しい。
だからコレは絶対俺のせいじゃない。
言うぐらいいいだろ!!
見知った男の背を見つけた。
俺の中にある記憶より幾分か高くなった背。
相変わらずボサッとした髪。
でも格段に柔らかくなった気配。
酔っ払ってた俺は嬉しくって声をかけてしまった。
彼の知る林根天青が死んでいる事実を忘れて。
「あ!なんだよ夜霧じゃねぇの!」
その瞬間手を繋いでいた子供を背に庇いこちらを振り向いた男の殺気は酔っていた俺には気にならなかった。だってー、雑渡さん家の昆奈門くんのガチ殺気はもっとすごいもん。だから、ヘラヘラ笑っていつも通り片手を振った。だって嬉しかったから。ちゃんと目を見開いてて。
「随分まぁ雰囲気変わっちまって〜。
一瞬気づかなかったぜ。良いツラするようになったじゃん!」
なんか思ってたより目かっぴらいてんなぁ〜と酔った頭で考えながら、それより嬉しくってヘラヘラ笑って固まったままの男に無防備に近付いた。高くなった背で小さくなった俺との差が開いた事実に心内でだけ若干舌打ちしてポンポンと肩を叩いた。ああ、前世の俺より今の俺年下だーなんて酔った頭で思う。じゃあ差があいてもしょうがないとうんうん1人で納得の相槌を打った。
「いや〜やっぱあの時死に物狂いで逃したかいあったわ〜。
え?それ、お前の子供?なんだよもうそんな大きな子いんの?
いやー。時が経つのは早いねぇ〜。
俺も人生三度目だもんなぁー」
手を繋いでいた子供に気付いてちょっとだけ覗き込む。
酔っぱらいに父ちゃんが絡まれて怖がってるといけないからね。
覗き込んだ先に今にも目が零れ落ちそうなそうなほど目を見開いた子供がいた。その子供に知ってる子供の面影しかなくて、酔った頭で首を傾げた。
「ん?あれ?・・・
うっそ!きり丸じゃん!」
パッと顔を輝かせてきり丸の目の前にしゃがんだ。
ああ、大きくなった。元気そうだ。怪我はない。少し細いがまだ許容範囲。これからいっぱい食べたらいい。嬉しく嬉しくて涙が出そうだ。ゆっくりと手を伸ばす。さっきから微動だにしないきり丸にそっと手を伸ばして頭を撫でた。柔らかな頬を撫でる。振り払われない事が嬉しくていつもみたいにぐしゃぐしゃと頭を撫で回す。ああ、懐かしい手触りだ。俺は今最高に緩んだ情けない顔をしていることだろう。
「おっきくなったなぁ〜お前!
心配してたんだぞー!いや〜生きててよかったわ!!
俺が逃した奴の中でいっちゃんちっちゃかったもんなぁ〜お前。
心配してたけど元気そうでよかったわ〜」
心置きなくめいいっぱい撫で回して気が済んだ。
なんだかとっても満足だった。
よかった!
酔った頭でそう確信して1人頷く。
「はぁー。心配してた2人の元気そうな顔見れてよかった〜。
今日はいい日だ!
あの占い師嘘ばっかい言いやがって。何が酒で人生最大の大失敗するだよ。酔ったお陰で2人に会えたじゃねぇの。いやー。今日の酒は最高に美味い!!」
そう言えばさっきから一切反応のない2人におかしいなぁと酔った頭で考えながら、もしかして、俺なんかお邪魔しちゃたかもと今更ながら思い至ってまた今度積もる話でもするかと立ち上がる。今日の寝床は何処にしようかなぁなんてことを考えながら手を上げて2人にニカッと笑った。
「つーことでじゃあな、達者で暮らせよお二人さん!」
超満足ー!とご機嫌で2人に背を向けた俺は千鳥足を一歩踏み出したその瞬間、地面と顔面キッスをぶちかましてチカチカ目が眩んだ。何事だー!と状況把握に徹するとどうやらきり丸と夜霧くんにタックルぶちかまされてた。
何事?
困惑する俺の耳元に恐ろしく冷え冷えと冷え切った凍える声が聞こえた。
「逃げられると思うなよ」
親の仇にでも会ったのかい夜霧くん?
