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あかちゃんとあかちゃん

もぐもぐもぐもぐ

赤ちゃんのお世話をすることになったディンとヤキモチ焼きのグローグーの話

賞金首を追いかけ、帝国の残党と戦い、ハードで血生臭い日々を送っている。
そんな凄腕賞金稼ぎのディン・ジャリンは、今何故か生後一年にも満たない赤ちゃんを抱っこしていた。

 ジャリンはいつも通りに仕事をしていたはずだ。
ブラスターをバチバチ撃ち、ウィスリング・バードをぶっ放し、フレイム・プロジェクターで敵を焼き払う。
そうしていたはずなのに、今は赤ちゃんを抱っこしている。

 こうなったのは追いかけていた賞金首の居場所を突き止めるためにあっちへこっちへ情報収集をしている最中に出会った肝っ玉母ちゃんに頼まれたからだ。
最終的に彼女からの情報のお陰でターゲットに辿り着き、じゃあ帰りますかという時に捕まってしまった。
六人兄弟を育てる母ちゃんは子ども達を引き連れて出掛けなければならないが、一番小さなベイビーまで連れて行くとなるとなかなか困ると言う。

 オムツにご飯にミルクに、どこで大泣きが始まるか分かったものではなく言葉は通じない。
ハイハイであちこち動き回り伝い歩きが大好き。
目を離せばどこかにぶつかる、顔から転ぶ。
そんな赤ちゃんを連れているのといないのとでは労力が全く違うのだ。

 と、いうことで、情報提供をした見返りとしてまさかのマンダロリアンに子守を依頼するのだから本当に肝っ玉母ちゃんだ。
当然ジャリンは困惑したが母ちゃん曰く「あんたもそんなちっちゃい子連れてるんだから子守くらいできるでしょ」ということらしい。
ちっちゃい子、と言われたグローグーはきょとんとして首を傾げた。

 そういう経緯で二人のベイビーを抱えることになったパパダロリアンは預かった赤ちゃんをそっと床に下ろした。
グローグーがきゃあきゃあとはしゃぎながら赤ちゃんの周りをうろうろする。

 「グローグー、この子はぬいぐるみじゃないからな」

 「んぇ?」

 「優しくするんだぞ。お前の方が年上なんだ」

 「ぷあっ」

 50歳の赤ちゃんはビシッと手を挙げて返事をした。
グローグーもいるのだから、とりあえず遊ばせておけばいいだろう、とジャリンは考える。
遊ばせている間にミルクと離乳食の作り方を熟読しなければ。
ジャリンは50歳児の育児経験しかないため母ちゃんが思う500倍は緊張していた。

 「この子の飯を作るから遊んでいてやってくれ。何かあったら大声を上げるんだ」

 「きゃあ!」

 ちょっぴりお兄さん気分なグローグーはやる気満々だ。
早速赤ちゃんにボールのオモチャを渡している。
うちの子もお兄さんになってるんだな、とパパは静かに感動し、カウンターの向こうのキッチンへと入った。

 簡単なレトルト離乳食のパッケージを読むと、温めてそのまま食べさせられると書いてありホッとする。
ミルクも既に必要な分量の粉を分けておいてくれていたので助かった。
お湯を沸かし、離乳食を温め、カウンター越しに二人を見る。
ハイハイをする赤ちゃんの後をグローグーもハイハイで追いかけ、振り返った赤ちゃんと目が合うと二人は同時にきゃっきゃと笑う。
この世の楽園だ。

 「グローグー、もうすぐできるからな。そろそろ片付けをしておけ」

 「みゃ!」

 「片付けないと飯はないぞ」

 「……えぁ」

 まだ遊ぶ!ともちもちの頬を膨らませるグローグーだがご飯を人質に取られては手も足も出ない。
渋々散らかしたオモチャを片付け、赤ちゃんが握っているガラガラも片付けようとする。
しかし赤ちゃんは渾身の力でグローグーの手を拒否した。

 「だっ!」

 「み゛ッ、たぅあ、たぁ!」

 「んあああっ!」

 「びゃあ!たぃたぃあ!」

 飛び交う赤ちゃん語。
何を話しているのかは分からないが語気の荒さから喧嘩をしていることはよく分かる。
ジャリンが慌ててキッチンから出てきた。

 「グローグー、何喧嘩してるんだ」

 「ま゛!あう!」

 「あぁ、オモチャを持っていたいのか。仕方ないな。そのままでいい」

 「み゛!?」

 片付けをしなくてもいいと赤ちゃんを許すパパにグローグーは大きな目をもっと大きくさせた。
グローグーはいつも片付けをしないとご飯もおやつもなしなのに。

グローグーはぶすっとして他のオモチャを片付けると、ぶすっとした顔のままパパの足にピッタリくっつき「ぼくはいいこでおかたづけをしました」と訴える。
ジャリンはグローグーをひょいと抱き上げると「いい子だ」と優しい声で言いキッズチェアに座らせた。
途端にグローグーはにぱっと笑顔になる。

