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保険を掛け過ぎた結果、フラグの大きさが馬鹿にならなくなった話

3O3O

モブ女子がコナン世界で被害者にならないように保険をかけ続けたらフラグがどんどん大きくなってしまった話。 注意。作者はにわかです。寛大な心で読んでくださると幸いです。 コナン君の夢小説読まな過ぎて口調がわからない…。

生まれ変わったのが名探偵コナンの世界線であったことに気づいたのは、自我が目覚めてから割とすぐのことであった。テレビから聞こえてくる「東都、米花町、杯戸町」などの聞きなれない…いや、アニメの中だけでは何度も聞いたその言葉と、その言葉に続いて画面に流れる殺人事件のテロップ。最初は聞き間違いだと思っていたけれど、母が「また米花町で事件?怖いわねぇ…」などと呟くものだから99%の確率で名探偵コナンの世界なんだろうと確信した。前世では割と若い年齢で死んだ私だが、大人なのには変わらないので今世では最大限に自身の能力を生かして上手く生きていくつもりである。事件には絶対に関わってやらない。その点でいえば現在はガラケーが主流でスマホは一切ないようだし、テレビに毛利小五郎や作品は違えど怪盗キッドの名が出ることはないので数年間は安心だといえるだろう。
そう思っていたんだけど…。

「あ、萩原君だ!おはよ~」
「おう、おはよう!」
「おはよ!…かっこいいよねぇ。松田君も愛想がよければよかったのに」
「わかる~!」

偶然にしては、出来過ぎだと思う。どうして彼らと同じ高校で、それも同じクラスなんだろうか。私の机を囲って談笑する友人たちは、案の定萩原君にメロメロのようだ。にこやかに挨拶する萩原君と視線を向けてくることもない松田君。そういうところも原作と変わらないんだなぁ、と愛読書片手に考えていると頭上から声を掛けられる。

「瀬戸ちゃんはどう思う?」
「ん?何が?」
「萩原君と松田君どっちが好み?タイプとかある?」
「瀬戸ちゃんは興味ないでしょ~」
「確かに」

私なしで完結される会話。そりゃあ小難しい小説やら参考書やらを日常的に読んでいるから、がり勉で男性に興味ないと思われても仕方ないけどさ。

「違うって~、そんなに拗ねないで?」
「そうそう!私知ってるんだから、この間サッカー部の先輩に告られて振った話!」
「かっこよかったのにね。やっぱり瀬戸ちゃんは高嶺の花なんだなぁ~」
「なにそれ」

プイとそっぽを向くとツンツンと膨らませた頬を突いて、にやにやと笑われながらこの間の話を掘り返される。…まぁ、ビジュの良さは認めるよ?これに関しては両親に感謝。どちらも最高峰にビジュが良く、私もきれいにそれを受け継いだもので、内心ウハウハである。ただ、そのせいもあってか萩原君に話しかけられたことがある。別に推しでもないから関わりませんよスタイルで貼り付けたような作り笑いで接したら、即座に脈ないなと思われたようでそれ以来は殆ど話しかけられることもなくなったけど。

「それより、もうすぐ文化祭だね」
「今日の午後から文化祭準備期間だもんね。楽しみ~!」
「ね。あの二人に女装させたいな~!頼んだらしてくれないかな」
「「わかる~!!」」

話を今度開催される文化祭の話に切り替えると、みんな楽しそうに話に乗ってくるがすぐにまたあの二人の話に切り替わる。やっぱり萩原君は人気者だね。「ちょっと萩原君たちに相談してくる!」とひらりと私に手を振って彼らのもとへキャッキャと黄色い声をあげながら話しかけに行ってしまった。最初に相談するべきは文化祭の実行委員じゃないんでしょうか…。彼女たちの後ろ姿を見届け、小説に視線を戻す。工藤優作先生の小説は本当に面白いなぁ。いつか直筆サインを貰いたい所存である。

その日の昼休みのこと。

「ごめん、これ手伝ってくれない、?」
「勿論。実行委員は大変だもんね。この書類読んでもらって、サイン書いてもらえばいいんだよね?」
「そう!あとはこの間休んでた二人だけなの、本当にありがとう!よろしくね」
「はぁい」