「でんぜぇーにぃじゃーん!」
きり丸は超珍しく俺に縋りついてギャン泣きしてた。
なるほど。
コレが世に言うカオスか。
「取り敢えず鼻血拭かせてもらっていいかな2人とも?」
いまだに酔っぱらい思考だった俺が言えたのはこれだった。
『俺なら絶対信じない。
まあ、前世思い出す前の話だけど』
酔っ払い事件後そりゃもう盛大なすったもんだがあった末、きり丸と夜霧改めて土井半助と一緒に暮らすことになった。この話は長くなるのでやめとこう。そう、俺のメンタルがこれ以上傷つかない為にも。きりちゃんに天青にいちゃんなんて大っ嫌いって言われた方がマシだと思う目にあったとだけ言っておこう。そして酔っ払ってた俺の失言で前世云々もバレた。2人とも信じちゃうんだもん。信じんなよそんな与太話。まあ、きりちゃんは置いといて土井半助には誤魔化す方法皆無なバレ方したけどさぁー。ワンチャン、抜け忍を捕まえに来たカエンタケの忍者のフリしちゃおうかなっと考えた瞬間、何で気付いたのか半助くんが夜霧っちゃいそうなえげつない顔したのでやめた。怖いし。きりちゃん居るんだからやめてよー。泣いちゃうでしょー!これ以上きりちゃん泣いたら俺のメンタル立ち直れんぞ!
まあ、一緒に暮らすと言っても2人は忍術学園に戻ることになった。
そりゃ先生と生徒ですからね。
「忍たまじゃん!」
中々な門構えの敷地の入り口に掛かるデカイ看板を見た瞬間とある事実を思い出し、驚愕して叫んだ俺は悪くない。
未来人の記憶にある忍たまの知識で隣に立つ男を見る。
「土井半助じゃん⁉︎」
「え?うん」
反対に立つ子供を見る。
「摂津のきり丸じゃん⁉︎」
「どったの?天青にいちゃん」
「ガッテム!」
叫んでしゃがみ込んだ。本当は顔を覆いたかったけど両手を離してくれない両人のせいで変な格好だけど気にしない。
「大丈夫ですか?天青さん?」
覗き込んできた一緒に登校してた乱太郎くんの顔見て叫んだ。
「うわぁ⁉︎そうだ!主人公!」
「え?」
「どうしたの天青さん?」
一緒に登校してた心配そうなふくふくしたしんべえくんの顔見て叫んだ。
「あぁ⁉︎福富屋さん!やった!ワンチャンカステラ食べれる!」
「え?」
困惑する2人を置いて土井先生ときりちゃんが訳知り顔で頷きあう。
「2人ともコイツいつもこんな感じだから心配しなくていいぞ」
「そうそう。にいちゃんの奇行にいちいち驚いてたら身が保たないから気にすんな」
そう言うと俺と手を繋いだままの2人は俺を引き摺りながら忍術学園へと入って行った。ちくしょー。俺が変人みたいなイメージつけやがって。せめてもの抗議として無抵抗で引き摺られてやった。歩いてなんてやんねぇから。登校してくる可愛い忍たま達の視線が突き刺さって来るけど泣かないもん。だから俺きたくないって言ったんだー。2人の家を守るよってお留守番してるよって2人を説得したのにー!なんで怒るんだよー!置いてかねぇって言ったじゃん!逃げるとかねぇし一緒に暮らすんだろって言ったしー!ちったあ信じろよなぁ。
大体なんできり丸にあげる用の慰謝料で俺が忍術学園に編入しなきゃなんねぇんだよ。
もういいよ。忍者の勉強は。二回も忍者したもん。
きりちゃんにやった金をきりちゃんがどうしようと自由だけどさぁー。
ちくしょう。半助のやつが入知恵するから。
きりちゃんのウルウルお目目で天青にいちゃんと一緒に学校生活したいとか言われたら俺に断れるわけねぇじゃん。残りは全額きり丸の授業料にするならと抵抗はしたけど。はぁ。年齢的に1年間通うのか。いや、住み込みだっけ。6年の編入とかやだー。もう俺たちの空気を確立してるとこ入るとか気まずい。地獄じゃん。しかも、未来人の忍たま知識よわよわで6年の情報あんまないんだけどー。知識がイケドン、ギンギン、不運大魔王、巻き込まれ不運、無口、サラストってなんなのー⁉︎ワンチャン無口としか仲良くなれる気しないー。サラストって髪が?他になんかあんだろ覚えとくこと。驚愕のサラストなのー?つうか大魔王いんじゃん怖いよ!巻き込まれ不運絶対大魔王に巻き込まれてんじゃん。
「ねぇ。半助くんさー。
抱えるって選択肢ないの?」
引き摺られながら半助くんに聞いてみた。
「自分で歩けるだろ?」
ニッコリと嬉しそうに笑い俺を見下ろす。
「ワァー、いい笑顔」
「泣いて喜んでいいいよ」
「きりちゃん。土井先生がいじめるー」
目笑ってなくね?こぇーと思いながら一生懸命頑張って俺を引っ張るきりちゃんに言うと、汗を拭って立ち止まった。きりちゃん汗かくぐらい頑張ってんだから半助くんが俺抱えたらいいと思いまーす。
「土井先生重いんでお姫様抱っこお願いします」
「いやー!自分で歩けるよきりちゃん!うん!俺やれば出来る子だから!
