諸君、私はぬいが好きだ。
この場合のぬいとは、推し関連のぬいだけではなく、動物をモチーフとしたぬいぐるみも含む。手触りは、もふもふかもっちりが望ましい。でもあまりにも愛らしいと手触り関係なくお持ち帰りしてしまう。等身大なんて心が躍る。手乗りサイズも己が受け止め切れる愛らしさをやすやすと越えてくるので大変なことになる。口に含みたくなる。ぬいを吸ってみろ、飛ぶぞ。こうして語彙力と理性は凄まじく失われる。
ぬいにハマった女の話をしよう。
小学生の低学年には海亀ぬいのために自分のベッドの上にカメちゃん家をダンボールで作り上げ、私はベッドの上のカメちゃんのダンボールハウスではなく、ベッドの外で寝た。
成人したあとは出先だというのに、成人女性サイズぐらいありそうな緑色のワニぬいを袋に入れ家まで帰った過去を持つ。ちなみに徒歩数分の距離ではなく電車を乗り継ぎ飛行機で帰る距離だ。あの時はかなり疲れていたので店員さんの「発送いたしますか?」という優しさに「大丈夫ですこのまま持って帰るので」「このまま持って帰るので!?入る袋あったかな……」というやりとりをした。コンビニで袋いりますか?と聞かれて、大丈夫です鞄に入るので、そんな流れとはかなり違ったというのに人間、疲れすぎると何を仕出かすかわからない。正気に戻った時には空港で、いつのまにか段ボールに詰め込んだワニを抱えていた。まだどこかで用意した段ボールに詰め込んでいただけマトモだった。発送する考えが思いつかない程、疲弊していた。ぬいに癒されるしかない。疲れているととりあえず、大丈夫です、いけます、と言ってしまうのを何とかしたい。
普通の動物ぬいですらこんなに好きだというのに、オタクとなり夢女となったいま、推しぬいがこの世界に存在するとなれば正気を投げ捨てるしか道はなかった。お金を払えば推しを合法的にこの手に抱けてしまう。何それマフィアパロかヤクザパロで札束で殴りかかる推しをかけたオークションなの?いいえ、現実です。おちんぎんで推しを買える。狂うしかない。
ぬいに対して財布の紐が緩みまくる私が今ハマっているジャンルはゲームで、私が彼の存在を知ったときにはどんな通販サイトを覗いても売り切れていた。再入荷がいつになるかもわからない、そんな噂もあった。愛らしすぎるからしかたがないね。それでも頭はひどく冷静であらゆるサイトの再入荷通知を押し、朝起きた時か仕事が終わった後にできる限りそれらの通販サイトを確認するようになった。
ストーカーを愛の狩人と宣った某ジャンルのゴリ局長さんに共感する日が来るとは思わなかった。罪はたぶん犯してないので捕まることはないです。そうだと良い。ただ、推しぬいがくるのを毎日待ち構えているだけだ。狂気はぶつけるのではなく心に秘めるもの。
サイトを確認する行為はルーティーンと化せばなんら苦労はなく、天気予報を見るように、今日もないよね、やっぱり来てないか、こんな情勢だし仕方ないな、今日もかわいいね。そんな気持ちでいくつかのサイトをハシゴしてゲームを再開する。どこにもないことに、落ち込んだことはなかった。もはや日常だ。正直、二年後でも待てるだろう、三年後はどうだろう、流石にジャンルが変わってるかも。でもかわいいし、ジャンルを移ってもそのぬいに関しては、その時が来るのを待ってそうだ。けど私はいま欲しいから、後悔しない選択をしたい。転売からは買わず、公式関連に張り付いて、訪れを願う。それは何だか、今ではない季節を待っているような感覚で、少しだけ楽しんでいた。会えないことを楽しむなんて正気の沙汰ではないのかもしれないが、彼をお迎えしたら、何をしようと考えると連休が潰れようが、土日が休みじゃなくても、楽しくて仕方がない。彼が入る大きな鞄を持って公園に散歩にでも出かけようか。美味しいお店のご飯をテイクアウトして、一緒に家に帰ってから食べるのも楽しいだろう。記念日にはデートをしよう、普段は行けないけど実は行きたい場所がいっぱいあるんだ。
時間がたっぷりあるときは、ぬいたちを手洗いしては風が通りぬける心地の良いところで涼むのだ、うたたねなんかしては、平和だなぁ、と呟く。そんな日々の訪れを待とう。君が家にいる季節をこうして待つのも、嫌いじゃないのだ。
