・好き放題してる
・転生
・微クロスオーバー
・公式様とは一切関係無
・名前固定
・すべては妄想と捏造の産物です。なんか間違ってたらそっと教えてやってください。
・バレーはど素人、ルール諸々を確認しながら書いてます。
非常に今更な話ではあるが今年の夏休みのことを覚えているだろうか。そうだね、鯨くんに連れられて宮城に行って謎にサッカーをしたあの夏休みだね。
正しくは白鳥沢に行きバレーもどきをしていた結果人数が過多になり、バレーをするという本来の目的を忘れ全員でなんかできるやつ! となった結果お団子サッカーをしたのだが。そう、その記憶です。
それがどないしたんと思われるかもしれない、けれど思い出してほしい。その時己とバレーは無関係ではないと思ったことを。正は念能力、さらに言うならHUNTER×HUNTERという存在がバレーと無関係ではないということなのだが。そうだね、レイザーだね。
あの時はバレーもどきの生きるか死ぬか半分かみたいなドッジボールだった。さて、今稲荷崎生たちがキャッキャと興じているものはなにか。
そう、ドッジボールだね。
「……」
悪魔はいない、念能力者はいるが。ついでに言うとレイザーはおらずゴンもキルアもなんならヒソカもゴリラもいない。
この場において言うならレイザーは糸である、そして残り二人になった三年生がゴンとキルア……? いいや、やはりこの場にはふさわしい人物は誰もいない。何故なら生きるか死ぬか骨折かなんてやりだすと糸は途端にお縄につく可能性があるので。
ドッジボールは人を傷つけるための道具ではない。バレーもそうやろという真っ当な意見はお口にチャック、そもそもスポーツは誰かを加害するものではない。フェアプレイ精神にを大切に。
糸はあの時のレイザーはこんな気持ち、どんな気持ちだったのだろうかと遠い目をしたが考えたところでわかるわけもなく。わかるのは周囲を囲む三年生と向こう側にいるクラスメイト達の圧が怖いことくらいである。
敗色濃厚、ニ対一。コートに残るは帰宅部の足が速いだけの女子がひとり。これは勝ち確ですわ。三年六組がそう思うのも無理はない。なんせ訓覇糸は今のところ頭おかしいんちゃうんか? と思うくらい足が速いだけの女子生徒である。
一方三年のコートに残るのは屈強な女子ひとりとか弱い男子がひとり、これは勝った。世間はそれをフラグという。
「くるちゃーん! 避け! とりあえず避けるんやでー!」
「逃げろ訓覇ー! 俺たちの宿題を守れー!」
「ちゃうやろ減らす方やろ」
「減らす方やけど減らす権利を守んねんから間違いちゃうやろ」
「それもそうか」
クラスメイトの熱い歓声、もとい必死な声をバックミュージックに糸は変わらずコート内をちょろちょろしている。しかしそれでは試合は終わらない。なんせサドンデス、どちらかが膝をつきコート内に生き残るものがいなくなるまで続くのである。
わあわあきゃあきゃあ、糸がビュンビュン飛び交うボールを避ける度に歓声が上がる。外野の三年の「大人げないぞ三年六組ー! 一年相手に本気になんなやー!」という野次の合間に「うるさい敗者は黙っとれ!」という怒鳴り声が返る。
物騒、素直に物騒。皆興奮しており飛び交う野次にも笑い声が返るばかりだ。元々乗り気ではなかった文科部や帰宅部、既に負けて無関係になったのでどうでもよくなった少数派の生徒たちを除いて楽しそうにしている。
「あかーん! あの子めっちゃ避けよる!」
「なんやねん動きおかしいやろ!」
「投げてるやつがポンコツちゃうんか!」
「今誰が言うたァ!?」
「ごめんなさい!」
三年の野次の癖が強い。屈強な三年女子が投げるボールが糸に当たらないのはごく自然なことである。よほど油断しているか自発的にあたりに行かない限り、糸はこれを簡単に避け続けることができるのだから。
野次を飛ばした屈強なはずの三年男子は屈強な女子の怒りの声にすぐさま尻尾を巻いてしゃがみこんでいる。ぼくわるいだんしじゃないよぅ。
