Novel4 months ago · 1.2w chars · 1 pages

で、原作は変わってないんだよね?じゃあまあ……もう私が何やっても無罪か(楽観)

こんぎつねこんぎつね

前作へのブクマ、コメント、スタンプ、ウォッチリスト登録などの反応、ありがとうございます!!なんか続きました!いつも通り何も考えず書いてるんで捏造ガバとか誤字脱字あったら指摘お願いします。 キャラタグつけるべきか悩んだけどまあ無しでいいか。と思ったんでこのまま行きます。どなたか必要やろ!!と思った場合は付けておいてください。

えっらいことになった。秘めたる力の覚醒とか悠長なこと言ってられねえ。

「それで?この子の個性が原因ってことですか?」

初めての個性発動から間も無く。速攻でこわい人たちのところに連れてこられた幼女の運命や如何に――!?

……経緯としてはあれだ、道のど真ん中で突如轟燈矢がスポーンしたあの時。呆然とする人々の中で、一番動きが早かったのは彼の母、轟冷だった。

「……ぁ?おれ、は……」

「燈矢……?燈矢なの!?」

「……ぉ、母さっ、っ……?冬美ちゃ…………焦凍……?なん、だこれ……どこだ、ここ。夢?」

駆け寄る冷さんに抱きしめられて、泣き笑いの表情でぽろぽろ涙をこぼす絶世の美少年。
なんだこの全轟家推しのオタクが夢見た光景みたいな……宗教画?pixivで五千万回見た。

何?私の手から一体何が発されたの?集団幻覚の素かなんかかな?ぢっと自分のちまこい手を見つめる。どっからどう見てもただの可愛い幼女のおててだ。一体この手にどんな力が秘められていたというのか。

「燈矢、兄!?個性事故……?と、とりあえず、れ、連絡を、」

流石現役ヒーローと言うべきか、本人もあまりの事態に混乱してはいたが、即座に気を取り直して、その場にいた人(幸いなことにそこまでの人数でもなかった)たちを集めて言いくるめ、震える手で各所に連絡を入れ、情報が漏れないように諸々の……と、この時轟家の末っ子はめちゃくちゃ頑張って動いていたようだ。

そんな彼の頑張りの裏で、轟家母、長男、次女の困惑は相当激しいもので、なぜかついでに私の母まで揃って現場は大混乱だった。

「……ぇ、嘘……燈矢くん?」

知ってるんかい幼少期の轟燈矢くんをっ!!??
なるほど、母よ、さては年齢的に轟燈矢の幼馴染みだった系夢主か??幼少期の初恋とか奪っていった感じか???
多分感動の光景だけどこれ現実?マジで言ってる??とんでもないことになってない??

というか、マズくない?これ私の個性(詳細不明)が原因だよね?
轟燈矢こと敵の『荼毘』は紛れもなく強大な敵として暴れ回っていた張本人だ。その彼をなんかわかんないけどショタとして発生というか復活というか……なんかそういうアレをやっちまったわけでしょ?間違いなく危険因子だろ。死者蘇生だぞ??
発動した実感とか一切ないし彼を操れるとかできそうな感じも一切しない。制御不能そのものって状態で、あの荼毘相手にそんなことしちゃえる幼女ってもうダメ……ダメじゃん……!!

「おれ……俺がっ、もうこんな……こんな幸せな夢、見れる、はず、ないのにぃっ……ごめん……っ、ごめんなさい……!!」

顔面をぐしゃぐしゃにしながらも失われない美貌、すげえ。
でもこれ、多分この轟燈矢(仮)、荼毘として終わった記憶のあるやつだよな。いやー本当にマズいかもしれない。いやもう彼にはこれ以上何かをやる気力なんて無いだろうけど、そういう問題じゃないんだ。凶悪敵を精神そのままに復活させられちゃう力とか怖すぎるって。時間制限とかないの?これ。全然わかんないんだけど。私の個性なのに。

「燈矢……燈矢……ごめんね、お母さん、ずっと貴方に何もしてあげられなくて……!!」

「私も……あの時まで、ずっと何もできなくて……!!ごめんねっお兄ちゃんっ……!!」

小さな子供の姿になった愛しい我が子と兄に、それぞれ間近で、触れ合ってもう一度会えた奇跡に泣いて、後悔を叫ぶ。何度言っても足りない、ということなんだろう。赤と白、ぎゅうぎゅうと抱き合って団子になった3人はお互いに顔を真っ赤にして、ただ謝りあって泣き続けている。

それにしても儚げ美女二人に抱きしめられる儚げ美ショタの図美しすぎるな。全員泣き顔すら美しいってどういうことよ。金払わせろ??(現在4歳無職幼女)(所持金51円)
その3人を遠目に見る末っ子は、ぐっと感情を抑えたような顔で、今にも溢れそうなその涙を目に湛えている。お前も参加しろオラァ!!!!何一人離れてんだお前!!いけよ行けGO GO GO!!!!ついでに夏くんも呼んでこいオラァ!!!!