だからお前はこっちくんな半助!」
両手を広げてにじり寄って来る半助くんから距離を取りきりちゃんを抱え上げる。
「きりちゃん!どこ行けばいいの!」
「学園長の庵」
「それどこ⁉︎」
「あっちだよー」
きりちゃんが指差す方へ走る。
「じゃあ、乱太郎くんしんべえくんまた後でねぇ〜」
「乱太郎、しんべえ後でな」
「「うん!頑張ってね!」」
「おう!応援ありがとな!」
言うが早いか走り出す。
ちょっと半助くん揶揄ってんのわかってるからな!
ニヨニヨすんな!
きりちゃんの言う通り走ってたら入門表にサインをー!とすごい形相で追いかけて来る子がいんだけど、こわー。撒いていいのアレ?なんだか2人が楽しそうなので撒いていいと判断した。
よっしゃ!本気出してやんぜ!
きりちゃんを抱えた今の俺に不可能はない!
学園長の庵前で入門票にサインする。
フッ、勝ってやったぜ。俺の逃げ足の速さ舐めんなよ。
きりちゃんのキラキラお目目が俺を輝かせてくれる。
ニコニコ笑顔で返すと半助くんがブフッと吹いた。
「半助くんさー。人の腹見て吹いてんじゃねぇよ。
お前が汚したんだろうが」
「天青が無駄な抵抗するからだろう?」
「へーへー。これで入学拒否られたら半助くんのせいな」
「天青にいちゃん。そんなに嫌なの?」
ショボンとしたきりちゃんにギョッとする。
「いやいや!大丈夫!大丈夫!」
大慌てできりちゃんの側にしゃがみ込み耳元で囁く。
「あのなきりちゃん。2人と一緒にいられてうれしいよ。
でも俺ほんと言うと学校なんて初めてでさぁー。年甲斐もなく緊張してんの。ごめんね」
俺の言葉にきりちゃんはブンブンと首を振る。
「だから困ったことあったらきりちゃんのこと頼っちゃうけどいい?」
「うん!任せて!」
「おう!任せた!
きりちゃんも、アルバイト手伝うし、困ったことあったら何でも言えよ」
「うん!」
この時は俺もただ普通に編入するだけだと思ってましたよ。
きりちゃんの村経由の知り合いとしてね。
頑張りの方向性とんでもなく間違ってたね2人とも。
前世云々の話なんてすると思わねぇだろ⁉︎普通!!
土井半助は本当いい加減にしろよお前!
他の人間は信じねぇから内緒なって言っただろうが!ボケー!!
俺の前世云々を力説するきりちゃんと土井半助に引き攣った頬もそのままに縋りついた。
「いやいやいや!ほんとやめて!やめて2人とも!
俺がイタイこと言うイタイ人みたいになるから!
そんなに力説しないで!
人生何回目ですとか普通の人信じないから!
ほんとやめて!先生方の視線が痛い!」
対面に座る学園長にヘムヘム可愛い。その隣の山田先生。その他隠れてる教師陣。その全てから訝しむ視線が注ぐ。半助くんいつの間にそんなにメンタル強者になったの?よくこの視線の中、前世の話出来んなお前。お前も頭おかしいって思われ始めるぞ。いや、頭おかしいぞお前!