実行委員である友人の書類整理の手伝いをしていたところ、まだ終わらせていない書類がファイルの隙間に挟まっていたようで、急遽手の回らない友人に代わって私が行うことになった。
仕事を頼まれてしまったからにはちゃっちゃとやってしまおう。ずっとバタバタしているみたいだし、この後も手伝ってあげないと。書類に貼ってある付箋には鈴木さんと松田君の二人の名前が書いてあった。そっか、数日前にあった文化祭のクラス企画決めの日は休んでたんだっけ。鈴木さんとは仲も良いから簡単に済ませられるだろうけど、松田君かぁ。ここで初めて原作キャラに自分から絡みに行くのか…とも思ったけれど、考えすぎても杞憂というものだ。鈴木さんと同じように話しかけてもただのモブどまりだろうし、薄っすらと原作キャラに関わりがあったほうが後々事件で被疑者になる確率も低くなるんじゃ?という打算もあるのでこの辺りは普通に許容範囲である。事件には巻き込まれない!と意気込んではいるけれど、保険は必須だよね。

「松田君、今大丈夫?文化祭のことでちょっとお願いがあるんだけど」
「あ?」
「あれ、瀬戸ちゃんだ。やっほ~」
「萩原君、話の途中にごめんね。この間松田君が休んでた時に行われたクラス内企画の詳細が決定したから、この書類読んだらサイン貰ってもいい?もう多数決で決まってるんだけどね、一応クラス全員のサインが必要なんだ」
「あーおう、分かった」

教室に戻ると案の定松田君は萩原君と一緒にいて、部屋の後ろの方で談笑していた。話しかけるとぶっきらぼうな態度で振り向いて視界に私を入れる松田君と、それと対照的にひらひらと手を振って女子受けのするイケメンスマイルで挨拶してくる萩原君。一度断りを入れてから書類を渡すと、意外と嫌な顔せず受け取ってくれた。ぺらぺらと書類を素早く読むと、ペンを要求されたのではい、と渡す。松田君は手先が器用なうえに情報処理速度も早いのか。別に要らない情報が増えたな。

「そういえば、瀬戸ちゃんはミスコン出るの?去年は出てなかったけど」
「う~ん、あんまり目立つのは好きじゃないんだ。萩原君は?」
「ミスターコン?みんなには出ろって言われてるんだけどね。…じんぺーちゃんが出るなら俺も立候補するかな?」
「出ねーっつーの。はい、書いたぜ」
「うん、ありがとう。それじゃあ」

萩原君はにやにやと面白そうに松田君に視線を向け、松田君はそれをジト目で見つめ返し、私に書類を返してくる。本当に仲がいいんだな、この二人。表情筋を鍛えていてよかった。推しでなくとも至近距離でイケメンたちの友情劇をみれば発狂ものだと思うくらいには素敵な視界だったよ。それにしても私のモブ具合最高じゃなかった?ミスコンの話は置いておいて(まぁ美人だから仕方ない)、それ以外は印象に残らないくらいのクラスメイトとの他愛ない会話だったはず。ビバ、モブ!

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あっという間に文化祭二日目。一日目は一般非公開のステージ発表だった。去年と相も変わらず裏方で劇の手伝いをやり、大きな問題もなく無事にやり過ごせた…はず。以前告白してきたサッカー部の三年生が懲りずに空き教室に呼び出して迫ってきたのは焦ったけれど、ちょうど居合わせた萩原君が庇ってくれたのには感謝しかない。ありがとう、前は作り笑いで距離をとった話し方してごめんね。反省してます…。
それはそうと、文化祭二日目。芝生の上で胡坐をかいて私と向き合った状態でご飯を食べる松田君。まさか二日連続で原作キャラ二人と関わってしまうとは思わなかったよ。
ことの発端は私が文化祭に出された食べ物をコンプリートしようと屋台に並んで買いまくり、校舎裏の茂みに隠れてこっそりと食事をしていたことだった。普段あまりものを食べない私だけれど、イベントごとは別だ。それに八方美人で敵を作らずに生活していれば人脈が勝手に広がっていくもので、ありがたいことにチケットを当然のように無償で渡してくる人もいる。というか自分でお金を払って買ったのは二つだけなんだよね。そういうわけで手元に溢れかえった昼食たちを消費するべく隠れたわけなんだけれど…。

「あ?お前…瀬戸、か」
「あれ、松田君。覚えてたんだ。あ、ごめん、場所陣取ってる」
「いや、良いんだけどよ…お前、それ一人で食ってんの、?」

がさがさと茂みが揺れたと思えば顔を出したのは松田君だった。当然私がいることも知らなかったようで、校舎裏の穴場に先客がいるとわかるや否や初めて話しかけた時と同様にガラの悪い態度で私を見た。どう見たってどこぞのヤンキーだよ。というか、名前を憶えていた方がびっくりだよね。私の周りに散乱している食べ物に視線を移しガチ引きしているのなんて気にならないったら気にならない。

