寮の談話室。
スケッチブックとペンを手に真剣な表情で絵を描いているヒナ。でもってモデルになっているのは、テーブルに仰向けで寝そべっているペリーさんだ。
「一応聞くけど何やってんの?」
「アガサ博士にお菓子の型作ってもらえることになったの」
「あぁ!博士発明家だもんね」とアオコが納得するも、シホは「お菓子の型って発明家が作るものかしら?」と首を傾げていた。
「んでペリーさんの型?」
「ポルシェはほら、カエルチョコと被るでしょ?あと花の型と、猫の肉球の型に丸鯛、各寮の型とか作ってもらおうと思って」
そう言って向けられたスケッチブックには、色んな絵が描かれていて。これらが全て型になったらヒナは嬉々として色んなお菓子を作ってくれるだろうから、ありがたやと拝む。
「なんで拝まれてるの私?」
「ま、下心でしょうね」と言うシホに、「カイト、ヒナちゃんの事やらしい目で見てるの?」とアオコが目を吊り上げる。
「バカ言え、俺とハギワラ先輩を一緒にすんなよ!」
「一緒にはしてないけどハギワラ先輩の影響を受けてる可能性はあるでしょ!」
「おーいそこー、聞こえてるし俺仮にも先輩だよー」
「知ってます大丈夫でーす」
「いや大丈夫じゃないから!」
大人しくモデルとなっているペリーさんだったが、そのぷっくりと出たお腹をシホとアケミ先輩にプニプニ押され。
「ちょっとペリー太り過ぎじゃない?」
そう言って眉を寄せながらお腹を摘むシホ。
そんな事はないとペリーさんは首を振るが、
「ちょこちょこ寮生にお菓子もらってるし、この前はマツダのクッキー盗み食いしてたからな」
「ゼロそれ本当か?」
ぬっと現れたしかめ顔のマツダ先輩に、ペリーさんがマズイと逃げ出す。
「待てこらペリー!」
「ダイエットにちょうどいいわ。マツダ先輩そのまま追いかけ回して運動させて」
「それよか捕まえて腹絞ってやるぜ!」
「アイツなら本当にやりかねないな」と肩をすくめながら、フルヤ先輩がヒナのスケッチブックを覗き込む。
「へえ、ヒナは絵も上手いんだな」
「ありがとうございます」
「でも確かにこう見るとペリーのお腹出てるな。お菓子の型ならその分食べるところが増えるのはいいけど、リアルだと健康に影響を及ぼすか」
そう言って「班長」とダテ先輩を見ると、「任せとけ」とダテ先輩は部屋に戻り。しばらくして戻ってくると、『ペリーダイエット中』『餌禁止』『盗み食い注意されたし』と顔に似合わず達筆な字の貼り紙を貼っていく。
「ペリーさん談話室ねぐらにしてるから、外と違って快適だし運動する量も減ったのもある気がする」
「アオコの見解も一理あるな」
前はヒナや俺らにくっついて寮に出入りしていたペリーさん。しかし気づけば一匹で寮を出入りするどころか寮のソファーで寝起きし、完全に寮に居着いてしまったのだ。
「違法に捕まえられていたところを救出されてホグワーツに来た事を考えたら、さらに安全な寮の談話室を棲家にしようとするのも仕方がないわ」
と言うアケミ先輩は、ちょこちょこペリーさんに餌付けしている犯人の一人でもある。
助けて!とでも言うようにペリーさんがアケミ先輩の元に飛んできて、胸にダイブ。そのまま先輩のローブの中に隠れるペリーさん。
「こらペリーテメェ、男のくせに女に隠れてるんじゃねェ!」
「ペリーお前今アケミちゃんの胸にダイブしただろ⁉︎」とハギワラ先輩。
「そんなスケベ野朗出禁だ出禁!」
「二人とも落ち着いて」
「アケミも匿ってないで出せ!」
「私は別に」
「ちょっとマツダ先輩、お姉ちゃんに当たらないでくれる⁉︎」
ギャーギャーやり始めた四人をよそに、ペリーさんがこそっと抜け出しヒナの元に避難。ヒナの膝の上に座り、先輩達にバレないようにローブで前と言うか自分の姿を隠すペリーさんにアオコと苦笑い。
「ペリーさんって結構頭いいよね」
「頭って言うか悪知恵が働くタイプな」
一度組分け帽子を被らせてみたいなと思った。
*
ホグズミードの待ち合わせのカフェに行くと、すでにアガサ博士が来ていて。
軽く雑談し紅茶を飲んだ後、「これが注文の品じゃ」と大きな紙袋を渡してくれた。
「ありがとう博士!」
中にはシリコンと鉄で作ってくれたお菓子の型が。
「このペリーさんすっごく可愛い!」
「ニフラーは可愛いからのう。とは言えわしはお菓子は作れんから使えんが」
「それなら製氷機にすれば可愛いし実用的だよ」
「おお、確かにそれはありじゃな!」
