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貴族院に魔王降臨!~6

柏木しおん柏木しおん

イタズラ好きな女神リーベスクヒルフェの思い付きで、洗礼式直前の7歳のフェルディナントは20年先までの記憶と知識、そしてシュタープと完全版メス書まで与えられました。これはその後のお話です。 お待たせ致しました。ベンノさん、ついに登場です!!まだ10台のベンノさんですが、すでに"商人の勘"はバッチリですよ! いろいろ捏造あり、原作との違いもあると存じますが、どうかお見逃し下さいm(_ _)m。

<ユストクス>
私は今、下町に来ております。下町ではもちろんユストクスなどとは名乗れません。長い名前ですと貴族だという事がバレてしまいますからね。下町では、それなりに金回りの良い貿易商”ユスト”と名乗る事にしております。貴族相手の貿易商ですと大きな店構えは必要ありませんし、下町の商人達とそれほど交流が無くても不信をもたれませんからね。服装の格を落とすも貴族の前に出ても失礼ではない程度で抑え、姿勢も少し前かがみに、そして歩幅は多少狭めに変えます。もちろん、言葉遣いにも気をつけます。ただ、貴族相手の商売をしているという設定ですので、そこまで下町風に変えなくても大丈夫なはずです。これで、問題無く貴族と付き合いのある商人と認識されるでしょう。
ギルベルタ商会は中央広場よりも城門寄りで見つけました。下町の富裕層や下級貴族を商売相手にしているらしく、なかなかの店構えです。店に入ると、20台半ばほどの非常に礼儀正しい男が応対してくれました。ほぉ、見た目通りのちゃんとした店の様ですね。

「ご都合がよろしければ、ご主人とぜひ話をさせていただきたのですが……。」

と切り出すと、

「どういったご用件でしょうか?」

私は自己紹介(もちろん、商人としての、ですよ!)をし、旅先で興味深い装飾品を見つけたので、服飾・装飾品の専門家であるこちらの主人の意見を聞きたい、という由を説明すると、この男は納得したらしく、主人を呼びに店の奥に向かいました。
彼が戻って来るまでの間、私は店内に並べられている商品を見回しました。上級貴族向けには少し格が足りませんが、下級貴族・平民富裕層向けとしてはかなり良質で趣味の良い商品が揃ってますね……。ほぉ、これなどはグードルーン用にも使えそうな良き飾りですねぇ。後で購入しますか。

「ユスト様、どうぞこちらにおいで下さい。」

と、私は店の奥に通されました。

店主ベンノは思いの外若く、驚きました。見たところ、私よりも少し年下ですかね。成人を迎え数年といったところでしょうか。……後でわかった事ですが、ベンノの父親が急逝し、急遽若いベンノが店を継がざるを得なくなったそうで。若さに似合わぬ苦労人の雰囲気が漂っていたのですが、それで納得です。
フェルディナンド様が作られた”簪”ですが、私が旅先の他領の村で偶然見つけたもの、という事にしました。どの様に使うかについては、髪の長めな店の見習い少年を使い、実際に髪をまとめて見せました。さらに、簪に色を付ける、もしくは簪の根元の部分の形を変えれば、それなりに高級感を出せるはずだ、という事も述べました。すると、ベンノは興味を持った様で、

「試しに10個ほど作り、店に置き、お客の反応を見てみたいと思います。」

ふふ、食いついて来ましたよ!次に、どこで製作するかの件です。

「商品の製作はどちらで?」

と訊くと、付き合いのある木工工房に頼んでみる、との答え。そこで私は

「これを作るのは難しくありません。人件費をもっと安く致しませんか?」

と、切り出すと……ベンノは怪訝な顔となりました。

「どういう事でしょうか?」

そこで私は最近の神殿事情(領主一族によって浄化された事。下町ではあまり知られていなかった様です)および孤児院事情を説明しました。

「私は神殿関係者に伝手がありましてね、どうです?試してみませんか?」

するとベンノはどうせお試しだ、という事で、この話に乗りました。

フェルディナンド様、上手く行きましたよ!!