「みんなにチケット貰ったの。せっかくならコンプリートしちゃおうと思って」
「へぇ、そりゃすげえ」

当然のごとく私の目の前にどっかり座り込む松田君。えぇ~、なんで?黙々と食べ続ける私をちらりと見て、またご飯の方に視線を移すその姿はどう見ても『ぐぅ、』。

「食べる?」
「おう」

お腹すいてたんだね…。好きなの食べていいよと促すと、アメリカンドッグやらフライドポテトなどのジャンキーなものに手を伸ばしガツガツと遠慮なく食べ始めた。やっぱり男の子なんだな、と思いながら手元にあるカレーを食べ進める。…あれ、なんだか視線を感じるような。ふと顔を上げると、じいっと私の持つカレーを見つめている松田君の姿があった。

「…食べる?」
「!…良いのか、?」
「松田君がいいのなら」
「おっしゃ、さんきゅ!」

カレーを差し出してもう一度、今度は遠慮がちに尋ねてみると表情をぱぁ…!とほころばせ、嬉しそうに手に取ってくれた。松田君の純粋な笑み、まさか生で見れるとは思わなかったよ。なんだか、あれだね。野良猫がなついてくれたような感覚。無意識に頭をわしゃわしゃしたくなるような、そんな感じ。これは沼る理由もわかるなぁ…。

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それから深く関わりができることもなく、二年の期末に差し掛かった。前世の知識や経験を生かしてバリバリ勉強している私だけれど、やっぱり高校生の勉強範囲が難しいことには変わらないため、放課後図書室を使って一人黙々と勉強していた。最初は友達とカフェで勉強をしていたのだけれど、一人じゃないと集中できず、今日は用事があるからと一人こそこそと図書館に向かったのだった。

「あ、瀬戸ちゃん一人で勉強してるの?」
「うん。二人もテスト勉強?」
「そう。こいつと家で勉強したら絶対遊んじゃうからね」
「うっせ。だから図書室にわざわざ来たんだろ」
「なるほどね」

図書室の扉がガラガラと音を立てて開いたかと思えば、そのままこちらに近づいてくる足音。ふと顔を上げれば案の定ニコイチの萩原君と松田君が立っていた。当然のごとく前の席に座る二人に何とも言えない感情を抱きながらも気にしないそぶりを見せる。大方、分からない箇所があれば教えてもらおうとでも思っているのだろう。視線を下に下げ勉強を再開するも、斜め前から聞こえてくる気怠そうなあくび音。

「図書室での飲食は禁止ですよー」
「ばれねぇって」
「実は今日の図書委員さん私の友達だったりして」
「リボンの色からして一年だったよな。どんだけ人脈広いんだよ」
「ははは。瀬戸ちゃんは人気者だね」
「いただき」
「ってかお前も食ってんじゃねーか。人の勝手に取りやがって!」
「文化祭で半分以上平らげたの誰だっけ」
「…へーへー。どうぞ勝手に食えっての」
「俺もいただきっ」
「おいっ、俺の分なくなんじゃねーか!」

教科書も開かずにバッグからお菓子を取り出してぽりぽり食べ始める松田君。飲食禁止なんだけどなぁと思いながらも注意することもないし、人気のない図書館奥の小さな勉強スペースを占領しているので、まぁばれる心配もないだろう。司書さんも今日はいないようだしね。ということで身を乗り出して松田君のお菓子を一つつまめば呆れた顔でぶつくさと文句を言われた。あなたも文化祭の時遠慮もせずにがっついていたでしょーが、とジト目で見れば反論できなかったようで大きなため息をつきながらこちらにお菓子を差し出してきた。その瞬間を目ざとくねらっていた萩原君にがばっと横取りされると、お尻を椅子から浮かせて萩原君に怒鳴っていたけれど。ここ図書室だからね?後で寛容な後輩ちゃんに謝っとかないとな。

「そういえば、二人は進路決めてるの?」
「実は俺もじんぺーちゃんも警察官目指してるんだ」
「へぇ、凄いね」
「瀬戸ちゃんは?」
「んーん。何にも決めてない」
「そうなの?意外だなぁ」
「萩原君の中の私はどんな風になってるのさ」
「才色兼備のお嬢様?」
「なんじゃそりゃ」

