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貴族院に魔王降臨!~7

柏木しおん柏木しおん

イタズラ好きな女神リーベスクヒルフェの思い付きで、洗礼式直前の7歳のフェルディナントは20年先までの記憶と知識、そしてシュタープと完全版メス書まで与えられました。これはその後のお話です。 貴族院はお茶会シーズンに入りますが、ジル兄がお茶会を上手くこなせるとはとても思えません。そこでフェル様は……。 その頃、城の執務室でゲオ姉様はエーレンフェストの将来に頭を悩ませておりました。 いろいろ捏造あり、原作との違いもあると存じますが、どうかお見逃し下さいm(_ _)m。

<フェルディナンド>
奉納式を終え、兄と私は貴族院に戻った。これからは社交の季節、貴族院に残っていた側近達は、我々の前に木札を山を作った。思いの外多い。

「例年、こんなにたくさんのお誘いがあるのですか?」

と兄に訊いてみたが、

「例年、木札は数枚なのだが……今年はずいぶんと多いな。」

と、兄も驚いていた。確かに前回の記憶とは違う。おそらくお茶会打診増加の原因は、エーレンフェストの成績急上昇であろう。何せ座学は、下級貴族も含むほとんどの生徒が初回か二回で合格しているのだから、その秘密を知りたいのであろうな。大したことはしていない。ただ、生徒同士を競争させただけで、前回のローゼマイン在学中の様な知育玩具がある訳でもない。秘匿する必要は無かろう。ただ……ジルヴェスターを単独でお茶会に臨ませるのは危険だ。成績向上絡みで、エーレンフェストの根深い派閥争いの事や、我が領地の神殿事情をぺらぺら話してしまいかねない。領内で派閥争いがある、という事はアウブの統治が上手くいっていない事と捉えられ得るし、神殿については他領ではまだまだ忌避の対象であり、エーレンフェストの事情を話すには時期尚早だ。面倒だが、兄と共に私もお茶会に参加し、兄を監視せねばならぬな。

<ジルヴェスター>
お茶会の件だが、お誘いの木札の量もさることながら、大領地からの誘いまであるのには驚いた。これまで我が領地など、大領地からはまるで相手にされていなかったのだが。弟は、エーレンフェスト生達の成績が上がったからだというが、それだけでこうなるものなのか?しかし……これまでまともにお茶会なるものをこなした経験が無い。どうしたら良いものか。側近達に相談するも、彼らも経験不足で私と似たり寄ったりだ。
こういう時に頼りになるのが、我が弟である!

「兄上、まずお茶会のお誘いの木札の内容を確かめて、父上や姉上にそれを確認していただきましょう。お誘いを受ける、受けないの判断は、子供だけでして良いものではないと思います。領地外交関係に関わりますから。」

まったくその通りだ。弟の意見を聞き私の側近達も感心しているが………こういう事は側近が提案してくれるものではないのか?私の側近はダメダメではないか……。

お茶会の件の木札を領地に送って3日後、返事が来た。

・大領地からの誘いは断れない。領地順位を考慮して優先的に話を進める事。
・全ての誘いをこなすには数が多すぎるので、下位領地に対しては複数領地を我が寮で開催するお茶会に招待する、という手も考慮する。
・お茶会の誘いを断った方が良いのは、これらの領地。………
・音楽の先生からのお誘いは名誉な事であるので、必ずお誘いを受ける事。もちろん!フェシュピールを忘れない事。また、得意な曲数曲をちゃんと練習した上で参加する事。
・お茶会の席での会話で、気をつけるべき点、言ってはいけない文言は以下の通り。………
・何か約束事を求められた場合はその場では即答せず、必ずこちらに知らせる事。勝手に話を進めてはいけない。特にジルヴェスターは気をつけなさい。

この様な長ったらしい指示が書き連ねられた木札が領地から送られて来た。字を見るに……これは姉上がご自身で書いたと思われる。最後の『特にジルヴェスターは気をつけなさい。』というところなど、姉上の声まで聞こえてきそうだった。胃がキリキリと痛んだではないか!
領地からの返事を待つ3日間の間に、弟と筆頭側仕えのユストクスの2人は何か忙しそうに作業をしていたが、その訳が最初のお茶会の2日前に分かった。どうやら、各領地の情報を集めていたらしい。

「兄上、これが明日のお茶会の台本です。」

台本!?そういえば今回の貴族院開始前に、成績向上委員会の説明の台本も渡されたな。あれを覚えるのはかなりきつかったが、またあの様な苦労をせねばならないのか!?

