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簒奪の王は異世界で人生をやり直したい!《不義の子で円卓の騎士の裏切り者は清く正しい悪役令嬢に忠誠を誓ってる》

かのこかのこ

簒奪の王は異世界で人生をやり直したい!《不義の子で円卓の騎士の裏切り者は清く正しい悪役令嬢に忠誠を誓ってる》 円卓の騎士にして呪われた子『メドラウド/モードレッド』は狂気の微睡みに堕ち、邪竜となり。罪なき人々を虐殺し、食い尽くさんとする父『アルトゥル/アーサー王』と堕落した円卓の騎士を正す為に。そして父と円卓の騎士の伝説を輝かしいままに終わらせる為。盟友たちと共にカブラン川の畔で父と戦い。槍で貫かれて父と相討ちになって死んだ筈だった。 けれども不可思議な旋律の歌によって『メドラウド/モードレッド』は『異世界アヴァロン』に導かれることになる。 異世界の地でメドラウド/モードレッドが出逢ったのは女神様の加護を持つ、既に断罪され済みの『清く正しく気高い高貴な悪役令嬢』だった!! これは舞台を降りた悪役二人のその後の話。エピローグのあとにあった、ある筈のなかった物語。 Fair is foul,and foul is fair.【綺麗は穢い、穢いは綺麗。】 自ら悪に成った不器用な騎士と策謀によって悪に貶められた少女が自分たちを悪だと嗤う人々に反逆する···。 ことはせず、自由気ままに異世界でご飯を食べたり冒険したりボーイミーツガールするお話です。 別名義で他の小説投稿サイトにも掲載してます。

序『綺麗は穢い、穢いは綺麗』

Fair is foul,and foul is fair.【綺麗は穢い、穢いは綺麗。】
何が善で何が悪か、其は当事者にしかわからないことだ。まして善悪ほど人間の視座に左右されるものはない。

王よ、父よ──、私は王位の簒奪など考えてはいなかった。

貴方の右腕を気取る人あらざる魔術師が賢しげに代弁していた私の心情はなにひとつとして当たってはいなかったのです。

私は貴方の血を継ぐ子であることを認めて貰いたかった訳ではない。
王位が欲しかった訳でもない。母の傀儡となった訳でもない。
私はただそこにあることを許して欲しかった。

貴方の築いた国の礎のひとつとは言えずとも。城壁の一部。いや、路端の石。
その一欠片として貴方が心から慈しんで守り育んだ、この美しきブリタニアにある事をただ許して欲しかったのです。

貴方の傍らに立とうなど思っていなかった。ましてや、貴方に成り代わり王になろうなど考えたことすらなかった。

遠目にすら姿を捉えられぬ遥か遠くで、数多と居る貴方の旗下の騎士の一人として。貴方と貴方の国に忠義を尽くすことだけが私の大望、唯一の望みだった。

王よ、我が父よ。狂乱の微睡みに囚われ、罪なき女子供を正義の名の下に虐殺し、喰らい尽くさんとした悪しき邪竜、アルトゥルよ───。

貴方を怪物として死なせるぐらいならば私が貴方の罪と咎を背負いましょう。アルトゥル王は偉大なる英雄なり。

ブリタニアを纏め上げた傑人。聖剣に選ばれた救世主であり。私、メドラウドはアルトゥル王が同母姉の間に設けた不義の子として貴方から玉座を。

王位を簒奪せしめようとし、此のカブランに流れる川の畔にて貴方と相討ちに遭い。───死ぬ。

それで良い。狂気の淵で溺れる貴方を救う手段は最早死しかない。
円卓の騎士たちは最早貴方を傀儡とする俗物と化し、アルトゥル王とその配下たる円卓の騎士たちの栄光は腐り墜ちた!!