「大きいの一個浮かべるのもいいし、小さいのいっぱいでも可愛いし。フサエさんが遊びに来た時とか出してみたら面白いって喜んでくれそう」
「そ、そうかのう」とほのかに顔を赤くする博士。友達以上恋人未満のフサエさんは、魔法界でも有名なフサエブランドと言うブランドのデザイナーをしている。
「そうだ、博士これお礼のケーキ」
紙袋を渡すと「こりゃ嬉しいのう」と笑顔を浮かべてくれた。
「ヒナ君のお菓子は美味しいからのう」
「今回はショコラケーキにしてみた」
「ありがとう、食べるのが楽しみじゃ」
ちなみにただのショコラケーキではなく、オカラを使ったヘルシーケーキである。と言うのもシホちゃんはフサエブランドのファンで、両片思いのフサエさんと博士の仲も応援している。しかし、
「博士とフサエさんがくっついても、博士があの体じゃフサエさんが早めに未亡人になる可能性が高いわ」
と、博士にダイエットを指導していて。たまに抜き打ちチェックもあるらしい。
なので普通のケーキなんて渡したのがバレたらシホちゃんに怒られる可能性があるため、ヘルシーケーキにしたのである。
それでも味は昨日博士に作っているケーキを見て「俺はヘルシーケーキ作ってもらった事がない」と拗ねるジンに「ジンにヘルシーさいらないでしょ?」「ヘルシーは必要ないが、テメェの料理は全部食いたい」と言われたのでジンの分も作り、美味しいと言ってもらえたので大丈夫なはずだ。
博士と別れ、重たい荷物を魔法で軽くしながら村をぶらぶら。その途中、ランちゃんに遭遇。
「ヒナちゃん一人なの珍しいね。クロサワ先輩は?」
「ジンは魔法薬学をサボった罰で、スリザリンズ巻き込んで罰倉庫整理中。ランちゃんは?」
「私はお母さんの誕生日プレゼントを見に来たの」
もう買ったらしいので、ドリンクをテイクアウトして二人で公園に行きベンチに並んで座る。
天気もいいし青々とした緑が綺麗でとても心地よかった。
「ランちゃんのイヤリング可愛い」
両耳に飾られたクマの顔のイヤリング。テディベア風な顔でとても可愛い。
「ありがとう。さっき雑貨屋さんで見つけて買ったんだ。ヒナちゃんはそんなにいっぱい何買ったの?」
「これはアガサ博士に作ってもらったお菓子の型だよ」
「お菓子の型?」
見てもいい?と目を輝かせてくれたので、どうぞどうぞと見てもらった。
「わあニフラーの型可愛い!」
「それ一番の自信作です」
作ったのは博士だけど。
「こっちの肉球も可愛い!」
「それ肉球の出てるところにピンクのチョコ使って、それ以外を普通のチョコかホワイトチョコにしてお菓子作ろうかなと思って」
「それ絶対可愛い!あ、このお花の型……」
ランちゃんが目を止めたのは、桜の型だった。
「確かこれ桜だよね?」
「そうだよ、よく知ってるね」
どこか懐かしそうに、でもって嬉しそうに桜の型を見つめるランちゃんに、中身はアラサーの勘がビビンと反応。
「なるほど、クドウ君と桜にまつわる思い出があるようで」
「なんでわかったの⁉︎」と顔を少し赤ながら驚くランちゃん。
「恋のオーラが漂って来たから」
「恋のオーラって」
ますます顔を赤くするランちゃん可愛い。
「……昔ナーサリーに通ってた時にね」
私は通っていなかったが、ナーサリーとは幼稚園のことだ。
「お母さんの友達がたまたま日本に旅行に行って、お土産に折り紙をもらったの。その折り紙に桜の折り方が載ってて、作ってナーサリーの皆にこんなお花があるんだよって言ったけど、一部の男の子から嘘つき扱いされて。嘘つきは仲間じゃ無いって仲間はずれにされそうになったんだけど、そこにたまたま転入生だったシンイチが現れて、『それ日本の桜だろ』って言ってくれて。『見たことあるぜ、それ俺にも作ったくれよ』って嘘じゃないことを証明してくれたんだ」
「へえ、その年で桜見たことあったんだクドウ君」
「ううん」とランちゃんが首を振る。
「見たことがあるのはシンイチのお父さんで、シンイチはお父さんの持ってたポストカードを見たことがあっただけなの。私もそのポストカードを見せてもらったんだけど、ピンクでふわふわで綺麗だったけど、花の形は全然わからなくてね」
「でもクドウ君は、ランちゃんの作った花を桜だって言ってくれたんだ」
うんとはにかむ姿に、それでクドウ君を好きになったのかなと推理。
「桜はランちゃんとクドウ君の大切な思い出なんだね」
中身はアラサー、そう言うの大好きです。と言うことで閃きました!