「……っあなたの個性が何であっても、母さん、あなたを守るからね」

……内心でオタクを丸出しにしているうちに、目に浮いた涙を拭って、母が覚悟をキメてしまった。

そうだよマズいんだ。私のこの手がなんかしらをやらかしてしまったせいで。これ今のうちに逃げればどうにかならない?

「……焦凍くんから突然意味わかんない連絡が来たと思ったら、現場の方が意味わかりませんね。ええと、その子のお母さん?多分合ってるかな?えー……お話聞いても、大丈夫ですか?」

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!手遅れof手遅れ!!!!CV:中村ァ!!!!!!なんっでオメー個性もねえのに事件が起こって5分もしねえうちに現着してんだっお前ぇええええ!!!!????いっくらなんでも早すぎんだろ!!!!!?????

と、いうわけで。軽い経緯説明終わり。冒頭に戻る。

轟家の紅白団子と私たちを回収したこわい人たち(公安)によってなんか物々しい感じで知らん建物に連れてこられたワケですが。
原因となる個性の内容が不明ってことで引き離すとどうなるかわからないため、轟団子も同席。燈矢少年がどういう反応を見せるかわからないからか、エンデヴァーの姿は流石に見当たらないが、轟夏雄氏も急遽呼び出されたようで百面相になりながら経緯を説明されている。顔を見た瞬間夏ぐん゛ごめ゛ん゛ね゛ぇ゛え゛え゛!!と燈矢少年の泣き声が加速してしまったため、未だに感情のジェットコースターから下車できていないようだ。

あのさあ!!行動がはえーんだよ!!スピーディーすぎるだろ!!??公的な機関のあれって普通動きが遅いことで有名だろ!!??このヒーロー公安委員会会長仕事早すぎィ!!!!

同じ部屋に放り込まれた瞬間轟団子に取り込まれたプロヒーロー、ショートはごべんなざいと枯れっ枯れの声で泣き続ける赤髪の少年(推定長兄)に張り付かれ、ずっとオロオロしていて役に立ちそうになかった。想像もしていなかった事態に、どう対応していいのかわからずぼのぼのみたいな汗かいて戸惑っている様子は私が実際には見たことないエンデヴァーの不器用概念を継承している感じだ。たすかる。

「それで?この子の個性が原因ってことですか?」

「た、多分……?ちょ、……燈矢兄、?あの……おち、落ち着いて」

「びぇ゛え゛え゛え゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ん゛!!!!!」

「あっあっあっ……たす、たすけてくれ……だれか……おかあさん……あっあっ姉さんたすけて」

アカン火が付いた幼児の泣き方してる。こういうのって持続時間短いはずなのにほんと永遠に泣いてる。これがラスボスに死ぬほど粘着質(要約)と言われた轟燈矢くんのガチ泣きですか。すげえな体力と気力が。
プロになってファンサもできる、子供の相手にもだいぶ慣れているはずのショートが形無しだ。めちゃくちゃ縮んだ兄という存在にどう対応していいのかわからず胸倉掴まれてただ爆音浴びてる。

そんな号泣している彼とは反対に、ただ座ってチベスナ顔をしているのが私だ。絵面のカオスみが過ぎる。

「あのね、ソラちゃんね、こせーのつかいかた、?が、よくわかんないの」

ホークスに寄って行って、ちょい、と服の端っこを引っ張ってチベスナ顔で口を開く私に、無言で頭を抱えるホークス。そうだね。個性ビギナーの幼女がこんな事態引き起こしてたらもうどうしていいかわかんないよね。死者蘇生とかなんて信じたくないしな。わかる。おんなじ気持ちだよ。

