Novel1 months ago · 1.1w chars · 1 pages

萩原家長男の日常 Part3

ライムライム

注意 捏造過多 口調迷子 時系列迷子 想像の100倍《if》が人気でビックリ。皆太宰さん好きね。私も好きです。でも織田作も大好きなんだよなぁ。強いし、ビジュいいし、言動や性格もいい。なぜ殺したのですか。私の推しが故人なのはどうしてですか。 感想【https://marshmallow-qa.com/ramune_sub1?t=ZucwWu&utm_medium=url_text&utm_source=promotion】

『おいコラ作! てめぇまぁた事件に遭遇したのかよ!』

珍しく松田から電話がかかってきたかと思えば、早速小言を貰ってしまった。
というかなぜそんなにも早く作之助の情報を掴むことが出来ているのだろうか。
それが少し怖い。

「松田、俺は怪我をしていない」

『あのな、そういう問題じゃねんだよ。お前最近色々と巻き込まれすぎじゃねぇか? お祓いでも行った方がいいぜ。絶ッ対なんか取り憑かれてる』

「というか誰から聞いたんだ」

『伊達班長』

「伊達か。とにかく、俺は大丈夫だ。何かあっても自分で対処出来る」

『あ゛ー! もういいわ。ま、作は昔からそうだよなぁ……。てか報連相しろって言ったよな。作が強いのは知ってる、けど。心配なんだよ。お前は昔から色々と巻き込まれがちなんだから』

松田は普段ガサツだが、情に厚い男だ。だからこうして何かを嗅ぎつける度に、グチグチと色々言ってくる。
だがそれほど作之助を心配しているということなのだ。

「あぁ。ありがとう、松田。お前みたいな友達がいて、俺は幸せ者だ」

『……お前さ、ほんっと、……はぁ。とにかく、お前が死んだら、俺はともかく、萩たちが1番悲しむんだ。何かあっても、自分の命だけ考えろ。いいな』

「了解だ。研二や姉さんを泣かせたくはないからな」

『ならいい。あと千速泣かせたら俺がお前を殺す』

「はは。出来たらいいな」

松田のボクシングの腕はいいのだが、今まで作之助に勝てたことは一度もなかった。
しかも作之助は格闘術を習っていないくせに、だ。
松田は過去、それについて妬んだこともあったが、今となっては開き直って逆に技を盗もうとする傾向がある。
それが作之助にとっては微笑ましく思うが、それでも勝ちを譲ったことはない。手加減をすれば、それはそれで松田が烈火のごとく怒るのだ。

『〜〜〜ッ、こういう時だけ舐めやがって! たく、切るぞ!』

「またな、松田」

作之助は小さく笑いながら、電話を切る。そしてミーティングルームへと戻った。
実は今日、作之助の作品のメディア化の為の会議を行っていたのだ。
そしてタイミング良く、休憩中に松田から電話がかかってきたのである。

「あ、先生。お電話大丈夫でしたか?」

彼は作之助の担当である安川だ。1年半前に前任から引き継がれ、作之助の担当となった。
彼は仕事の手際が良く、愛想もいいので無愛想な作之助にとっては大きな助けとなっている。

「問題ない。友達から安否確認をされただけだ」

「安否確認……」

「嗚呼。最近何かと巻き込まれやすくてな。お祓いでも行けと云われてしまった」

作之助の言葉に安川は苦笑いを浮かべる。しかしすぐに真面目な顔をして忠言した。

「まぁこの街物騒ですからねぇ。先生も気をつけて下さいよ。最近は性別問わず、ストーカーなどが問題になってますからね」

「俺なんかを尾行するやつはいないと思うが」

「何を仰るんですか!? 先日のサイン会は大好評だったんですよ! しかも女性を中心に、貴方の顔の良さとクールさに惹かれる人続出なんですから!」

思わずキョトンとすると、安川は珍しく目を吊り上げて怒涛の勢いで注意を促してきた。
しかも最近は機械やネットの発達によって、簡単に盗聴や盗撮が行えるとのこと。
だから知らない人から貰ったものは食べない貰わない、と学生が受けるような注意を頂いてしまった。

