俺の記憶が戻ったのは彼女から妊娠の報告を受けたときだった。
いや、言い方がおかしいか。俺自身、毛利小五郎としての記憶はちゃんと幼少のころからある。
もう1人の俺、前世の俺といったほうがいいのか。その記憶が突然入ってきた。
急にそんなことがあって挙動不審にならない訳がない。
そのせいで彼女には余計な不安と心配をかけてしまった。
順番は逆になってしまうし、雰囲気もあったもんじゃなかったが彼女にはプロポーズした。
ずっと言おうと思っていた言葉を。
「おまえのことが好きなんだよ。この地球上の誰よりも」
顔を真っ赤にした彼女は可愛かった。彼女の返事はYES。嬉しくて力いっぱい彼女を抱きしめた。
だが、その後に地獄と天国が待っていた。
彼女、妃英里の両親への挨拶は正直記憶がないし、一緒に暮らし始めてから英理の料理がここまで酷いものかと慄いた。
娘、蘭が産まれたときは泣いた。こんなに可愛いなんて思いもしなかった。産んだあと英理にも問題がなくて安心した。
そんなこんなで妊娠発覚から、結婚、出産までがあっという間で、並行して大学、警察学校、新任警官としての務めと怒涛に時間は過ぎていった。
やっと生活も仕事も一段落して、少しずつ今の俺のこと、前世の俺のこと、両方をまとめることができるようになった。
どうやら前世の俺も警察官だったらしい、そして俺が今生きている世界は漫画として有名なようだ。
俺、毛利小五郎はへっぽこ探偵だったがあるときから、 眠りの小五郎として有名になる。
警察官は英理の助け方が問題となり辞職したらしい。
そして夫婦仲はあまり良くなく別居中。
高校生となった蘭が家事を学生なのに全て担っているようだ。
正直これにはふざけんなと言いたい。
前世の俺は3人兄弟の長男で、家事がそこまで得意ではない母親と一緒に家事をしていたし、弟達の相手もしていた。
その経験が記憶はなくとも自然と今の俺にも刷り込まれていたようで、もともと料理は得意で英理の料理が独創的と知ってからは俺が率先してやってるし、英理には子どもがいるからと舐めて掛かってくる同業には遠慮してほしくなくて、弁護士としての活躍を応援するためにも時間が許す限り蘭の世話もしてる。
今のところ夫婦仲は良い。
これからのことは分からんが、仮に別居となっても蘭に家事を全部任せることはない!
ただこの記憶があって良かったと思ったのは未来が分かる、対処すればいい方向に進めることができるのではないかということだ。
記憶通りのことが起こるかもしれないし、起らないかもしれない。記憶と事柄を合わせるのは大変だし、1人では確実に無理だ。
不自然にならないように協力してくれる人達を探さないといけない。
それでも愛する妻と娘を守るためにはやらないといけない。
主人公と言われるのが高校時代の同級生の息子で、将来娘の恋人になるであろう奴であっても、奴と関わることで死神と揶揄されるようになっても、何回も麻酔で眠らされるようになってもだ!
ーーーーーーーーーー
あれから数年が経ち俺は警官を辞めた。
英理は関係ない。調書を取るときに拳銃はいらない、置いていくの安全性を強調し推奨しておいた。
その結果、数年後に犯人が隙を突いて逃げる事案が発生したが、一緒にいた警官は武器になるようなものを持ってないため逃げるだけとなり、難なく再逮捕となった。
辞めた理由は警部補として本庁で調べられることは調べ尽くしたからだ。一介の警官なんて限界がある。
職場には一身上の都合、英理には個人で調べたいことがある警官では限界があり、私立探偵をすることを素直に話した。調べたい内容を知りたがったが、命の危険性があるとだけ伝え別居をお願いした。
正義感の強い英理はようやく渋々了承してくれた。
蘭には変に怖がらせる必要もないかと、別居については今後も家族として仲良く暮らしていくための準備期間と説明した。そしたら蘭のやつ高校生になった途端に俺の生活が心配だから俺と住むと言い出した。
俺としては英理と暮らしてほしかったんだが、誰に似たのか意見を変えやしない。
そうなればやる事は1つ。
探偵事務所兼住居のセキュリティを揃えること。
あのメガネ坊主は至るとこに盗聴器だの発信機だの付けるみたいだからな。
そうしてあの記憶にある通りコナンが居候となり、事件現場で意識を失うことが増えた。
コナンが家にくるようになって本当に事件に遭遇する率が高くなった。現場では俺が目暮警部に死神なんて言われているが、本当はあのメガネ坊主だと声を大にして言いたい。
それにガワが小学生だからといって、蘭とひとつ屋根の下で生活してる状況がそろそろ限界だ。俺が。
江戸川コナン、安室透、沖矢昴が揃った今、そろそろ組織の息の根を止めてもらおうと思う。
一介の私立探偵の情報が自分達の持っている情報より有益だった場合どんな顔するんだろうな?
