Novel10 days ago · 1.5k chars · 1 pages

うなずけば

タチバナ ユズルタチバナ ユズル

映画で、ディンがちっちゃい望遠鏡を覗いたあとグローグーにも渡すとこいいよねー、と友達と話したのを思い出して。ディンが、小さなグローグーを一個の人格として扱い続けて一瞬たりとも侮らないところ、本当に好きです。 台風なのでさすがに今日は短めに済ませました。皆様もお気をつけて。

よく晴れた日だった。マンダロリアンの隠れアジトの水辺で、小型の望遠鏡を持ったディンがグローグーに偵察の重要性を説いている。ボ=カターンが、やや離れたところからその様を眺めて。
 ディンがグローグーに説明して曰く、偵察の最大の目的は敵に見つかる前にこちらが敵を発見すること。その兵力や装備を安全な距離から察知し、先制攻撃に有利な情報を得ることである。
 ディンは望遠鏡で水平線を覗く素振りを見せ、今度は小さなそれを実際にグローグーに持たせながら、淀みなく幼な子に語り続ける。広大な景色をただ見ても何にもならない、観測範囲内の目立つ地形や建物などをあらかじめランドマーク<基準点>として設定しておき、味方と共有することが重要で――とそれが聞こえるボ=カターンにも、なんならこの土地にいる数多のマンダロリアンたちにとってもいちいちごもっともなディンの戦術説明の一端であったが、いささか長たらしすぎないだろうかとボ=カターンには思える。
 彼女の目にも、ディンの口上の長尺さにグローグーの気が途中から逸れているのがわかった。小さな手で望遠鏡を矯めつ眇めつ眺めてはいるが、それは明らかに幼児が新しいおもちゃを手に入れた時の眼差しである。
「彼はわかっているの?」
 説明の切れ目を待って、歩み寄ったボ=カターンが見かねたように聞いてみる。振り返ったディンは、
「グローグーにはわかってる」
 と、はっきり即答した。……だがまあ、と間もなくちょっと肩をすくめるそぶり。傍らで、望遠鏡を頭上に掲げてくるくる振り回して明らかに「遊んで」いるグローグーに。
「一度言って全てが伝わる、とは思ってない」
 ああそう、と自然な返事をしつつ、ボ=カターンは内心少しばかり安堵している。この男、本当の本気で我が子へ懇々と教え込んでいるようにも見えるので、そこはわかってはいるのね、と。
「反復だ」
 と、ディンはシンプルに呟く。グローグーはしばらくおもちゃにしていた望遠鏡を、徐に覗き込む。そして存外に、見える景色に夢中になりだしたようだった。
「繰り返せば、いずれわかっていく」
 宇宙船の操縦席のボタンは押し放題だし、食べ物となると目がないがな。付け足されるぼやきに、ボ=カターンは微笑む。
「今は完璧ではないでしょうね」
「だがグローグーは必ず理解できるし、やれる」
 そう確信した声の、頑強にして、人肌の温かさが宿った響き。

 グローグーはディンを見ている。自分に真摯に語りかけるディンを。
「グローグー、お前は幼く小さい。だがそれはなんの問題にもならない」
 ――“大きさは問題ではない“。かつてディンと離れてルーク・スカイウォーカーに師事していたとき、ルークの口を通して語られたヨーダの言葉とディンのそれがグローグーの中で響き合う。
「小さなお前を、敵は侮りもするだろう。だがそれに憤るな、むしろ徹底的に利用するんだ」
 グローグーは耳を傾け続ける。ディンはグローグーを信じている。
「お前が小さくて何もできないと見くびる敵ほど、先手を取りやすいものはない。侮られたならそれこそ好機、お前の尊い力が発揮される時だ」
 ディンと出会って、世界がグローグーに語りかけるようになった。語る声に応えれば、また何らかの形で声は返ってくる。そうして交信を繰り返すことを通じ、グローグーは昨日より成長する。ディンは、グローグーを、信じている。
「存分にやるんだ、グローグー。その間、俺がお前を守ってやる」
 グローグーは、こっくりと頷いた。頷けば頷き返される、その呼応を確かめるために。

— End —

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