<ゲオルギーネ>
フェルディナンドが先日神殿を訪れ、孤児院にジルヴェスターを迎えに行った折に、孤児院の惨状を見て、心を痛めた様です。

「孤児院の食事が足りていないそうです。それに暖房に使う薪も足りないので、孤児院の中はかなり寒かったです。ですので子供達は皆痩せ、顔色も悪く、咳をしている子もたくさんおりました。それに、洗礼式前の小さな子達は、地下室に押し込められているのですが……無理を言ってそこを見せて貰ったら……酷い状態でした……。その……まるで掃除がなされていない中に、飢えて動けない子供達が襤褸を纏ってただ寝転んでいるのです。亡くなる子もたくさんいる、との事でした……。汚物もそのままなためでしょう、酷い臭いがし、私はとても長居が出来ませんでした……。」

と、目に涙を浮かべながら、わたくしに孤児院の様子を語ってくれました。

「どうにかならないものでしょうか?」

孤児院は青色神官・巫女達の下げ渡しで成り立っているのですが、神殿改革の影響で青色の数が減り、逆にそれまで青色に仕えていた灰色が孤児院に逆戻りし、孤児院の生活事情がかなり厳しくなっている様です。確かに可哀想な話だわ。ただ、神殿の財政事情も芳しいとは言えず、どうしたら良いものか……と考え込んでしまいました。するとこの子、考えても見なかった案を出して来たのよ。

「孤児院の子達が自ら稼げば良いのではないですか?」

孤児院で工房を設け、簡単に作れる商品の製作を請け負えば、それなりの収入が得られる、と。孤児院には成人した灰色や成人間際の子達もいるので、問題無いだろうと。さらに、商品と商会には伝手があるので、一度試してみたい、と言うのです。

「もしかして、ユストクスの伝手かしら?」
「そうです。」

やはり……ユストクス、下町に出入りしているのね……。それにしてこの子、ちょっと変わっているわ。普通、孤児院などに意識は向かないですもの。(ジルヴェスターなんて孤児院に行ったものの、孤児院の現状など一切見ず、孤児達と遊んで、

「楽しかったですよ、姉上!」

これだけでしたからね……。)そしてただお金を出して施しを与えるのではなく、自力で稼ぐ方法を与えるなんて。それに、

「孤児院ですと、既存の工房に製作を依頼するよりも費用が抑えられますから、軌道に乗れば需要があると思いますよ。」

などと……10歳の子供とは思えない、というか、まるで商人の様な考え方をしているし。どこで、そんな事を覚えて来たのかしら?

<フェルディナンド>
孤児院工房の件をゲオルギーネ姉上に話したところ、翌日には父上から許可が出た。そしてその翌日、私はユストクスと共に孤児院に早速出向き、手先の器用な少年少女3人を選び、簪を作らせてみたところ……

「これなら商品として問題ありませんね!」

とりあえず、ベンノが言っていた通り簪を10個作らせ、それをベンノの渡した。代金は材料費と孤児達に与えたナイフ代、それに製作費を上乗せしたものだったが、ベンノは、

「工房に頼むと、この倍はかかりますよ。」

と言って喜んでいたそうだ。
という事で、孤児院工房は上手く行きそうだ。ローゼマインが5歳になり、あちらの世界の記憶が入るまで、何とかこの工房の火を絶やさぬ様にせねば!!

…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…

<ベンノ>
ユストさんの持ち込んできた簪だが、妹のコリンナの髪に付け外に遊びに行かせたところ、その日の内にコリンナの友達の親から問い合わせた来た。コリンナの髪を見て、子供達が同じ物を欲しがったそうだ。今度はその子供達の髪を見た近所のご婦人達が店を訪れた。こうして10個の簪は3日で完売した。
その後、俺はユストさんに頼み、今度は簪を追加で30個注文したが、これも一巡りもしない内に完売した。

これは行けそうだ!