才色兼備なのは認めるけど?お嬢様って何。…でも、そっか。もうこの頃には警察官になるって決めてるんだね。松田君の反応からしても警視総監をぶん殴るってのが目標なのも変わらなそうだ。警察官になるって言いながらもけっ!と吐き捨てるような顔をしているんだもの。わかりやすいったらありゃしない。にしても進路かぁ。前世ではやれなかったことをしてみるってのもいいかもしれないな。それにコナン君の世界だし。トリプルフェイスってのも楽しそう…いや、そんなことしたら事件に関わる確率が高まるか?今のはいったんなして。進路についてはしっかり考えないとね。

「あ、松田君。そこスペル間違ってる」
「…マジだ。さんきゅ」

ノートを指さして指摘するとすぐに見直して訂正する松田君。意外と素直なんだよねこの人。佐藤刑事が確かドーベルマンと柴犬を足して二で割ったようなやつとかなんとか言ってたような気がするけど、どう見たってまだ柴みが強い。相当荒れ始めるのは警察学校時代からなんだろうか…。よくわかんないな。まぁ高校卒業したら関わることもないだろうし、深く考えるのはやめよう。

「え、瀬戸ちゃんそれなに」
「これ?中国語の教科書」
「凄いね…。というかテスト勉強は?」
「いったん休憩。少し疲れちゃった」
「そ、そうなんだ」

誰だ今がり勉とか思ったやつ。別に黒縁眼鏡かけてないし!って偏見が過ぎる?ごめんなさい。こちとら小さい頃から勉強沢山してるから脳みそもしわっしわなのよ。なめないで頂戴。そう考えてもこの二人も頭いいんだよなぁ。普段の素行が目立つだけで、テストの成績じゃ上位を争うようだし。まぁ学年一位の私には遠く及ばないようだけど。おほほほ。

「あ、ねぇ。千速ちゃん元気?」
「…は!?お前千速知ってんの!?」
「千速って、俺の姉貴の、?」
「うん、その千速ちゃん」
「お前らどういう関係なんだよ」
「どういうって言っても…お友達、?最近知ったんだけどね、萩原君のお姉さんってこと」
「そうなんだ…」

千速ちゃんの名前を出すと驚愕した目でこちらを見てくる二人。私も知らなかったよ、キャラ濃いなぁとは思っていたけれど、まさか萩原君のお姉さんだったなんて。ごめんなさいね、にわかで。にしても松田君の顔が面白い。というか名前口にした瞬間噴き出してたし。まぁまぁ、松田君が千速ちゃんに何度も告って振られてるってのは公言しないから安心してよ、初めてその話聞いたときは「あの松田君が!?」って素で驚いちゃったけどね。あー、面白い。それで佐藤刑事にもあんなこと言うの?松田君は面食いだなぁ。

「なににやにやしてんだよ…」
「いーや?なんでもないよ」
「じんぺーちゃん揶揄われてやんの」
「おい笑ってんじゃねー萩っ!」
「せ、先輩…あの」
「「あ」」

流石にうるさかったか。二人の小競り合いを流し目に勉強していると、後ろから図書当番の後輩ちゃんに声を掛けられてしまった。二人はようっやく自分たちの声の大きさに気づいたようで、ぴたっと動きを止めて気まずそうにこちらを見ている。さすがに謝らないとなぁ。

「真尋ちゃんうるさかったね、ごめんなさい。」
「い、いえ!…あの、お二人とはどういう関係なんですか、?」
「ん?ただのクラスメイト。あ、そうだ。この間からずっと誘おうと思ってたんだけど、もしよかったら真尋ちゃん今度一緒に遊ばない?」
「え!良いんですか!」
「おいなんだよただのクラスメイトって」
「酷いなぁ瀬戸ちゃん」
「うん、もちろん。また連絡するね」
「はい!待ってますね」

んふふ、やった。真尋ちゃんとデートの約束しちゃった。というか二人してジト目で見ないでくれませんか。だって数回しかまともに話したことないじゃん。私は正真正銘のモブなんですー。ごちゃごちゃとなんだか前が騒がしいけれど、いらない情報をシャットダウンする能力は人一倍あるからね。その後しっかり施錠時間まで勉強することができたので大満足です。期末テストの結果?勿論学年一位を取りましたとも。

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「おーい!こっちだ奏」
「千速ちゃん!久しぶりです」
「あぁ、久しぶりだな。元気そうでよかった」
「千速ちゃんこそ」

駅できょろきょろと目当ての人を探していると、改札の方から針の通った声が聞こえてきた。振り返ると上品なコーデに身を包み手を振って微笑んでいる千速ちゃんの姿があった。今日は期末テストで学年一位を取ったご褒美に千速ちゃんとデートをする日なのだ。なんと話を聞くに松田君がその話を聞いたときに「俺と萩もついていく」といったそうだが、きっぱり断ったようだった。「その日は私の奏なんだ」って。大好きだよ千速ちゃん。松田君、お気の毒に。そんなに千速ちゃんと遊びたかったんだね。ドンマイ!