「そっ……かぁ……ええと、ソラちゃん。俺の名前はホークスって言います。あの子……赤い髪の子が出てきた時、何があったか覚えてるかな?」

ヘラ鳥と名付けられたのも納得の絶妙な笑顔を頂きました。猛禽系イケメンのスマイルうめぇ〜!!こんなん絶対タダじゃダメだろ。声も顔もいい男が気軽に幼女に近づくんじゃないわよ。初恋強盗が。そうやって今まで何人の婦女子をヒナ鳥ちゃんにしてきたんだお前。

「ん。ホークスちゃんはじみぇまして。ソラちゃんです。えっとね、さっきね、ソラちゃんのおててがねぇ、んわーってひかったのよ。おめめ、まびしくてね、たいへんだったの」

「ふむふむ、なるほどぉ。大変だったんですね。教えてくれてありがとうございます、ソラちゃん」

ちゃん付けスルーどころかちゃん付けをそのままで返せる。これはポイント高い。
要領を得ない幼児特有の説明にしてはわかりやすい方だろう。と虚無を帯びたチベスナ顔を向けると、ホークスは一つ頷いた。これは……特に何もわからないということがわかった。という顔だな。
ごめんな。多分溢れ出した妄想エネルギーが悪さをした気がするんだけど、困ったことに幼女としての私は一切彼らに面識がないから、発動条件は謎のままになると思う。

……ちなみにこれは子供らしくを意識しての幼女語だけど、噛んだのは素だ。呂律回り辛いとか言い訳できねえくらい綺麗に噛んだ。いやほんと喋るのが少なめなせいではあるんだけど、成長してても噛んでたなって感覚だったわ今の。
幼女が少し噛んだくらいじゃなんも気にされないことはわかってる。けどやっぱ恥ずかしいんだわ中身が歳食ってると!!!
あとホークスゥ!!幼女に対してもきっちり目を合わせて名前を呼んで丁寧な対応してくれてありがとう!!幼女的好感度爆上がりでもう惚れちゃいそうだわ!!

「この子の個性は……まだわかっていなくて……これが初めての発現なんです」

「それが、問題なんですよね……どう転んでも厄介事の気配がする……」

やりとりを見守っていた母の沈痛な面持ちに呼応するように、部屋の空気が少し重くなる。

ホークスは敵としての荼毘の恐ろしさを知っている。
轟家の面々も同じく。しかし警戒態勢を崩さないながらも、肝心の轟燈矢本人に敵意らしい敵意がないことは一目瞭然なので、困惑の方が勝っている様子。だってもう泣き方がガチ幼児なんだよ。泣き笑いからガチ泣きに変わってからはほんとすげえ爆音で泣き喚いてんだよ。
荼毘としての彼しか知らないホークスは、なんなら彼が本当に荼毘だったのかすらわからないくらいだろう。燈矢くんホークス視認しても声掛けられても見向きもしなかったし。気にせず永遠に泣いてるし。

……生前(?)の記憶、本当にあるのかな?欠けてない?塩対応だとかそういうの後でなとかそういう雰囲気すら一切無く無反応だったけど。羽根が無いからか??

「……ご両親『人形使い』の個性と『人形作製』の個性でしょ?祖父母も親戚も、大体似たような個性か無個性で今回の件に繋がりそうな個性持ちは無し……そっから『人間作製』に舵切るとかそんなんアリなんです??アリだとしたらすっっっごい困るなァ」

急遽母から貰った近しい血縁の情報をまとめたメモを読みながら難しい顔をして唸るホークス。はえ〜イッケメン。
でもまあ、ホークスの言う通りだ。それはそう。ンな進化段階すっ飛ばした飛躍的凶悪個性進化ある??しかも出来上がったのは死亡が確認されたはずの凶悪犯罪者。こちら完成品の轟燈矢氏です。なんてこの場にいる全員が頭抱える案件だ。わあすごい強個性!とかいう言葉で済ませていい話じゃあない。

「あと流石にお子さん冷静すぎませんか。なんか……個性の反動とか……大丈夫ですか?」

悩んでても《虚無》のツラから微動だにしない私の心配までできるのがすごいところだよね。しっかり全体を見ている。もう一人の小さいのが今爆音で泣いてるだけに釣られて不安になりもしない様子の私が余計に怖くなったんだろう。

「いや……この子は元から表情があまり出ない子で……泣く時は涙は出るんですけど声も殆ど出さなくて、私も最初は心配だったんですけど……お医者様によると特に問題はないみたいです……」