「ね、この型使って桜のスイーツ作らない?でクドウ君に渡してそのまま告白しちゃうとか」
「えええええええ⁉︎」と顔を赤くするランちゃん。
「む、無理だよそんなの!」
「どうして?」
「は、恥ずかしいし、もし振られたらシンイチの傍に居られなくなるし……」
両片思いだからそんな心配は無用なのだけれど、まあ当人はわからないよね(私も散々見るからにジンと両片思いだったって、付き合った後で校内中から言われたし)。
「今のところランちゃん以外にクドウ君と仲良い女の子はいないし、そもそもクドウ君顔はいいけど色んな意味で色々やらかしてるからそこまでモテないし、振られる心配とかしなくても全然大丈夫だとは思うけど」
「それ安心していいのかな、色んな意味で」
苦笑するランちゃんだが、ライバルが増えるよりは全然いい。
「まあ告白はしないまでも、二人の思い出の桜を使ったスイーツを渡すのって結構ラブポイント高いと思うの!」
「ラブポイント……」
「ラブラブスイーツ大作戦ってことで、とりあえずやってみない?」
ランちゃんは少し考えるような表情をするも、すぐに勇気を出したように顔を上げ、
「うん、やって」
「やってやるぜそのラブラブスイーツ大作戦!」
突然背後から現れたマツダ先輩に、私とランちゃんはびっくりしすぎて「うわあっ‼︎」と驚きの声を上げてベンチから飛び上がってしまった。
にかっと笑顔で笑うマツダ先輩の側で、「こらマツダ、二人ともめちゃくちゃ驚いてるじゃんか」とハギワラ先輩が眉を下げる。
「びっくりしたあ」
「心臓止まるかと思った……」
「悪い悪い、面白い話が聞こえたからよ」
「面白い話って」
「ラブラブスイーツ大作戦、俺も参加してスイーツ作ってチハヤに渡すぜ!」
「ですよねー」とランちゃんと苦笑する。
ハギワラ先輩のお姉さんのチハヤさん。マツダ先輩はチハヤさんの事が好きで、事あるごとに「好きだぜチハヤ」「俺と付き合ってくれよ」とアタックしているのだ(なお成果は今のところ出ていない)。
「ランちゃんとジンペーちゃんを足して2で割ったくらいのアプローチがちょうどいいんだけどな」
「何言ってんだよハギ、男は押して押して押しまくるもんだろ!」
「いやだから、ジンペーちゃんは押しすぎなんだって!」
「て言うか先輩お菓子とか作ったことあります?」
「ないから俺でも作れそうなお菓子でチハヤが喜びそうなもの教えてくれ!」
無茶振りにもほどがあるとため息が出たのは当然のことで。
いやでもこの前のモロフシ先輩もそうだけど、食欲モンスターが自分で作るって言い出しただけ成長だから喜ぶべきか。
「見てろよ、俺の新たな一面をチハヤに見せつけて今度こそOKの返事をもらってやるぜ!!」
闘志溢れる先輩の姿に苦笑いしつつ、ハギワラ先輩を見張りにして後日お菓子教室をやる事が決定した。
___
「面白そうな話が突然面倒な話になったな」
おろし大根をかけたホッケの開きを食べながら眉を下げるジン。
「否定はしない」
「つかあの男にお菓子なんて作れるのか?」
「まあ比較的簡単なお菓子はいくらでもあるから大丈夫。多分」
疑いと心配を乗せた顔のジンだが、マツダ先輩はあれでも器用だからモロフシ先輩よりセンスあるんじゃないかなと若干思っている。
「どうせなら先輩の方のお菓子もお花使おっかなあ。チハヤ先輩なら紫と黄色のビオラか薔薇かな」
「花って食えるのか?」
「食べれる花と食べられない花があって、食べられる花はエディブルフラワーって言うの。桜もクマリンって言う成分があって大量に食べたりしたら軽い中毒症が起きるんだけどね。あと正直美味しくないし。でもランちゃんの思い出のお花だから、美味しく可愛く使っちゃう!」
何を作ろうかと、何気に私の方がわくわくしている。
「どっちかがさっさと告っちまえばくっつくのにな」
「もどかしいよねえ。まあアオコちゃんとカズハちゃんもだけど」
「どいつもこいつもグジグジしてるからな。とは言え恋人なんざ100年早い奴もいるから、俺としてはしばらくこのままでもいいが」
若干悪どい笑みを浮かべるのでコラコラと嗜め。
「皆が両思いになったら、ダブルデートとかトリプルデートとかできるでしょ?」
「せっかくのデートなのに何が悲しくて他の奴らと組む必要がある。デートはテメェとだけで十分だ」
そう断言されて嬉しくないはずはないが、それはそれ、これはこれ。
「て言うかランちゃん可愛いし狙ってる男の子結構多いのに、クドウ君気づいてるのかな?」
「アイツの大好きなホームズも恋愛ごとに関してはさっぱりだからな。間抜けにも別の男に横取りされたら、それはそれで面白いが」
「ジン今度暇な時、クドウ君のこと突いて焦らせて」
「アイツと色黒はそれで焦って行動に移しても、結局空回って終わるだけだと思うが」
「ハットリ君はどう足掻いてもそれだけど、クドウ君はワンチャンあるはず!」
どうだかなと首を傾げられたが、クドウ君はやる時はやれるはず!……だと信じたい。
