注意書
このお話は名探偵コナンのアニメがある世界で生きてた前世の記憶がある米花町民な小説家(名前は中禅寺秋子)(生粋の米花町民故に殺意が高い)(幼馴染みというブレーキがあるので辛うじて一般人してる黒幕&番犬系乙女)が。事件発生率バリ高な米花町で幼馴染みの爆処の萩原さん(現在は捜査一課の刑事さん)とショック・スリル・サスペンスなラブコメをする話。
これは自認が怪物で番犬な幼馴染みの萩原さんの強火担な主人公(番犬というかケルベロス)と年上の幼馴染みにベタ惚れだからこそ外付け良心にしてブレーキ役をしてる萩原さんの事件簿です。
今回は『萩原さんが盗作騒ぎのときに中禅寺先生の犯行を防げなくて、中禅寺先生が萩原さんの前から消えた』世界線の話。添える程度にオメガバース設定。本編では病み度控え目な萩原さんが全力で病んでます。
書き癖が強め。
たぶんあるだろう誤字脱字は読み流してください。
ぼんやりと蝉時雨を聞いていた。
間断なく降り頻るそれにサイレンが混ざっていたことを覚えている。
地面に倒れ、動かない男から私は目線を大きく上にずらして積乱雲が浮かぶ空を見上げ。震える声音で私を呼ぶ年下の幼馴染みに振り返った。
「秋、姉ちゃん?」
「ごめん研二君。どうやら私が殺してしまったらしい。君になら捕まっても良いのだけど。今はまだ、捕まる訳にはいかないみたい。だから──」
さようなら研二君と微笑んで私は雑踏のなかへ逃げ込んだ。
ああ、これで私は正真正銘のひとでなしだと。憎らしいほどに鮮やかな積乱雲が浮かぶ青空のなかにそのまま溶けて消えてしまいたかった。
身体は子供、頭脳は大人な迷宮なしの名探偵が活躍する世界におぎゃーと生まれて三十一年。
私、中善寺秋子改め関口巽子は大阪に住みながらそこそこ売れてる小説家をしています。この口上からなんとなーく察するひともいるでしょーが私は前世持ちだったりします。
前世の記憶が戻ったのは米花町で人を殺した瞬間でした。うん、思い出すのがあまりにも遅すぎた。殺した相手は私の小説を盗作した新進気鋭のミステリ作家。
審査員を務めていた公募作品を掠め取って自分の作品として発表した不っ逞ヤローです。
なお出版社も共謀してる可能性あり。しかし当時中学生で社会的立場がないに等しい私の訴えは握り潰され、反対に名誉毀損だと訴えられて。示談という形にされてしまった。
それを生粋の米花町民たる私が許せたか?というと御察死案件でした。ようは、まあ。殺っちまいました。
前世の記憶が戻ったせいで前後の記憶が曖昧だけども、地面に倒れるミステリ作家をナイフを持って見下ろしてたので。十中八九私が殺っちまったのだろう。
ぼーぜんと。しかし頭の片隅で冷静に死体の処理や証拠の隠滅を考えていると幼馴染みの男の子に声を掛けられた。男の子の名前は萩原研二。
隣近所に住み、赤ん坊の頃から見守って来た可愛い幼馴染みが青ざめながら私を見ていた。
ああ、もっとも醜い姿を一番知られたくない子に知られてしまったと私は絶望し。手にしたナイフで喉を掻き切ろうかとして気付く。研二君。もしや爆発物処理班の萩原研二では?と。
前世の記憶によればトリプルフェイスの降谷某の警察学校の同期の一人で、今から十年後に爆弾の解体中に亡くなるとかなんとか。おっと、自害してる場合じゃなさそうだ。
弟のように可愛がってる大事な幼馴染みの死亡フラグを折りたい。でもいま捕まったらきっと研二君の爆死を防げないだろう。
未成年の犯行とは言え殺人は重罪。犯罪者である私が警察官となった研二君の側に居ることを周囲が許さないだろう。あ、逃亡しようと一秒にも満たない思考時間の末に結論を出した。
私は研二君が駆け寄るより早く雑踏のなかへ逃げ込んだ。幸いにも私は貴重品を肌身離さず持ち歩く癖があった。身ひとつで逃亡可能だったのでその日の内に東京を離れて関西に向かった。
そのまま、歳を誤魔化して短期のアルバイトを繰り返して資金を貯め。非合法な手段で新しい戸籍を確保した。新しい名前は関口巽子だ。
予想外だったのは黒の組織に目をつけられて構成員にされ、あと十年間は絶対に死ねないので死に物狂いで与えられる任務をこなしていたら幹部に昇格したことだろう。流石に噎せた。
幹部昇格と同時にマンハッタンというコードネームを貰ったけれども原作にそんな幹部居たかな??