あ、デイリーが待っている。石をかき集め推しのピックアップに備えねば。ぽちぽちと推したちを操作して、育成しつつ、デイリーをこなす。新しいイベントが来るみたい、情報が来ていた、やることが多い。ありがとう公式、愛しているよ。イベントで石たくさんもらえたら良いな。
過ごしている日常の中、それは起こった。
メールアプリに来ていた通知は、存在を知ってから数ヶ月間、待ち侘びもの。
デカデカと輝く再入荷しました、通知は神の啓示のように現れ、愚かな人間を地獄から掬い上げる。再入荷するかもわからなかった彼のぬいのためにあらゆるサイトに登録してあったので短い手順でカートに突っ込み、常軌を逸した勢いでスクロールしては先に進むため連打する。人目がなくて助かった、これが外であった場合、私は人権を失ったかもしれない。勢いがやばかった。住所OK、支払い方法はこれで、指定日は後で配達してくれるとこで変えられるから何でもいい、何よりもはやく、ご注文をした、その安心できる結果をください。
携帯を机の上に置き、祈るように手を合わせ、しばし待つ。
己の行いを省みる、敬虔な信者の有様だ。天に託す運命は不安しかない。こんな気持ちは推しのガチャを回すときか、チケット戦争の結果を待つ時ぐらいしかしたことがない。人間ができることが少ないことを思い知らされる。厳正なる抽選の結果と和睦できない。一生抱えそうな殺意がそこにはあるが、行き場のない殺意は筋トレをすることで消化しています。ご安心ください。
「お願いです岩王帝君様、どうか私に慈悲を……飢えた民に救いをお与えください……私は璃月ではなく日本国民ですが……璃月を愛しています……好きです……璃月のストーリーとあの国が好きです……仙人と人間が好きです……頼む……入れ……入れーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
取り繕ったあらゆる言葉は消え去り最後には狂ったような女の叫びが響く。何度でも思う、人目がなくて本当に良かった。人権だけではなく職すらも失う可能性があった。カートに入っててくれ。頼む買えててくれ。
「お願い何でもするから……お願い……お願いします岩王帝君様……お願い……私にできなさそうなことでも精一杯努力して頑張るから……何でもするから!!!!!!」
祈りのポーズは国により違うが、この国では神社が馴染み深いので両の手のひらを自然とピッタリと合わせている。推しのピックアップの時もよくやるポーズ。
「……メール、サイトの方を確認した方がいい?メールを待つべき?あ、あ!!!」
メールが来ている。そこには、ご注文ありがとうございました、の文字が輝いていた。
「勝訴!!!」
張り付き続けた数ヶ月が報われた瞬間であった。一ヶ月に一度は再入荷通知を押し直してよかった。
「うちにてーくんが来る!!!うちにてーくんが来る!?洗濯と掃除!ベッド周りきれいにして、コロコロが先!?いや掃除機!?とりあえず床磨こう!壁も拭く!?玄関のとこも!神をお迎えするんだから!」
家に帰るときにすることをまとめ、大急ぎで大掃除を決行すると決めた。届く予定日が、明後日になっている。
「待って……」
心の準備をさせてください。頼む。こちとらSNSで人様のおうちのてーくんの可愛さを摂取して生き永らえてきた命だぞ。実物が来てしまう。抱っこできてしまう。その日は興奮してまともに眠れなかった。眠るまでずっと、ご注文ありがとうございました、のメールを見ていた。
朝が来た、明るい部屋でまたメールを見る。夢じゃない。
「待って……かみさま……てーくんが……きちゃう……」
登録している物流会社から、メールが来ていた。お届けものがあるよ!このままだと明日には着くよ!嘘やん。もはやそれは発送通知。何時にする?優秀な物流会社のサイトにログインして、受け取れる時間帯を設定した。
「あと何ができるの!?冷蔵庫と風呂掃除ぐらいか!キッチンも綺麗にしよっか!」