赤井捜査官に関しては優作さんや有希ちゃんが協力したのに、俺がバラすことになるんだ。
申し訳ないが、命には変えられん。
「蘭、英理に明後日の予定を聞いててくれないか。ついでに泊まってこい、しばらく行ってないだろう」
「何を急に。自分で聞けばいいじゃない」
「んなこと聞けるかよ」
「なになに?内容を教えてくれたら聞かなくもないわ」
「…2人で初めて行ったレストランが新装開店オープンするんだよ!予約も取ってある!」
「きゃーーー!!!なにそれー!早く言ってよ、お母さんに聞いてくる!その話も聞いてくるわ!」
キャーキャー言いながら探偵事務所を出ていく蘭。
その様子を呆れ顔で見ているメガネ坊主。
人言だと思ってるだろうが蘭は記念日とか祝われるの好きだからな。英理に似て。嫌われたくなきゃちょっとしたことでも覚えといたほうがいいぞ。
「おじさん。蘭姉ちゃんが泊まるなら、僕も博士のとこに泊まってもいい?」
「おう、いけいけ」
「じゃあ、行ってくるね!」
「コナン、博士んこに行く前に安室に今日バイトが終わったらここに来るように伝えてくれ。言っとかないといけないことがある」
「なに?依頼のこと?」
「いや全く関係ないな。あと博士んとこに行くなら、ついでに沖矢昴もここに来るように伝えてくれ」
「昴さん?!ここに!?」
「ああ、頼んだぞ」
何を話すんだと言わんばかりの表情だな。
今まで安室に話すことはあっても、沖矢昴をわざわざここに呼んで話すことはなかったからな。
考えろ考えろ。楽しいお話の時間だ。
ーーーーーーーーーー
コナンに伝達を頼んで数時間後、最初に来たのは沖矢昴。
沖矢の隣にはコナンもいた。メンツがメンツだ、話を聞きたくなるよな。
「博士のとこに泊まるんじゃなかったのか」
僕も話を聞きたいなーって、いいでしょ?おじさん」
「そうだな。当事者だし聞く権利はある」
「当事者?」
「ああ」
「それって、どういう…」
「すいません。毛利先生、お待たせしてしまって」
コナンの言葉を遮るように探偵事務所のドアが開き、安室が入ってきた。
まだバイトが終わる時間じゃないはずだが。
「コナン君達が上に行くのが見えたもので。僕に話があるということでしたから、早上がりさせてもらいました」
「そうか。まあいい、適当に座っててくれ」
各々が事務所にあるソファに座る。
コナンの隣に沖矢昴、机を挟んで反対側に安室。
それを見届けてから、俺は普段座ってるキャスター付きの椅子から、安室が座っているソファに座り数十冊のファイルを机に置いた。全員がそれを見る。
「毛利先生これは…」
「このファイルは俺が探偵になることを決めた、ある組織の情報をまとめたものだ」
「おじさん!これ!」
見てもいいなんて許可してないが、すでにファイルを手に取り中を見てる目の前に座るコナン。
自然と目で追ったのだろう安室も沖矢昴もそれを見て驚愕の表情をほんの一瞬だけ浮かべた。
それもそのはず、ファイルの中身は通称黒の組織である幹部達の写真や情報がびっしりと書かれているのだから。
「お前達が追っている組織幹部の情報だ。すでに数人死んじまってる奴もいるが」
「おじさん、どうして…」
「毛利先生。これはこんなとこでしていい話ではありません。あまりにも危険すぎます」
「なんだ安室も気付いてなかったのか」
「…それは、どういう」
「ここは完全防音、今はジャミングもしてある。事務所のドアを持った時点で盗聴器や発信機だけを壊す電流がいくように博士に作ってもらって設置している。密かに壁の中にあるコードと繋がってるんだが、安室が気付いてないということは今後もバレる心配はないな」
「おじさん。僕それ知らない」
「言ってないからな。どうせお前のことだ、ここがボロいから電波が悪いとしか思ってなかったんだろ」
「いやー、あはははは…」
「そういうわけだ、話を続けてもいいな?」
