最近は何処に行っても盗難がとにかく多い。だからチャック式の物でなくフレーム式のほうがいいーそうネットで出てきて買ったスーツケースは、シアンに金属部分のシルバーがよく映えていた。それを引きずって入ったのは、随分と場違いなバーだ。
行きつけのここは、一人の時からよく行っていた。いつもはちゃんとフォーマルなワンピースを着るし、それなりに見た目も気を使う。だが今の私は仕事後のスーツ姿で髪もヨレヨレだ。
カウンター席に座ると、見慣れたバーテンが私を見ておや?と目を細める。そこで「ブルームーン」と言えば、私の置かれた状況を察する事はいとも容易いだろう。
ブルームーンのカクテル言葉は「完全な愛」、そして、「叶わぬ恋」。
一度は実った私の恋だけれど、そんなものはいとも簡単に崩れてしまうのだと初めて知った。…そういえば、最近は元彼とここに来た事しかなかった。もう一緒に来る事は死んでもないんだろうけど。
そのままやって来たブルームーンを飲むと、ジンとレモンの爽やかさが胸の中いっぱいに伝わっていった。
…隣に感じた気配に隣をチラッと見ると、いつから居たのかとても長い銀の髪が映った。モデル顔負けの顔はさぞモテる事だろう。その彼の唇が動いたと思ったら、「失恋か」と言われてギョッとした。周りに人は私しか居ないから間違いない。
「…何でそんな事初めて会った人に言われなきゃいけないの」
「イイ女が一人でそれを飲んでいるんだ。話しかけたくもなるだろう」
イイ女!?と顔が真っ赤になりそうなのを我慢しながら、「その一言目が最悪」と返した。
「確かに貴方の言う通りだけど…」
「それを飲んでるやつがよく言うぜ」
そう言われてしまえば返す言葉もなく、「睨むな」と言われてしまった。
「それで、そんな傷ついた私に話しかけてくれる心優しい男性は何が目的なのかしら?」
「女が1人で飲んでるんだ、話を聞いてやるのが心優しい男だろう?」
もう何も返さず睨み続けると、男は機嫌がいいのかククッと笑った。
「別に聞いてもらう必要はないわ。それだけなら帰ってもらえないかしら」
「ここに居てよく言うぜ。誰かに埋めてほしいんだろ?」
「何をよ」
「寂しさを、だ」
そう言って私の手の甲を撫でる姿はとてもセクシーで。そもそも強がってはいるものの、こんなに素敵な人の誘いを断れる人などいるのだろうか。
「…貴方がそれをするって言うの?」
「不満か?」
「それは…」
更に私の耳元で「ダメか?」と囁かれてしまっては、もう。
(そもそも私を捨てたアイツが悪いし。それよりイイ男性を見つけたんだから、着いて行った方がいいじゃない!)
そう意を決して言う。
「…埋めてくれるの?」
「ああ」
「じゃあ、お願いしてみようかしら」
そうあくまで余裕そうに言うと、彼は札を取り出して置く。え、もう!?と思ったが冷静な女はここで静かに立ち上がるのかもと思いブルームーンを飲んでから立ち上がった。陰でバーテンがグッのポーズをしているのを見ながら。
ーー
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主人公
浮気されてショックを受けているところをジンに拾われた。経験は皆無なのでこれからジンに翻弄される。
ジン
バーに寄ったらいた女が気になった。失恋してるのに妙に強がってるし、組織の女と違ってガチで強いって訳でもなさそうだから付け込んでお持ち帰り。これから自分好みに仕立てる。
彼氏
主人公は自分の事を好きでいるだろうと思って浮気したがフラれる。この後主人公とジンが一緒にいるところを見て項垂れつつ、寄りを戻そうとしてジンに追い返されるーかもしれない。
バーテン
ただのいい人。
おわり


