___
大量の型を作ってもらったならば、さっそくその型を使いたくなるもので。ついつい羽目を外して全部の型を使ってしまった為、大量のお菓子が出来上がった。
「この滑らかな車チョコ美味いな」
「そのチョコ、ポルシェって言うの」
「ドイツの車か」
「うん、蛙チョコはまんまパクリになるから。でもこっちも結構可愛いでしょう?」
「あぁ。俺としてはこっちも好きだがな」
寝そべりペリーさん型のフィナンシェに目を向けるジン。
「腹の出具合がよく似てる」
「これペリーさんの前で食べたらどんな反応するかな?」
「たまに出るテメェのそう言うところも俺は好きだぜ?」
そう言うところってどう言うところ?と思いつつ、美味しそうに食べてくれるジンが可愛いので気にしない。
ジン一人では食べきれないスイーツを紙袋にしまい、ジンに寮まで送ってもらって談話室に。
「お菓子大量に作ったけど食べたい人いるー?」と聞くと秒で寮生達が駆けつけて来て笑った。
「何このペリーさんのフィナンシェ超可愛い!」
「こっちの寛ぎペリーのチョコも腹具合最高だぞ」
「お、これポルシェじゃん」
「このお花型のクッキー可愛いし美味しい!」
どれも売れ行き好評で満足満足。でもってシホちゃんとアオコちゃんは猫足チョコを見つけて可愛い!と目を輝かせていた。
ダイエット中のペリーさんもやって来て、うるうるとこちらを見上げてくるので「今日のノルマのウォーキングが終わってるなら食べていいよ」と言うと嬉しそうにペリー型のフィナンシェに齧り付き。
「共食いと言う概念はないんだな」とダテ先輩が苦笑していた。
「皆に美味しく食べてもらえたところで」
あらかたお菓子がなくなったところで微笑む私に、全員が嫌な予感を覚えたようにこちらを振り返り。
「あ、私女の子には見返りは求めないから大丈夫」
ホッと女子達が胸を撫で下ろす中、「つまり男子には求めるって言うこと?」と眉を下げるモロフシ先輩。
「求めるって言っても大したことじゃないです。ただクドウ君を焚き付けてもらえればいいだけなんで」
「クドウ君を焚き付ける?」
「最近ランちゃん可愛くなったよなあとか、ランちゃんに告白したいって男子がいたとか言って、焦らせて欲しいんです」
あぁなるほどと意図を理解してくれたけど、すぐに全員顔を渋め。
「僕達が焚き付けたところで、効果あるかな?」
「俺はないと思うけどな。いや彼も焦りはするだろうけど」
「だからと言って安直に告白なんてできるようなタイプには見えないな」
ダテ先輩の意見に全員うんと頷き返す。
「そんな事は百も承知ですけど、クドウ君ならまだワンチャンあるかもしれないと私は信じてるんです!」
「クドウは、って事は、ハットリの事は信じてないって事か」
「逆に聞くけど、彼のその辺を信じてる人なんているの?」
シホちゃんの問いかけに、しんと静まり返る室内。
「信じてないわけじゃないけど……なあ?」
「頑張る気持ちはあるんだけど、行動にすると空回るのがハットリ君だしねえ」
「多分今回もダメだろうな、って逆に信じる事はできるけど」
「なんかもう可哀想すぎるんで、効果がなくてもついでにハットリ君のことも焚き付けてあげてください!」
ハットリ君が可哀想すぎて思わずそうお願いすると、「まあそれはいいけど」とやるだけ無駄だろうなと言う反応だった。
 ̄ ̄ ̄
『八重桜とビオラ、スミレをお願い』
私のお願いに応じた『THE FLOWER』のカードが、桜の花を生み出してくれた。
「これが本物の桜の花?」
凄い凄いとはしゃぐランちゃん。
ビオラとスミレは一旦置いておき、桜の花を丁寧に洗ってから、キッチンペーパーで水気を拭き取る。
「これをーー」
「よっしゃ来たぜヒナ!花はどれだ⁉︎」
勢いよく開かれた扉から現れた、やる気満々のマツダ先輩。と、後ろにはすでにやれやれ状態のハギワラ先輩が。
「面倒だからマツダ先輩はあとでやろうと思ってたのに」
「んなのまとめて教えた方が楽だろ?」
相手によるが、来てしまったものは仕方ない。
「花の前にまずは手洗ってくださーい」
「おう!」
そのままビオラの花も丁寧に洗わせ、よく水気を切る。
そして用意したのはハケと卵白。
「二人とも、花びら一枚一枚にこの卵白を塗ってください」
「花びらに卵白?」
「花びらが重なってるところとかにも、塗り残しがないようにお願いします。あと薄すぎず濃すぎずムラのないように」
「む、難しそう」とランちゃんが眉を寄せるも、先輩はやる気満々なので「やってやるぜ!」だ。
細かい作業が得意なので、真剣な顔で卵白を塗っていける先輩。ハギワラ先輩も少しやりたそうにしていたので、スミレを洗って一緒に塗る事に。
「こんな小さい花に何か塗るなんて、妖精にでもなった気分かも」
ふふっと笑うランちゃんに、「わかるわかる」と頷くハギワラ先輩。
「でもスミレの砂糖漬けってこんな風に作るんだな。たまに食べるけど、砂糖にただ漬けてるだけだと思ってたぜ」