であれば志を同じくする盟友たちと共に私は父である貴方を、円卓の騎士たちを討とう。

人あらざるモノたちの思惑によって紡がれた貴方の伝説に終止符を。栄光が輝かしきままに救いの終焉を。

それが貴方の子である私が貴方に捧げられる最大の孝行だと信じればこそ私に迷いはなかった。例え、父殺しをなしたことで煉獄に堕ちようとも。

「────共に死ね、メドラウド。否、王位の簒奪者モードレッド!!」

「邪竜よ、共に空から墜ちる覚悟など私はとうに出来ている!!聖剣よ、カリブルヌスよ!焔となって疾れ!!いまこそ穢れなき輝きで魔王たる竜の首を裂き、我に全き勝利をもたらせ!!」

けれども、私は。メドラウドは。何時までも貴方の背中を見詰め続けていたかったのです、父上。

「···偉大なる我が父よ。死出の旅路を共に逝くことをこのメドラウドに御許し下さい──、」

朝ぼらけのなか、夥しい死骸が残る凄惨な戦場を覆うようにカブランに流れる川の畔から白い霧が立ち込めていく。

乳白色の霧に飲み込まれた戦場に一人の騎士が佇んでいた。

新月の夜よりもなお深い艶のある漆黒の髪に冴えざえとした満月を思わせる金色の瞳を持ち。
狼を想わせる精悍で怜俐な顏をした騎士は頬を撫でる霧の向こうから聴こえてくる微かな囁きに閉じていた重い目蓋を開いた。

父によって腹部を槍で貫かれ、絶命した筈の青年騎士は辺りを見渡して戸惑いを滲ませる。

上手く頭が回らない。指ひとつ動かすのも酷く億劫だ。その場に座り込んで眠ってしまおうかと思案する青年の鼓膜をまた微かな声が揺らした。

霧の向こうから聴こえる囁きは次第に大きくなっていく。

それは酷く怯えた少女の声だった。祈るように紡がれる不可思議な調べの唄だった。

誰かに無理矢理紡がされているそれは苦痛と恐怖に満ちていて、不思議とこの唄が助けを求め、渇望するものだと分かる。

だから青年は傍らに突き立てられた聖剣を引き抜き、唄の導きに従って歩き出した。

青年は筋金入りの騎士だった。助けを求める者が居るならば必ず助ける。

敬愛する父に、王に騎士として叙任された時に立てた誓いは。その王が亡くなったとて揺らぐことはない。

人々に悪辣な簒奪者。裏切りの騎士と後ろ指を指されようとも、騎士の誓いは澱むことも濁ることもない。

故に青年は、メドラウドは騎士の本懐を胸に唄に導かれるまま霧の先に足を踏み入れ。ひやりとした空気に肌を撫でられたのだ。

霧を抜けた先にあったのは石造りの部屋。足裏が触れる床には謎めいた言語で構成された魔術陣がある。

戦場に居た筈の青年は周囲の変化に戸惑いつつも、なにか喝采を叫ぶ豪奢な服装の面々を一瞥し。
驚きを顔には出さずに真正面に座り込む簡素な、酷く粗末な生成りのワンピースを着た少女を見た。

第一話『簒奪の王モードレッドの義憤』

手枷を嵌められて、元は長かっただろう銀雪のような灰色の髪をざんばらに切られ。右目の周りが痛ましく腫れ上がってしまっている花紫色の瞳の少女にメドラウドは膝を屈め。

レディ──、不躾に触れることを許可して頂きたいと少女の右目に手を翳した。

メドラウドの手が金色に淡く輝き、その光の強さに比例して少女の右目の腫れが薄くなっていく。少女はぺとりと右目に触れ、驚きを溢した。

「い、痛くない。」

「ああ、やはり愛らしい顔をなされていたな。淑女の顔を飾るのは喜びの笑みが一番だ。そして淑女にこのような無粋な鋼鉄の手枷は似合わん。」

「て、手枷が伯父様が作るポップコーンみたいに砕けた···。」

メドラウドは少女の鋼鉄で出来た手枷を力む動作もなく、指で砕き壊し。

自分が纏う甲冑から天鵞絨に似て光沢があり、水のように滑らかでありながらも軽く。闇夜を切り取って誂えたかのような見事な漆黒のマントを外し、少女の肩に被せる。

石造りの部屋は寒々しく生成りの薄く粗末なワンピースしか着ていない少女には酷だと思ってのことだった。

少女はポツリと温かいと呟いた。メドラウドが座り込む少女に手を差し出し、立たせようとした矢先のことだ。

豪奢な服装の集団が衛兵に合図を送り、少女に槍と剣を明確な殺意を持って突き付ける。

同時に衛兵たちの壁の向こうで不気味に光る歪な髑髏が嵌め込まれた杖を掲げたローブ姿の男が怪しげな呪文を紡ぎ、ニタリと唇の端を捲り上げるようにして狡猾な笑みを浮かべた。