ミステリ作家として活動しながら黒の組織の幹部マンハッタンとして後ろ暗いお仕事をする日々のなか、幹部候補だと紹介された三人に心のなかで噎せた。
わぁい、研二君のお友達が二人も組織に来ちゃったよ···!!私、知ってるよ。君たちNOCだってさァ!!
研二君の為にもこの二人だけは死なせる訳にはいかない!!という訳で出来るだけ幹部候補の三人。諸星大と安室透、緋色唯を気にかけてたら。なんかやけに懐かれました。
会う度にぐいぐい来るのはどうしてかな??ハニトラ?ハニトラか??幹部歴がまあまあ長いからなんか情報引き出したいのかな三人は。
「なあ。マンハッタンはほんとーに第二性はβなのか?Ωじゃなくて。」
『昔、診断された第二性はβ性だった。フェロモンがわからない私がαやΩな訳がない。ましてこの二つに付き物の発情期が私にはないのだから。』
正体バレを避けて声を首に巻いているボイスチェンジャーで変えながら緋色唯、本名は諸伏景光君の問いに答える。
いまは黒の組織の末端が経営するbarで取り引き相手を待っているのだけれども諸伏君はじーっと私を不思議そうに眺める。
そうそう、この世界。オメガバース要素があったりする。オメガバースというのは男女を示す第一性以外に三種類の第二性を持つ人間が居るというもの。
特権階級に多く身体能力に恵まれたα性にすべての能力が平均的なβ性。そして男女に関わらず子供を産むことが出来て周期的に発情期。ヒートが来るΩ性だ。
中学生の頃にあった一斉検査の結果はβ性だったと諸伏君に答えるとカウンターからバーテンダーに扮した安室君。降谷君が私の名前となっているマンハッタンを差し出す。
「残念です。あなたとは運命たりえないのが。」
『心にもないことを言うものではないよ。私のように部屋の隅でじめじめして、苔でも生えやしているのがお似合いな根暗者を玩んだところで埃の一つも得られないぞ。』
「本気なら良いのか?」
「諸星。彼女は僕が口説いてる途中だ───!」
「見たところ芳しくないようだが。」
バチリとはぜたのは火花か殺気か。情報を得るためとは言えこんな喪女を口説ける君たちはすごいなとカクテルで唇を湿らす。
いまはまだ死ぬ訳にはいかないから握っている情報のすべてを三人に渡すことは出来ないけれども。
何時か私が知る情報は全部あげようと考えながら現れた取り引き相手に黒の組織の幹部らしく悪辣に私は微笑んだ。
「よごれっちまったかなしみに──。ねぇ、研二君。私はどこもかしこもまっくろだ。だから余計に君がとても眩しく見えて。泣きそうなんだ。」
黒の組織の幹部マンハッタンとして生きて来た私の手は真っ黒だ。だからもう、君の前には姿を見せることは出来ない。
そんな資格はとうに無くしたのに、君を恋しがる私はとんでもない恥知らずだと承知の上で。ただ一度、ただ一度切り。君の前に姿を見せようと思うんだ。
構成員から得た情報を元に警視庁に犯行予告を送り付けた爆弾魔の住むアパートに踏み込み。
壁に貼られた幾つかの切り抜きに目を通して此処かと高層マンションの切り抜きを剥がし、迷いなくアパートの前に停めていた車に乗り込む。滑らかに走り出した車のなかで手にいれていた電話番号を携帯に打ち込んだ。
『どちらさんで──?』
記憶にあるものとは違う大人びた声に束の間息を飲み、呆けてる場合じゃないなと私はボイスチェンジャーを剥ぎ取り。久し振りだね、研二君と膝に広げた爆弾の設定図を広げ。
手こずってるそうだから力を貸そうと淡々と爆弾の解体順序を告げると。待った、待ってくれ。本当に秋姉ちゃんなのか···!?と研二君が声を荒げたから。
誕生日に研二君がくれたのが深紫色のリボンだったことを髪を結わえるリボンに触れながら答えれば研二君に震える声でずっと探してた。今までどこにいたんだよ···ッと問われて。
ごめんね、それは答えられない。もしも研二君が生きてそこから帰れて私を見つけ出せたら答えるよとぐすぐすと鼻を鳴らす研二君に泣き虫さんと笑い。
ニッパーは持った?よろしい、今から言う順番でコードを切って。焦ることはないけど急いでねと指示を出す。爆弾は遠隔装置がついている。
その装置を動かすコードが無事に切られ、爆弾の解体が終わったのを高層マンションの前に停めた車の窓から見守る。
どうにか研二君を死なせずに済んだみたいだと忙しなく行き来する警察官の合間を縫って、凛々しい青年に育った研二君が駆けてくる。