「卵白は花に砂糖をくっつける接着剤と、薄い花びらを保護して形を綺麗に保つコーティング、それに乾燥後に湿気を吸いにくくして日持ちしやすくなる役割があるんです」
「へーそうなんだ」
「知らなかった」
そんな感じでお喋りしながら卵白を塗り続けていると、扉が開きジンが入って来た。
「……奇妙な絵面だな」
揃って花に何かを塗っている姿はとても奇妙なのだろう顔を顰めるジンに、「ジンもやろう」と誘った。
案外こう言う作業が嫌いじゃないジンがちまちまと卵白を塗りながら、「砂糖漬けを渡すのか?」と訊ね。
「砂糖漬けを中に閉じ込めたババロアにしようかなと思ってる」
「ババロア?」
「白いババロアの上に砂糖漬けを乗せて、その上を透明のゼリーにすると砂糖漬けが透けて見えておしゃれでしょう?」
「それ素敵!」とランちゃんが目を輝かせ、「へえ、中々洒落てるじゃねえか」とマツダ先輩も口元を吊り上げる。
卵白を塗り終えた花をグラニュー糖の上に置いて、全体に満遍なくまぶす。それをクッキングシートの上に並べて、風通しのいいところで一晩乾かさなければならないので小窓の前へ。
「花小さいから吹き飛ばないかちょっと心配かも」
「あぁ、今日ちょっと桜強いもんね」
確かにそれでせっかくの花が吹き飛んでしまえば台無しだ。どうしようかと考え、そう言えばとクロウカードーー鎖に縛られている翼の盾の『THE SHIELD』を取り出した。
『クロウの創りしカードよ。この花を守れ』
THE SHIELDが花を守るようにふわりと現れすぐに消える。
「何か出たけど魔法かかったのか?」と言うマツダ先輩に花に手を伸ばして貰うと、「イテッ!」と弾かれ。
「ちゃんとかかってますね!」
「俺で試すな!」
「て言うか前から気になってたんだけど、そのカード何?」
「秘密です」
「シンイチ達も気になってたよ、そのカード」
「なおさら秘密」
探ったところで何もわからないだろうけどね。
お茶とお菓子で一服し、皆でぞろぞろと寮までの道を歩き。ランちゃんと別れてすぐにクドウ君と鉢合わせた。
「ちょうどよかった、ランどこにいるか知らねぇか?」
「ランちゃんなら、さっきまで俺達といたぜ」
ハギワラ先輩の言葉に「え」とクドウ君が少し驚いた顔をした為、「あぁ、俺達二人と楽しーくお喋りしてたところだ」とのっかるマツダ先輩。
この二人が組んだら頼もしい!となったのも束の間、窓の外にチハヤさんがいるのを見つけたマツダ先輩が「チハヤだ!」と窓に飛びついてしまった。
「ま、まあ話してたのはほとんど俺だけど」
「……ハギワラ先輩とランと、何そんな楽しくお喋りすることがあるんですか」
「色々あるよ〜。だってランちゃん、可愛いし優しいし、うちの寮の男子からも大人気だもん。確かスリザリンでも人気があるんだよな」
話を振られたジンが「俺はヒナにしか興味がないが、談話室でよく話題にあがってるぜ」と応じてくれた。
「ランちゃんが彼女だったら幸せだろうなあ」
「ア、アイツはやめといた方がいいですよ!」
慌てて止めに入るクドウ君に、思わず笑いそうになるのをぐっと堪える。
「どうして?」
「いや、それはだからアレですその……ほ、ほらアイツ空手使うから危ないし!」
「うちの寮にはゼロがいるんだから、ランちゃんの空手なんて可愛いもんよ」
そりゃそうだとしかならず、次なる言い訳を必死に考えるクドウ君だが、
「それとも、俺がランちゃんに告白でもしたらクドウ君困るの?」
「え、い、いや俺は別にっ」
「へえ、じゃあ俺が告白してランちゃんと付き合う事になってもいいんだ?」
「そ、それは……」
全身から発せられる絶対嫌だオーラに、ジンも笑いそうになるのを我慢していた。
「まあどっちでもいいけど、もしランちゃんが気になるなら、うちの寮生はジンとヒナちゃんのラブラブっぷりを毎日見せつけられてるから、早く告っちまわないと手遅れになるかもな。それが嫌なら」
と、マツダ先輩の方に顔を向け。
「愛してるぜチハヤ!俺と付き合ってくれー!」
窓から叫ぶマツダ先輩の姿に「マツダを見習ってさっさと告っちまうんだな」とアドバイス。
「いやいやいやいやアレは無理!」
ブンブン首を振るクドウ君に、私も「流石にあれはちょっと」と苦笑。
「まあアレはちょっと行き過ぎかもしれないけど、アレくらいの勢いがないと告白なんてできないぜ」
「いやもっと普通にできますって!」
「ハッ、できねえから今の今まで片想いしてんだろうが」
チハヤさんからこちらに顔を戻したマツダ先輩の言葉に、事実なので反論できないクドウ君。
「情けねえ。男なら当たって砕けてみろってんだ」
「砕けたら嫌じゃないですか!」
「バーカ、砕けたらまた当たって、OKもらえるまで何度も告り続けるんだよ!」
男って言うのはな、と語り始めるマツダ先輩。とても面倒くさそうなモードに入ったが、通りかかったハットリ君とカイト君もそこにぶち込み、男として一皮剥けるよう祈りながら私とジンはその場を後にした。
*