「ふむ。取り敢えず2人の話はわかった。
きり丸は部屋に戻ってよい。新学期の準備もあるだろうからな」
1人だけ帰っていいと言われたきりちゃんは不安そうに俺と学園長を見比べた。
「学園長先生、天青は編入出来ますか?」
「学費はちゃんと足りておるから心配せずともよい」
学園長の決定打に欠ける言葉に気付かずきりちゃんはホッと息をついた。
お辞儀すると庵を後にする。
途端空気の重くなった部屋にこのまま床に転がってちゃ駄目かなぁ〜と思う。半助くんに小突かれた。駄目らしい。はぁー。と溜息をついた。俺は学園長達でなく半助くんに聞いた。
「でぇー。なんで喋っちゃったの?」
「お前のその気配で皆さんが気付かぬはずないだろう。怪しまれて放り出されるつもりだったのだろう。それなら先手を打って何故そんな手練れの忍者であるか伝えた方が早い」
「いやいや。それで信じちゃまるで馬鹿でしょ。
大体手練れの忍者ってウケる。俺普通の忍者だっただけだし」
「そう思ってるのお前だけだ」
「はぁー。で、どうします?学園長先生」
半助くんと話しても埒があかないのでトップに聞いてみた。見るからに怪しい少年をどうするのか。半助くんの信頼があっても俺と言う人間は不安要素が多過ぎる。いまだ暗殺対象として狙われるこのお人が容易く入れるとは思えない。なんせここは守らなければならない子供も多い。
「土井先生はどうして彼の前世を信じたのじゃ?」
「さっきお話しした通り。山田先生にも伝えていない以前の名を知っており、昔と同じ容姿に名前だったからです。
あと、こんな男が2人といるわけがありません」
「え?それどう言う意味?半助くん?
いい意味?いい意味だよね?
じゃなきゃ、
もしかして、喧嘩売ってる?」
半助くんの言葉に待ったをかける。どう言う意味だってばよ。
目を逸らすんじゃありません!
仕方ないから自分の用事を済ますことにした。
学園長の隣に座る御仁を見つめる。ずっと俺を探る視線を感じていた。
「てか、この人が山田先生だよね?
めっちゃ強いね。ヤバイわ。
あー。山田先生。全くもって今の俺には関係ないのですが。
前世の記憶なんてものがあるので既に死んだ男より言わせてもらいます。
こいつを助けて頂きありがとうございます。
こいつが今こうして笑っていられるのは貴方とご家族のお陰だと聞きました。
心よりお礼申し上げます」
姿勢を正し正座して手をつき深々と頭を下げた。
息を呑む部屋にいる人間には悪いがこれだけは言いたかった。
きりちゃんには悪いが、どちらかと言うとコレを言う為だけにここに来た。
俺はここには入れない。
「よし!決めた!
忍術学園への編入を認める!」
「認めちゃ駄目でしょ!!」
誰よりも先に立ち上り叫んだ。
あ、ヤベッと隣を見ると夜霧ってる半助くんと視線が絡まった。
「天青」
冷え切った声にハイハイと言いながらぽんぽん軽く頭を叩く。
「半助くん。わがまま言わない。
俺がどれだけ不審人物かお前が1番わかってんだろ。
客観的に見て俺のような人間をお前は大事な生徒達と一緒に学園に置くべきだと本当に思うのか?」
口を開けようとする前に追加する。
「忍術学園の先生として答えろ」
「・・・思えない」
俯いて答えた半助くんの頭を宥めるようにポンポン撫でる。
「わかってんなら余計なことすんなよ。
きりちゃん泣くぞ。あんだけ期待させて。
きりちゃん泣かせたらお前でもブン殴るからな」
はぁー。と深い溜息をついて半助くんが俺の手首をギュッと握った。
ギシッと骨が鳴りそうな強さで。
痛い以上の嫌な予感に背中に冷や汗が流れた。
顔を上げた半助くんがそりゃもういい笑顔で学園長に言った。
「このようにこの人物の人柄は保証出来ます」
「そうじゃな。よかろう」
「はぁー。前置きが長いな。結局前世云々は確証が足りないから如何ともし難いですな」
うむうむと満足そうに頷く学園長と難しい顔で思案する山田先生、隠れていた先生達もしょうがないみたいな雰囲気をわざわざ出してから解散していった。
固まったままの俺にそれはもういい笑顔で半助くんが笑う。
「完璧に隠してたくせに途中からわざわざ忍者の気配させて小松田くんにも気付かせて、先生方に不信感を与えて自分が不審者だからって学園から追い出されるつもりだったんだろう?きり丸をどんだけ泣かせたら気が済むんだ天青。逃さないと言ったはずだぞ」
まあ嬉しそうに言うもんだから俺は力の限り叫んだ。
「本当やだこの子ー!