 パパに褒められたこととご飯の時間のお陰で機嫌を直したグローグーは、小さなお手手でペチペチとテーブルを叩いてご飯を要求する。
ジャリンは吐息交じりに笑い、グローグーの前に蛙の姿焼きとタコスープとトカゲの味付け卵を置いた。
グローグーは目を輝かせ早速蛙にかぶりつく。

 グローグーが美味しそうに食べるのを微笑ましく見つめ、次に赤ちゃんを抱き上げ膝に座らせた。
温めた離乳食を小さなスプーンで口に運ぶ。

 「食べられるか?ん?……ふっ。そう、上手だ。美味いか?」

 赤ちゃんは奇跡的にフルアーマーの戦士にも人見知りをしないタイプのようで、目の前のヘルメットにきゃっきゃと笑いながら機嫌良く口を開けてくれた。
さすが六人兄弟の末っ子、心身共に鍛えられている。

 ジャリンはぎこちない手つきで食べさせ、時々口元の汚れを拭う。
グローグーよりもふにゃふにゃの赤ちゃんは少し力加減を間違えたら取り返しのつかないことになってしまいそうで、凶悪な賞金首と対峙した時よりも緊張する。
赤ちゃんの方はマンダロリアンを緊張させているとは欠片も知らずに美味しいご飯を食べてご機嫌な様子だ。

 味付け卵を頬張っていたグローグーは赤ちゃんを抱っこしてご飯を食べさせるパパをじっと見る。
そしてむうっと頬を膨らませた。

 「え゛!ぶぶぶっ」

 「ん?どうした、グローグー?」

 急に不機嫌になったグローグーにジャリンは首を傾げる。
グローグーはぐいっとお皿を向こうに押しやりぷりぷりとしていた。
まだほとんど食べていないのにこの食いしん坊はどうしたのかとジャリンは困惑する。

 「もう食べないのか?具合が悪いのか?」

 「みゃう!んぶ、ぃあ!」

 グローグーはじたばたと手足をばたつかせ、パパに向かってかぱっと口を開いた。
いきなり小さなお口と小さな歯を見せられジャリンの困惑がますます募る。

 「……歯が痛いのか?虫歯なら治療を……」

 「ぴゃっ!?」

 大真面目なパパの言葉にグローグーは慌てて首を横に振り、急いで皿を引き寄せると残りを勢いよく食べ始めた。
常と変わらぬ食べっぷりに今のはなんだったのかとパパはヘルメットの下で眉を顰める。
しかし腕の中で赤ちゃんが「んまあっ」と声を張り食事の続きを要求してきたので疑問は一旦置いておくことにした。
またも赤ちゃんの世話に意識を向けるパパをジト目で見て、グローグーは「ぶぶぶ……」と不満げに唸った。





 食事を終えると赤ちゃんはミルクの時間だ。
おっかなびっくりミルクを作り、何度も温度を確認してから恐る恐る哺乳瓶を赤ちゃんの口に当てる。
無事にちゅうちゅうと飲んでくれると「おお……」と謎に感動の声が漏れた。

 「これが赤ん坊か……グローグー、お前もやってみるか?」

 「う?」

 「ほら、ここを持ってみろ」

 ジャリンに言われ、グローグーはそーっと哺乳瓶に手を添えた。
飲みやすいように哺乳瓶を傾け、んくんくと美味しそうにミルクを飲む赤ちゃんをじっと見つめる。

 「あーぅ……ぱとぅ」

 「可愛いか?」

 「あぁう」

 小さな小さな赤ちゃんのお世話をしながらグローグーはうっとりとする。
パパを見上げ「あかちゃんかわいいね」という顔をするグローグーにパパ・ジャリンは「お前も赤ちゃんだぞ」と心の中で答えた。

 赤ちゃんがミルクを飲み終えるとジャリンはそっと赤ちゃんを抱き上げる。
ミルクを飲んだら背中を叩いてゲップをさせる、と聞いたが本当に叩いていいのだろうか。
背骨が折れないだろうか。
戦々恐々としながら人生で一番優しい手つきでトントンと赤ちゃんの背中を叩くと無事にゲップをさせることができ思い切り胸を撫で下ろす。