翌日にはお花はきちんと乾いており、桜の花の砂糖漬けはふんわりと丸みがあるものの上品さを持った甘い味がした。
ビオラの方は花びらが薄い為、シャリっと砂糖の食感が。スミレの方はビオラに似ているけれど、もう少し繊細で角の取れた甘みがあり。ふわりとスミレの香りが口の中に広がっていく。
「どれも美味しいね!」
「うんうん大成功!でもーー」
微妙な顔のランちゃんに、気持ちはわかるとビオラを見る。
私達が作ったものは、上手くできたのもあるけれど、卵白のつけすぎで砂糖ががっちりついてしまったものや、逆に薄すぎて砂糖の付きが悪いところもあり。なのにーー
「「マツダ先輩のビオラの砂糖漬け綺麗すぎる!」」
先輩が作ったものは皆均等に砂糖が付いていて。薄雪を被ったような色とりどりのビオラがとても綺麗だった。
「こんなもん、俺にかかれば朝飯前よ!」
へへんと得意顔の先輩に、「マツダ、こう言うの本当に得意だもんな」とハギワラ先輩が感心するが、先輩が作ったものも中々綺麗だけど。
「うちの学校の男子って、何気にセンスあって器用な人多いんだよねえ」
「コイツのは確かに綺麗だが、テメェらのもちゃんとしてるし問題ねえ」
「それに砂糖が付きすぎちゃってるやつの方が可愛いし、砂糖いっぱい食べれてラッキーじゃんか」
お気遣い男子二人にありがとうとお礼を言う。
気を取り直してクッキングタイムに入り、腕を捲ってやる気満々のマツダ先輩。
「まずはお鍋に水とグラニュー糖を入れて火にかけ、グラニュー糖を溶かし混ぜながら70℃くらいまで加熱」
私がお手本を見せ、ランちゃんと先輩が続く。
いい感じに溶けたら火を止め、ふやかしておいたゼラチンを溶かし混ぜて、ボウルに移して氷水に当て冷やす。
「ランちゃんは桜の型で、マツダ先輩は何の型使いますか?」
「バイクの型とかあるか?」
「ないですし色気もない。花で勝負するなら余計なことはせずに丸がいいかと」
「ならそれにする」
スミレの分は余った型に適当に入れる事にする。
一二センチほど型の中に流し入れ、空気が入らないように気をつけながら裏側を上にしてお花を並べていく。
「これ完成してからじゃないと出来上がりが見れないってことだね」
少し不安そうにしながらお花を並べていくランちゃん。
「私とランちゃんは一色だから、変な仕上がりになる事はほとんどないと思う。マツダ先輩のビオラの方がカラフルだからセンス問われるけど」
マツダ先輩の方を見ると手を迷わせる事なく真剣な顔で花を並べているので、多分大丈夫だろう。
できたらゼリー液を花びらの裏にかぶせるように押し、冷蔵庫で数十分冷やす。
固まったら残りのゼリー液を注ぎ、再び冷蔵庫で一時間ほど固める。
洗い物してから冷たいアイスコーヒーで休憩し、今度はミルクゼリーを作る事に。
お鍋に牛乳と生クリーム、グラニュー糖とバニラオイルを数滴入れて火にかけ混ぜ混ぜ。
先ほどと同じようにゼラチンを溶かし混ぜ、ボウルに移して氷水に当てて冷やす。
冷蔵庫から固まったゼリーを取り出し、そこにミルク液を流し入れ、再び冷蔵庫へ。
「夜にはできてるから、夕食後にでも確認しよう」
「おう!モウリはその間に告白のセリフでも考えとけよ」
「な、だから告白はしないですからっ!」
顔を真っ赤にするランちゃんに青春を感じつつ、一旦この場は解散に。
「ランちゃん上手くいくといいなあ」と紅茶を啜ると、ジンは「今も上手くはいってるだろ」と言う。
「問題はどっちが根性を出す事ができるかだ」
「根性って言うか勇気じゃない?」
「ニュアンスが違うだけで一緒だろ?」
「まあそうだけど。後一歩、勇気が踏み出せる魔法とかあったらなあ」
難しいなと眉を下げる私に、「テメェのその優しさだけで十分だろ」とジンが頭を撫でてくれ。
「それに、あれだけはっぱかけられて告白の一つもできないような根性なしなら、見切りをつけてやるのも手だぜ」
「そうやってすぐ諦めさせようとする」
唇を尖らせるも、ジンは「そんなことはねェ」と否定する。
「友人思いのテメェを悲しませるような真似はしねェよ」
「スリザリンズへの友情はよくわかんないのに、私の友情にはまともなのはどうして?」
「だからアイツらは友達じゃねェって言ってんだろうが」
途端に顔を顰めるジンだが、私と一緒にいない時は一人かスリザリンズといるかのどちらかなのに、これで友達じゃないはだいぶ無理があるんだけど。
(ホント、スリザリンってジンも含めてツンデレだよなぁ)
そう言う人の方が案外情が深いから、多分仲間のピンチにはなんだかんだ言いつつ一番に駆けつけるんじゃないかな。多分。
 ̄ ̄ ̄
夕食はジンも好きなハヤシライスを作り食べていると、「ランいる⁉︎」とソノコちゃんが飛び込んできた。
「ノックしろ」
「ランちゃんなら3時ごろ別れてからみてないよ?どうかしたの?」
「ランがどこにもいないのよ!」
「どう言うこと⁉︎」と思わず立ち上がる。