「あ、先生への貢物はこちらで分別してありますので、その点はご安心を! 作家様の安全を守るのも、我々編集者の仕事ですから!」

「そ、そうか。そっちは任せる」

「はい! あ、先生。そろそろ休憩が終わります」

「分かった」

ミーティングも無事に終わり、作之助はポアロへと足を運んでいた。
そして安室にいつものサンドイッチとコーヒーを注文し、次はどんな話を書こうかと軽く頭を巡らせた。
それから少しして、ポアロの店内にドアベルの音が鳴り響き、新たな来客を知らせた。

「……いらっしゃいませ。空いているお席にどうぞ」

「分かりました」

一拍安室の反応が遅れた気がして、思わず作之助が客の方を見ると、なんと隣の席に座ってきた。
他にもカウンター席は空いているというのに、だ。
少し訝しむが、まぁそんなものかとあまり気にしないことにした。

「こんにちは」

「……もしかして俺に云ったのか?」

「えぇ」

作之助はいよいよ少し困惑した。
やけにグイグイ来るなぁコイツ、と思わずにはいられない程度には困惑した。
男は見た目的に作之助と同年代だろう。メガネをかけており、糸目の好青年に見える。
だが背は高い。大体作之助と同じくらいだろうか。

「一目見た時からピンと来たんです」

「……何だか口説かれているような気分だ」

「ふふ、そう見えるならそう捉えても構いませんよ」

作之助は生まれてこの方口説かれたことがないので、どうしたらいいのか全く分からない。
そもそもモテた経験すらなかった。
つまり、そういう対人関係においては作之助は赤ん坊並のみのレベルなのだ。
するとそんな作之助を察してか、タイミング良く安室がサンドイッチとコーヒーを置いてくれた。

「お待たせしました。サンドイッチとコーヒーでございます。所でそちらのお客様、何かご注文はありますか?」

「ならコーヒーをお願いします」

「かしこまりました。あぁ、あと、店内は人を口説く為の場所ではございませんので、ご了承ください」

「そうでしたか」

作之助はチラリと安室を見るが、何だか安室は怒っているように見えた。
ピクピクと眉が動いている。まぁそれも些細なことで、すぐに収まったのだが。
それにしてもいつもより安室からはプレッシャーが放たれているような気がする。特に隣の男に対しては、親の仇なのかと聞いてしまいたくなるレベルで睨みつけているように見えた。
まぁ客に向かってそんなことするわけないか、と考え直してコーヒーを一口含んだ。

「そう言えば名乗っていませんでした。私は沖矢昴。東都大学に通う院生です」

「……俺の名前は萩原だ。文字を書いて生活している」

「ほぉ、小説家ですか。どのようなお話を?」

「今は些細な日常を書いている。だが、俺にとっては大事なものだ」

「なるほど。となると、貴方の日常を小説に落とし込んでいるのですか?」

なんか妙にグイグイ聞いてくるな、と思うが、まぁ小説家なんて珍しいから気になるかと思い直す。

「まぁそうだな、と言っても俺の友達をモデルにしているだけだが」

「どのような方なのでしょう」

「……俺の小説を読めば分かることだ」

「確かに、そうですね」

何だか嫌な人だな、と何となく嫌悪感を抱いた。まるで尋問でも受けているような気分に陥ったのだ。

「お待たせしました。コーヒーでございます」

「ありがとうございます」

安室が沖矢にコーヒーを置くが、やはり雑な対応に見えた。
多分プライベートで知り合いだが、仲が悪いのだろう。
しかし沖矢は何処吹く風だ。全く気にしていないようである。