「そういうことでしたら…」
「さっきのコナンの質問の答えだが、俺が警官だったのは知ってるな。殺人、強盗、密輸それぞれ解決できるものもあるが100%じゃない。不審死やきな臭い事件はサッと上が回収しちまう。死んじまったやつにできる償いは犯人を捕まえることだけ、俺はそう思ってる。けど一介の警官にはできることに限界がある。縦社会ゆえに、上に逆らえないってやつだ。だから私立探偵になった。それで警官時代の回収されちまった事件を掘り返すと、ほとんどがこの組織にたどり着いたってわけだ」
「それにしても、なぜ私達に?追っているとは?」
「沖矢昴。そのファイルのどこかにあるはずだぜ。ライとバーボンの情報がな」
「!」
「!」
ババッとファイルを勢いよく捲る2人。沖矢昴と安室透。
ファイルを見ればお互いの知らないことを、知ることができるかもしれない。チャンスってことだ。そりゃ焦る。
「…ライ。これですね、FBI捜査官。赤井秀一。ニット帽に血糊を仕掛けキールが空砲を打ち死んだことを偽装。偽装死体は、自決した組織の構成員・楠田陸道。指紋も生前に彼に付けさせ、本人は指紋が付かないように細工していた。協力者、江戸川コナン。現在は沖矢昴として、工藤邸に住んでいる…これはどういうことですか?」
「なんのことでしょう?」
「それは後で好きなだけ言いあえ。今はこのファイルがいるか、いらないかの返事が聞きたい」
「でもおじさん。これどうやって調べたの?この情報あってるの?」
「どうやってって、自分で調べるしかないだろう」
「ですがこれには内部情報も書かれています。これを知るにはその場にいたとしか言えないですよ」
「その場にいたからな」
「ええ!?」
「毛利先生、それはあまりにも危険すぎます」
「安室。お前ともその場で話してるぞ」
「は!?」
「沖矢昴。お前とは一緒に仕事をしたこともある」
「ほぉー」
「待っておじさん!どういうこと!?全然分かんないんだけど!?」
三者三様、表現し難い顔で俺を見てくる。視線が刺さるってきっとこういうことを言うんだろうな。
チクチクなんてものじゃない、グサグサきてる。
そんな見なくてもちゃんと言うから心配するな。
「探偵坊主。お前なら分かると思うんだが、その場にいて安室にも沖矢昴にもバレない方法があるだろう」
「探偵坊主って…え?」
「コナン君どうだい?思い当たる節があるかい?」
「いや、えっと…?別人になる?変装…?…!母さん!…新一兄ちゃんの!そういえば、おじさんとは高校の同級生……」
「そういうことだ。有希ちゃんに教えてもらったんだ、英理経由でな」
「そんなこと一言も…」
「俺が教えてもらったのは警官のときだからな。尾行中、犯人に気付かれないように変装したいから教えてくれって。有希ちゃん、昔からそういうの好きだからな。快く教えてくれたな」
「………やりそう」
「それでも仕事を一緒にするのは無理なのでは?」
「俺はこう見えて秀才なんでな!」
「…警察学校で最初の試射で20発全弾ド真ん中に的中させた天才がいる、と聞いたことがありますが」
「まあ、そういうことだ。腕は落ちてねぇってわけだ。あと先に言っておくが、組織の仕事中に人を殺したことは断じてない。重傷くらいか?」
「おじさん、いろいろと隠しすぎでしょ…」
「毛利先生。詳しく聞きたいのですが武器の仕入れとか、その他もいろいろと。それはいろいろと」
「警官やってりゃ、怪しい武器商人なんて見れば分かる。それに警察は証拠のない話には付き合わない、だろ?」
「それは凄い自信ですね」
「凄さはここにいる全員が知ってると思うが?」
おい探偵坊主、顔に急に自慢してどうしたの?って書いてあるのバレバレだぞ。2人を見習え、ちゃんとポーカーフェイス保ってるぞ。同じことを思っているっていうことは伝わってくるけどな!