昔は簡単に騙されてくれる素直ないい子だったのにー!!
時の流れって残酷ー!!」
「アンタ達学園内ではちゃんと先生と生徒として過ごしなさいよ」
俺達のやり取りに山田先生が呆れた顔で注意した。
「だそうなので土井先生と言いなさい。天青」
「へーへー。よろしくお願いしますよ土井先生!」
「と言うわけでーこの度編入したー林根天青でーす。
よろしくお願いしまーす」
校庭に集められた全校生徒の前で挨拶させられヤケクソで挨拶する。
ちくしょう。かわい子ちゃん達の視線が痛いぜ。引き摺られてた人だとか言わないでよー。なまじ耳がいいので全部聞こえる。
6年生をチラッと見る。
イケドン言ってるー。ふむ。鳴き声だな。
ギンギン言ってるー。ふむ。鳴き声だな。
強面無口だー。
やべぇ、驚愕のとんでもねぇサラスト美形だよ。
ど、どっちだ。
どっちが不運大魔王だ?見た目じゃわからんぞ!
取り敢えずにっこり笑顔できりちゃん達に手を振っておいた。
ボフンと音ともに目の前に煙玉によって煙が巻き上がり学園長先生が俺の前に現れた。
さっきまで普通に隣に立ってたのにそれいる?
「これより6年生の実技演習を行う!!」
『学園長の突然の思いつきだー!!』
と全校生徒が叫んだ。
やっべー俺このノリについていけるか急に不安になってきた。
チラリと先生方を見るとまたかよなんて顔してるし、半助くんは胃を押さえてた。
ふむ。ついていけなくても大丈夫そう。
「対戦形式は6年生全員対6年編入生じゃー!」
「初っ端6・1 ⁉︎
鬼畜の所業!!」
大声で叫んだ俺は悪くない。
あ、勝負だー!って叫んでる方がきっと巻き込まれくんだな。
と言うことは、あんな優しそうな顔して不運大魔王って本当人は見かけよらねぇなぁ〜。
ひろーく使っていいと言うことなんで校庭半分使うことになった。あんまりにも広いと収集つかなくなるというか一年とか低学年がついていけなくなるからだろう。校舎側に他の生徒先生方が並んでこちらを見守っている。半助くんが準備運動する俺の所に来たので聞いてみた。
「ねーねー。土井先生。コレどういうこと?
またお前の入れ知恵?ただのイジメ?
初っ端6、1って酷くね?」
「す、すまん。天青。完全に学園長の思いつきだ」
「お前が手練れの忍者とかうそぶくからじゃん」
「嘘は言ってない」
「はぁー。ダル。適当じゃあだめ?」
「あれ見てそれ言えるか?」
困り顔の半助くんが指差す先にはきりちゃんが大きく手を振って頑張れ天青ー!っと叫んでくれてる。仲良し乱太郎くんとしんべえくんも一緒に応援してくれてた。それにニコニコ笑顔で大きく手をふり返す。
「やだめっちゃ可愛い。みんなの前だとにいちゃんってつけないんだ」
ボソッと呟き大きな声を返す。
「俺のかっこいいとこ見たいかー!」
『見たーい!!』
可愛い3人の返事に俄然やる気が湧いてきた。きりちゃんには前世云々言って謝り倒した後に前世思い出した俺結構強いよなんて言ったけど、実際見せるのは初めてだ。
「ほどほどにな」
疲れたような声を出す半助くんに首を傾げる。
「あの子らどのレベル?」
「そこらの忍者に遅れは取らない」
「へぇー楽しみ」
ニヤッと笑うとはぁーと溜息が返る。
「あの子らは忍たまだからな」
「イヤだわ!
土井先生ったら!生徒をエコ贔屓するおつもり!
