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かぐや「ね、いろは、これ買っていい?」

翡翠石翡翠石

本編後につき超ネタバレ注意です。 かぐやさんが彩葉さんにあるものをおねだりして、それにドハマリするお話です。

KG型義体がようやく完成し、安定稼働までこぎつけ、かぐやが家に帰ってこれて、復活ライブを終えて、少し浮かれたような、気の抜けたような空気が漂う我が家。

「ね、いろは、お願いがあるんだけどぉ……」

控えめに、上目遣いで、もじもじと「お願い」してくるかぐやの姿そこにはあった。

「うわ……このお願いの仕方は面倒なやつかお金かかるやつ……」
「えへへ……ね、いろは、これ買っていい?」

そうやって差し出されたスマートフォンの画面には、インスタントカメラが映っていて。

「インスタントカメラ?その場で印刷できるってやつだっけ?」

カメラの知識はほとんどない、遥か昔、母がそれっぽいのを使っていたけど、それだけだ。

「そ!すぐに印刷もできるし!普通のカメラみたいにメモリに保存もできるんだって!」
「それ、スマホのカメラじゃダメなの?」
「いろはは情緒がないなぁ……こうさぁ、カメラで撮ってる!って感じがいいじゃん!」
「あ、あとね!専用のフィルターとかあったり!スマホとはまた違うよさがあるんだよ!」
「あとカッコイイ!これは譲れないよね!」

少し悩む、カメラは詳しくないけど、多分この値段のカメラなら、かぐやのスマホのカメラの方が高性能で、アプリを使えばフィルターだって選び放題なんじゃないだろうか。

「……欲しいの?たぶんスマホの方が高性能だよ?それに芦花がお母さんから借りてるのもあるし」
「うっ……たぶんそうだけど、手軽に写真にできるのがいいなって、芦花のは芦花が貸してもらってるものだからかぐやが使うのはアレだし」

なるほど、一理ある、家の環境だとプリンターがないから、スマホで撮った写真を印刷したければ、コンビニに行くか、ちょっと問題だが研究所のプリンターを使うしかない。
あと総額百万を超えるらしい母のカメラは又貸し云々を抜きにしても使いたくないのだろう。

「いろは……だめ……?」

まあこのキュートな悪童のお願いに抵抗できるわけないから、最初から答えは決まっているようなものなんだけど。
それでも威厳?のために少し勿体つけてみる、そんな私の様子にかぐやのアホ毛がへにょんとしおれてしまって。

「はぁ……そこまで高くないしいいよ?その代わり、買ったんならちゃんと使ってよね?」
「やた!ありがと!いろは大好き!」

目を輝かせ、しおれていたアホ毛もぴんと跳ねる、現金な反応に思わず笑ってしまう。

かぐやからスマホを受け取って、決済を進める。
因みに、かぐやとヤチヨのスマホはクレジットカードでの決済関連の機能全てにロックがかかっていて、私にしか解除できないようになっている、いやまあ多分かぐやたちならその気になれば簡単に解除できるんだろうけど。
普段のお買い物はふじゅーぺいみたいなチャージ式オンリーで十分という意見と。
『クレジットカード……!?こんな悪魔的カードがあるの……!?かぐやたちこんなの握ったら破産しちゃう……!?』なんて。
知識としては知っていたらしいけど、実際に私が決済を目の前でやって見せてみたところ、あまりのスムーズさに恐れおののいた、欲深怪獣かぐやと欲深怪獣ヤチヨ本人の要望だ。
まあ破産はオーバーな表現だろうけど、軽い買い物をいっぱいされてちょっと困りそうではあったので私も同意してこうなっている。

「カメラ、明日届くってさ」
「やた!配送情報来たら教えて!」
「りょーかい、来たら転送するよ」

注文完了画面を嬉しそうに眺めているかぐやは、まるっきり子供みたいで。

「あ」
「あ?」
「えと……ごめんいろは……これも買っていい?」

おずおずと差し出されたスマホには、アルバムの商品情報のページ、どうやら先ほど注文したカメラの印刷サイズに合わせたものらしい。

「そーいうのは注文する前に言いなさいって前も言ったでしょー!」
「ごめーん!」

そこまで怒ってないけど、ポーズだけは怒っておく、かぐやもそれは分かっているのか少しふざけたごめんで。

「もぉ、これ結構面倒なんだからね」
「えへへ……お手数おかけします……」

なんとか注文の修正が間に合い、明日、カメラと一緒にアルバムも届けてくれるようだ。
……なんか忘れてる気がするんだけど、なんだろう。

―――

翌日、仕事から帰ってくると、駅でばったり芦花と鉢合わせた。

「あれ?彩葉?駅でたまたまなんて珍しいね」
「芦花、おかえり、確かに珍しいね」
「ふふっ、ただいま、すぐそこだけど一緒に帰ろっか」
「そうだね、お留守番組ににそろそろ着くよって連絡しとこ」