俺の商人としての勘が働く。俺は、孤児院工房と正式な契約を結ぶ事にした。

<ゲオルギーネ>
フェルディナンドから孤児院工房の案を聞いてわずか10日で、ユストクスと繋がりのある店から孤児院工房と正式に契約を結びたいとの連絡があったそうね。

「お父様、フェルディナンドを孤児院長にしてみてはどうでしょう?」
「ゲオルギーネ、フェルディナンドはまだ10歳だぞ!?いくらなんでも孤児院の管理をさせるのは無理ではないか?」
「別にあの子一人で管理させる訳ではないですわ。文官や有能な灰色神官も付けるつもりよ。……先日お話しした孤児院工房が、正式稼動しそうなのです。下町の大店から、正式に契約を結びたいとの依頼が入った様ですの。あの子が思いついた事業ですので、折角なら任せてみません?たとえ失敗しても、領政に影響はないわ。あの子も幼いけれども領主候補生です。領地経営を学ぶ上で、こういった事業を任すのも良い経験になるでしょう?」
「そ、そうかもしれないが……まだ遊びたい年頃だろう?可哀想ではないか。それならほら、もうすぐ貴族院を卒業するジルヴェスターに任せるのはどうだ?」
「お父様!ジルヴェスターなどに任せたら、すぐに工房は潰れてしまうわ!!絶対に駄目です!!それにフェルディナンドは、ジルヴェスターと違って遊ぶよりも、何か仕事を与えた方が喜ぶはずよ。」
「そうか……。わかった、ゲオルギーネ、其方の良いと思った通りにするとよい。」

お父様って本当に人を見る目が無いわよね……。ジルヴェスターに事業なんか任せたら……想像しただけで怖気が走るわ。それに、面倒になるとこうやって人に丸投げするし。だからお母様が増長し、あの様になってしまったのね。
まずはフェルディナンドに孤児院長をやる気があるかどうか確認して……あとは孤児院の側近選びね。

それにしても……ジルヴェスターはどうしたら良いかしら?もうすぐ貴族院卒業だけれど、何をさせれば良いのやら。

<フェルディナンド>
……という訳で、私は晴れて孤児院長に任命された!これで孤児院工房を好きに使う事が出来る!!正式就任は貴族院終了後だが、貴族院に戻る前に一度ベンノと会っておくか。工房との契約の件もあるしな。

…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…

<ベンノ>
俺は今、マルクと共に神殿に向かう馬車の中にいる。どうしても緊張を隠せない。

「マルク、孤児院長はお貴族様なのだろうが、どの程度の貴族かわかるか?」
「それが……どんな方が孤児院長をなさっているか、情報が無いのですよ。」
「ユストさんの話では、神殿改革とやらが行われ神殿の役職には領主一族が就いたというが、まさか孤児院長も領主一族ではないよな?」
「……情報が無いのですから、否定は出来ません。」
「マルク、そんな事を言わないでくれよ……。俺は下級貴族とはやり取りした事があるが、領主一族など見た事もないぞ。」
「私だって同じです、ベンノ様。でもここまで来たら、引き返せません。とにかく、丁寧な礼を尽くせば何とかなるでしょう。相手も鬼や魔王ではないでしょうから。」
「そ、そうだな……。だが……うぅ……胃が痛むな。」

心の準備が出来ていない内に、馬車はあっさりと神殿の門前に着いてしまった。門番に今回の訪問の由を伝え、しばらくすると、神官の一人がやって来た。

「ベンノ様、ご案内致します。」

非常に礼儀正しい神官に孤児院長室に案内され、扉の先には……子供が居た。10歳になるかならないかの……一瞬少女と思ったが、服装からは少年なのだろう。長い水色の髪を三つ編みに纏めた、作り物の様に美しい子だ。この子が孤児院長だと!?服装から鑑みると、かなりの高位貴族だろうな。そして、さらに驚いた事に、ユストさんがこの子供の脇に立っている。それも、どうみても貴族としか見えない服装で!!どういう事だ?
とりあえず、貴族向けの長ったらしい挨拶を交わし、改めて顔を上げると……