「フェルディナンド、お茶会で私は無言で通すので、其方が全てしゃべってくれ。」

と懇願してみたが、

「それは無理です、兄上。最上級生の兄を差し置いて1年生の弟が話すのはおかしいでしょう。兄上が侮られてしまいます。」

とすげなく断られた。

「私は侮られても構わないぞ!」

と言ってみたが、

「これは兄上個人の問題に留まりません。まず、私がとんでもない出しゃばりだと思われます上、エーレンフェスト自体が常識の無い領地だと判断されてしまいます。絶対に姉上に叱られますよ。」

と言い返された。

「報告しなければ良いだろう?」

とさらにしつこく言い募ってみたが、

「正確に報告しなければ、領地間の関係悪化の原因ともなり得ます。それは出来ません。」

ここまで言われれば、諦めるしかない。仕方なく、弟作成のお茶会台本を手に取った。

<フェルディナンド>
ジルヴェスターを”操り人形”状態にして、お茶会をこなしていく………。
正直言わせて貰えば、兄の言う通りに、私主導でお茶会の会話を進める事が出来たのなら、よほど楽だったと思う。お茶会のたびに台本を書くのは、さすがに疲れる。何せ台本を作成するのに、相手領地の情報を得る事から始めなければならないのだ。このために、私の側近達には大いに働いてもらった。ユストクスの集めた雑多な情報もかなり役立った。もちろん以前関わった下働きネットワークにも世話になった(このネットワークの情報提供は良心的料金設定なので、本当に助かっている)。その上、話がどう進むかがわからない。お茶会の流れのパターンを複数設定し、それぞれに対し文言を作成しなければならないのだから、実に面倒なのだ。それでも、さすがに5歳上の兄を差し置いてお茶会の会話を進めるわけにもいかないので、仕方あるまい。
ただ、幸いな事にジルヴェスターには演技力がある。相手領地は、ジルヴェスターがまさか台本通りに演じているなど気が付いていない様だ。それに、(アウブ候補としては駄目なのだが…)一見して表裏の無い人物とわかるためか、兄は人に好かれ易い。だから、お茶会は穏やかに進む事が多いので助かる。私はその横で、時折兄の言葉に相槌を打ちながら、そしてユストクスも私の後ろで柔らかく微笑みながら、ちゃっかりと相手領地から情報をいただく。相手が大領地の場合、時として弱小領地では知り得ない王族絡みの貴重情報を入手出来る事もある。第一王子が高みに上がった為か、現在王族内部の状態は落ち着いているらしい。第二王子と他の王子の魔力差や実力差は歴然としているらしく、第三・四・五王子の後ろ楯となり政変を起こそうという領地は今のところ無さそうだ。この平穏が続いている内に、第二王子にメスティオノーラの書を取得して欲しい。今はまだ無理だが、いずれ何とかして働きかけたい。
複数下位領地とのお茶会は、とても楽しいとは言えなかった。エーレンフェストの成績向上の”秘密”を明かしても、彼らはそれを信じず、それだけではなかろう、と無駄な探りを入れようとする。こちらとしては”秘密”以上の事は何もしていないので、本当に何も出て来ない。彼らは余程面白くなかったのだろう。お茶会の後半、彼らに嫌味ばかり言われて、さすがの私も辟易した。ただ、兄は嫌味をあまり理解出来なかった様で、

