蒼色の任務編
2097年4月18日12時36分 ダストウォール3番街:エレジーストリート沿いのカフェ『マイン』
日々ブラック・ハートによる組織的、または単独犯による犯罪の絶えないこの街でも休暇が必要な人物はいる。
「そうですか、メアリーが珍しくそのようなことを」
「あぁ・・・あの子は純粋に俺たちの役に立ちたいだけなのは分かる、だが俺達の任務はあの子には荷が重すぎるし危険すぎるんだ『秘蔵ファイル』を見て更にその志に火が付いたんだろうな」
「あの中には、今回持ってきたものをデータに直したものが含まれていましたからね」
「それにしても、珍しいな君からデートのお誘いなんてのは」
「オフの日だからって冗談を言うのも大概にしてください、良い加減なことばっか言っているとメアリーに報告しますよ」
「それだけはマジで辞めてくれ今朝も口をきいてもらえなかったんだ・・・昨日からずっと自室に篭もりっきりでな、と言うか本当にどうしたんだ件の13番街に近いこんなとこまで呼び出して」
███は「昨日も言ったとおりですよ」と言いながら、持ってきた黒のリュックサックからファイルを取り出し広げた。
「わざわざここに呼んだのは、こう言うものを広げても人に見られないからですよ」
それもそのはずで今いるカフェは二人の座っている一番奥の席であり立ち上がらなくても店内を見通せるほどに人がおらず、更に言えば唯一のマスターもカウンターの中でカップを磨いたりと仕事に集中しているのだ。
「これが先代ブルーバード活動時期に集めていた新聞の切り抜き資料もといスクラップノートか、随分とアナログなものだが今では貴重な情報源じゃないか」
「このページの、ここの記事です」
███が指さした記事には『化学物質流出か、外部監査を執行』と書かれていた。
よく見ると研究機関の名前にはかつてブルーバードとメルトが壊滅させたライラックグループに属していた組織の名前があった。
「例の船舶港に停泊していた貨物船、全部調べてくれましたか?」
「あぁ、怪しいのが何隻もあったがどうやら連中の狙いは俺の予想から当たらずとも遠からずだったみたいだ」
「じゃあ、やっぱり────」
メルトは「待て」と言い███の口を塞ぎ念の為にとカウンターでコーヒーを作っているマスターをチラと見た。
いくら小声で話している尚且つ言語が違うといえど、仮にも自警団の活動内容が聞かれれば一大事だからだ。
彼は口を塞いでいた手を放し、周りをはばかるほど小さな声で会話を再開した。
「あぁ、アメリカ本土行きでベリル港を中継地点にしていた船が一隻だけやられていた・・・連中の手口で間違いないと考えていいだろう犯人が特定できるような証拠品や遺留品は何一つとして残っていなかったが、ご丁寧に乗組員の惨殺遺体と輸送していた武器の入っていたであろう木箱がバラバラに破壊されて貨物室に残っていた」
「木箱の中身は?」
「書類には『アメリカ陸軍の装備品』と書かれていたが、よくよく調べたら中身は少し違う確かに奪われずに済んだ装備品は一割にも満たないほど残っていたが・・・調べていて分かった事としてはどうやら他に化学薬品のサンプルが入っていたんだ」
「もしかしてですが、そのサンプルって」
「断定はできないがその記事にあるライラックグループの薬品か、もしくはどこかの企業が真似たその模造品が奪われたと考えていいだろう」
「先代の拭いきれなかったライラックグループの”負の遺産”ですか」
「”負の遺産”と言うにはあながち間違いではないな、とは言え薬品が連中の手に渡っていて研究部署があるのならバイオと武力行使と二種類のテロ行為または俺達財団側との全面戦争を始めるつもりだろうな、そうなったら真っ先に標的になるのは間違いなくこの街とブルーバードである君を両方壊す気と見ていいだろうな」
「・・・それと、13番街の件調べてくれましたか?」
███は資料をファイルに片付けながら、もう一つの件について質問した。
「あぁココに来る途中で俺も見たがアレは何らかのシンボルじゃないかと俺は見ている」
「シンボル?」
「建設会社の名前、何が建設されて居るのか何もかもが不明、しかし建設作業やら何やらの届は出ているんだが・・・それが街企業なのか連中のなのかは謎だ、アレが完成したら連中も動き始めるのかもしれないな」
ゲイツがため息を吐きながら窓の外13番街のほうを眺めていると、見計らったようにマスターが珈琲の入ったカップとそれを乗せたコースターを二人の前にソッと置いた。
「Excuse me, but I'd like to order...」(マスター、申し訳ないが注文・・・)
「Since you both always come here, this is a little treat from me. Thank you for your continued patronage.」(二人ともいつも来てくれるからサービスですよ、ご贔屓にしてくださりありがとうございます)
「Thank you very much, Master.」(マスター、ありがたくいただきます)
「I gratefully accept it.」(ありがたく頂戴します)
ゲイツと███は再び「マスター、ありがとうございます」と言い、珈琲を一口飲んだ。
