<某日放課後:トレーナー室にて>
コンコン……
ド「失礼する……む?」
「おぉ~よしよし良いこでちゅね~♪○○(ドゥラトレ)名)おじちゃんですよ~♪」
ド「…………」
ある日の放課後。いつものようにトレーナー室を訪れたドゥラメンテは、足を踏み入れた瞬間に目に飛び込んできた光景に思わず絶句する。何しろ部屋にいた彼女のトレーナーが、いつもより2トーン程度高い声色で赤ちゃん語を話し、ガラガラと音の鳴る玩具を嬉しそうに振り回していたからだ。
いかに慣れた相手とはいえ、大の大人が取る行動としては聊か……いや、かなり絵的にキツいものがあり、付き合いの長いドゥラメンテでも今の彼の姿には困惑を隠しきれないようだ。
「……あぁ、ドゥラ。お疲れ様」
そんなドゥラメンテのことなど知ったことかと言わんばかりに、彼女の存在に気付いたトレーナーは何事も無かったかのように挨拶を飛ばす。
ド「……何をしているんだ?」
「え、何って……この子をあやしてただけだけど」
ド「この子?……むっ」
ドゥラメンテの問いに対し、トレーナーは何食わぬ顔で答えを返す。その返事を聞いて初めて、彼女は彼の目の前に揺り籠に似た物があることに気付いた。
そして、トレーナーの言った『この子』というワード。それらを鑑みて、彼の行動の意図を理解した彼女は、揺り籠に向かって歩を進める。
すると……
??「あぁぅ?」
その中には小さな赤ん坊が横になっており、眼前に現れたドゥラメンテを不思議そうな目で見つめていた。
ド「……この子は一体?」
「妹の子、早い話が俺の姪っ子だな。妹が仕事でちょっとの間家を空けるからってことで、俺が預かってるんだ」
ド「この子がキミの姪?」
「可愛いだろ?」
ド「……あぁ、とても愛らしく思う」
「そうだろ?目に入れても痛くないとはまさにこのことだと俺も思う。尤も、この子が産まれてからは俺もそろそろ自分の子を作れって両親からは口酸っぱく言われるようになってしまったけどな」
ド「キミの子どもか……」
姪「あぁ~うぅ~」
「お?」
ド「……ん?」」
姪「あぅあぅ~」
すると、揺り籠の中に居た赤ん坊がその小さな手を目一杯伸ばした。まるで何かを求めるように伸ばされた腕の先にはドゥラメンテの顔がある。
そして彼女の言葉を肯定するように、未だ形になっていない声を上げた。
「抱いてみるか?」
ド「良いのだろうか?」
「もちろん。赤ちゃんの抱き方は分かるか?」
ド「赤子を抱いたことなどないが……やってみよう」
姪「やぁぅ~」
ド「……では、失礼する」
そう言うと、ドゥラメンテはゆっくりと姪っ子を抱き上げた。
しかし……
姪「…………」
両脇に手を入れられ、まるで重力に従って延びる猫のように抱え上げられた姪っ子は、眼前に迫った彼女の顔に目を丸くしている。
「あぁ、ドゥラ。抱き方が少し違うよ。お尻に手を添えて体重を支えるようにして抱くんだよ」
ド「そうか……では、こうだろうか?」
「うん、そうそう」
トレーナーに教わった抱き方に切り替えるドゥラメンテ。すると……
姪っ子「……えへへへへ~」
ド「笑ってくれている」
「よっぽどドゥラの事が気に入ったんだろうな」
ドゥラメンテと顔を突き合わせた姪っ子は満面の笑みを浮かべた。
ド「人懐っこいんだな。抱き上げただけで笑うとは」
「人見知りはしない子だって聞いてるからな。ドゥラを警戒していない証拠だよ」
ド「そうか……本当に愛らしい子だ」
姪っ子「きゃっきゃっ」