お前らは行間を読むってことを知らないのか?本人である証拠を残さない人物がいるだろう。
「お前らも知ってるだろ。老若男女問わず頭の先から指の先まで変幻自在、100の声を持つと言われてる奴を」
「怪盗キッド?!」
「そういうこった。顔を変え、声と姿形を変え、俺は架空の人物になっただけ。そのとき、その場に毛利小五郎はいない」
「おじさんは怪盗キッドの正体を知ってるの?!」
「それは今関係ないだろう」
「そうだけど…」
「まあまあコナン君。それはその話が終わったあとで聞くことにしよう。じっくりね?それで毛利先生。これは僕に託してくれるということでいいんですね?」
「ああ。俺では調べることはできても、逮捕することはできないからな。あとは任せる」
「毛利さん、なぜこのタイミングだったんです?話をするタイミングは他にもあったと思いますが」
「最近は目が厳しくなってきたのもあるが、近々ボスを含めた幹部会が開かれるらしいんでな。そんな機会見逃せないだろう」
「そうなの?!」
「それはどっちに対しての反応だよ」
「どっちもだよ!目が厳しくなってるって、ここが見張られてるってことでしょう?誰に?」
「隣だよ。最近挨拶に来ただろう、自称流れの板前って」
言いながら誰も手に取ってないファイルを広げ机に置く。
それは他と比べて圧倒的に情報が少ない。流石に俺でも不可能なことはあるし、正当じゃないと調べられないこともある。そこは現役の警察官にお願いするしかない。
「これは本当なんですか?」
「今、ラムから妙なメールが届くメンバーがいるみてぇじゃねぇか。まだお前には届いてないか?Time is moneyってよ」
「Time is money?…時は金なり?」
「…ワキタカネノリ」
「簡単なアナグラムだな。ウォッカの野郎がふざけた名前を名乗ってるとも言ってたし、間違いはないだろう」
「ウォッカが…毛利先生、これはいつの情報なのでしょう?」
「先月だな」
「先月?!」
「おめぇも蘭も泊まりに行って、家にいないときがあっただろうが」
「全然気付かなかった…」
「はっ、探偵坊主に気付かれるほど落ちぶれちゃいねぇよ」
「毛利さん。あなたは相当な役者のようだ、今までの姿とは全く違いすぎる」
「へっぽこてのはときに欺くにはちょうど良い姿なんでな。元とはいえ警官なんだ、使い分けぐらいできる。それでだ探偵坊主。おめぇ、板前がラムと知って変に探るなよ、さっきも言ったようにここは探られてる。いつもと違う動きしてみろ、すぐに殺されるぞ」
「………」
「お前の迂闊な行動で組織を壊滅目前まできたのに逃げられてみろ、先は言わなくても分かるな?俺も英理と蘭を危険な目に合わせたくねぇんだよ。少しでもその可能性があるなら、俺は今ここでお前を監禁する。全てが解決するまで」
「それは穏やかではありませんね」
「はっ、そういやお前はジンを捕まえるときに味方のミスで失敗して、それでも許した広い心の持ち主だったな。ならその広い心で宮野明美まで助けてやりゃ良かったじゃねぇか。NOCの面が割れたとしても。でもそうしなかった、なんでた?比べたんだろ?味方と組織所属の従妹を、それで天秤は味方に傾いた」
「…従妹?」
「なんだ知らなかったのか?お前の母親と、宮野明美の母親は姉妹だ。お前は親族と味方を天秤に乗せ、味方を優先した。俺は家族と同級生の息子を天秤に乗せたんだ。選んだのは家族だ。お前と一緒だろ?違うか?」
わあお、空気が重い。そうしたのは俺なんだが。
少なからず生きてりゃ誰しもが比べて、選択してんだよ。
両方選ぶなんてどこぞのヒーローでないと無理だ、凡人が救えるものには限りがある。それは俺にも言える。
探偵坊主、おめぇが主人公だとしても命の危険があるなら、そのリスクは少しでも減らしてぇんだ。
後悔はしたくねぇもんでな。
「毛利先生。幹部会とはどういうことでしょう、僕にはそのような連絡は来ていませんが」
「まだ悩んでるんじゃねぇか?板前が隣に来たのも俺と安室、おめぇの監視だろうしな」
「僕の…」
「表向きは師弟関係になってるんだ。気になるだろうな。だからこの前の依頼に付いてきた」
「4人で行ったやつだよね、自殺した人が本当は殺されたんじゃないかってやつ」