「あいつら、何を言いたかったのか、よくわからんな。」

などと、お茶会終了後にぽやんとした顔で暢気な事を言っていたが……これはアウブ候補以前に貴族としてまずいのではないか、と頭痛を覚えた……。

さて、本日は音楽の先生とのお茶会だ。これにはおそらく、王女も参加しているはずだ。前回はずいぶんと絡まれた。仮にも領主候補生の私を楽士扱いし、学年が上になると妙に艶かしい視線を私に向ける様になり、お茶会の度に非常に不愉快な思いをした。あんな思いはもう二度と味わいたくない。幸いにもジルヴェスターはフェシュピールが得意だし、声もなかなか良い。今回は彼に目立ってもらおう。そして、私は笑顔を封印だ。
まずは私と兄は連奏したが、兄に主旋律を任せた。年長の兄が主旋律を演奏するのは自然の事であり、兄もすんなりと受け入れた。兄は流れる様にフェシュピールを演奏しつつ朗々と歌い、これが王女に気に入られたらしく、その後、兄は3曲ほど単独で演奏させられた。皆に褒められて兄もまんざらでもなかった様だ。王女は最初のうち私の方に何度か目を向けた様だったが、私は王女の方に一切目を向けず、幼い子供らしく、用意されたお菓子ばかりを物欲しそうに見つめていた。しばらくすると王女は私への関心を無くした様で、お茶会の後半になると私に視線を向けることは無かった。作戦成功である!ジルヴェスターのいなくなる来年以降は、音楽のお茶会に招かれるほどの演奏をしない様に心掛ければ、やり過ごせるはずだ。これで、ローゼマインにも不快な思いをさせなくて済む。ただ………お茶会の最後に、音楽の先生が残ったお菓子を包み、私の方ににこやかな笑みを向けつつ

「ずいぶんとお好きな様でしたので、どうぞ。寮にお戻りになられたらお召し上がりくださいね。」

と渡されたのには参った。さすがに羞恥を感じた……。

<ゲオルギーネ>
今年の貴族院のお茶会シーズンもそろそろ終わり。これでお父様も私もちょっとは一息つけるわね。今年は他領からのお茶会のお誘いがこれまでになく多くて驚いた上、あのジルヴェスターが何かしでかすのではないかと気が気じゃなかったわ……。

「派閥に関係なく生徒達を班分けして競わせるだけで、ここまで全体成績が上がるとは思わなかったな。」

確かにこれに私も驚いたけれど、お茶会の件にはもっとびっくりよ。

「お茶会までこんなに増えるなんて、想定外だったですわねぇ……。」

幸いにも、フェルディナンドがお茶会関係の情報を逐一こちらに知らせてくれたので、大事には到らなかったけれど……

「ジルヴェスターも、大領地とのお茶会をこなせる様になったのだな。」

とのお父様の意見には、私は目を剥いたわ。

「お父様、お茶会の報告にちゃんと目を通されましたか?」
「そのつもりだが……。」
「全てのお茶会に対し、フェルディナンドがジルヴェスター用の”台本”を作成していた件はご存知?」
「台本?」
「ほら……ここの記載をご覧になって、お父様。ジルヴェスターからの木札よ。『フェルディナンドの予想していた通りの展開で………フェルディナンドの用意してくれた文言を言えば間違いなく……』」
「………そ、そういえば、貴族院が始まる直前に、成績向上委員会の立ち上げ演説の台本もフェルディナンドが作っていたな………。あれと同じか。」
「おそらくそうでしょう。フェルディナンド側やジルヴェスターの側近からは、ジルヴェスターを立てる意図でしょう、それを匂わす報告が上がっておりませんが、迂闊なジルヴェスターは………。」
「そうか……ジルヴェスターは、やはりだめか。歳の離れた弟に台本を用意させないと、お茶会でさえこなせないか。」