やることを全て終えてから、数ヶ月早い大掃除をした。混乱した人間は何を仕出かすか本当に分からない。今晩は肉の煮物を作ろう。そして地酒も用意しておく。あまり得意ではないが、料理に使えばいいのだ。置いといて損はない。
顔を手で覆い、その時を待っている。いつ、いつくる。もうすぐ時間だ。ゲームやSNSを開いては閉じる無意味な行動をしている。最後にまたベッドや部屋にコロコロをかけ、体育座りして息を整える。家に帰ってきてから、いつでもスタートダッシュをかませるように動きやすい服には着替えた。準備はできている。ベッドメイキングは終えている、長旅で疲れているであろう彼にすぐお休みいただけるように。タグを切るハサミは机に置いてある。さあ、ピンポンを押して我が家に来い。さあ、来るのだ。
「この音は……!?」
ピカピカに磨かれた床に耳を押し付けようとしたが窓を見る方が早いのでカーテンを開く、トラックだ。あの物流会社の文字が書いている。スタートダッシュを決める。
はじまりました、ぬいを手にするまで終わらぬ戦いのゴングは鳴り響き、この晴々しい天気もぬいの訪れを祝福しているようです!走り出したのはぬいに目がない選手、良い走り出しです。さあ、ぬいに目がない選手!はやい!はやい!風のようだ!コーナーを曲がり切る!おおっとそこで靴を履かずにドアの鍵を外す!そのような危険な真似を女性がしてはいけないーーー!!!ご安心ください、真横に傘と懐中電灯があるのでいつでも暴力に物を言わせることができます!それは安心だーーー!!!さあ、目当ての段ボールを抱えている配達員がピンポンを押そうとした体勢で驚いていますがどう出るつもりだ!?
「いつも、ご苦労様です。」
ぬいに目がない選手、笑顔で乗り切ろうとしている!!!ピンポン前に出た凄まじ勢いなど無かったような満面の笑みで全てを誤魔化そうとしている!!!解説の天の声さん、これはどう思いますか?配達員がどのように出るかが見ものですね。そうですね、さあ、配達員の様子はどうだ?
「このまま渡すだけで良いんで。大丈夫っすよ〜!それでは失礼します〜!」
忙しそうな様子で全く気にしていない!!!これは助かったかーーー!?ぬいに目がない選手、段ボールを抱え鍵を閉めた!早い!早いぞ!まだそこに配達員が立っていたのではないのか!?
戦いは終わった。帰り際に手を洗い、準備は万端だ。部屋に戻り、段ボールのテープを剥がし、開き、中に詰められているブツを見て高笑いをする。ビニール袋に包まれているのは愛らしいぬいぐるみだ。半龍半麒麟、ゲームでは亡骸しか見ることが叶わなかった推しのぬい。公式が出してくれているぬい。
「フッフッフッフッフーーーーーーーーー!!!」
某海賊漫画のどピンクもふもふではない。
「ヒャッフゥうう!!!!!ハッハーーーーーーー!!!」
ただの気が狂っている人間の姿である。ビニール袋から出し、タグを切り、もふもふ具合を確かめる。これが噂のね、なるほどね。噂でヤベェって言われてるだけあるわ。ずいぶんともふもふじゃあないか。つみぶかい。
「かわいい……かわいさ極まってる……ありがとう世界……ほんとうに、ほんとうに、ありがとうございました……。」
荒くなりそうな息を深呼吸では誤魔化しきれず、荒げた息のままベッドの上にそっとおろし、彼の全身を目にする。尻尾が動く、すごい。想像以上にもふもふだし、立派なツノもある。背中もかわいい。保存用も欲しかったが購入制限があり一つしか買えなかったのだ。いつかもう一ぬい、保存用にお迎えしたい。ゆったりとした手つきでひっくり返しまじまじと眺める。おてては……これは目にしたものが死ぬ。
「吸うか」
正気ではない。手に入るとわかった時点で時すでに遅し。何もかもが手遅れである。家に段ボールが着く前に顔は洗い何なら風呂にも入っていたので、どれだけてーくんぬいと戯れても構わないのだ、私は。なんならこのままちょっと早い眠りにつくことだってできる。明日の準備もご飯も既に済ませている。なんなら朝食の仕込みまで終わってる。もふもふに顔を埋め、吸う。吸うったら吸う。母親の乳房に顔を埋め乳首を執拗に吸う赤ちゃんの気持ち。生きようとしてんだ、必死にもなるわ。てーくんはママンだった?これが知性と理性を投げ捨てた人間の末路です。