涙も轟家見てポロッと出たけどその後の騒動で全部引っ込んだしな。今の私はただのチベスナ。こればっかりはエケチェンの頃から泣き声も少なかったらしいので多分生まれつきの性質です。

びえびえ泣いてる燈矢くんをチラッともう一度だけ見たホークスは、クソデカ溜め息を吐きながら両手で顔を覆ってしゃがみ込んでしまった。
どうした。大丈夫かホークス。確かに現実は厳しいけど負けるな。がんばれ。私が言えたことじゃあないけどがんばれ。

「個性の内容が把握できていない以上、まずは効果時間や、個性使用に伴うなんらかの制限があるかどうかの検査をしましょう。個性を使った相手が相手ですから、色々とわかるまではこちらで用意した場所で暫く監視を受けてもらうことになると思います……申し訳ありませんが、これはほぼ確定ですね」

と、携帯端末を操作しながら言うホークス。まあつまり今現在監視のための場所を用意したり検査の準備したりの諸々が行われているんだろう。いきなり仕事がどっと増えてるわけだけど、いくら平和寄りになったとはいえ、ヒーロー公安委員会の仕事量は大丈夫なんだろうか。今後どうなっていくにせよ今起きてることだけでもクッソ迷惑かけるのは確実なんだけど。

「はい……ねえ、ソラちゃん。ソラちゃんのおててがどんな個性を使えるか調べるために、ちょっとお母さんとお泊まりすることになるみたい。おうちじゃないところで眠ることになるけれど、大丈夫?」

「ウン。おかーさんといっしょだし、ソラちゃんつよいこだから、だいじょーぶよ」

「きゃーえらい!つよい!流石お母さんとお父さんの娘ね!」

「へへっ」

和やかな会話をしているが、そういえば母も轟家、というか轟燈矢と面識があるんじゃなかったっけか。ぎゅっと私を抱き上げ、立ち上がった母の視線は、一瞬迷うようにぐすぐす泣いている紅白団子の中の赤い髪に吸い寄せられた。

「……彼が気になりますか」

視線に目敏い男ホークス、そうだよなあホークスは見逃さないんだよなあこういう視線と表情を!解釈一致です。ありがとうホークス。

「ええ、気になりますよ。一応、幼馴染ですから……まあ、あっちがどう思っていたかはついぞ一度も聞けませんでしたけれど」

ゆ、夢小説の気配がする……!!
母の返答に少しだけ目を細めたホークスは、少し考え込む素振りを見せた後、さっきのようなへらりとした笑顔に戻って、明るく言い放った。

「そうだったんですね。それはちょっと首突っ込むのは不粋っていうか、ヤボでしたね。すいません!あー……一旦隣の部屋でソラちゃんとジュースとか飲んで待っててください!用意は出来てますから!その間にあちら側のご家族にも話をしておきます!!」

ポンポンと頭を軽く撫でられて、母の腕から逃れて着地。手を引かれるままにてちてち歩いていく。
ドア横にいた公安の人に手招きされて、母と共にこの部屋を出て一回待機になるようだ。

「時間かかるかもしれないですし、付いてるうちの誰かに声かけていただければ、絵本とか軽食とかも用意できますんで!」

部屋から出る前に、偶々目が合った轟夏雄氏とホークスに向かって手を振る。
夏くん、精悍な顔立ちだが、やはり母親のエッセンスを感じる繊細な雰囲気がベリーグッド。どうせ彼も後で紅白団子に飲み込まれるのだろう。
指輪が見える。もう結婚して子供とかいるんだろうか。いそうだよな。生きてりゃいつか見られるかな。とワクワクしながら部屋を出た。

「……少し、良いですか?」

子供特有の体力も底を尽き始めたのか、時折咳き込みながらぐしぐし泣いていた赤髪の少年に声をかける。過去の写真では見たことがあるものの、己が見たことのない年齢、髪色。先程とは違い声掛けに反応した彼は泣き腫らした目元を真っ赤に染めて、じっとりとした不機嫌そうな目でこちらを見た。
ついさっきまで、声を掛けても見向きもしなかったその目の色は彼の父親、そして弟の片方の目と同じ、澄んだ青色。赤の中で鮮烈に輝く、強い意志の宿る青の瞳だ。