「……それにしても、小説家なのに意外と筋肉質でいらっしゃいますね。何か運動でもしているのですか?」

「室内にいることが多い仕事だから、ジムに通っている。元々身体を動かすのは嫌いじゃないし」

「そうでしたか。素敵ですね」

「…………」

作之助ばかり質問されているので、自分から何か聞いてやろうか、と考えるがすぐに辞めた。そういうのは向いていないのだ。
それにさっさとサンドイッチを食べて会計を済ませればいい。
それを思いついて、我ながら冴えているなと自画自賛しながらサンドイッチを頬張り、コーヒーを飲み干した。
そして用は終わったと言わんばかりに立ち上がろうとすると、沖矢に呼び止められる。

「なんだ?」

「肩にゴミがついています。少し失礼しますね」

そう言って彼は肩をパンパンと叩いた。
そして満足したのか、頷いて作之助にもう大丈夫だと言う。

「…………」

「どうかしましたか?」

「……いや、俺はこれで失礼する」

「えぇ。またお会いしましょう」

「タイミングが合えばな」

今度は話しかけられないように、作之助は急いで会計を済ませてポアロから出ていった。

そしてそのまま帰路に着くかと思えば、途中で路地裏に入って襟裏に付いていた[[emphasismark:ゴ > ﹅]][[emphasismark:ミ > ﹅]]を摘んだ。

「……何のつもりかは分からないが、生憎と盗聴される趣味はないんだ。次からは辞めてくれ」

それだけをその[[emphasismark:ゴ > ﹅]][[emphasismark:ミ > ﹅]]に向かって呟き、そのまま指で潰してゴミ箱に捨てた。

「………………」

沖矢昴として萩原作之助と仲良くなろうとしたが、見事に失敗だった。
何だか最初から警戒されているような気がしたのだ。
会話には応じてくれるが、細かい所までは教えてくれなかった。まぁ初対面相手ではそんなものだろうか。
そんなことをグルグルと考えながら、会計の為にレジに向かうと、安室が対応してくれた。

「何のつもりですか?」

「何のことでしょう?」

「……彼のことですよ。何やら、随分とお気になされているご様子でしたが」

「小説家の方とお近づきになりたかっただけですよ」

「ほぉー。あの方の迷惑になるような行為は控えて頂けると助かるのですが」

「そうですね」

沖矢がそう答えると、安室の眉がピクリと動いた。きっと静かに怒りを溜めているのだろう。
そんなことをボンヤリと考えながら、代金を支払って店を出る。
そのタイミングで、作之助に取り付けた盗聴器から彼の声が聞こえた。

『……何のつもりかは分からないが、生憎と盗聴される趣味はないんだ。次からは辞めてくれ』

言葉はたったそれだけだ。それだけを伝えて、盗聴器は壊された。
だがその言葉には明確な敵意のようなものが含まれていた。
その敵意は沖矢を少しだけ威圧し、思わず身を退けそうになったほどのものだった。

「……只者ではないことは確かだな」

こんな敵意を一般人が持つはずがない。
それに盗聴器に気づいたのも本来ならば有り得ないことだ。
彼には必ず何かがある。しかもあの降谷零が気にかけるほどの何かが。

ポアロの近くに張り込んでいて正解だったな、なんて思いながらスマホを操作して、コナンの連絡先をタップする。
そして工藤邸に来るようにメッセージを送った。

「ボウヤ」

「あ、昴さん! 何か分かったの!?」

ポアロでの邂逅から数十分後、コナンが工藤邸を訪れた。
どうやら随分と急いでくれたようで、額には汗が浮かんでいた。

「そうだな。直接会ってもみたが、萩原作之助は只者じゃない。俺の仕掛けた盗聴器に気づき、壊された」

「!」

「だが経歴を調べてみると、驚くほどに白かった。強いて言えば、強盗やら引ったくりなどを捕まえる回数が他の人間よりも相当多いくらいだ」

「そ、それは凄いな……」

経歴だけを見ると、本当にそれだけなのだ。犯罪歴も問題行動も、何もかもやましいものはなかった。
しかも、逆にまるで聖人のような経歴だったのだ。彼は孤児院などの養護施設や、世界の子供たちの為の寄付を積極的に行っているのである。