そろそろ、ジルヴェスターの今後の立場をはっきりさせた方が良さそうね。

「お父様、このままジルヴェスターを次期領主の立場に据え置くおつもりですか?」
「あの子はそのつもりの様だし、そうさせてやりたかったが……無理の様だな。」
「はっきり言えば、あの子がアウブになったらエーレンフェストは潰れますわ。当初はライゼガング派閥の娘を夫人にすれば、何とかなるかと思ったけれど……それもだめね。おそらくあの子は嫁の実家であるライゼガングの傀儡になってしまい、旧ヴェローニカ派との派閥争いが今以上に激化してしまうわ。しかも、領主会議で他領と折衝する能力も無いときていますからね。」
「それならば、次期アウブをどうしたら良いのだ?」
「まだ急ぐことは無いですわ。最近は体調がおよろしいでしょう?お父様、あと10年はがんばってアウブをお勤めくださいませ。そしてもう少し様子を見ましょう。」
「それしかないかな。私は体調を維持すべく精進するか。」
「お願いしますわ、お父様!それでジルヴェスターだけれど、卒業後にいきなり領地経営に関わらせるのは無理でしょうから、まずは神殿で私がしごきますわ。よろしいかしら。」
「そうだな、あれを遊ばせておく訳にも行くまいしな。頼む。……で、其方、次期アウブにはフェルディナンドを想定しているのか?」
「あの子が真っ当な生まれであれば、問題なくそうしていたでしょうが……婚外子と認識されておりますので、簡単には行かないでしょう。能力的には全く問題無いと思うのですが……残念ですね。」

これも、お母様のせいよ!!自身やジルヴェスターの立場を守ろうとして、とんでもない事をしてくれたわ!!

「確かにな。」

まあ!他人事の様に『確かにな。』なんて言って!お母様の悪行を放置していたお父様も悪いのよ!!自覚しているのかしら……。まぁ、今更責めても仕方ないけれど。

「ただ、星結びの相手如何で、あの子を次期アウブにする事は可能かもしれません。……といっても、まだあの子は10歳。焦らず良い方法を考えましょう。」
「そうだな。」

ここで、お父様が急に私に真剣な眼差しを向けて来たわ。え、どうされたの?そしてなんてつらそうなお顔をなさるのかしら………。

「ゲオルギーネ、今更言っても仕方の無いことだが……簡単にヴェローニカの言葉を受け入れず、自分自身で見て、考え、其方をアーレンスバッハなぞに嫁がせず、次期アウブとすれば良かった……。駄目な父親ですまない……。」
「お父様……。」

そうねぇ……例えば私が中継ぎアウブになって、フェルディナンドを養子、という事にすれば、多少はあの子の状況を良く出来るかもしれない。もしくは………今年の貴族院の状況を鑑みるに、フェルディナンドは表に立つより、補助役の方が得意の様だわ。なので、優秀で魔力量の多い娘を養女にしてその後アウブにし、フェルディナンドにはアウブ配になってもらう……これならば、一番丸く収まるのではないかしら!問題は、”優秀で魔力量の多い娘”がどこにいるかよねぇ。そんな都合の良い子が見つかれば良いのだけれど……。

— End —

Comments 28

いんこ1 年前
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みっち1 年前
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まおむ1 年前
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優里1 年前

お菓子を物欲しそうに見ているフェル様…あー!拝見してみたいっ!さぞや眼福でございましょうとも!!

ねぼ1 年前

ゲオ様(o⚑'▽')o⚑*゚フレーフレー (あ、でも、養女はまだ産まれてないです)

ひよ1 年前

お菓子を物欲しそうに見て、あらあらうふふとお土産に持たされるフェル様がレアすぎて🤣

S
sakura5519kaede1 年前
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柏木しおん1 年前

次回ですが、領地対抗戦の模様をお伝えします。フェル様、ちょっとした災難に見舞われる予定です(^_^; 。

柏木しおん1 年前

コメント・スタンプ、ありがとうございます!そろそろロゼマちゃんの気配が漂って参りました。ご本人登場まで、もう少しお待ち下さいm(_ _)m。 ジル兄の結婚事情も、この先明らかとなりますので、どうかお楽しみに!

T
tk1 年前
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すず1 年前
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ケイ1 年前

合う娘を養女にして、フェル様を婿にするか…?色々と悩みは、尽きません! フェル様の嫁は、まだ生まれて無いですよ~(笑)もう少ししたら、生まれるので…頑張れ!ゲオ様。(嫁に成るまで、十数年以上…ドゥルトゼッツェンに祈りましょう。頑張れゲオ様・笑)

Sakuria
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