「夕食の時間になったのに現れなくて。昼間ヒナ達と一緒にいたのは知ってたからてっきり夕飯一緒に食べてるのかなと思ったんだけど、食べ終えてからマツダ先輩に声を掛けたら、3時ごろ別れたからヒナ達とはいないはずって言われて確認しに来たの」
「と言うことは、もう4時間以上行方不明と言うことか」
ランちゃんが何も言わずに居なくなるなんてあり得ない。絶対に何かあったはずだと私達も一緒に探すことに。
「ラーン!」
「ランちゃんどこ⁉︎」
ハギワラ先輩とマツダ先輩とセラちゃん、それに話を聞きつけたハットリ君とカズハちゃんウォッカ先輩も加わり校内中を探すもどこにもいない。
「一体どこに居るんだラン君……」
「ホグワーツは危険な隠し部屋なんかもあるから、もしそこに迷い込んでたら大変だぞ」
ウォッカ先輩の言葉にカズハちゃんとソノコちゃんか顔を青くさせ。私もどうしようと何かいい魔法はないか考えてみるけれど、何も思いつかなくて。
そんな私の姿に黙ってジンが背中を撫でてくれながら、ん?と言う顔をして。
「おい、アイツはどうした」
「アイツって……あ、クドウ君も居ない!」
全員あっ!となる。
「クドウは確か、今日発売のホームズの関連本読む言うて昼からずっと部屋で本読んでるはずやけど」
「もしかしたら読み終えてランちゃんとおるかもしれん!」
寮に確認へ、となる前に「どうしたんだよ、お前ら」と現れたクドウ君。
「クドウ君、ランは⁉︎」
「ラン?いや俺さっきまで部屋で本読んでて、夕飯食べそびれたから厨房で屋敷僕達になんか作ってもらおうと」
そう説明した後、「ランがどうかしたのか」と顔を険しくさせ。私達はランちゃんが居ないことを説明した。
「先生達にランがいないって話してくる!」
「僕は他の皆に声をかけて」
「いや」と二人を止めたジンに顔を向けると、
「惚れた女の居場所くらいわからねェとなァ」
「ハッ、違いねぇ」
「男なら当然でしょ」
ジンとセンパイズの視線の先には、顎に手を当て考え込むクドウ君が。恐らくランちゃんの居場所を推理しているのだろう。
それからすぐにハッと顔を上げ駆け出し。私達も後を追う。
着いたのは四階で、魔法史の書物倉庫だ。
クドウ君が鍵を開けようとするものの開かず、「ラン!」と声をかけると「シンイチ⁉︎」と返ってきて。良かったとランちゃんが居たことに安堵するも、「扉が開かないの」と言う。
「鍵が壊れちゃってて」
「俺達に任せろ!」
マツダ先輩達が扉にタックルをするも、ホグワーツの扉なので物理的な効果はなく。誰か先生を呼んでこようと思ったが、「テメェ鍵あるだろ」と言われてハッとキーブレードを取り出し開ける。
ランちゃんの姿に今度こそ全員安堵に胸を撫で下ろし、よかったあと抱きつこうとしていたソノコちゃん達をマツダ先輩やハギワラ先輩達が物理的にストップさせ、代わりにジンがドンとクドウ君の背中を押し。クドウ君があたふたしながらも、「ぶ、無事で良かった」と微笑みかける。
ランちゃんは少し疲れた様子で目に涙の跡もあったが、嬉しそうにクドウ君へと微笑み返し。
「でもクドウ、どうしてここに姉ちゃんがいるってわかったんや?」
「イヤリングだよ」
「イヤリング?」
「この前ランが買ったイヤリング、右耳だけ外れやすいみたいだったから、もしかしたらどこかに落ちたのを探しに行って戻ってこれなくなったのかもと思ったんだ」
驚いたようにランちゃんが目を見開く。
「ど、どうしてイヤリングが片方落ちやすいってわかったの?」
「よく右耳のイヤリングを触って、耳についてるか確認してるみたいだったから、外れやすいんだろうなって思ったんだよ。
昼間はヒナといたし、朝は耳にイヤリングがあった。でもって借りた魔法史の本を返さないとってランが朝言ってたのと、ここの鍵の調子が悪いってビンズ先生が前に言ってた事を考えると、ここに閉じ込められている可能性が高い。それでここに来たってわけだ」
全員なるほどなと納得。
「シンイチって私の事よく見ててくれてるんだ」
嬉しそうにはにかむランちゃんに、クドウ君の顔が赤く染まり。
良い雰囲気になったところで、すっと我々お邪魔虫は退散。
「いっそ二人ともあの部屋に閉じ込めてやりゃよかったな」と言うジンに、「いいっスね!告白するまで開かない魔法なんてかけれたら最高ですけど」とウォッカ先輩。
「告白するまで開かない部屋か……」
めちゃくちゃ需要がありそうな魔法だなと考え込む私に、「そうでもしないと告白できないって言うのもなあ」とセラちゃんが眉を下げた。
 ̄ ̄ ̄
そのまま告白して来ることを期待していた私達だったが、空腹だった二人はそれよりも夕食の方が上だったようで。
残念と思いつつまあ仕方がないかと、多めに作っておいたハヤシライスを共に食べ(私とジンは食事の途中だったから)。
その翌日。授業終わりにババロアをお皿に開け、桜とビオラが映える綺麗な出来上がりに思わず感嘆の声が上がった。
「すっごい素敵!」
「これならチハヤもイチコロだぜ!」
「姉貴がイチコロかはともかく、めちゃくちゃいいじゃんどっちとも!」