俺も今日から忍たまなんですけど⁉︎」
苦虫を噛み潰したみたいな顔の心配性半助くんにニタァ〜と笑ってやった。
「誰かさんと違ってぇ〜俺って寸止めできるんだわぁ〜」
「はぁー。はいはい」
会話しながら準備運動を終わらせると同じく準備運動してた6年生がやってきた。各々武器を既に手にしている。嫌だわぁ。やる気満々かよ。
「土井先生、彼はどの武器が得意ですか?用意しますけど?」
サラストくんが聞いてくれる。
いやちょっと待てよ。
六年生の自己紹介ないの?
「どうする天青?」
自己紹介がない衝撃に上の空だった俺はあんまり考えることなく口走っていた。
「あー。俺得意武器とかないからいいわ。
フッ。得意武器があるなど三流。全てに精通してこそ一流。ってね!」
受け売りだけど!と続けるつもりだったのに六年生達がめちゃくちゃ殺気立ってやる気を漲らせたので喉の奥に引っ込んだ。えー。6人中5人も反応するのー。血の気多いな今時の子は。
俺の隣で爆笑してる半助くんは後で校舎裏な!
「でも丸腰ってわけにはいかないかと」
不運大魔王が優しく聞いてくれた。えー超良い子じゃん大魔王。
「大丈夫。今も一応武器持ってるから。必要なら奪うし」
答えた途端少年達のやる気度が上がった。何故に?
半助くんは笑いすぎで過呼吸なっても知らないからね!
「まあ、さっきの言葉は受け売りだけど、
そうなったら良いなって俺も鍛錬してきたからお手柔らかによろしくね」
ヘラっと笑って手を振り距離を取る。
ついでに笑い続ける半助くんの背中をバシンと叩いて正気に戻した。
生徒の前だから頭じゃなく背中にしてやった。感謝しろ!
「土井先生。彼はどれほど強いのですか?」
立花の言葉に土井半助は小さな背を眺める。あの頃よりも幼く小柄な天青はあの頃よりは力も弱いだろう。まだ少年と言える年だ。何より前世ほど動ける鍛錬をどれだけ積んでいるか半助にはまだわからなかった。それでも、数日一緒に過ごした身のこなしを見ればわかることはある。
「そうだなぁ。
あの様子なら四半刻保てば大健闘と言ったところかな」
「・・・私達がですか?」
「お前達がだな」
「おい!全部聞こえてんぞ!
ハードル上げんなバカ!
ひとり5分ぽっちで倒せるか!アホ!
殺すんじゃんねぇんだぞ!」
「こら!先生にそんな言葉遣いするんじゃない!」
「なるほど。
つまり殺す気なら私達を1人5分でヤレるってことだな」
「そうは言ってないんですけどぉ⁉︎イケドンくん⁉︎」
『もしもタソガレドキ忍軍の中で天青の転生がバレるとしたらこの人が1番最初』
あの頃のままの姿の少年があの頃のように押都を見つめ返していた。
「いや、押都さん。
次期忍び組頭筆頭候補を死なせる訳にいかないでしょう。それも普段から仲の悪い俺との任務でとか、絶対俺が殺したって絶対言われるやつだもん。やですよ俺。そんな難癖つけられんの。だから、庇ったんすよ。つうかそんなんアイツも分かってんでしょ。わざわざ言うまでもなく。
生き残るべき者が生き残ったって話なだけですよ。
つっても俺は神仏どころか地獄の鬼にまで嫌われてるらしくてあの世すっ飛ばして人生三度目っすけどね」
本当にこの子はこう言うこと平気で言う子だったよ。
「天青・・・
お前ほんとうに、
転生してること組頭にバレてくれるなよ」
「いやいや。普通信じないですって。
転生してましたとか。いくら姿形が同じでも。
押都さんがおかしいんすよ?
まあ、きりちゃんも土井先生も信じちゃったけど。
あ、そうだ。
あの時の俺の真っ赤な恋文役立ちました?」
ニヤッと笑う天青に溜息をつきながら返す。
「はぁー。役立てさせてもらったよ」
「そいつはよかった!」
キラキラと輝く子供のような笑顔で喜ぶ天青を見て押都は覆面の下、顔を片手で覆った。
そんな押都を不思議そうに見て天青は首を傾げた。
「つうか押都さん。俺のこと殺しに来たと思ってたんだけど?前前世の記憶つまり、タソガレドキ忍軍の内部情報持ってんだよ?即コロ案件かと思ってた〜。まあ、20年くらい前だから大した情報じゃないか?」
ほんっとうにコイツは!こう言うこと平気で言う奴だったよ!