だから運転席に座る降谷君に車を出すよう合図すると。会わなくて良いんですか?と聞くから、会う資格なんてないものと笑って動き出した車の後部座席に深く座り直し。顔を覆って吐息を吐き出す。
研二君、君を助けられてよかった。これでもう私に未練はないよ。ああ、でも警察学校同期組は降谷君を残して死ぬ筈だから彼らの死亡フラグを折っとかないと。研二君が大事にしてるモノは守ってあげたい。
だからあと少し、あと少しだけ頑張らないとだなと運転席の鏡越しに気遣うような視線を送ってくる降谷君には気付かないフリをした。
そんな訳で折ってやりましたとも。全員の死亡フラグをベッキリと!一番ヒヤヒヤしたのは幹部になった諸伏君にNOC疑惑が浮上した時だった。
警察内部に黒の組織の内通者が居てNOCリストを流出した結果、諸伏君は組織にNOCバレするという流れになる筈だったのだけれども。
実はこのリストは組織を撹乱する為に作られた偽物で、組織の弱体化を謀る警察の罠だと裏付ける有力な情報を流し。内通者こそ組織を裏切る鼠だったのだーと始末させました。
伊達に幹部を長年勤めていない。内通者よりも私の証言が信じられた。その代わり、予定調和というか諸星君のNOCバレがあったけども。
スコッチこと諸伏君は生存して元気に黒の組織でバーボンこと降谷君と幹部をしてるよ!よし、勝った!第二部、完──!!あとは組織の情報をぜぇんぶ降谷君と諸伏君にあげて私はこの世からおさらばするだけ!!
出来るだけ苦しんで死のうと用意しましたよ毒薬!!結構前に良い毒薬ないかな?ってマブダチの志保ちゃんに聞いたらくれたよ!!
おっしゃ。あとは死ぬだけだ~~!!でもその前に聖地巡礼がしてみたいな!!
せっかくだから噂のハムサンドを食べてから死のうかな~~!って思った一時間前の自分を心底ぶん殴りたいデス。
トレードマークの真っ黒なお洋服を脱いでうきうきルンタッタ。喫茶ポアロに向かったらちょうど食事を終えた元爆処で捜査一課に所属してる松田君と研二君が出てきた。
「秋姉ちゃん──ッ!」
「あーっ!!怪盗KID.があんなところに!!」
明明後日の方向に指を指して、周囲の視線がそっちに向くと同時に私は駆け出した。
このあと死ぬ気だったから車とか用意してない!!あ~~、よく考えたら米花町は研二君の行動範囲内なのに聖地巡礼なんて考えた私は馬鹿かな!?馬鹿だよ!
そっと後ろを振り向くと研二君がものごっつい真顔で追い掛けて来る。真顔、すっごく真顔。
額に血管が浮き上がっていることから超絶お怒りあそばされている!!あらやだ、今日が私の命日か。
まずい、まずい。研二君の経歴にちょっとでも傷を残さない為にさっさと死ななければ、入り組んだ路地裏に辿り着き。私は息を切らしながら懐からピルケースを取り出して毒薬を口に放り込んで無理矢理に飲み込む。
途端、身体を襲う異様な熱さに膝をつく。早く早く効いて。そう祈りながら激しい痛みに呻きながら倒れる。
その間際、焦りを滲ませた研二君に抱き留められたような気がして。そんな筈がないかと目蓋を閉じた。
まぁ、結果から言って死に損ないました。目を覚ましたら知らない部屋。着た覚えのないお洋服に戦慄きながら、自分の手がなんだかちょ~っと小さいことに気付いた。
鏡がないから正確な歳はわからないけど。十六歳ぐらいに若返っている。え、あの毒薬。もしかしてAPTX4869だったのかな。にしては幼児化じゃないのはなんでだろう。
いや、それよりも此処はどこなんだろうかと。ベッドからそろりと抜け出して歩き出したら、足に何かが絡み付いてぺしゃりと転けた。
ベッドの脚から細くて長い金属の鎖が伸びていて私の足首にガッチリと嵌まった足枷に繋がっていた。おっと、こいつは予想外が過ぎるぜ。もしや私、監禁されてるのか。
誰がなんのために私を監禁したんだろうかと頭を捻る。心当たりがまったくないぞぅ。
いや、アレかな。黒の組織の秘密を知りすぎたから、もう野放しには出来ないと思われてRUM辺りに監禁された??それなら口封じに殺した方が簡単だしな···。
わからん、まーったくわからんと鎖をどーにか出来ないかなと格闘していると部屋の扉が開く。
現れたのは研二君だった。思わず目を丸くして固まる私に研二君は逃げようとしたんだ?と目を細めた。生存本能がハチャメチャに仕事するぅ──!!