「ベンノ、こちらはアウブエーレンフェストのご次男であらせられるフェルディナンド様です。この度、アウブから孤児院長を拝命されました。」

うわ……領主の息子か!最悪の予想が当たってしまったぞ………。胃がきりきりと痛む……吐血しそうだ。

「そして私は、フェルディナンド様の筆頭側仕えのユストクスです。」

ユストさん、貴族だったのか……。しかも、領主の息子の筆頭側仕えとなると、上級貴族だろうな。全く見抜けなかった……。くそっ!俺もまだまだだな。

…☆…☆…☆…☆…☆…☆…

……この後の事はあまり覚えていない。とにかく緊張しまくり、胃が溶けてしまいそうなほど痛んだ。

孤児院を辞し帰りの馬車に乗って、やっとまともに息がつけた。

「ベンノ様、ユスト様、いやユストクス様がまさか上級貴族の方とは思いませんでしたね。」
「マルクも分からなかったのか?」
「はい、ころりと騙されました。でも私達に対し、気さくな態度で応対して下さったので、助かりましたね。」
「確かにな。貴族としては珍しい、というかかなり異質なお方だな。」
「それにしても、領主のご子息には驚きましたね。」
「まったくだ。最初、お飾りの孤児院長かと思ったが、まるで違ったな。」
「まさか……ご自身で契約書面を作成されるとは……今でも信じられません。どう見ても10歳になったかならないかのお子様でしょうに。」
「領主一族ってのは、子供のうちからこんな事をやらされるのかねぇ?たいへんなものだ。」
「どうなのでしょう?あのお子様は、見るからに利発そうでしたが。」
「それにしても、契約内容は良心的だったな。こちらの利をかなり配慮してくれた。」
「上位のお貴族様といえば平民に対して横暴、という印象がありましたが、そうではない方もいらっしゃるのですね。」
「少なくともあの坊ちゃんは、商売の上で俺を対等に扱ってくれたな。」
「あのお子様が次の領主様になるのでしょうか?」
「次男といっていたから、違うのではないか?」
「少し残念ですね。」
「それにしても、これまでの人生で一番緊張した。胃がどうかなってしまいそうだったが……マルクは平然としているな。」
「何をおっしゃいます、ベンノ様。私も足の震えを誤魔化すのにかなり苦労をしていたのですよ。」
「そうか……とりあえず、店に戻ったら一休みしよう。」

<ユストクス>
いや~~~~、ベンノの慌てぶりが実に面白く、笑顔を隠すのに難渋しましたよ。それに、私の平民への変装術も見破られなかった様で、私としては満足ですよ。

「まだベンノは若いから、其方の変装に引っ掛かったのだ。今後、ベンノが経験を積めば、其方の嘘など簡単に暴かれるであろうな。」
「おや、フェルディナンド様、ベンノの事を良くご存知で。」
「何せ前回は、時折、共に酒を酌み交わす仲だったからな。」
「え!?領主候補生のあなた様が平民とですか?どういう事ですか!?」
「ふふ……。まぁいろいろあったのだ、前回は。」

う~~~む、何があったのか非常に気になります。そのうち、絶対に理由を突き止めてみせましょう!!

— End —

Comments 25

M
M Y1 个月前

ベンノさんのお父様はもう高みに上がっていたのですね

柏木しおん11 个月前

コメント・スタンプ、ありがとうございます。”予言者”マルクさんの旦那様呼び……そうだったかもです(^_^; 。確認してみます。ご指摘ありがとうございます!

まおむ11 个月前

(マルクは「ベンノ様」ではなく「旦那様」と呼んでいたような?)

R
rkira1 年前

魔王を斜め上に予言した番頭マルク 聖女の予言も出そうですね?しおん様😏

いんこ1 年前
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まおむ1 年前
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夜猫1 年前
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S
sakura5519kaede1 年前
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clarte1 年前
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tk1 年前
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すず1 年前
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フラグ1 年前
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