スマホを取り出し、家族グループへメッセージを送る。
芦花となんでもない話をしながら帰路につき、時間にして五分足らずの二人きりを終える。

「「ただいま~」」と、二人で家に入った瞬間。
カシャッという音と、カメラを持ったかぐやが私たちを出迎えて。

「よっしゃ!いろはと芦花のツーショット帰宅撮れた!」
「びっくりした、それ昨日言ってたインスタントカメラ?」
「そだよ~!びっくりさせちゃったのはごみん……」
「ちょっと驚いただけだから大丈夫、もう印刷できるの?」
「できるよ!ちょっと待ってね!」

そう言うと、かぐやはカメラのモニターとにらめっこを始めて。

「う~ん……いい感じの写真だね!じゃあ初印刷しちゃいますか!」
「初、私たちでよかったの?」
「むしろなんでダメなのさいろは~」
「いや、みんなで撮った集合写真とかになるのかなって思ってたから」

既に印刷を始めたらしいカメラを持ちながら、やらかしたって顔のかぐやがこちらを見る。
いやそんな顔で見られましても。

「し、しまった……その発想はなかった……」

言ってる間に初印刷は完了して、少し驚いた顔の芦花と、油断しきってる顔の私と、玄関の写真がカメラから出力された。

「なんというか我ながら写真写り悪いな……」
「彩葉昔からそうだよね、クラスの集合写真とか微妙に半目だったりしたし」
「私のことちゃんと撮れるの芦花と真実ぐらいだよ……」
「ぐぬぬ……かぐやも精進せねば……」

この後、ヤチヨと犬dogeを含めた五人全員で集合写真を撮って。
それが二度目の印刷になって、アルバムに収められていった。
かぐや、しれっと集合写真を一枚目にしてるの気づいてるからね?

その後、かぐやのインスタントカメラブームが始まった。
ソファでくつろいで本を読んでいる芦花を、「流石美人!絵になる!」なんていいながら写真に収めたり。
椅子に座って、犬dogeを抱えたまま眠っているヤチヨをこっそり撮ったり。
在宅勤務でパソコンとにらめっこしている私を撮りに来たり。
「お風呂あがりのいろはの写真撮ったら怒る?」って聞かれたので「アホ毛引っこ抜く」と返したり。

かぐやが撮りたかったのは、こんな感じの本当になんでもない日常の一瞬だったみたい、だからか、いつでも写真に収めることができるように、首にカメラをかけて歩き回るようになって。

「かぐや、しょっちゅう撮ってる割にはアルバムそんなに埋まってないよね」
「ん?これメモリに保存して印刷するかどうか選べるから、ビビっときた写真以外はスマホに転送してるんだよね」
「なるほどね、ま、その辺はかぐや先生の感覚にお任せします」
「任セロリ!」

やがて、家の中は撮り飽きたのか、保護ケースを注文してお外で写真撮りたいと言ってきたので、注文する代わりに、外で写真を撮るマナーとか注意事項を叩き込んだ。
まあ私自身が写真素人だから、インフルエンサーとして写真をよく撮る芦花と真実に聞いた内容とネットの情報なんだけど。

そんな説教くさい内容を、かぐやはニコニコしながら聞いてくれて。
「いろはの愛を感じる……」なんて言ってたっけ。
で、そこまでやって気が付いたんだけど、かぐやって十年前にリアル撮影してた時から、割とその辺ちゃんとしてたなって、初動でインカメ誤爆してた反省を活かして。
釈迦に説法という言葉を思い出して恥ずかしくなったが、気づいたら負けなので気づかなったふりをする。

翌日、届いたケースを装着し、嬉しそうに家を出たかぐやは、真実の家に遊びに行って、双子ちゃんと真実の写真を撮って帰ってきた。

「一枚は真実ん家で印刷して~真実に渡してきたんだ~めっちゃ喜んでた!あ、アルバムに真実と双子ちゃんの写真入れる許可ももらってきたよ!」
「そっか、真実、うれしかったのかSNSにそのエピソード投稿してたよ」
「ほんと!?そんな喜んでくれたんだ!かぐやもうれしい!」

印刷を終えて、写真をアルバムに収めたかぐやが、一旦カメラを外して抱きついてくる。

「ね、ね、いろは!明日一緒にお散歩しよ!お散歩!」
「散歩?写真撮りに?」
「うん!」
「それ私いらなくない……?」
「いろは運動不足でしょ?それに、被写体になってほしいの、いろはぁ、おねがぁい」
「ぐっ、またそれか……ま、いいよ、明日は在宅だから、仕事終わって夕方にでいい?」
「いいよ!ありがといろは!」

「ん?彩葉とかぐや、明日散歩行くの?」
「あ、芦花、そだよ~彩葉とお外で写真撮影してくる!」
「じゃあ玄関に置いてる私の日傘使っていいよ、明日も暑いでしょ」
「え?いいの?明日芦花もお仕事でしょ?」
「明日は一日中会議とかだから、日光に焼かれる時間はほとんどないからさ、予備の折り畳みで十分だよ」
「そっか!ありがと芦花!」
「どーいたしまして、結構大きい傘だから二人で入れると思うよ」
「やた!相合傘だ!」
「晴れた日中に相合傘ってなかなか目立つけどね」
「いろはとなら目立ってもだいじょーぶ!」
「いらぬ心配でしたか」
「どやさぁ!」