「はぁー。お前を殺すなんて私には荷が重すぎる」
「またまたー。随分と謙遜しますねぇ〜。
黒鷲隊小頭殿」
ニヤニヤとした笑顔に腹が立ってきた。
「・・・・天青。
あんまり私を揶揄うなら、
組頭呼んで来るけど?」
「揶揄ってませんけど⁉︎
アンタ達何かっていうとすぐ昆奈門呼んで来ようとするなぁ!」
「はぁ。お前と渡り合えるのが組頭ぐらいだからだよ。
無自覚だからほんとうにタチが悪い」
林根天青(りんね てんせい)
タチの悪い陽キャ目指したけど出来てるのか?コレ。
自分自身の姿が変わらぬまま輪廻転生してる。記憶思い出してない状態ではダブってる時期がある。
実は1番初めの人生が未来人の記憶。
2番目タソガレドキ。
3番目カエンタケ抜け忍。
4番摂津の村人。
つまり今、2度あることは3度あるの3度目転生なのでこれ以上転生することはない。かもしれない。
普段の騒がしさから気付かれていないが恐ろしく気配が薄い。その為本気出すと誰も見つけられない。実は自意識低いし、自分の怪我に関しては淡白。死ななきゃいい。黒目黒髪モブ顔。中肉中背の低身長。タソガレドキ忍軍では月輪隊に入る予定だった。ちなみに雑渡昆奈門が大火傷して生死の境を彷徨ってた頃、摂津の村人天青も毒耐性必須というまだ思い出してない前世からの強迫観念で毒草食って生死の境を彷徨ってた。ちなみにカエンタケ忍者してた天青は前世思い出してやる気なく仕事こなしてました。
友達なんて気付いた時にはなってるもんだぜとか言うくせに、昆奈門に親友だろって言われたら、え?お前と俺親友なの?とか平気で返す。でも、そっかお前がそう言うならそうなんじゃねぇのとか照れながら言うから始末に悪い。そんな人間を目指しました。ちなみに忍術学園の生徒がお約束の呼び方で雑渡昆奈門の名前を呼び間違えるとクソほど笑い転げます。
土井先生はただの元同僚っすよとか言う。土井先生はえ?ってなって相棒じゃないのか?って恐々いうと言うと、照れながらそっか俺とお前相棒かー照れんなぁとニマニマして嬉しそうに笑います。本当ひどいよねぇ。そんな人間目指しました。
きり丸には天使!生きてるだけで尊い!と叫ぶ。前世思い出してればみんなは無理でも何人かは助けられた確信、があるのできり丸に渡すための慰謝料を貯めてた。思い出してればきり丸を1人にしなかった確信、もあるのでその全てを説明して慰謝料渡す。地獄の空気になる。あのきり丸が銭を投げ返してクソほど怒る。土下座して一生きり丸のそばに居ますと叫ぶまできり丸は許さない気で怒る。泣きながらきり丸に謝り倒して一緒に居ると叫ぶそんな人間目指しました。
雑渡昆奈門クイズ
ブロマンスを感じてる親友が本人はまさか全然欠片もそんなこと思っていなかったとわかり、尚且つ自分の命を救ったのは今まで気にもしていなかっただろう家柄だと言ったと知った場合の気持ちを五十文字以内で答えよ。
なおその人物は部下庇って死んだ組頭雑渡父と部下庇って大火傷した当時小頭の昆奈門のことを知ると静かにキレます。
土井半助クイズ
自分のせいで抜け忍になって囮になって打ち首になった人間の晒し首見た数年後にそのご本人と見紛うばかりの幼さを残した少年が自分の昔の名前を気やすそうに呼びながら酔っ払った状態で目の前に現れた時の気持ちを五十文字以内で答えよ。
なおその人物は土井半助の笑顔に思っていた通りの笑顔を返してくれます。
摂津のきり丸クイズ