ジンとベルモットにどっちとなら寝れるかって言われてアイリッシュを選んだ時よりも生存本能がヤバイと言ってるぞぅ!?
研二君は物音ひとつ出さずに、床に座り込む私の前に立ち。いま、誰のこと考えてたのかな秋姉ちゃんと私を見下ろした。照明の真下に居るせいで影が出来て研二君の顔がわからない。
黒の組織に入って恐怖心の類はとっくに擦りきれた筈なのに目の前に居る研二君に心の底に辛うじて残っていたらしい恐怖心がびゃあびゃあと怖くて泣いている気がする。
「考えるもなにも研二君のことしか考えてはいないけど。」
「えー、本当かなぁ?」
膝を屈め、目線をあわせて。きゅるんと女子高校生のように両拳を顎の下に置き、にぱにぱ笑う研二君に可愛いなとスンと真顔になる。
こてりと首を傾げて嘘だったらどうしよっかなー?と微笑む研二君の目が澱んでさえいなければ頭をわしゃわしゃして撫で回してた。
「研二君が私を監禁してるんだよね···?」
「監禁じゃないぜ。」
「あ、違うの??」
「そう。監禁じゃなくて同棲だよ秋姉ちゃん。」
「おっと。研二君のなかで同棲と監禁は何時から同義になったのさ!?」
「十年前からかな。」
「やけに具体的な年数を言われたぁ···。」
「秋姉ちゃんが逃げた時から。ずーっとこの日を待ってたんだよ。」
よっこらせと私の両脇に手を差し込んで持ち上げて、くるっと身体を反転させて研二君はベッドに座り。私を膝に乗せる。
にぎにぎと私の手を握りこみ、秋姉ちゃんってこんなに小さかったんだなと研二君は感嘆する。
いや、私が小さいのは飲み込んだAPTX4869のせいなんだけども。一般人の研二君にそれを言うのはなと楽しそうに私の手を握る研二君に言葉をそっと飲み込んでたら、ぎゅむーっと抱き締められ。肩口に研二君の頭が乗る。
やっと捕まえたと。煮詰めて煮詰めて焦げ付く程に溶かした砂糖みたいに、甘くてどろどろした声で研二君がくすくすと笑う。突然のイケボ。鼓膜に直接叩き込まれた美声に身体が跳ねた。
思わず距離を取ろうとしたら、腹部にガッチリ回された腕が更に狭まり。ダーメ、もう逃がさねぇよ、秋姉ちゃんはと研二君は私の身体の向きを変える。
研二君の膝に跨がる形で真っ正面から顔を見ることになって目を泳がせる。だって研二君、ハチャメチャに顔が良いんだよ···。
小さい時は可愛さ全開だったのに成長したらこんなものすごい美青年になるとはこの李白の目をしても以下略、以下略。
「秋姉ちゃん。」
「んえ?」
顎を掬い上げられたかと思えばがぶりと口付けられた。頭に疑問符をぽこすか量産しながら何度も何度も口付けられ、よくわからないままじわじわと体温が上がる。
シャツの裾から入り込んだ手に背中を撫でられたところで正気づき。待って、待とうか。そーいうことは好きな人としなよと研二君の肩を押し返す手を掴み。熱い息を吐きながら研二君は秋姉ちゃんが好きだからしてるんだよと手のひらに口付ける。
「嘘だ···。だって私は警察官である研二君が大嫌いな人殺しで。君に憎まれこそすれど好かれる筈がない───!!」
「···秋姉ちゃんは殺してない。アイツを殺したのは秋姉ちゃんじゃないよ。」
「え?」
「あのミステリ作家。奥さんが居たのに愛人を何人も囲ってて、それにキレた奥さんがミステリ作家の弟と共謀して殺したんだ。俺さ、どーしても秋姉ちゃんが殺したことに納得出来なかったから警察官になって直ぐに調べたんだ。」
頭がキレるダチがいたから真相は驚くほど簡単にわかった。当時の秋姉ちゃんが真相に気付かない筈がない。
だから、秋姉ちゃんはアイツを自分が殺したことにしたかったんだってことも察した。