「…………」

子供らしいむくれた表情、不機嫌な態度相応の圧を込めた無言。それでも、ギラリと光る目は冷たいようで、尚熱く燃える、かつて見た彼の炎の色。

「……燈矢兄、燈矢兄?……返事くらいしようよ、ね?」

困り顔の妹に背中をポンポンと叩かれて返事を促されている。しかし彼から返事はなく、眉間の皺は深まるばかり。家族の服をぎゅっと握りしめた小さな手には傷一つ無い。あの時自ら晒した白い頭髪でもない。今の彼は、焼け落ちたあのツギハギの敵とは、顔立ちすら違うように見える。考えてみれば、一度骨が欠け落ちるほどに焼け爛れた物を無理にカタチにしたものじゃあ、生来の顔立ちから離れているのは当然のことだった。色合いは父親に、顔立ちは母親に似た、美しい子供だった。

「…………」

しかし、無言である。
返事は無い。ただ心底嫌そうな表情で睨まれているだけだ。
父親に似た色彩、母親に似た面立ち。幼いその容姿でこうも睨まれると、なんというか、普通に傷付く。子供からの冷たい視線こそが一番ダメージが大きいものだ。

「燈矢兄……あの……流石に少しくらい……」

ずっと兄を引き剥がせないままでいた末弟すら返事をしてやれと言い出している。しかしやはり絶対零度の視線は何も語らない。一瞬弟の方を向いて、ただじっとこちらを見ているだけ。

「燈矢兄……」

「……、……」

泣かれはしたがギリギリしがみつかれていない次男も声を掛けるくらいの重苦しい空気だ。しかしいまだに無言の彼は、こちらを睨む顔を少し和らげ、今度はしっかり上の弟へと向けて、数秒。チラリとこちらを見る目は再び絶対零度へ。

「燈矢」

響く声。叱りつける母親の声に近いが、それよりもずっと優しい色のそれに、ぴくりと彼の肩が揺れた。
母親の手が自分の握りしめた手を柔らかく解いて、その火傷の痕の残る頬に持っていくのを見開いた瞳で見た彼は、一瞬顔を悲痛に歪めた後、バツの悪そうな、それこそ子供らしい表情をして、少し俯いた。

「大丈夫よ」

手を離して、家族から一歩離れて。落とされる柔らかい声と微笑む顔に何を思ったのか、視線をあちこちにうろうろと彷徨わせた。母を、妹を、上の弟と、末の弟を見て、そうしてもう一度こちらを向いた視線と、俺の視線がバチリと合う。

「…………おれ、おれは」

掠れた声。散々泣いて喚いて、ガラッガラに掠れ切った声だったが、不思議とそれは、はっきり聞き取れた。

「今、本当に、ここに、いるのか?」

あの号泣と態度でわかってはいたが、最初にこの質問が出てくるということは、まあやはり、そういうことだろう。

「ええ。どういう仕組みかわかりませんが、死んだはずの貴方は、今間違いなく存在してますよ、俺の目の前に」

「……夢じゃ、ない」

「夢なんかじゃない」

「あの子の、個性か?」

「まあ、多分」

つい先ほど小さく可愛らしい事件の元凶様が出て行ったドアの方を見た彼に、歩み寄りつつ首肯を返す。泣いてはいたが、状況把握はできていたらしい。小賢しい。

膝を付いて目線を合わせる。

「じゃあ今度は俺から、逆に質問です」

「轟燈矢――敵名、荼毘。お前は今間違いなく生きている。今のお前に、社会に、ヒーローに……父親に、敵対する意思はあるのか?」

意外そうな表情を浮かべ、こちらをただ見ている荼毘に、語気を強めて聞く。

「少しでもあるのなら、」

「あるわけねえだろ。もう……あの時全部、全部焼き尽くした。アイツも、俺も。燃やし切ったんだ。ああ……そうだな、処分するなら今だ。簡単だぜ」

重ねた言葉へ食い気味に即答した荼毘の目は酷く透明で、真っ直ぐに此方を見ている。部下に目配せをするが、嘘ではないらしい。

両手を肩まで上げて、開いた手のひらを見せる様子に、確かに俺の知る荼毘の面影を感じる。

「なんせ今の俺は、残り火どころか燃えカスすら残っちゃいない。炭になってねえだけの、炎も出せない、ただのガキだ」

「……個性は、使えないんだな?」

「使えない。多分もう、妹にも喧嘩で勝てないよ」

小さくなった手のひらを見つめて、どこかで見た記憶のあるような、無いような表情でそんなことを言う彼の言葉に、嘘はない。これもそういう個性持ちの部下が頷いたから間違いない。