『そのようにひっくり返されるのは、俺とて少し恥ずかしいのだが……。』
「……スーーーーーーーーーーーーー」
吸う。モラクス吸いだ。正確にはてーくん吸い。やばいこんなん日課になる。日向ぼっこさせてから存分に吸いたい。まだ梱包材独特のビニール臭があるけどそれを上回るもふもふがそこにはある。そうさ、ここが楽土。みんなが目指すべき最果ての楽園。ヘブンも極楽浄土も高天原もここにあったんだ。
『いつまで俺はこうして吸われていれば良いのか……』
「スーーーーーーーーーーーーー」
男の声が聞こえる。聞き覚えのあるボイスが耳にするりと入り込む。空耳か幻聴だろうと気にしていなかった私はふと、てーくんぬいの尻尾が動き、彼の体に添えていた腕に巻き付いたことで、あれ?と顔を上げる。
『俺の乳からは何も出ないぞ。』
「一思いにころしてください」
私が吸っていたのはてーくんのおっぱいだったんですかもっときちんとそうだと製品紹介のページに書いておいて欲しかった。しょーくんのおしりのように。彼を推している人間全てを軽率に狂わせてほしい。いや、そうではなく。正気をさらに投げ捨てるような現実ではなく。てーくんのおちちを撫で回してしまったってこと?首を落とされるべき?
『すまない、起こして欲しいのだが……』
「ちょ、ちょっとお待ちを……」
ひっくり返っている彼はうごうごと動いた。前足と後ろ足を動かしている体を抱き起こし、ベッドの上に戻し、自分はベッドの外で正座をし、土下座をかます。なんかよく分からないけど目の前の神々しいてーくんぬいが、ただのてーくんぬいでないことだけはわかる。配送ミスか?私のてーくんぬいはいったいどこへ?愛らしい姿をしているが出てる雰囲気が神々しいんだわ。
『何故、そのように頭を垂れている。お前は俺の民ではない、頭を上げろ。』
「少し待っていただけますか、岩王帝君様。」
『いかがした、人間殿。』
「いやその呼び方あまりにも反応する人類が多すぎるな……いえ、あの、そのぉ……この一連の狂気を、岩王帝君様に見られてたってことでしょうか……?」
『ああ、とても元気だったな。箱の中であろうと聞こえていた。……元気なのは良い事だと思うぞ。』
「どうして目を逸らしてるんですか」
『俺は人間をまだよく理解していない。これからあのような姿を目にする機会もあるのだろう。学びを得られてよかったと思うことにしている。』
「正気を失ってるのか貴様と罵倒された方がまだマシだった……なにこの不思議な気持ち……何この慈悲深い心を……人間が愚かに思えてくるじゃん……私が愚かだ……」
土下座したまま顔を上げずに嘆く。とんでもねぇ場面を見られた。全て見られた。殺して欲しい。
『人間殿はこのまま就寝するのではなかったのか?俺と共寝するつもりなのだろう?はやく横になると良い。』
「人類代表のような呼び方さえ恐れ多いわ……どうぞお休みください……私は床で寝ます……」
『俺は人間殿と眠ることを楽しみにこの地に足を踏み入れ、その腕に抱かれる時を今か今かと待っていたのだが何故そのようなことを口にする……俺が欲しくないのか、人間殿』
「あらゆる欲望が暴れ狂ってますが、私が欲しかったのはてーくんぬいであって本物の岩王帝君様ではないというか。恐れ多すぎて一緒に寝る場合、私が死にそうというか」
『俺と共寝するだけで、お前は死ぬことになるのか。』
「羞恥心です、はい。」
『羞恥。そうか……俺は先ほど以上の醜態があると思えないのだが。』
「ッウッ」
『お前は俺を欲し、あまつさえ手に入るのであれば何でもする、と言っていたな。俺の聞き間違いであったか?』
「許してください。神に誓いを立てているつもりじゃなかったんです。」
『あれだけ俺に祈りを捧げておいて?民ではないが、俺と璃月に一心に願い続けておいて、それら全ては偽りであったと?』
「いえ、あの……その……」
愛らしいてーくんぬい(仮)に問い詰められ、たじたじになるなんて誰が思った。想像もつかない。私は石化されるのではないのか?それとも岩を喰わなきゃいけない方ですか?