「洗脳、完了──。これでこの勇者は王の傀儡でありますれば。」

ローブの男は恭しく、ともすれば慇懃にもおどけたようにも見える大仰な礼をして、部屋の壁際を陣取っていた毛皮のマントを羽織る落ち窪んだ眼をした壮年の男に頭を垂れた。

「···よくやった、ザラール。褒美にぺルルから取り上げた領地をくれてやろう。」

「ッ陛下、話が違いますわ!!召喚が成功したら領地を返してくれる。わたくしの父と母を牢から出してくれるという約束だった筈です──!!」

石造りの部屋に青ざめた少女の叫びが転がり、豪奢な服装の集団の悍ましい嘲笑が満ちる。

立ち竦む少女がメドラウドのマントを無意識に握り締め、声を震わせながら。まさかと呟く。

小さく首を左右に振って少女は花紫色の瞳を見開き、父と母は。わたくしのとう様とかあ様を何処へやった···!!と一際、絢爛な服で着飾った年若い男に掴み掛かろうとするも衛兵に阻まれて押し返される。

決死の形相でなお掴み掛からんとする少女に年若く少女と同い年だろう男は冷笑を浮かべ、傍らに侍るきらびやかなドレスの桃色の髪の少女を腕に抱く。

「私の愛しいアリスを殺害しようと企み、宰相という立場にありながら王家の宝を着服。売り飛ばした金で私腹を肥やすだけでなく他国に内通し国家転覆を謀ろうとしていた人間を何故生かしておく必要があるんだ。」

口に歪な弧を描く年若い男に花紫の瞳の少女は血の気を失いながら叫ぶ。

「───無実です!!」

わたくしも、わたくしの両親も罰せられるようなことはなにひとつしていません!ましてや国家転覆など考えたことすらありませんわ!

「我がぺルル家は常に心からの忠義を国に捧げてきました···!」

懸命に潔白を訴える少女だが年若い男は少女の反論を鼻で笑い飛ばし、もう君の賢しげな言葉が聞けないと思うと悲しくて悲しくて涙が出そうだよと酷薄に嗤い。

さようなら、元婚約者殿と桃色の髪の少女を連れて部屋を去る。

去り際に桃色の髪の少女は花紫の瞳の少女に勝ち誇った笑みを浮かべ。バイバイ聖女様。二度と私らの前に姿を見せないでねと嘲笑し、年若い男の腕に胸と身体を寄せた。

花紫の瞳の少女は必死にお待ちくださいシャルル殿下···!!と呼び止めるも年若い男は、シャルルは花紫の瞳の少女を一瞥もしなかった。

項垂れ、か細く華奢な身体を震わせながら花紫の瞳の少女は顔をくしゃりと歪め。
わたくしは誰のために頑張ってきたの。とう様もかあ様もこの世にもう居ないだなんて。

わたくしは、わたくしはなんのために───!!と慟哭する花紫の瞳の少女の頭にメドラウドは手を乗せてわしわしと撫でる。

悲痛な叫びに歪めていた顔を戸惑いで染めて、困惑気味に自分を見詰める花紫色の瞳の少女に。
淑女の髪に夫でもない男が許可なく触れたことはどうか御許し願いたいとメドラウドは生真面目に謝った。

「なにやら訳ありな御様子。下手に部外者が口出しするのも如何なものかと思い、発言は控えていたのだが流石に看過しかねる故に口出しをば。」

レディ。誰の為に頑張って来たのかと嘆かれるのならば私に会う為だったということにしないかとメドラウドは花紫の瞳の少女の血が滲み爪が剥がれ、傷だらけの手を優しく掴み。光を纏わせて治癒を施していく。