「そうだ。あのときは依頼者に自殺であると伝えたが、本当はあれは自殺じゃない。他殺だ。やったのはベルモットとキャンティっていったとこだろう。安室お前は分かってたんじゃないか?自然に見えて不自然にある組織の犯行である置き土産にな」
「本当なの?!安室さん!」
「本当だよ…確かにあそこには組織の犯行と分かるものがあった。そのときは僕へのメッセージだと思ってたんだ、それがまさか僕を見極めるものだったなんて…」
「それからもちょくちょく来るってことはだ、疑われてるってことだな。安室透がな。俺が掴んだ幹部会は来月の××日。それまでに連絡が来たとしても罠かもしれんし、裏取りが厳しいとこだな」
「おじさんが掴んだ情報が間違ってるかもしれないよ」
「そうだ、悔しいがその情報は100%とは言えん。途中で邪魔が入った。幹部達が集まるいい機会だったんだが、どうやら乱入があった。身に覚えはないか、探偵坊主と沖矢昴」
「あはははは…」
「ったく、そんなんで日時が変わる可能性もあるが…安室、あとはお願いできるか?」
「ええ、任せて下さい。これを教えるということは毛利先生はこの件から手を引くということですか」
「俺は別で動く」
「おじさん!危ないよ!」
「ええ、この件は私達に任せて待たれていたほうが」
「誰が1人でやるって言った。さっきから話してる内容はどれも俺1人でやったわけじゃねぇ。俺にもいるんだよ、協力者がな」
話を聞いてたのかというタイミングで探偵事務所のインターホンがなった。一瞬硬直したのち厳しい顔になった3人。こんな話をしてるときに人が来るなんて最悪を考えるわな。相手を知らなけれは俺でもそうなる。
フッと微笑を浮かべ席を立ち、モニターを見ると見知った顔が3人。迷うことなくドアを開ける。
「なっ!?」
俺が体を横にずらし姿が見えたことで来客が誰が分かり、本日何度目かの驚愕する顔を見せる探偵坊主達。そりゃそうだ、本来は死んでるとされてる奴らだからな。
「テメェ、やっぱりNOCじゃねぇかバーボン」
「アイリッシュ…なぜ生きて…」
「はっ、ピスコの親父がそこのちょび髭と麻雀仲間だったらしくてなぁ。自分になんかあったとき、それが原因で組織幹部を殺そうと思うことがあればちょび髭に会ってみろと言われててなぁ。ピスコがジンに殺されて、工藤新一が生きてると知ったとき、ちょび髭を見て思い出して連絡を取ったんだよ。んで死亡偽装を手伝ってもらった。そっからはまぁ、恩があるしってことで」
「素直に言ったらどうなの。五郎さんから聞くピスコの話が聞きたかった、五郎さんの人柄に絆されたって」
「っせぇ、黙れ。キュラソー」
「お姉さんも、生きてたんだね」
「ええ。目が覚めたときには病院にいたわ」
「闇医者ですか…」
「ふふ。そこで五郎さんとアイリッシュと会ったの。また子ども達とも会いたいし。協力関係になったのよ。それに久々に女の子同士で遊ぶのも楽しかったわ!ねぇ、明美!」
「そうね。毛利さんから志保の話も聞けるし、隠れながらの生活は大変だったけれど、慣れてしまえば何ともないわね」
「おじさん!あのとき雅美さん死んだって!」
「1度はな。心停止はしたが、蘇生したんだよ」
「ですが、僕達が調べたときには死亡となっていました」
「そうしてもらったのさ。警察を特に上をよく思ってないのは同業だけじゃない。そこを利用させてもらった、悪いな」
「五郎さんの人柄の良さが出た結果ね」
「よせやい。俺にそんなもんはねぇよ」
「ふふ、そういうことにしとくわ」
「ま、そういうわけで俺は俺で動く。ただ宮野さんは別だ、彼女は組織いたといっても一般市民。できることはない。今まではアイリッシュとキュラソーに任せていたが、2人も積極的に動くとなると危険が増す。2人が来る前とは状況も変わってきてるしな」
「公安が保護します」
「それがベストだろうなあ…それでいいか宮野さん」
「ええ。ここまできてワガママは言わないわ」
「安室、分かっていると思うが…」
「大丈夫ですよ、毛利先生。彼女に危害は加えません。元より保護するために動いてましたから」
「ならいい。よろしく頼む」
「はい」
沖矢昴も反応すりゃいいのにな。もう自分が赤井秀一だとバレてるのに、隠す必要あるか?