「彼は孤児院などにも頻繁に寄付している。経歴だけ見れば、怪しい所なんて皆無だ。むしろ誰もが聖人だと口を揃えてしまうレベルかもしれない」

「それならそれで良かった。でもじゃあなんで灰原が反応したんだろう……」

「分からない。だが身体付きと四肢の運び方から見ても、何か格闘術を会得しているのは確かだし、先程言った通り、盗聴器に気づくなんてよっぽどだ」

「そうだよね……」

コナンの反応を見て、沖矢は改めて色々と考えてある提案をした。

「しばらくは俺が動向を調査しよう。それで何もなければ、ボウヤも安心出来るんじゃないか?」

「……うん、ありがとう。オレの方でも作之助さんについて注目しておく」

「それがいいだろう」

今度は対人関係の調査でもしてみよう、そんなことを考えながら、その日を過ごしたのであった。

某日、警察庁では降谷がある人物と連絡を取っていた。
その相手は降谷と親しい人物なのだろう。彼の表情は少し柔らかくなっている。

「そちらは変わりないか」

『あぁ。ただ、強いて言えば嗅ぎ回る人間がいるくらいだ。まぁ今のところ害はなさそうだけど。だが白とも言いにくい』

「……そうか。引き続き頼む」

『────任せてくれ、ゼロ』

その相手の正体は降谷の同期である諸伏景光。今から約2年前に死にかけた男である。

2年前のある日、諸伏は何者かのリークによって、潜入中の組織である黒の組織の幹部たちから追われていた。
そして廃墟で行動を共にしていたライに追い詰められ、自殺しようとしたのだが、その正体がFBIだということを知って、彼の手を取ったのである。
その後、彼は降谷とも密かに連絡を取って、古巣である公安には半年後にこっそりと戻ったのだ。

その過程を、今からここに記しておこう。

「はぁ! はぁ!……ッ、クソ!」

バーボンは懸命に走っていた。
いつもは冷静沈着を演じているのだが、今ではそれも見る影がない。
それほどバーボンは焦っていた。
なぜなら、幼馴染であり同期でもある、諸伏景光の正体が組織にバレてしまったからだ。
なぜバレたのかは正確には分からない。だが、諸伏の秘密を知っているのはバーボンと、警察庁、警視庁の公安だけである。
ならば自ずと見えてこよう。
バーボンは歯をギリ、と食いしばりながら、とにかく誰よりも先に諸伏との接触を試みた。

そしてようやく諸伏が駆け込んだであろう廃ビルに辿り着き、突撃しようとしたその時。
「降谷だよな?」と声をかけられる。
バーボンは目を大きく見開いて振り向くと、そこには懐かしい男がいた。

「萩の、お兄さん……? ッ、どうしてここに!」

「俺の次の作品で廃ビルなどを頻繁に描写する予定なんだ。それで正確に描写する為にも、実際にこの目で見に来た」

男───作之助はバーボンの剣呑な雰囲気に気づいているであるはずなのに、なぜか1ミリも表情を変えることはなかった。
研二からもマイペースだとは聞いていたが、ここまでとは、と少しだけ引く。
しかしすぐに余計な思考は取り払って、現在の状況を思い出し、作之助の肩を掴んだ。

「ここは危険だ! 急いで離れて!」

「……何かあったのか? ガス漏れでもしているのか?」

「そうです! だから早く! それに凶悪犯が潜んでいる可能性が高いんです!」

「嗚呼、だから大勢の人間が辺りにいたのか。何だか物々しい雰囲気だったから、つい隠れながらここまで来てしまった」

いや来てしまったじゃないだろ! と叫びそうになった。
なぜそこで回れ右をしないんだコイツは! とツッコまずにはいられない。
とんだ天然ボケ野郎じゃないか、本当に萩と血が繋がっているのか、とすら思ってしまう。
とにかく、バーボンは内心作之助をボロクソに言いながら、逃げるように促した。

