「わたくし達も良い歳になったのですから『立つ鳥跡を濁さず』片付けるものは片付けていかないとですね。」
「たつとりあとをにごさずとは何だ?」
「飛び立つ鳥は水を汚さないという事から去る時には身奇麗にするという事です。」
「なるほど。」
「ところで魔石を取り出す時にどろりとなるのですよね…。」
「まぁ、そうだな。」
「わたくしちょっと怖いのですが…」
「高みにあがった後のことなど気にしても仕方がないではないか」
「そうですけどぉ…」
「ふむ、向こうではどうしていたのだ?」
「他の国や昔の日本ではこちらの平民同様遺体を土に埋めておりましたが、わたくし達の頃には墓地にする土地も少なく遺体を焼いて骨にしてこれくらいの骨壺という…」
「焼くだと?!そちらのほうが非道で残酷ではないか!」
「あー…そう言えば他国からその様に言われておりますね。焼くのも大変ですし…。でも、わたくしにとってはそちらの方が一般的で普通なのです。因みに貴族が焼かれた場合どうなるのです?魔石とか」
「雑多な魔力が入り込み極めて粗雑な物になろう」
「そうですか…。ついでに土葬した場合は…?」
「魔虫が発生する」
「ひぃ!」
「君の良質な魔力であれば騎士団総出で倒さねばならないのでは?」
「イヤーッ!!虫に食べられるの嫌ーっ!」
「さもありなん」
「…あの…どろりした後ってどうなるのです?」
「棺桶に染み込み消え去る」
「なるほど…?どろりって他の人に見られるんですか?」
「どういう事だ?」
「布をかけて顔を隠し他の人に見えない様にとか…」
「それはないが、見るのは神官だけであろう」
「神官に見られるのも嫌です!」
「それならヴェールをつけれて貰えばよかろう」
「うぅ…それなら何とか…。でもどろりやっぱり怖いですぅ。いっそ宇宙葬は如何ですか?遺体をロケットに載せて宇宙へドーン!」
「うちゅうとはなんだ?ろけっととは?」
「えーと…。わたくしのいた世界では………」
「なるほど。しかしユンゲルシュミットは平地で天空には半球状の魔力の膜がある。私も一度最上部まで行った事があるが出ることは叶わなかった」
「わお!検証しているとはさすがフェルディナンド様!」
「故にロケットなど作っても宇宙には行けぬし、もし打ち上げたとしても壁に阻まれそこで爆散。ユンゲルシュミット中にロケットの残骸が飛び散る」
「ひぃぃぃ!」
「みっともない声を出すな。」
「どう転んてもエーベリーベの剣でどろりしかないのですね…」
「当たり前だ。ユンゲルシュミットではずっとそうしてきた。」
「わかりました。遺言にどろりする時にはヴェールをつけてもらえるように書いておきます。」
「ところで…君は日記を書いているな?」
「そうですね。それがなにか?」
「見せなさい」
「えええええ?!人の日記を見るのは厳禁と言ったではありませんか!」
「高みに上った後では誰が見るのかわからないではないか。君は多くの秘密を抱えているのだから、書き記したものが残り、秘密がバレてはアレキサンドリアが窮地に立つやもしれぬ」
「大丈夫です。そんな事は書いていません」
「見せなさい」
「だめですだめです!絶対にだめです!フェルディナンド様だけには見せられません!」
「…なぜ私だけはダメなのだ…?」
「それはその…」
「他の者には見せられるのに?私だけ…?」
「う…わかりました。見せます…。ただし私のいないところで、ご自身の隠し部屋で見て下さい。絶対ですよ!」
「わかった」
そうして届けられたローゼマインの日記。
やれ今日のフェルディナンドはどこが可愛かっただの
横顔が素敵だっただの、
夕日に照らされこの世のものとは思えない美しさだっただの、
訓練している姿が誰よりカッコいいだの、
子供達を見ている優しい笑顔が好きだの
無骨な手が好きだの
研究している時の真剣な眼差しが好きだの
食事時のもぐもぐ動くお口が可愛いだの
フェシュピールを奏でる指先が美しいだの
声で孕まされそうだの
大変結構をもらって嬉しかっただの
喧嘩しちゃってしょんぼりへにょんだの
仲直りのぎゅーでしあわせだの
好きすぎて高みにのぼりそうだの
それはそれは砂糖を吐き出せそうなほど甘すぎる日記。
最後には走書きで
なんですかその顔は!
可愛すぎるにも程があるでしょう?!
そんな姿を他の人に見せてはいけませんよ!
私だけのものです!
誰にも渡しません!
大好きです!!
と書かれていた。
日記が渡される直前に書いたものなのだろう。
インクが乾かず擦れている。
乙女の秘密をこじ開けた代償は大きく、気付いたらフェルディナンドの隣には金粉の山ができていた。
また、可愛い可愛いと散々書かれていて居た堪れないやら恥ずかしいやら情けないやらどこが?!という怒りやら。
そして直諾的すぎる愛の言葉の数々に幸せすぎて高みにのぼる思い。
果たしてこの日記を残してよいのか悪いのか
乙女の秘密は見る物ではないと実感しつつ対処に困るフェルディナンドがいたとかいないとか。
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ユンゲル貴族の葬儀、今まであった体がどろりと溶解するの怖すぎませんか?
私は怖い。
なのでロゼマに代弁してもらいました。
神殿長だったのに葬儀に関わってないのはフェ様の過保護によるもの。
一度も葬儀に出席していないような口振りになってしまいましたがスルーして下さいませ…。汗




























(love3)