村人がみんな凄惨な死に方をした村で一人一人顔を確認しながら小さな手で墓を作り、約束を残してくれた相手がいないことだけを心の支えに一生懸命生きてきて、アルバイトして忍術学園に入り大事な友達に先生先輩が出来て、更にずっと約束が叶うことを願っていた相手が現れてとっても嬉しかったのに。俺がいなくてももういっかとか言われて前世思い出してれば1人にすることはなかったと頭を下げられ慰謝料だと結構な額の銭を渡されて目の前から消えようとした人物にブチギレてギャン泣きしたのに絶対一生そばに居るとは約束してくれない時の気持ちを五十文字以内で答えよ。
なお、その相手は一緒に居るとは叫んでくれますし、きり丸のことを天使!生きてるだけで尊い!約束守ってくれてありがとう!我が村の誇り!ととびっきりの笑顔で言ってくれます。
「ごめん尊ちゃん、今なんて?」
「だから組頭にはご親友がいらしたんだよ」
「え?どっちの組頭?」
「は?組頭はおひとりだろ」
「雑渡昆奈門?」
「そうだ」
「えー。アイツに親友なんていたのぉ〜。超意外」
「なんだと!」
「だってタソガレドキ忍軍って組頭ガチ勢しかいないじゃん。
組頭が言うことは絶対!みたいなぁ。
友達枠とか無理じゃねぇ?」
「むむ。それはその。親友と呼ばる方は1人だけだったそうだ」
「ふーん、過去形ってことはソイツ死んだの?」
「お前、遠慮とか配慮という言葉を知らんのか」
「えー。尊ちゃんにそんなこと言われるなんて天青一生の不覚」
「なんだとー!」
「だって忍術学園の先生相手に果し状ばっか持って来て返り討ちにされちゃあ、そこの医務室で手当してもらってる尊ちゃんに遠慮しろとか配慮しろとか言われるなんて、どの口案件だよ?」
「うぐぐ」
「ほらー。ぐうの音も出ない」
「ぐうー!なら出る!」
「尊ちゃんってほんとかわいいねぇ〜」
「お前より年上だぞ俺は!」
「精神年齢は俺の方が年上だもーん」
「そんなわけあるか!」
「それよりソイツ。組頭のイマジナリーフレンドなんじゃね?」
「馬鹿を言うな!他の人も知ってる!」
「へぇー」
「お前。疑ってるな。
いいかよく聞け。
その人は組頭を庇って命を落とした」
(あれ?俺か?)
「小頭が言うには大層仲が良かったそうだ」
(いや、俺じゃないな)
「父上が言うには怪我を隠すのが上手かったと」
(ん?俺かな?)
「高坂小頭は恐ろしく強かったと」
(うん。俺じゃないな)
「でも、高坂さんはすごく馬鹿だったと」
(え?俺?)
「んー?尊ちゃんはソイツ覚えてないの?」
「生まれたばかりだったから覚えていないな。
でも、父上が言うにはよく頭を撫でてくれたそうだ。
頭が取れるんじゃないかとソワソワしてたと言っていたが」
(んー。よく撫でてたけど、俺じゃないよね?ちゃんと赤ん坊仕様で優しく撫でたよ?ああけど、まだ首すわってなかったからちょっと怖かったなぁ。諸泉さんにもよく確認してたわ。
そっかー。あの赤ちゃんがもうこんなにも大っきくなったのかー。月日の流れは早いねぇ〜
はぁー感慨深いわ〜。そりゃ2・3回転生してても不思議じゃないね。
でも、アイツに俺以外でよくつるんでる奴なんていたかぁ?俺が死んだ後でもなさそうだしなぁ。俺が生きてた時はアイツあの時以外死にそうになってねぇしなぁ。友達いないとか言うとカッコ悪いからエアで作ったとかの方が納得できそうだけどなぁ。
んー。アイツもしかして。
思い出補正のかかった俺にキラキララメでもぶっかけて親友とか言ってんじゃねぇだろうなぁ。恥ずかしすぎるんで勘弁してほしいんだけど。)
「それに組頭が大火傷を負って生死の境を彷徨っておられた折には夢枕に立ち、組頭を叱責されあの世に渡るのをお止めくださったのだ。死してなお組頭を想って下さる。素晴らしい親友なんだぞ」
(え、なにそれ知らん。こわっ。
その頃俺カエンタケ忍者してたし、
絶対俺じゃねぇーよ)





