「今日は何します?」
「この間この映画が見たいと言っていただろう?それを見に行こう」
「やった。あ、この辺りにお気に入りのカフェがあるんです。そこで昼食にしましょう?」
「お、いいな。奏のお墨付きなら楽しみだ」
「今日は一段と綺麗ですね。女紳士みたい」
「だろう?奏をエスコートしなければならないからな。今日の私は紳士だぞ、お嬢様?」
「きゃあ」

千速ちゃんかっこよすぎるよ…!女性に紳士っていうのもあれかもしれないけれど、今日は狙ったようにそのコーデなんだから言わないのも失礼だよね。私が男なら千速ちゃんに全力でアプローチしに行っただろうな。松田君の気持ちがわかったよ。がんばれ松田君。ただいま千速ちゃんは名探偵コナンのキャラの中では断トツ一位の推しです。もともと推しとかはなくて、しいて言うならコ哀なんだけど「らーん!」って叫ぶコナン君も大概好きだったんだよね。コナン君の世界線は一途な男女が多すぎる。その点で言ったら松田君もいい男なんだろうけど。殉職しちゃうなんて、世の中上手くいかないもんだなぁと思う。それもこれもすべて原作者様のさじ加減なんだけどさ。安室さんに友人でも殺されたんですか?ってぐらい不憫な書きかたされてるよね、安室さん。それでも原作改変なんて恐ろしいことをするつもりはありません。この世にはバタフライ効果ってものがありましてね。こういうのはモブとして傍観するのが最善なのだと思っています。

「ほう、これは旨い」
「でしょう?絶対気に入ると思ったんですよ」
「流石だな。奏は料理も美味いし、いいお嫁さんになりそうだ。私の嫁になるか?」
「えぇ、なりますなります、!千速さんのお嫁さんなんて憧れそのものですよ」
「それは嬉しいな。松田には申し訳ないが手を引いてもらおう」
「うふふ、松田君振られちゃった」
「振ったのは私じゃないさ」
「?」
「はははっ。いや、こちらの話だ」

カフェに着いて私がおすすめしたビーフシチューを食べると、満足そうに頷いてくれた。やっぱり褒められるとうれしいなぁ。さらに千速ちゃんは両肘をテーブルに乗せ、組んだ手の甲に顎を置きプロポーズしてくるものだから、食い気味にそのプロボーズを受けてしまう。おかしくて思わず笑うと、千速ちゃんは不思議なことを言った。どういう意味なんだろう。含みのある笑みを浮かべて話をそらされてしまうが、変な物言いだなとは思いつつもそれ以上尋ねることはなかった。ま、千速ちゃんに振られたことには変わりなさそうだけどな。今度ちょっかい掛けられたらネタにしようと思う。千速ちゃんはもう私のものなんだよ、萩原君も私を姉嫁として敬ってほしいものだ。

それから映画館、ショッピングとぶらぶら行く当てもなく歩きながらデートを目一杯楽しんだ。その後帰宅にはいい時間になり、他愛のない話をしながら駅へ向かった。…まさかこんなことになるとは思っていなかったけれど。

「奏!」
「おい動くなよ!変な真似したらこいつぶっ殺してやるからなっ!」
「きゃぁー!!!!」
「なんだなんだ」
「ナイフ持った男が女の子人質にとってやがんだ!」

初めての事件介入が千速ちゃんとのデート帰りだなんて、最悪だよこん畜生。私と千速ちゃんの思い出に何土足で踏み入ってんの?あぁ!ほら千速ちゃんが苦しそうに顔を歪めてる!…はぁ。

「お前ふざけてんのか。何溜息ついてやがんだ、本気で殺してやるぞ!」
「やめろっ!!!」

はぁぁぁ?もう怒った。私の首に傷つけて千速ちゃんに悲しそうな顔をさせるとは、万死に値する。私がこれまで事件に関わってもかわいそうな被害者にならないためにどれだけ保険掛けたと思ってるのさ?あなたみたいな素人丸出しのちんちくりんに私が負けるわけないでしょう。すうっと息を吸って、お腹に力を込める。