「これまでの苦難は私に会う為だった。故に貴女には私に命じる権利がある。この慮外者共を打倒し、この身を自由にせよと願う権利が───!」

「ッ何故だ!何故、貴様は僕の洗脳が効いていないんだ···!!」

がなるローブの魔術師にメドラウドは片眉を跳ね上げた。

この程度のちゃちな魔術で私を操れると思っているとは面白いなと瞳に冷たい侮蔑を湛えて口に弧を薄く描いた。

「洗脳か──。その手の魔術は効かないぞ。私の母モルゴースはブリタニア一の魔女。」

文字の読み書きを習うより先にその手の魔術を習わされ、耐性が出来ている。言っておくが毒も呪いも私には効かんよ。それどころか我が体液は猛毒でな。

「血の一滴でもその身体に入れば肉は腐り、肌は爛れ落ち、苦しみもがいて死ぬことになるぞ──?」

メドラウドは携えていた聖剣を捧げるように持つと、手のひらを添わせて滑らせる。

裂かれた手のひらから溢れ出た血は落ちることなく、重力に逆らって聖剣の刃の表面に幾何学の美しくも歪な紋様を描いて赫々と脈打つ。
聖剣は赤く、紅く、緋く輝きを放って。猛り狂う篝火のようにメドラウドの顔を神々しく/禍々しく染め上げる。

「お前たちのような悪党に聞かせるには私の名は些かばかり勿体ないのだが───。」

美しく可憐な淑女に名乗らないのは騎士の名折れと我が友、アグラヴェインは言うだろう。

「故に聞け。我が名はメドラウド!!」

ブリタニアの王、ウェールズの赫き竜たるアルトゥル王が一子!!古き預言にあって簒奪の王となることを定められた呪いの子である!

「人は謳う、簒奪の王モードレッドと!!」

「···モードレッド?アーサー王の息子で反骨の騎士の一人の?」

悲歎と絶望に苦しんでいた花紫の瞳の少女がその瞳に輝きを放つ。頬に赤みが差して、花開く前の蕾のような愛らしい表情となった少女にメドラウドは思わず目を奪われた。

自分の名を聞いてこのように愛らしい顔を見せる女性は。貴婦人は居なかったとメドラウドは音が鳴るほどに強く聖剣を掴み直して動揺を鎮める。

落ち着け、メドラウド。お前は感情のコントロールは得意だっただろうとメドラウドは自分に言い聞かせ、左様と微かに笑うと少女はますます目を輝かせた。

少女の頬の赤らみは光源の限られた薄暗い石造りの部屋のなかにあっても分かるほどで。
一目見て少女が顔に浮かべた感情が確かな熱を持つ憧れであることをメドラウドは悟る。

円卓にあって人々に憧れを抱かれるのは何時も父の違う兄弟たちだった。

円卓の騎士が、その機構が。腐敗し、堕落していたと知るまではメドラウドも憧れを抱き、何時か兄たちのような高潔な騎士になれたならばと夢に描いた。

(···だが円卓の騎士に加わり、半魔の魔術師から注がれた呪詛に侵されたアルトゥル王を傀儡とし、民に圧政を敷き弾圧する騎士たちを見て。)

私の憧れは、描いていた夢は砕けたと自嘲したメドラウドだったが。貴方がモードレッドと砂糖菓子を舌で転がすように自分の名を甘やかに紡いだ少女に心臓が跳ね回った。

騎士は主君に。そして貴婦人に武功と名誉を捧げる。しかしいずれの貴婦人にも出生のせいか。

はたまた武骨な質のせいか。敬遠され、忌まれていた身だ。貴婦人に、淑女にかくも純粋な好意を宿した瞳で見られてしまうと。

···照れる、ものすごく照れるな!!とメドラウドは口をむぞりとさせ。どうにか少女から意識を絢爛な悪党集団に逸らす。

事情は分からないが。どう考えても無垢であどけない少女を虐げたであろう者たちにメドラウドは冷ややかな目をする。

メドラウドから発せられる重厚な威圧感に逸った衛兵が闇雲に攻撃を仕掛ける。メドラウドは衛兵が突きだした剣を上に弾き、体勢を崩した衛兵の足を払い。その首筋に聖剣の切っ先を添えた。

(弱い──。あまりにも弱過ぎる。)

これで衛兵が勤まるのかとメドラウドは他人事ながら心配になってくる。ざわめく衛兵を左右に分けながら甲冑を着たむくつけき大男が現れて少女を突き飛ばしメドラウドに斬りかかった。