今の荼毘はあの壮絶な敵意、殺意……毒気が抜けている、と言うのだろうか。いや、毒気というより覇気がない。
これは本当に、ただの抜け殻のようなものなのだろうか。個性が使えないというなら、あの個性不明の少女の危険度は一気に下がる。元より下がっても十分過ぎるほど監視が必要な危険な個性ではあるが、とりあえず最悪は免れた。

「……そうですか!それさえ聞ければ、今は十分です」

息を呑んで見守っていた彼のきょうだいたちが胸を撫で下ろすのを視界に捉えながら、真っ赤なふわふわの頭を撫でる。

「触んな」

ふわっとした猫っ毛の感触を感じるより先にパァンッ!と良い音を立てて手を弾かれた。母親譲りの儚げで愛嬌たっぷりの顔面でチンピラみたいな態度。可愛げがない。まあいくら可愛い子供でも中身がアレだからな。仕方ない。

「……そんなトゲトゲしい態度せんで!こーんな小さい子に威嚇するのは大人としてよくなかったかなァ、と思っただけですよォ」

「あ゛ァ??」

「ほら、スマイルスマイル!!俺たちがそんなんじゃ妹さんと弟さんが不安になっちゃいますよ!!」

「……」

煽られて尚素直にチンピラの顔を引っ込めるあたり、俺の知っている荼毘とは本当に違うようだ。小さいナリでも、個性が使えるんだったら今のでもう俺のこと焼いててもおかしくない。

「わ、ちょっとお母さん!今は燈矢兄か焦凍にやってよ!」

「……ふふ」

娘の頭を撫でて満足げな表情をしている冷さんを見て心なしか寂しそうな表情をしている荼毘……轟燈矢少年。けど、どうも俺の目には外見の印象が拭えないくらいに愛されたがりの子供に見える。

「おいで、燈矢。ほら、夏雄と焦凍も、こっちに来なさい」

「いやっ俺はもうそんな歳じゃないって母さん!」

「いいじゃない。ほらこっち」

そんな顔するくらいなら、こっちを見てないで、とっとと行けばいいのに。

……いや、普通の感覚で言うと、見られているのが恥ずかしいんじゃないか?なるほど、アイツにもそういう感覚があったんだな。
ま、俺は気が使える男なんで、邪魔者は出て行った方がいいかな?(笑)

「緊急で聞くべきことは聞いたんで、俺は一旦仕事に戻ります。何かあったら呼んでください……それと、エンデヴァーさんにはまだ連絡していません。情報の共有はそちらで判断してください。あなた方がいいと判断したなら、その場合は俺から注意事項含め伝えときますんで」

言うべきことも今言った。荼毘をエンデヴァーさんに会わせるとどうなるかわからなかったし、伝えれば間違いなく彼は息子に会おうとするだろうから、個性事故が起きたことを伝えてすらいなかった。

……今回の騒動の原因となる彼女の母親が、アイツと幼馴染だっていうのも、何かしら関係があるかもしれない。個性の持続時間がどれほどなのかもわからないし、仮に時間制限もなくこれから轟燈矢が生き続けるなら、それはそれでやるべきことが山程出てくる。情報が漏れないように手を回さないといけないし……忙しくなる。

「それじゃ、また後で」

母親の笑顔には逆らえないのか、強引に引き寄せられた男兄弟に笑いかける長女、ぎゅむぎゅむと塊になって、くっついて笑い合う彼らの姿を、できればそのまま、エンデヴァー……轟炎司さんに、見せてやりたい。

勿論、荼毘に対してや、それ以外にも思うところはある。いくつもいくつも。それでも、あの人はきっと、この光景を心底望んでいただろうから。偶然にも転がってきたチャンス。奇跡とも言えるこの状況を使って俺に出来ることを、今は十全に熟そう。
あの戦いで傷だらけになって、長男のしでかした事でその後も散々な目に遭って。束の間かもしれない。けれどギリギリで焼け残った彼らの幸せを守ってやりたいと思うのは、かつて憧れ、救われた者としては当然だ。
私情ではあるが、公にすることができない個性事故なのは確かだ。少しくらい、この状況を彼に報いることに使ったってバチは当たらないはず。

今や世間で大人気なイケメンヒーローの末っ子くんも、望外の再会に目を輝かせて、普段の倍くらいは眩しく見える。
これから大変だが仕方ない。それが守れるくらいには、働かないといけない。
でも、いつもとは違って、今回は求める物が既に確定している。ハッキリ目に見える成果があるなんて、なんてやりがいのある仕事だろうか。