「っは!?ぐあっ!」

ナイフが離れた瞬間に肘で鳩尾を打ち込み、ナイフを持った手を抑え込みながら肩を蹴り上げる。あ、ゴキって言っちゃった。肩外れたかな。苦しそうに顔を歪める男を取り押さえてナイフを引っぺがせば完了。ふっふーん、か弱そうと私を人質に取ったのが運の尽きだよ。

「か、確保―!」

いつの間にか潜伏していた警官に取り押さえられ、私は女性警官に素早く犯人から引き離されて安否を確認される。千速ちゃんごめんなさい、泣かないで。目じりに涙を浮かべて、心配をかけさせるなと怒られてしまった。無茶なことをして、とお小言を警官からも言われるが、最後にはよくやったとも褒められたので後悔はしていない。反省していないように見えたのかお小言が増えてしまったけれど。
その後、千速ちゃんから聞いたのか萩原君と松田君から連絡が来て、随分と心配している様子だった。ことの内容は千速ちゃんから聞いているだろうに心配性や過ぎないかな。大丈夫だよ、と返信するが、その前に連絡先二人に教えていないよね?と不思議に思った。話を聞くに千速ちゃんから教えてもらったらしい。それなら仕方ないと諦めたものの、流石に連絡先残すのもなぁと原作に関わりたくない欲が強く一度消したところ、次の日学校に来た途端とっ捕まえられ「連絡先を消すとはどういう了見だ!あぁ!?」と松田君に脅され…怒られてしまった。萩原君は後ろで苦笑していたが、松田君と同じ思いだったようで口出してくることはなかった。
それから、いつの間にやら心配をかける友達のような立ち位置となってしまい、ことあるごとに心配されたり構われたりしてしまうのだが、それはまた別の機会に話そうと思う。機会があれば、ね。

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松田side

最初の印象は、他にもれず『学年一の高嶺の花』だった。頭も運動神経もよく、顔も人当たりも良い。色素の薄い髪と瞳に、真っ白な肌。噂だとハーフだとかなんとか。真相は知らないが、そんな表だけの情報しか知らなかったし、別に興味もなかった。萩が「あれは脈なしだね。一切興味持たれなかったよ…っていうか壁作られた」と落ち込みながら報告してきたときにはへぇ、と関心を持ったがその時は千速のことでいっぱいだったしクラスも別だったので関わることもなかった。
印象が変わったのは、二年の文化祭準備の時。風邪で休んでいた日にクラス企画の内容が決まったらしく、サインをくれと端的に伝えられた。萩と談笑していたこともあってぶっきらぼうな返事になってしまったのに全く意に返さず、わざわざ断りを入れて書類を渡してくるので丁寧な奴だと思った。その後もペンを貸してくれと伝えたら「はい」とそれだけ言って渡してくるし、萩との会話も余計に長続きさせることもなくサインし終われば、じゃあ、とそそくさと去ってしまった。

「ね。壁あるでしょ」
「正しく高嶺の花だな」
「女子にはもうちょっと距離近いんだけどね、それでも壁作ってるんだよあの子」

いつも誰かしらに囲まれていても、壁を作ってパーソナルスペースをきちっと保つ鉄壁の女。周りの女子が萩の話をしていても一人だけ一切こっちを見ず静かに本に向かっている姿は、俺の関心を引くのに十分だった。そして千速のほかに、足を踏み入れられてもいいと思える唯一の相手になるのも時間の問題だった。

「じんぺーちゃん、最近瀬戸ちゃんのことばっか見てるな。もしかして、気になってる?」
「は?」
「へぇ~?二股男は嫌われるぜ?」
「なっ!ばっかじゃねーのお前!」

にやにやと顔を覗き込んでくる萩を一発ぶん殴り、文化祭に使う段ボールを取りに教室を出る。顔が熱いのは気のせいだっつーの!俺は千速一筋なんだ!

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「くっそ、萩のやつドタキャンしやがって」

文化祭二日目。さっきクラスの当番が終わって萩と早速屋台巡りをしようとしたところ、「ごめ~ん、女の子たちに誘われちゃった」などと抜かしながらすたすたと複数人の女に囲まれながら立ち去る萩に機嫌を悪くした俺は、誰の誘いにも乗らず屋台に並ぶこともないまま昼寝をしようと校舎裏に向かった。校舎裏の茂みの奥には人ひとり寝ても余裕なほどのスペースがあり、殆どの生徒が知らない穴場となっている。俺も偶然見つけたときは良い寝床を発見したと思ったが、何度か来てみると思っていた以上に日当たりが良く風をさえぎってくれる最高な穴場だということに気が付いた。