「分かった。お前がそこまで言うなら、俺は離れよう。だが降「今は名前で呼ばないで下さい」……お前、そんなに焦っていると、凶悪犯が逃げるんじゃないか。この辺りは足音が響きやすい。慎重に足を運ぶべきだ」

作之助は表情を変えずに、バーボンを諭した。そんな彼にバーボンはカチンと来て、思わず声を荒らげてしまう。

「貴方に何が分かる!?」

今は少しでも早く駆けつけて、諸伏の安全を確保しなければいけなかった。
それなのに、素人である作之助に諭されるなど、我慢ならなかったのだ。
しかし、そんなバーボンに作之助は全く怯まなかった。

「……お前の友達が善く云っていたはずだ」

「!」

「───焦りは最大のトラップ。そうだろう?」

その言葉は、バーボンの同期であり、作之助の幼馴染でもある松田がよく言う言葉だった。
その言葉を聞いて、バーボンの焦りが少しだけ引いていく。
そしてようやく冷静になって、ハッとする。諸伏は今のバーボンの位置を知らないから、もし慌ただしく駆けつけば、最悪組織の奴らと勘違いされるのでは、と。
そこまで考えて、バーボンは冷水でもかけられたように、今度はサッと青ざめた。

「…………助かった。お陰で冷静になれた。だがここが危険なのは変わりない。ここまで来れた時のように、誰にも見つからずにここから逃げてくれ。見つかったら面倒だ」

作之助がこんな所で組織の奴らに見つかれば、命の保証は出来ない。特にジンなどの幹部に見つかれば最悪だ。
きっと作之助が生きている限り、その命を狙うだろう。
そんなことが起これば、彼の双子の弟である研二と、その幼馴染である松田にぶん殴られてしまう。

「分かった。邪魔をしたな」

作之助はバーボンを一瞥した後に、悠然とその場を立ち去った。
それを軽く見送ったバーボンは、今度は息を潜めて件の建物へと侵入し、不本意ながら諸伏逃亡の手引きをライ───FBIの赤井と共に行ったのだった。

その後、諸伏は無事に逃亡でき、偽の死体を用意して死亡工作を完了した。
そして黒の組織、警察庁の両方に死亡したと報告し、諸伏景光という男はその日、死亡したことになる。
その一方で降谷は、信頼の出来る仲間に諸伏のことを伝えて新たに戸籍を用意し、諸伏景光の名を変えて“安川吉景”と名乗らせることにしたのである。
勿論変声機を用意させ、変装も完璧に近い状態まで仕上げたのである。

そして諸伏もとい、安川のリーク元を特定し粛清するまでの間、安川は公安としての本気的な仕事は中止することとなり、別の仕事が与えられる。
それは、萩原作之助の護衛だった。
今回の件で、作之助は組織の幹部には見つからなかったものの、下級構成員には姿を見られた可能性を完全に否定出来ないということから、護衛が必要だと内密に決まったのである。それに、作之助は研二の兄だし、万が一は降谷たちの事情を話しても問題ないということから、反対の意見は出なかった。
そこで、仕事のない安川が指名されたのだ。
安川は、降谷から作之助が諭してくれなければ、最悪ヒロは自殺していたかもしれないという話を聞いて、彼に恩を感じている。それもあって、安川は喜んでその仕事に就いた。