『来い』
「はい」
私の知っている鍾離先生より全然怖い。威圧感が怖い。汗が出る。恐怖すぎる。足が震える、逆らうことをするな、と本能ごと震えている。誰だよこの魔王を家に入れたの。私だよ。喜んで迎え入れたわ。ベッドの上をぽむぽむと片手で叩くてーくんぬいはかわいいが、可愛さを上回るものがある。圧だ。
自分の慣れたベッドが、これほどアウェイになることってあるかよ。恐れ多いが彼をベッドの端っこに寄せて私もベッドの端に寝る。
『距離を感じないか』
「いえ、気のせいかと。初対面の距離だと思います。」
『俺の想像していた共寝と違うのだが……』
「えっ!?そうなんですか?おやすみなさい」
『人間殿』
人間殿、と呼ぶその声は確実に、人間殿(圧)だ。ころされる。
『俺を抱くのだろう、お前は。』
「いえ……そのぉ……恐れ多いので……」
『俺はそのために来た。』
「抱っこしたら、岩王帝君様は満足するんですか?」
『……ああ。』
腹を決める。てーくんぬいはやはりもふもふだった。腕の中に抱き込んで、横に寝転ぶ。
『やはり人間はやわらかいな。』
「てーくん様もかなり柔らかいですよ。」
『……そうか?俺はこの体を確かめられないのだ。どのような柔らかさだ、教えてはくれないか。』
「ええと、腕の中におさまるサイズ感がとてもかわいくて、守ってあげたくなります。ふわんふわんしていて、もふもふで、手触りもとても良くて、それで、好きだなぁって思います。」
ぬいはいい。実にいい。癒される。頰を寄せていつものようにうりうりと抱きしめてもしまう。そういえば中になんか入ってるんだった。やってしまった。一度抱きしめれば同じだろう、それによく眠れそうなふわふわだ。ここ数日、彼が家に着くまで緊張感が半端なかったので、気が緩んでいく。とろとろと頭がとけていく。おうちに、てーくんぬいがいる。
『そうか……眠ってしまうのか?よく聞くといい、お前は俺に尽くした。良いことがあるだろう。』
ふわふわのおててが、私を撫でるように動いていた。尻尾がまた体に巻き付けられて、不思議な安心感があった。
眠りに落ちる寸前、満足げな声を聞く。
てーくんぬいが手に入ったことがいいことなのに、さらに何が起きるというのか。ガチャで天井行かずに推しが出るとかなら、かなり嬉しい。
次の日、物言わず動かないただのてーくんぬいを抱えて携帯を触っていると、最初に買ったところとは別のサイトから再入荷通知のメールが来ていた。こっちは半年か一年後ぐらいかかるだろう。それでも手に入れたいわけがある。保存用だ。
「二体目の保存用のてーくんぬいがくる。次こそ、次こそは」
物流会社が明後日来るよ!と嘯いている。誰が騙されるか。口コミではあのサイトは一年ぐらいかかるんだ。来るはずがない。
来たわ。いや、待ってほしい。最初の時よりも平常心を保ち段ボールを開けるとそこに入っていたのは、ぬいはぬいでも、緑だ。
「……しょーくんだ。しょーくんだ!?」
緑のまんまる鳥がいた。
「いやこれは……商品間違い……お店に報告すべき案件……だが……まだ日本で手に入ることのない……公式のぬい……おかしい……でも……いや……どういうこと……?発送メールはサイトから来てない……何?時空間でも乱れてんの……こわ……ちかよらんとこ……ここは私の家だわ」
悩んでいる私を見上げている緑のまんまる鳥と目が合う。彼は首を傾げた。
『帝君が仰っていた、人間か。』
「おっと?」

