それとも自分が見殺しにしたと思ってる女が実は生きてて、申し訳なくて合わす顔がないってか。
はあぁ、勝手にしろ。
まあ宮野さんはお前の正体知ってるけどな。
このファイル誰が纏めたと思ってるんだよ、全員だ。全員。知ってて当然ってわけだ。
「俺からの話は以上だが、他に聞きたいことは」
「…隣の方にはバレなかったんですか。この3人の存在が」
「ここに来るのは初めてだ。今日のことを心配してるなら、今週1週間は休みだ。大将にも確認してるし、組織で動きもあったみたいだからな」
「この時期は他との関係を整理することが多いの。勢力拡大のためにはどうすればいいかボスと話す時間なのよ」
「毎年ですか?」
「毎年よ。ボスの体調が良い時期とは言っていたけれど…」
「それだと来月の幹部会も信憑性が出てきたね」
「話がねぇなら解散だ。これはどっちかが持ち帰れ」
「僕が持って帰ります。FBIには渡しません。ああ失礼、大学院生でしたね。なら尚更必要ありませんね」
「………」
「おや?だんまりですか、珍しいこともありますね。毛利先生。迎えを呼ぶので少し待ってもらっても?」
「公用車でくるなよ。軽とかにしろ、軽とかに。それなら俺も周りから疑われるリスクが減る」
「…分かりました」
事務所の外に出ていく安室。
ジッと宮野さんを見て何か言いたげな沖矢昴。
そんな沖矢昴を心配そうに見てる探偵坊主と、ニヤニヤして見てるアイリッシュ。
それをまるっと無視して探偵坊主に近付く宮野さん。
「コナン君。いつも志保を守ってくれてありがとう」
「いや、どっちかつーと俺のほうが助けられてると言うか」
「はっ!猪突猛進な無謀さは治ってないようだな工藤新一」
「ちょっ!」
「ああ?何を驚いてるちょび髭なら、お前の正体ずっと前から知ってるに決まってんだろ」
「…やっぱり僕のこと探偵坊主って言ったのは偶然じゃなかったんだね、おじさん。…いつから知ってたの」
「初めからだ」
「!」
「お前がコナンとしてここに来たときから知ってたさ。仲が良かった同級生の息子を見間違うわけがないだろう。ましてや、小さいころから見続けてる小僧をな」
「なら、なんで!」
「お前が隠そうとしたからだよ。お前なりに俺や蘭、英理のことも心配してくれたんだろ。それにそのほうが俺も動きやすかったてのもあるが。あと探偵坊主、お前は演技が下手すぎだ。本当に有希ちゃんの息子か?」
「うっ…」
「けどなぁ、もう無理だ!蘭のやつが探偵坊主のことを好きなのも、おめぇが蘭を好きなのも知ってる状態で、ひとつ屋根の下で生活している現状が無理だ!娘は渡さん!」
「最近はずっとその不満ばかり言ってるのよ、五郎さん」
「でもまあ、その気持ち分からないわけでもないわ。私も志保が好きな人と気持も通じてないのに、ひとつ屋根の下で生活してたら気が気じゃないもの」
「………毛利さん。もしかしてですが、このタイミングで私達に話した本当の理由ってそれではありませんよね…」
「え?!」
「………そうだよ!悪いか!おめぇも親の気持ちになってみろ!ガワは小学生かもしれんがな!何が起こるか分からんだろう!」
「結局僕達は毛利先生に振り回されてるだけですか…」
電話を終え、事務所に入ってきた安室も話に加わるが、その表情はどこか疲れてるように見えた。
お得意のポーカーフェイスはどこにいった?隠すなら最後までしっかり隠せ。
その後も男親の親心を話してやったが共感してくれるのは宮野さんだけ。
アイリッシュは呆れ、キュラソーは苦笑し、探偵坊主は苦虫を噛み潰したような顔しやがって。沖矢昴と安室は真顔。
そのうち公安のお迎えが到着し、安室と宮野さんが帰ったことでバラバラと解散となった。
最後に事務所に残った探偵坊主がファイルの情報は媒体に保存してたりしないのか聞きにきたが、俺はパソコンが苦手なんだ。残ってるわけねぇだろ。ファイルよく見たか?全部手書きだっただろうが。
そう言ったときの、なんでそれはできないのって呆れた顔、覚えたからな。蘭とのお付き合いも絶対認めないからな!


