「あ?お前…瀬戸、か」

がさがさと茂みを分けてみると、そこにちょこんと座っている生徒が一人。先客がいたかと不貞腐れそうになったが、そこにいたのが瀬戸だったことに気付き何となくその場にどさっと腰を下ろしてしまった。瀬戸はそんな俺を気にすることなく、友人から貰ったとかいうチケットで買った屋台の飯を黙々と食べている。…というかすげぇな、これ全部食べんのか?そう思わずにはいられないほどに飯に埋め尽くされた瀬戸をじっと見つめる。…腹減ってきたな。そんなことを考えたとたんに『ぐぅ、』と腹が鳴り、それと同時に瀬戸が顔を上げる。

「食べる?」

そう言われるとは思わず目を丸くするが、どうも腹が減って仕方ないので遠慮なく貰うことにした。瀬戸、口ちっせぇな…と両手に持った飯にかぶりつきながら考える。学生の屋台にしては大ぶりの皿に入ったカレーをぱくぱくと無心で食べているが、食べきるのに何分かかるのだろうかと思うくらい一口が小さい。俺の視線が気になったのか、ふと顔を上げた瀬戸と目が合う。俺の視線からカレーを食べたいのだろうと勘違いしたようで、遠慮がちに食べるか聞きてきた。一瞬貰うか迷ったが、不思議そうに首をかしげる瀬戸の姿を見ているとだんだん頬に熱がこもっていくような感覚がして、とっさに頷いてしまった。自分の態度が恥ずかしくなり、それならカレーが食べたくて見ていたのだと思われる方がましだった。瀬戸は微笑ましそうにこちらを見つめていたので勘違いし続けているようでほっとしたが、それと同時にやんちゃ坊主とでも思われてんじゃねーの?と自分の取り繕った態度のせいで新たな誤解が生まれていそうな感覚に、また羞恥するのだった。

それから二年の期末に差し掛かるまで、俺と瀬戸の間に関係が進展するような関わりは一切なかった。
というのも、何かおごるといえば「ほとんど貰い物だから」とスパッと断られたことが原因だったように思う。萩が意気地なしだとかどうとか言ってくるが、そんなの俺が一番わかっている。ずっと壁があんだよ、と反論するが「ねーちゃんの方が鉄壁だろう?」と一蹴されてしまう。壁の種類がちけーんだっつーの!千速は飛び込んでもはじき返されるだけだが、こっちは慎重に削らねぇと崩壊した途端に一生越えられない溝ができちまいそうなんだ!っち。どれだけ言っても暖簾に腕押しなのは明白だってのは理解してるからこれ以上萩に突っかかるつもりはないがな、むかつくぜこの野郎。

期末テスト数日前のこと。

「じんぺーちゃん。さっき瀬戸ちゃんが図書室に行ってたんだけど、俺たちも行ってみない?」
「はぁ?何言ってんだ…て、おい!」
「ついてこないと置いていくからね?」
「待てって!」

萩に掌の上で転がされているような感覚にイライラしながらも、近づくチャンスだとまともな反抗もできずに萩の後ろを追いかける。図書室の扉を開け、奥に進んだ先に、瀬戸の姿があった。文化祭の時といい、狭いところが好きなんだろうか。角っこの狭いスペースで黙々と勉強する、普段と変わらない瀬戸になんとなくほっとする。…?なんでほっとしてんだ?

「あ、瀬戸ちゃん一人で勉強してるの?」

さも今気づいたかのように瀬戸に話しかける萩。手慣れてんなーと思ったが、瀬戸の反応を見る限り何かしらの下心ありきで話しかけていることには気づいているようだった。それでも嫌な表情一つせずに話してくれるのだから、本当に優しいやつなんだと思う。

「図書室での飲食は禁止ですよー」

瀬戸の斜め前の席にどっかり座り込んで、バッグに入れていた菓子を取り出して食べ始める。それを見た瀬戸に呆れたように小言を言われたが、言い方からして別に本気で注意するつもりはないのだろう。

「ばれねぇって」
「実は今日の図書委員さん私の友達だったりして」

軽口をたたくと、くすっと笑って冗談を言われる。可愛すぎだろ。なんだこいつ、魔性の女過ぎね?と萩に視線を向ければ、同じことを思ったようでぴたりと視線か重なり合った。