「憎んで、憎んで。憎みきったアイツを殺すのは自分でなくてはいけないって秋姉ちゃんは思ったんだよな───」
あの日、ぼんやりと蝉時雨を聞いていた。地面に倒れたまま動かないあの男を見て私は確かに思ったのだ。先を越されてしまったと。
弾かれたように顔を上げた私に研二君は顔をくしゃりと歪ませてズルいよなと目に澱みを孕みながら笑い出す。
「ズルい···?」
「ああ、そうだよ。あの日、あの瞬間。秋姉ちゃんの思考も心もアイツが独り占めにしたんだからな──!!」
アイツが、アイツのせいで秋姉ちゃんは俺の前から消えた!それだけじゃない。
「アイツは一生。秋姉ちゃんの心の傷になって秋姉ちゃんの心に残り続けるだなんて妬ましくて気が狂いそうだった···ッ!!」
おっと、雲行きが可笑しくなって来たな。衝撃の事実に驚き過ぎて恐怖心が強制的にOFFったので研二君のおどろおどろしい告白に突っ込めるだけの余裕が出たけれども。
研二君の発言が秋姉ちゃんはちょ~っと気になるなァ!?病んでる?病んでるの研二君!?君からそこはかとなく病んでる気配がするのは秋姉ちゃんの気のせいかな~~!
顔をくしゃくしゃにしてズルいと繰り返し、眉を下げてほたほたと泣く研二君に私は頬を包むようにして手で挟み。研二君は誤解してるよと主張した。
誤解···?と拙く繰り返す研二君にアイツを殺せなかったのは至極残念だけど。アイツが付けた傷なんてもう消えてるよ。
あの日、あの瞬間に。私がもっとも絶望したのは人を殺したい程に憎んで醜くなった姿を君に見られたことだものと研二君と額をあわせた。
「···君に嫌われたと思って怖くなったの。君が、研二君が私を拒絶すると思ったから。」
私、君に嫌われたら生きていけないんだよ。だから、君に拒絶される前に逃げ出した。どうしてもまだ死ぬ訳にはいかなかったから。
「君が私を拒絶する前に逃げて、逃げて──」
とんでもない悪党になっちゃったとから笑いを浮かべた。
あの男を殺していなかったとは言っても私はもう悪党のなかの悪党だ。
君に嫌われたって仕方がないと研二君の頬に触れていた手を離せば強い力で握り締められた。
「秋姉ちゃんは頭が良いのに馬鹿だなぁ。」
「その通りなんだけど突然の罵倒は心に刺さるんだぞぅ!?」
研二君に罵倒されたら泣いちゃうと凹む私を抱き締めて。しかも鈍感なんだなと笑う。
「秋姉ちゃんに殺して貰えた男に嫉妬するよーな俺が秋姉ちゃんを嫌いになるって本気で思ってるんだから。」
俺さ、あの男にずーっと嫉妬してたんだ。秋姉ちゃんにそこまで憎まれて、ずるいなって。憎しみは時に愛にも勝る巨大な感情で。その熱量と来たら比較にもならない。
そんな感情を秋姉ちゃんからぶつけられたあの男が羨ましくて羨ましくて、気が狂うぐらいに妬ましくって。秋姉ちゃんをみつけたら俺を憎んで貰うんだって本気で思った。
「愛して貰えないなら憎んで欲しかったんだ、秋姉ちゃんに。」
憎んで貰う為に秋姉ちゃんに酷いことをしようとも思ったけど。俺、秋姉ちゃんだけは傷つけられない。傷つけたくないんだと研二君は私の肩口に頭を預けた。
嫌って欲しい、憎んで欲しいのにと声を湿らせ。ぐすぐすと泣き出す研二君にそれは無理な話かもだと腕を回して、すっかりと大きくなった背中を撫でた。
「私は研二君にならなにをされても許してしまうし天地がひっくり返っても研二君だけは嫌えないもの。だから私に憎まれようとするのは諦めて欲しいな。私は研二君には愛情しか抱けない。」
「···さっきから秋姉ちゃんが俺のことが好きだって言ってる気がするけど。俺、都合の良い夢でもみてたりする?」