そして変わらず糸はどうしていいかわらかない。自分が当たればこのドッジボールが終わるとは理解しているが、クラスメイト達は拳を振り上げて一生懸命応援したりボールを追いかけたりしている。それをどうしていいかわらかんから……という自分の一存だけで終わらせてええものか。
かと言って投げてぶつけて相手を傷つけない自信もあんまりない、力加減がわからない。よわ~くすればセーフだろうがたぶんそのボールは取られて終わる。どないしたらええねん。ガラス細工より繊細に扱えばいいのか。
助けて北と思っても、当の北信介は観戦ムード。さっきまで立っとったのにとうとう座ってしまっており、そのままたまに頑張りーと適当な声援を送っていた。せめて立て、ちゃんとしてくれ北。ちゃんと応援してくれ、ちゃんとやんねんどこいってん。飽きるな。
生憎北信介はこの勝負の勝敗は最早結構どうでもいい。はよ帰りたいなとすら思い始めている、今日はバァちゃんがおはぎを作ってくれる予定なので。宿題は別に減らなくても構わない少数派、友人が頑張っているのは応援するが、当の友人が困惑していることもなんとなく気づいているので糸のためにも早めに終わったった方がええんちゃうかなと思っている。
それは正しい、正しいがこの熱狂の場においてそれを口に出さずに沈黙を守ってやれる程度には、北信介にも空気を読む能力があったので彼はほどほどの応援を選んだ。とりあえずもう座るわ。
「くるちゃーん! 右! 右からくるでー!」
インド人を右に、ではなく上からくるぞ気をつけろパターンの方か。お祭り大好きな赤木は今も立ち上がり必死に歓声と野次を飛ばしている。善意からの指示が当事者を混乱させることもあるので指示役は是非固定にしてほしい。糸は同時に五人くらいから別々の助言という名の指示を受けている。
自分から見ての左右を叫ぶのはやめるんだ、糸は普通に混乱する。右からくると言われているのに左から来ている困惑。糸は結局それらの全てを聞き流し、ボールが飛んできたので避けるという単純な動作に専念した。
「長いなぁ」
「みんな疲れてきてるやろ」
「それはそう」
一年が勝っても三年が勝ってもなんも関係ない、外野は好き勝手に応援するだけなので気楽なものである。特に二年生の熱が低い、どっちが勝とうがかまわん。部活の先輩がいる場合はその限りではなく、仲間意識から声を張り上げて応援していたがどっちにも部活の先輩と後輩がいる場合は板挟みになっていた。
小さな社会の縮図、あちらを立ててはこちらが立たぬ。長いものには巻かれろ精神で先輩を応援している場合が多かったが、一年も可愛いから……! と葛藤している先輩の顔は覚えておこうね。いい先輩です。
そんな感じに盛り上がるうちに何故か出来上がり始める三年対一年の構図、わからん、なんもわからん。糸はボールを避けながら周囲を見回しつつ、どないしたらええんやろうかと困り続けている。
そのうちに好機、外野の屈強な三年女子の手からボールがつるりとすっぽ抜けコロコロと糸のいる内野へ。当然拾って外にぽい、それを受け取った屈強な一年バレー部女子がなんとコート内に残る女子にぶつけてアウトにしたのである。
「やったー!」
「残りひとり!」
「逃げきれ訓覇! 相手は三年の男子や! ボール投げられへんで!」
「当てたれー!」
盛り上がる一年、悔しがる三年。勝負はわからなくなったと拳を振り上げて声を張り上げる赤木には観戦の適性もあるかもしれない。一年五組、もれなくスポーツ観戦の適性がある。
「五組ー! 勝てー!」
「すごいやん糸、頑張っとるな」
「練」
あらん限りの声を張り上げる赤木の隣でそろそろ耳痛なってきたな……と思っていた北の隣にすとんと腰を下ろしたのは大耳だった。どうやら暇なので来たらしい。見ればよっと手をあげる尾白もいる、ほとんどのクラスは暇を持て余しているので既に自由行動みたいなもん。
このドッジボールの決着がつかなければ球技大会の閉会式は訪れないのだ。
「うちのクラスもすごい盛り上がっとるわ、三年には負けへんで! て言うてた」