「いただき」
「ってかお前も食ってんじゃねーか。人の勝手に取りやがって!」
「文化祭で半分以上平らげたの誰だっけ」
「…へーへー。どうぞ勝手に食えっての」
「俺もいただきっ」
「おいっ、俺の分なくなんじゃねーか!」

~~~~~

「瀬戸ちゃんは?」
「んーん。何にも決めてない」
「そうなの?意外だなぁ」
「萩原君の中の私はどんな風になってるのさ」
「才色兼備のお嬢様?」
「なんじゃそりゃ」

そのあともそんな流れが続き、瀬戸に意識が持っていかれる感覚にほんの少しの疲弊と多大な幸福感に満たされながら、わちゃわちゃと図書室での時間を楽しんだ。まぁただ、瀬戸の千速と友人ですよ発言をされたときは身を乗り出すくらい驚いたが。というかどうやら瀬戸は俺が千速に告り続けていたことを知っていたらしい。最近は告ってねぇって!と心の中で叫ぶが口には出さない。俺の千速への感情がとっくに揺れ動いていることを確信したくなかったんだ。萩が俺にヘタレだというのも当然のことだった。ただ瀬戸が俺たちのことをただのクラスメイトだと認識していることに関しては俺たちにもプライドがあったので、その後じっくりと問いただして友達だと訂正させたがな。

「でもそれだけでしょ?波に乗って連絡先交換すればよかったのに」
「うっせ。お前だって交換してねーじゃねぇか」
「俺が手助けばっかしてたらじんぺーちゃんヘタレのままじゃん。一人で頑張ってみなよ」
「…っち、わーったよ」

そんな会話をした数日後に千速が瀬戸と出かけることを知り、ついていこうとしたが千速にきっぱり断られ。
もやもやしながら千速の帰りを萩と待っていると、瀬戸が駅で人質にとられて首をケガするという事件があったため、会話の内容すら忘れ千速に連絡先を教えてもらうことになるのだが。

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No side

「あの時は本当にひやひやしたよね」
「あぁ。人の気も知らず連絡先すぐ消しやがって」

ぐちぐちと文句垂れる松田だが、その表情は思い出を懐かしむような、しかしどこか悲しみに暮れたようなもので。

「あれからだもんね。じんぺーちゃんがなりふり構わず猛アタックし始めたのって」
「だな。なんで俺の惚れた女はどいつも鉄壁なんだか…」
「流石。何年も待たされ続けた男は言うことが違うねぇ」
「千速の時は10年以上も待ったんだ。いつまでも待ってやるさ」

ははっと呆れたように笑う声は随分とかすれていた。沈黙が部屋を包み込み、唯一聞こえるのはすぅ、すぅ、と一定の間隔で聞こえる小さな呼吸音だけだった。

「時間だ。そろそろ行こう」
「あぁ。…また来る。

早く起きろよ、

奏」

松田は眠る女性の淡い色の髪をそっと撫でると、友人とともに静かに部屋を出た。

彼女の眠る病室の窓際には、小さな花瓶に入った白百合が物静かに揺れていた。

『今朝、坏戸病院前の交差点で、赤信号を無視して乗用車を走らせ、横断歩道を渡っていた妊娠中の女性をはねてけがをさせた容疑で____________が逮捕されました。警察によると、過失運転致傷の疑いで逮捕されたのは、____________はねられた女性は、頭などを打ち意識不明の重体となっており____________発見当初、女性は腹部をかばった状態で____________死亡が確認されました。男は容疑を認めているということで____________調べている状況です』

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瀬戸奏
転生者。被害者にならないためにたくさんの保険を掛けた。
ただ、その保険を投げ捨てても一緒にいたいと思える人ができてしまっただけ。
警察学校組は不憫だね。

松田陣平
被害者その一。一生待ち続けている男。
猛アタックしてやっと結ばれたと思った途端の悲劇だった。
生存if。

萩原研二
被害者その二。本気で応援していたのに地獄が待っていた男。慰め係。
生存if。

萩原千速
被害者その三。妹のように思っていた。
慰め係。ただし不器用すぎて逆に慰められる。
弟とその友人が生きていてよかったね。

※追記:白百合は弔いの意味も込めて。

続きは書くつもりですが期待しないでください。
高校卒業後と劇場版、番外編が書きたい…時間はない。発想もない。

— End —

Comments 14

奏多14 天前
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S
sea18 天前
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やさか19 天前
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小枝子21 天前
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沙那24 天前
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えだまめ。27 天前
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やさか1 个月前
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K
keiko1 个月前
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雪香1 个月前
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あおりんご🍏1 个月前
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リュウ1 个月前
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ぴこ1 个月前

みんな幸せになってほしすぎる😭続き拝見できる機会があれば楽しみに待ってます😊

Sakuria
Where every work blooms
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