「初めまして、この度、萩原先生の担当を勤めることになりました。安川吉景と申します。これから全身全霊で先生のサポートをします! よろしくお願いします」

「こちらこそ宜しく頼む」

こうして、安川は無事に作之助の護衛兼担当として、働くこととなったのだった。

───そして現在、安川は笑顔を浮かべながらも青筋を浮かべていた。
その怒りの矛先は、勿論FBIである。

「沖矢昴……ね」

彼の正体は既に承知している。
どうやらライもとい赤井秀一の隠れ蓑として、現在の安川のように潜伏した仮の姿のようだ。それはまだ、まぁいいだろうと思う。しかし少々やりすぎな部分もあり、降谷が頭を悩ませて殴りたいと言わせてしまっているほどだ。
だがその気持ちが今、痛いほど分かる。
思わず持っていたペンをへし折ってしまったのだ。

「アイツ、まさか作之助に手を出すなんて。これを萩原たちが知ったら……おー怖い怖い」

一人で思わずブルっと震えるが、そういう安川もご立腹だ。
作之助は自身や他の同期たちの命の恩人だし、何より同期である研二の兄だ。
そんな作之助を嗅ぎ回るなど、安川にとっては許されざる行為であった。

「さて、どうしたものかな……」

安川は悩むが、作之助は至ってやましい所なぞ皆無だ。だから別に調べられて困ったことはないのだが、それでも嫌に思ってしまうのは仕方の無いことだろう。

「ていうか、俺も言うて忙しいんだよなぁ」

そう、現在作之助の作品が人気を博している為、色々と忙しいのだ。しかもメディア化まで決定しているのである。その忙しさには拍車がかかっていた。

「ま、ゼロよりはマシか」

同期であり幼馴染でもある降谷の姿を思い浮かべて、気持ちを持ち直してバイブ音を響かせるスマホを手に取った。

『そちらは変わりないか』

降谷の声が安川の耳に響く。
それで少しだけ気持ちを落ち着かせ、慎重に言葉を選んだ。下手をすれば、降谷の機嫌を損ねるからだ。
大体、沖矢の目的などもハッキリしていない。そんな曖昧な情報を彼の耳に入れるわけにはいかないのだ。

「あぁ。ただ、強いて言えば嗅ぎ回る人間がいるくらいだ。まぁ今のところ害はなさそうだけど。だが白とも言いにくい」

『……そうか。引き続き頼む』

「任せてくれ、ゼロ」

それだけ言って切ろうとしたが、降谷は続けて言った。

『所で、沖矢昴が作之助に探りを入れていたんだが、その嗅ぎ回る人間とは、アイツのことか?』

「…………そうだよ」

思わず通話を切りたくなったが、何とかその気持ちを押し留めて答えた。
というかなぜ知っているという気持ちが強かった。作之助については安川に一任しているはずだ。

『今日の正午辺りに、作之助がポアロに来たんだが……沖矢昴も来たんだ。そこまではまだ辛うじて許せたんだが、アイツ、初対面でグイグイ尋問のように質問攻めをして彼に迷惑をかけた。非常に、非常に嫌がっていたぞ作之助は』