 赤ちゃんは少しむずがり、そのままこてんとジャリンに身を預けた。
そしてすぐにすうすうと寝息をたてて眠ってしまった。
よく硬いアーマーに包まれて眠れるものだ。

 「眠ったのか……ハハッ、可愛いものだな」

 赤ちゃんの背中を撫でながらゆらゆらと体を揺らす。
妙に板についているのはグローグーの寝かしつけに慣れているからか。

 赤ちゃんになごむジャリンだが、グローグーはまたも頬をぱんぱんに膨らませてパパを見る。
パパのマントをぐいぐいと引っ張り「びゃあ!」と不満の声を上げた。

 「ん?どうした?赤ん坊が起きるから静かに話すんだぞ」

 「んいぃ!だう!」

 足をじたじたさせてさらに怒ると赤ちゃんがビクッと体を跳ねさせた。
そして火がついたように泣きはじめる。

 「ふええええっ!」

 「あぁ、ほら、驚かせただろう。悪かったな、よしよし」

 ジャリンは慌てて立ち上がり赤ちゃんの背中をポンポン叩きながら体を揺らす。
グローグーはそんなパパの肩に飛び乗り泣いている赤ちゃんに歯をむき出して威嚇する。

 「なんだ、にらめっこか?この子は今は眠いから後で遊んでやれ」

 威嚇をにらめっこと思ったジャリンは息子の頭も一撫でして赤ちゃんの寝かしつけにかかる。
暫く泣いていた赤ちゃんだがだんだんと泣き声は小さくなり再び眠りにつくことができた。
完全に寝入るとベビーベッドにそっと寝かせる。

 「はぁ、なんとか寝てくれたな。ほら、寝顔が可愛いぞ。見てみろ」

 ジャリンは肩のグローグーにもよく見えるように体を傾け赤ちゃんを見せた。
グローグーはぶすっとした顔で赤ちゃんを見下ろしていたが、健やかな寝顔を見ているうちにむくれた表情が緩んでいく。

 「……たぁい」

 「ん?お前も眠いか?」

 大人しくなったグローグーを腕の中に移動させるとクッションに横たわらせる。
しかしグローグーはすぐにピョンとパパの腕の中に逆戻りをしてピッタリと張り付いた。

 「どうした?寝ないのか?」

 「んむぅ」

 「……お前も少し寝ておけ、グローグー」

 パパはグローグーを抱えながら背中を優しく撫でる。
アーマーは固いがここは宇宙で一番安心できる場所。
グローグーはゆっくりと瞼を閉じ、やがて健やかな寝息を立て始めた。





 突然辺りが騒がしくなりグローグーは目を覚ました。
肝っ玉母ちゃんと五人の兄弟達が帰ってきたらしい。
五人も子どもがいると途端に騒がしく、グローグーは慌ててパパの姿を探した。
母ちゃんと話しているパパを見つけるとすぐに肩に飛び乗る。

 「おっ、起きたのか、グローグー」

 「あらあらおちびちゃん、ごめんね煩くて」

 母ちゃんの腕の中には赤ちゃんがいて、煩さなど物ともせずに手足をパタパタさせてご機嫌で笑っていた。

 「この子を見ててもらえて助かったよ。ありがとね、マンドー」

 「いや、グローグーにとってもいい情操教育になった。多分な」

 挨拶をするように促されグローグーはじっと赤ちゃんを見る。
赤ちゃんはきゃっきゃと笑いながらグローグーを見ていた。
グローグーは暫く赤ちゃんを見つめていたが、小さな手を伸ばしてそっと赤ちゃんの頭を撫でた。

 「……ぱとぅ」

 色々と複雑な思いはあるが赤ちゃんとは可愛いものだ。
と、赤ちゃんの身で思う。

 「またこの辺に来ることがあったら寄って行ってよ。今度は上の子達の世話をお願いするわ」

 「考えておく」

 元気一杯に家の中を駆け回る五人の兄弟を見てジャリンはさらりと誘いを曖昧に躱した。

***

 レイザー・クレストの中でグローグーはパパにしがみついていた。
運転中はパパのお膝の上、自動操縦にして席を立つとパパの肩、休憩もグローグー用のハンモックには乗らずにパパのベッド。
一瞬たりとも離れようとしないグローグーにジャリンは首を傾げた。

 「どうした?今日は妙に甘えてくるな」

 「えぁ、たぁ、う!」

 「まぁ、別にいいが……ふふっ、少しはお兄さんになったかと思ったんだがな」

 いつも以上に甘えてくるグローグーを不思議に思いながらジャリンは優しく頭を撫でる。
成長は嬉しいがやはり甘えられるのも嬉しい。
やっとパパを独り占めでき、グローグーは満足げににっこりとした。

— End —

Comments 6

E
endo11 小时前
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神咲晶1 天前
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水月1 天前
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B
blue.off2 天前
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マル2 天前

赤ちゃんと一緒にハイハイしてるグローグー 可愛いですね!

Sakuria
Where every work blooms
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