先ほど入れた連絡には、早くも返信が。想定外のトラブル以外はきっちり避け、出来る限りの障害を取り除いていれば、物事は円滑に進むものだ。

とんとん拍子に進みそうな時ほど邪魔が入るもの。だからこそ、対策は万全に。

「よぉし、もうちょっと頑張っちゃいますか!天逆くん、なんか言われたら俺に電話かけていいんで、こっちはお願いしますよ!」

「はい。会長もお気をつけて」

頑張るから、もーできればこんな事件、もう起きないでほしい。今回で終わりであってくれ。本当に、センパイを引き摺り出してでも手伝ってもらいたいくらいだ。

……なんて、逆に、考えない方が良かった気がする。フラグ的に。こういう時の俺の嫌な予感って、当たりやすいんですよねェ。

登場人物

ソラちゃん

遅れてきた主人公。なんか手が光ったと思ったらとんでもねえことになった(白目)。一見何も考えてないように見えるチベスナ顔標準装備の幼女。実は人の内面を読むのが得意でわりと小賢しい。

お母さん

燈矢くんとは幼馴染。小さい頃学校で仲良しだった。轟家とも付き合いがあったが、幼少期の間だけだった。初恋は燈矢くんだったかもしれない。今はパパ一筋よ♡

轟冷

子供たちをいっぱい抱きしめた。夢主のお母さんのことは覚えているし、ちゃんと気づいてる。折角近くまで来たんで後でご自宅までお土産持っていきますね^^とか言われてたからホークスが来たことには驚かなかった。

轟燈矢

なんか死んだはずなのに気付いたら小さくなってリスポーンしてた。幼馴染のことは焼け焦げた記憶の隅、朧げだが覚えている。お父さんには思うところはあるけど生前で十分。それにしちゃツンに見えるのはホークスとかがいたから。会えるなら会いたい。会って、普通の親子みたいに会話して、きょうだいと一緒に、ご飯を食べたい。
赤い髪だが炎は出せない。

轟冬美

めちゃくちゃびっくりしたけど、何より嬉しかった。ようやく兄弟みんなで触れ合えたことが。お父さんも、一緒がいいな。本当に、家族全員で……今度こそ。あんなガラス越しなんかじゃなく。

轟夏雄

根っこの部分でどうしても割り切りきれてなかったから、号泣する兄を前にひたすら困惑した。なんで今更ただでさえ複雑だった家庭事情が倍複雑になるんだ……!

でも、嬉しかった。

轟焦凍

ホークスの連絡を聞いてたんですぐ呼んだ。えらい。燈矢兄が突如出現して死ぬほど驚いた。それ以上に嬉しいし、家族みんなで触れ合えるのが楽しくてしょうがない。ハイライトがキラッキラに輝いている。この輝き、止めさせやしない。

ホークスちゃん

爆速で現着したえらいひと。事件は現場で起きるんです。色々考えている。これから先の未来、どうなるにせよソラちゃんとどうにか仲良くなっておかないとな、と思っている。

天逆くん

天逆 張狐
オリキャラ。薄めの金色の髪と糸目、ヒト耳の位置から生えた狐耳とボサボサの毛並みの尻尾がチャームポイント。通称逆張り嘘発見器。つい最近公安に入った若手。個性は『天邪鬼』。嘘ついてるやつがめっちゃ信用できそうに見えて、正直なこと言ってる奴が死ぬほど嘘臭く見える個性。生きづらいにも程がある個性だが、100%受ける印象が間違っており、逆に言えば嘘かそうでないかが確定でわかるという事。それを逆手に取って実質嘘発見器です!と前面に押し出していくことで無事就職した。有能。よくここまで生きてこられたなこいつ。

轟炎司

まだ何も知らない。

— End —

Comments 36

歌狂いが通ります!1 个月前

あり?燈矢さんって生きてなかったっけ?

龍龍3 个月前
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暗号屋猫3 个月前
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B
Byakugun白群3 个月前
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ワトソン4 个月前
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すてら4 个月前
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4 个月前
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P
pomme4 个月前

とても良きです……こういうのが読みたかった……!!!

あた4 个月前
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4 个月前
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キャサリン4 个月前
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米俵4 个月前
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Sakuria
Where every work blooms
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