「そ、そうか……」

降谷の怒りがスマホ越しに伝わってくる。
安川は、これもう手遅れかもしれないな、なんて軽く思った。

『ヒロ、沖矢昴を作之助に近づけるな。可哀想だ』

「おいおい、いくら作之助の担当だからって、四六時中傍にいられるわけじゃないんだ。ていうかメディア化が決まったからこっちも忙しくてだな」

『何!? メディア化が決まったのか!? 是非おめでとうと言っておいてくれ!』

そういえばコイツ隠れファンだったな、と思い出し、喋る情報を間違えたと少し後悔した。

「………まだ公開されてないから、喋らないでくれ、ゼロ」

『分かった』

即答である。
安川はスマホ越しの降谷の生き生きとした様子を想像しながら、苦笑いを浮かべて答えた。

「まぁできる限りのことはするよ。巻き込んだのは偶然とは言えこっちだしな。作之助の安全は俺が守る。と言っても、萩原たちの話によれば作之助はすげぇ強いらしいけど」

『油断はするなよ。それじゃあそろそろ切る』

「あぁ。あんま無理するなよ、ゼロ」

『そっちも』

通話は無事にとは言い難いが、終了した。
安川は小さくため息を付き、PCの画面をジッと見る。

「まぁ、何とかなるか」

これから大忙しだな、と思いつつも引き続き仕事に取り組んだのであった。

▽成り主
後半ほぼ出番なかった主人公。
しかし前半で、沖矢から色々と探られて不快な思いをした模様。別に厳しめとかではない。
今後の沖矢とコナンの行動次第で、ちょっと行動と言動が辛口になる可能性は十分にある。
しかし、子供には甘いのでコナンは大丈夫だと思われる。
盗聴器なんて秒で気づいたが、店内で捨てるのはダメだ、とちゃんとゴミ箱に捨てた。
安川のことは、結構身体つきいいなぁ、とか動き方が素人じゃないなぁ、とか思っているが、特に気にしていない。だって殺意とか感じないし。基準は大体そこ。
天然なせいで露見していないが、結構野蛮人かもしれない。
今も降谷と安室は生き別れの双子か兄弟と思っている。

▽沖矢昴(赤井秀一)
成り主のことを色々と調査するが、真っ白でちょっと拍子抜け。なんなら寄付やら募金やらすげぇなとか思ってしまう。
だが灰原の察知能力は本物なので、これからも探りはいれる。
ついでに小説を読んでみたが、生々しい描写(備忘録のやつ)が意外とあって、実際に経験しないと書けないだろ、と思わずにはいられなかった。ので、結構怪しんでいる。
その一方で成り主のセコムが増え続けていることに、全く気づいていない。

▽江戸川コナン
作之助のことは疑いたくないが、灰原の察知能力は(ry
それに、目の前で人を絞め上げる様を見ているので、赤井の報告を聞いて余計にウーン、と悩んでいる。

▽降谷零(安室透)
店でのんびりともぐもぐしている作之助を見て癒されていたら、突然沖矢が来て全てが破壊された。
なんやワレェ! と喧嘩腰になりながらも綺麗に(?)接客を行う猛者。
しかも成り主に盗聴器らしきものを付けており、余計にブチッと切れた。
よしヒロ、殺れ。と言いかけたかもしれない。
それに実は隠れファンなので、諸伏の潜伏先に私情を差し込んだ可能性があるかもしれない。

▽諸伏景光(安川吉景)
色々とあって現在潜伏中の人。
成り主の小説は全て読んだが普通に面白かったし、没入感があって楽しかった。
生々しいなぁ、と思う部分があるが、そういう才能なんだろうと開き直っている。
編集者として働く時は、成り主のことを1番に考えており、そのせいか時折オタクのように早口でまくし立てる、という設定のつもり。感想は割と本心から話している。
変装時は明るい茶髪で髭を剃った姿。声はちょっと低めにしているかもしれない。

▽松田陣平
成り主に一度も勝てたことがない。
小さい頃は一方的にライバル視していたかもしれないし、負けた時はちょっと泣いていたかもしれない。

— End —

Comments 32

ちょぼちょぼ24 天前

『仲良く』……いや、あれで??(꒪⌓꒪;) (学生時代、友達いなさそうだなと思ってしまいました)

S
SOO26 天前
Sticker
こしあん1 个月前
Sticker
1 个月前
Sticker
ユヅキ1 个月前
Sticker
M
miya1 个月前
Sticker
すてら1 个月前
Sticker
1 个月前
Sticker
1 个月前
Sticker
あかぬ1 个月前

安川さん後に被害者になる方かと思ってましたw のんびりご飯食べてるの確かに癒されそうですね。

ヌヌ子1 个月前
Sticker
ミキ1 个月前

赤井さん…惜しい人を亡くしたな…(笑)まだ死んではないけど萩原兄妹に見つかったら消されそうですね(笑)

Sakuria
Where every work blooms
Click anywhere to skip