だが、メドラウドはそれを意に介さず。突き飛ばされた少女を助け起こすことを優先した。少女がメドラウドが斬られると怯えるなか、メドラウドは焦ることなく少女を両手を使って立たせる。

メドラウドの背後で聖剣が独りでに動き、甲冑の大男を翻弄していた。

粘土細工を斬るかのように、大男の厚みのある甲冑をスパスパと斬り飛ばした聖剣はメドラウドの戻れという号令を聞いてメドラウドの左手のなかに何事もなかったかのように収まる。

幾何学的な紋様がするすると柄に流れて、柄に触れた手のひらのなかに血が消える。少女の視線に気づきメドラウドは血を使った手品みたいな魔術だと笑い、聖剣を鞘に納め。

少女を腕に抱え上げて。身を隠せる安全な場所はあるかと声を潜めて問うと少女は長考し、隣国に婿入りした伯父様の許ならと頷く。

メドラウドはその伯父の顔と居場所を強く念じてと少女と額をあわせた。少女はぴえっと小さく愛らしい声を口から溢し。けれどもメドラウドに言われた通りに伯父の顔と居場所を必死に考える。

メドラウドは金の瞳を虹色に変え、菱形になった瞳孔をキュッと狭め。ああ、捉えたと呟き。踵を高く強く鳴らした。

その瞬間、メドラウドを中心に緻密に編み込まれた魔法陣が何重にも顕れて一呼吸の内にメドラウドと少女を石造りの部屋から古びた遺跡へと送る。

遺跡の周りには幾つもの天幕が有り。丁度、食事時だったのか煮炊きをする人々のなかに。使い込まれた金属のマグカップに良く煮込んだ豆のスープをいれて。

荷崩れした豆を掬ったスプーンを口にくわえたところだった少女と同じ色の瞳を持つ土汚れの付いた綿のシャツと頑丈な厚手のズボンを履いた無精髭の男が。

少女と少女を腕に抱えるメドラウドに目を丸くしながら口を開けてスプーンを地面に落とした。

「シオン──?か、彼氏を連れての社会見学ったあ、ちと斬新だなぁ!あのボンクラ王太子をとうとう見限ったかぁ。伯父様は大大大賛成だ!!」

「ッおじ、伯父様ぁ!」

「おー、おー!?どうしたシオン坊!!さては彼氏との交際を兄貴に反対されたか!!」

はは、仕方ない。伯父様が一緒に兄貴を説得してやるから泣くなってシオン坊。

「···この手首の怪我はなんだ。それに、その傷。何があった!まさかソイツに!」

メドラウドの腕から綿毛を扱うように降ろされた少女、シオンは。花紫色の瞳から真珠のような涙を幾つも溢し、伯父の許に駆け寄って嗚咽を零した。姪の身に残る凄惨な拷問の痕に少女の伯父はメドラウドを睨んだが。

シオンは違う、違うのと首を左右に振り。この人は、モードレッドさまは助けてくれたのと溢れ出る涙を乱雑に拭い。

シオンは震える声でとう様とかあ様は汚職の罪を着せられて、国賊として死んだ···!と伯父に告げて張り詰めた糸が切れたのか、わあわあと幼子のように泣きじゃくった。

「先ずは姪を助けてくれたこと、感謝する。俺はダグラス・トッドだ。シオンの父親とは歳の離れた兄弟でな。しがない考古学者さ。まあ、学者と言うか発掘屋だな。」

普段は専ら国から依頼されて古い遺跡の調査と保全をしている。この国には千年前にあった帝国アルビオンの遺構が沢山あってな。二十歳そこいらの頃に遺跡調査目的で留学して。

そこで今の嫁さんに出逢って婿入りして嫁さんとこのトッド姓を名乗らせて貰ってるんだ。俺と嫁さんには子が居なくてな。嫁さんも俺もシオン坊を娘みたいに思ってる。

「だからシオン。何があったのか伯父様に話してくれないか。」

宰相だった兄貴が何故汚職の罪を着せられたのか。王太子の婚約者であったお前がどうしてこんな風に罪人のように鞭打たれなければいけなかったのか!

「ぜんぶ、話してくれ!!」

《続く》

— End —

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