「善は急げだ、待ってろチハヤ!」とババロアを乗せたお皿を手に部屋を飛び出して行ったマツダ先輩。
「マツダスプーン!流石の姉貴も手掴みじゃ食べないから!」
そう言ってスプーンを手にハギワラ先輩が追いかけていき、「本当に落ち着きのない奴らだな」とジンが呆れたため息を吐く。
「ランちゃんはここにシンイチ君呼ぶ?それとも外のテーブルセットに呼ぶ?」
「外にしようかな」
そっちの方がムードあるもんねと、いい感じにセッティング。その間にジンがクドウ君を強制連行して来て、邪魔者は調理室に退散。
「私達も食べよう」とすみれの花を閉じ込めたスイーツをお皿に開けると、嬉しそうにジンの瞳が輝く。
「テメェの作るババロアやプリンやパンナコッタなんかは、本当に滑らかで最高だからな。とは言え形がアレだが」
ペリーさんの型を使ったババロアなのだが、体部分はババロアで、お腹のところだけ花を閉じ込めたゼリーになっている。
「面白いでしょ?」と笑いながら紅茶を用意。白いババロアにすみれの濃い紫がとても綺麗に映えていて、食べるのが勿体無いものの手を合わせる。
「んっまい」
躊躇うことなくお腹をスプーンで抉って食べるジン。良かったと私も口に運び、見た目も味も大満足だ。
「ランちゃんとクドウ君も上手く行ってたらいいけど、どうせなら『THE FLOWER』のカードでお花いっぱいにするか、『THE DARK』で暗くさせてから『THE GLOW』カードで蛍みたいにロマンチックに演出してもよかったなあ。でもそれだと桜が見えにくいか」
「流石に食い物を光らせるわけにもいかねえしな。ま、好きな女が思い出を込めたスイーツを作ってくれるだけで十分だろ」
まあ確かにそれもそうかも。
良い雰囲気というかそのままグイッと告白まで行けてたらいいなあと思いながら、私もジンとお茶の時間を楽しみ。
それから一時間くらいして、ランちゃんが部屋にやって来た。幸せそうな姿にこれはまさかと期待するも、「告白は無理だった」と言う。
ちょっと残念だが無理にするものでもないので仕方がないけれど、クドウ君の方もしなかったのかと内心ため息。
「でもね、次の長期休暇に一緒にロンドンに行かないかって誘ってくれたの」
「ロンドン?」
「シンイチのご両親が行くらしくて、ユキコさん、シンイチのお母さんが私も一緒にどうかって言ってくれてるんだって」
まさかの家族公認!
「それは楽しみだね!」
「うん。桜のスイーツも凄く喜んでもらえたし、ヒナちゃんのおかげだよ」
ありがとうと笑顔でお礼を言われ、「ランちゃんが頑張ったからだよ」と返す。そのままランちゃんは帰って行き、「あのガキ、一丁前に告白場所を選ぶつもりか」とジン。
「ロンドンで告白ってなれば、やっぱりビックベンの見えるウェストミンスター橋かなあ。でも赤い二階建てバスの上でも素敵だし、教会とかもいいなあ」
いろいろと告白スポットが頭に浮かんで楽しいものの、
「でも」
「でも?」
「私達が見た夜光花以上にロマンチックなシチュエーションはないだろうね」
ふふっと笑う私に、ジンは「当たり前だ」と笑みを浮かべ。夜光花は毒性があって食べれないから、今度は夜光花をモチーフにしたスイーツを作ろうかなあと思っていると、部屋の扉がノックされ。
「どうぞー!」と応じると現れたのはユイ先輩。
「ユイ先輩、どうかしたんですか?」
「あ、あの……今そこで、ハギワラ君からお菓子作りの事聞いて、それで……」
もじもじと赤い顔をする先輩に、私はなるほどとジンと目を合わせて微笑み合う。
恋のスイーツラブラブ大作戦はまだまだ続きそうだ。
***
ヒナ
友達の恋全力で応援し隊員。
ジン
自分の告白が一番ロマンチックだったと言われて内心めちゃくちゃ嬉しかった。
ラン
お菓子作りは楽しいしシンイチとの仲も深まり幸せ。
シンイチ
ちょい焦り気味だけどロケーションは選びたい男。桜スイーツめちゃくちゃ嬉しかった。
マツダ
美味しく食べてもらえたけど告白はいつも通りにあしらわれた。
ハギワラ
ジンペーちゃん、廊下のど真ん中でスイーツのプレゼントはないって。
ペリーさん
お腹ぷよぷよ掴まれるから、美味しいおやつの為にもしぶしぶダイエット。皆構ってくれるし甘やかしてくれるからハッフルパフ大好き。
ユイ
私もカンちゃんにスイーツを!とやる気満々。作者的にはその後カンちゃんも同じようにスイーツ作りに習いに来てもよし。
ウォッカ
「俺も花のスイーツ作ってプレゼントしようかなあ」
作者
当然の訃報に未だメンタルぶっ壊れてて更新遅れましたすいません。
すぐに戻って来るだろうと、来年の映画はいつもの蘭で観れるだろうとこれっぽっちも疑ってなかったから本当にショックで。コナンの映画追加で観に行きたいけど、多分観たら号泣しそうな気がするので観にも行けない。
急遽予定していた話から蘭の話に変えたけど、全然心の整理つかないや……
長い間本当にありがとうございました。






