ドゥラメンテの言葉が伝わったのか、彼女の腕の中に収まる姪っ子はさっきよりも破顔していた。
彼女の目にドゥラメンテがどう映っているのかは分からないが、少なくとも愉快な物ではあったようだ。
姪っ子「あぁぅぅ~」
すると、姪っ子の小さな小さな手がドゥラメンテの胸元へと伸びた。全く力の籠っていない小さい掌が、彼女の顔の何倍も質量を持っているであろうの女性の象徴に触れたのだ。
ド「お腹が空いたのだろうか?」
「あぁ、そうかもしれないな」
姪っ子「あぅ~」
ド「……すまない。私はまだ母乳を出すことは出来ない」
姪っ子「うぅぅ~」
「ミルクならあるから、せっかくだしあげてみるか?」
ド「良いのか?」
「あぁ、幸いドゥラのことを気に入ってるみたいだしな。俺があげても大丈夫なくらいだし、ドゥラもきっと平気だよ」
ド「……分かった。では、挑戦してみよう」
「そんなに難しいものでもないから緊張しなくても大丈夫だって。ちょっと待っててくれ、ミルク作ってくるから」
そう言うと、トレーナーは部屋にあったポットでお湯を沸かし、ミルクを作る準備を始める。
そして間……ドゥラメンテは空腹によって今にも泣き出しそうになった姪っ子をオロオロしながらも必死に宥めるのだった。
<数日後の放課後:トレーナー室にて>
ドアガチャッ……
妹「やっほ~、ただいま~お兄」
母「私もいるわよ~」
「えっ……うわっ!?何で母さんまでここにいるんだよ!?」
母「何でって、孫の顔を見る為……と、そのついで、いやオマケか。アンタの顔を見る為に決まってるじゃない」
「何でわざわざオマケって言い直したんだ……」
妹「いや~、悪かったねお兄。急にこの子の面倒任せちゃってさ……あれ?貴女、もしかしてドゥラメンテさん?」
ド「はい、ドゥラメンテです」
妹「そっか~。いやぁ、話には聞いてたけど本当に良い子みたいだね。○○○(姪っ子本名)抱っこしても泣かないくらいだし」
姪っ子「きゃっきゃっ」
妹「もしかして、ドゥラメンテさんも○○○の面倒を見てくれたの?」
ド「面倒を見ていたかと言われれば答えに迷いますが……初めて出会って以降、時折こうして抱いていました」
妹「そっかぁ……お兄だけじゃなくてドゥラメンテさんにも迷惑を掛けちゃったか。本当にごめんなさいね」
ド「いえ、迷惑などと……私もこうした幼子と接するのは初めての事でしたので、とても新鮮な体験をさせて貰いました。ありがとうございます」
妹「そんなお礼なんて良いのよ、お礼を言わないといけないのはこっちなんだから。……それにしても、ドゥラメンテさんも随分と○○○のことを気に入ってくれたみたいで良かったわ」
ド「……はい、とても愛らしく思います。私達の子どものを顔を見るのがより一層楽しみになりました」チラッ
「……へっ?」
妹「あっ」
母「あらあらまぁまぁ……それならそうと早く言いなさいよ」
「えっ……あっ、いや違うぞ!?これはそう言う意味じゃなくて!只の言葉の綾だよな、ドゥラ!?」
ド「違うのか?私はとっくにそのつもりでいたのだが……」
妹「……やっぱりお兄も子ども欲しくなっちゃったんだ。罪な子だねぇ、○○○は」
母「名前を決める時は連絡を寄越しなさいね」
「だ、だから違うってば!!ドゥラのはそういう意味じゃなくて!!」
ド「何も違わない。私は君との子どもが欲しいのだが」
「良いから今は黙っててくれぇ……」
ド「???」
……この騒動の後、トレーナーの家族たちがドゥラメンテに向ける視線は大きく変わったそうな。
<FIN>