「残念なことに夢じゃないぞぅ。研二君も可哀想に。こんな悪党に好かれちゃうなんて。」
顔をあげた研二君の頬をむにっと摘まむ。柔らかいなーともにもにしてると研二君がへにゃりと笑い。俺も秋姉ちゃんが好きとぎゅうぎゅうと抱き締めて来る。
研二君のメンタル回復したかな~と。額や頬、唇にキスをする研二君にもうそろそろですね。この脚の拘束を解いて欲しいかな~と主張すると研二君はじーっと真っ黒な目で私を見てにっこりと微笑んでやだと拒否した。
「秋姉ちゃんがもう二度と俺の前から消えないように。秋姉ちゃんを俺だけのモノにしとかなちゃいけねぇんだもん。」
最初に謝っとく。酷いことは絶対にしないけど泣いても嫌がっても秋姉ちゃんを離さない。
「秋姉ちゃんが俺以外なぁんにも考えられなくなるぐらい。ぐずぐずに甘やかしてあげるから。秋姉ちゃん、俺と悪いことしよっか?」
「よーし、ステイ。研二君ステイ!!あまりにも不穏が過ぎるぞぅ!!」
「十年間、お預けくらったようなもんなんだからもう待たねぇよ。俺の運命、俺の番、俺だけの愛しいひと。腹を括って俺に骨まで喰われて。」
と、まあ。そんなワケで十年間。じっっくり熟成された恋心を情け容赦なく叩き込まれた結果。私はβからΩになったのですと。
私を膝に乗せてにこにこ、にぱにぱ笑う研二君に顔を覆う降谷君と微苦笑する諸伏君。
とうとうやりやがったと遠くを眺める松田君。通報すべきか迷う伊達君は私の首にハッキリと残る咬み痕に同意かと問うので。
同意と言えば同意かなとΩ化してからのあれやれそれを思い出して私はさっと目を逸らした。
おまわりさんこいつですと松田君が伊達君に訴えて残念なことにこいつがおまわりさんだと伊達君が即座に突っ込む。
ちなみに四人は研二君に嫁さん紹介するぞーと言われてポアロに集められたよ。店内にはコナン君と哀ちゃんも居て、さっきから滅茶滅茶視線が突き刺さってるんだけど。
コナン君も哀ちゃんもαなせいか同じくαな研二君がプレッシャーを掛けて牽制してるよ。
鎮まりたまえ、なぜかように荒ぶられるのかと私の腹部に回した腕をぎちぎち狭める研二君になかみが出ちゃうとタップすると。秋姉ちゃんに惚れられたらやだからな~と研二君は眉を下げた。
君が心配するほどモテないよ、私とボヤくと諸伏君がマンハッタンは多方面にモテてたぞ。
俺とゼロが萩の探してたひとだろうから変な輩が近づかないようにって。牽制しないといけないぐらいと首を傾げて降谷君が諸伏君の口をすかさず覆った。
「へぇ···。」
「美人の真顔とてもこわい。」
「秋姉ちゃん。カラスミパスタの他にハムサンドも追加で頼もっか。」
「え、パスタだけで十分お腹いっぱいになりそうだけど。」
「ああ、たくさん食べて体力つけとかないとだからな。安室さーん。半熟ケーキも追加で。」
「今日が私の命日か。」
「え~っと。マンハッタン。お幸せにな!!マンハッタンから貰った情報で組織壊滅の目処が立ったし!経歴とかこっちで綺麗にしとくからさ!」
諸伏君に善意100%で見捨てられた···。降谷君特製半熟ケーキを笑顔で切り分け、フォークで差し出してきた研二君に覚悟を決めて口を開く。
それが君の愛ならばすべて残さず平らげよう。毒を喰らわば皿までもというし、君のちょっと物騒でおどろおどろしい愛もぜんぶ私が食べてあげましょうと主張すれば研二君はへにゃりと嬉しそうに笑った。






























暗転したところ詳しく(真顔) これまでの暗転部分を別シリーズにしていただいて、0から10から100まで詳しくお願いします(土下座)