「せやな、一年対三年みたいになってきとるな」
「ようわからん、相手は三年六組であって三年対一年の構図はちゃうやろ」
尾白と大耳の言葉に真顔で首を捻る北はいつも通り、正論パンチに二人は苦笑した。言うてこういう構図になることは既に見えていた。既に終わっているがサッカーは二年対三年みたいになったし、テニスは一年対二年みたいになった。
テニスで優勝に輝いたのは一年一組、学外でテニスを実はやってるという生徒が決め手になったのは言うまでもない。普段から明かしてなかったので満を持しての俺つえーになったが次からテニス出禁になったのは仕方ない話。
「お! 練とアランやんけ! おまえらもくるちゃん応援して!」
「しとるしとる」
「頑張っとるなぁ、あ、また避けた」
「もう信介座っとるし」
「ずっと立ってんでもええやろ、糸もそろそろ困っとるみたいやし」
「……ほんまやな、困っとるな」
わかりにくいが事実訓覇糸は困っている、正解です。
北の言葉に大耳が目を凝らして糸を見た。ほんまや、困っとる。
「え? なんで? プレッシャーかかりすぎたんか?」
「くるちゃーん!」
「うっさ! 路成うっさい! 隣で叫ぶなや!」
尾白も同じく首を傾げたが、すぐ隣で赤木が大声で叫ぶもんやから気が散ってしゃーない。しかし見ればなるほど確かに、糸はわかりづらく困った顔をしている。
そこまで露骨に表情に出るタイプではないので、わかる人にはわかる困惑顔。それがわかる程度には仲良しクインテットの付き合いは深まっている。おかしいな、北を除いてまだ一年も付き合いがない。
「えっ、くるちゃん困っとんの? ……ホンマや困っとるわアレ」
赤木も糸が困惑していると聞いてとうとうちょっと正気に返った。勝負事を決する熱気と興奮が彼から正気を奪っていたが、糸が普通に困っていたのでちょっと正気。
それを見て北がよっこいせと立ち上がった。高校一年生なのによっこいせが似合う北信介、そして大耳練。大耳は完全にとばっちりである。
「糸さっきから全然ボール取らんしな。外に出してばっかりやろ」
「投げるん下手とかちゃうん?」
「勝て勝て言われて当たる可能性より避ける方優先しとるんちゃうんか?」
つい、と視線を流した北の言葉に首を傾げた大耳と尾白、しかし赤木はピーンと来た。
「甘い、糸やぞ」
そそと戻ってきた赤木がこくりと頷く。ほんまや、くるちゃんや。
「……なんやろな、何の理由にもなってへんのに妙に説得力あるその言葉は」
「俺のお師匠さんやぞ」
「あかん、何の理由にもなってへんのに説得力だけがある」
大耳がゆっくりと首を横に振り、尾白が頭を抱えた。北信介のお師匠さんやぞ。何一つ理由になっていないのに妙な説得力、信ちゃんからの糸への謎の信頼感がヤバい。ちなみにこれ、一応冗談のつもり。
「まあホンマにどうしてええかわからんから避けてるだけやろな」
「急に普通にもどんなや!」
「見てみい、糸の顔焦っとる言うよりずっと困っとるやろ」
「滅茶苦茶困惑顔やなぁ」
「さっき話した時になんも言わんかったからな、投げるん自信ないのともちょっと違うんやろ」
そんな冗談は右に置いといて、と北があっさり話を戻したのでその緩急に尾白はついて行けない。ついて行くけどな!
そして今もボールを避け続けている糸は困惑顔。コートの中のか弱い三年の男子は屈強な一年女子の投げるボールから逃げ惑ったりたまに受け止めたり。受け止められてしまうと暫く三年のボールになる、糸はあんまりボールに触ろうとしないので。
ふむ、と訳知り顔で頷く赤木は後方お友だち面、前方でもしてもいい面なのだが何となく玄人感があっていいと思う。
残り一対一対外野、そしてダークライ。なんでやダークライなんも悪いことしてへんやろ。そう思っても仕方ない、ダークライはとりあえず争いの場において最後にちょこんと添えられる運命。そんな悲しい運命を一体誰が背負わせてしまったのか――――人は愚か。

