―――

「と、いうわけで芦花神からクソ強日傘を貸与頂いたのでお外に行きましょういろはさんや」
「なにその喋り方、まあでも日傘は正直助かる、夕方でもあっついのよねぇ」
「あと眩しいしね、夕日、でもその夕日のオレンジがきっと綺麗な写真に繋がるはず……!」
「ドハマりしてんねぇかぐやさん」
「ちょーたのし!」

玄関で私を待ちながら、ピースサインを見せるかぐやの心底楽しそうな表情、十年かけても取り戻したかったものが目の前にあって少し泣きそうになる。

「あ、そういえばヤチヨは?」
「こんなくそ暑い中外でたら歌姫死ぬって言って部屋から出てこなかった」
「なんて情けない……」
「まあ気持ちはわかるけどね、それでも、この夕日のオレンジで写真を撮ったらなんかエモくて映える説を検証せねば……!」
「はいはい、行きますか」
「いえーい!」

こうして始まった写真撮影お散歩会、終始かぐやはカメラ片手にニコニコしていて。

「いろはいろは!花が夕日のオレンジでいい感じに!」とか言って一枚。
「いろは!大発見!木の葉っぱを透かすみたいに夕日を撮ったらめっちゃキレイ!」って一枚、ちなみにこの時、太陽みたいな強い光源を撮るとカメラが壊れるって注意した、めっちゃ顔面蒼白になってたよ。
それでもかぐやはめげなくて、「夕日と我が家!」なんて言って一枚、私たちの家があるタワマンと夕日をセットで写真に切り取ったり。(反省はしててちゃんとカメラに悪影響の出ないように工夫はしていたよ)

日傘なんて忘れたのか、私の前を歩くかぐやは、時折振り返って「い~ろは!」なんて言いながらなんでもない風景と私の写真を量産したりして。
「あの雲、オレンジ色できれ~」なんて空を見上げながら一枚。
「いろは!一緒に撮ろ!」なんて、夕日で輝く川を背景にツーショットを一枚。
「かぐや、猫居るよ猫」って私の言葉に大興奮して一枚。
通りすがりのおじさんが連れていたお散歩中の犬を、おじさんに許可をもらって一枚撮ったり。

あとそれ撮ってどうすんのみたいなのもいっぱい撮影してた。
その辺にある信号機や、行ったこともないパン屋さんの看板、全国チェーンの緑色のコンビニの全体像とか。
でも、何も走ってないモノレールの線や、縁もゆかりも無いビルの写真、公園に置かれている謎のデザインの遊具とか。
私には意味のわからないシャッターチャンスも、かぐやは楽しそうに満喫していて。
そんな楽しそうなかぐやを、私は少し後ろから目を細めながら見守っていた。

ある程度歩き回って、写真を撮って満足したらしいかぐやと二人で公園のベンチに座る。
かぐやは早速、何枚かのお気に入りを印刷して、ポーチに入れていたアルバムに収めていく。
私はその様子を眺めながら、幸せだなぁって浸っていて……。

「彩葉!彩葉!」
浸っていたらかぐやの大声で現実に引き戻される。

「ど、どうしよ彩葉……カメラ壊れちゃった……」
泣きそうな顔のかぐやがそこには居て。

「え?さっきまで使えてたよね?」
「印刷……できなくなっちゃった……」
「えぇ……ちょっと貸してみて」

かぐやからカメラを受け取り、エラーメッセージでも出ていないか確かめる。
そして私は、故障の原因と、カメラを買ったときに感じた「何か忘れている」という感覚の正体に辿り着いた。

「かぐや、大丈夫、壊れてはいない」
「ほんと!?でも印刷……」
「いい、かぐや、冷静になって」
「?」
「印刷にはね、フィルムが必要なの」
「……もしかしてフィルム切れ?」
「うん、かぐや、焦ってエラーメッセージ読み飛ばしてた」
「よ、よかったぁ……あれ、でもこれ十枚ぐらいしか印刷してないよ……?」
「はいかぐや、これ、替えのフィルム」

私が差し出したスマホを見たかぐやは、唖然としている。
それもそうだろう、十枚しか印刷できないフィルムが結構な値段するのだ。
まあインク代やらプリンター代、いちいちコンビニに印刷に行く手間なんかを考えれば割に合わないというわけではないのだが……。

「アルバム、全部埋めようとすると結構な値段になるね」
「ご、ごめんいろは……」

少し泣きそうな顔のかぐやと、少しお高いフィルムを見比べる。
これならデジカメか、カメラ性能の高いスマホを買ったほうがパフォーマンスよかったよなぁなんて考えてしまうけど。
この数日、心底楽しそうで嬉しそうだったかぐやの笑顔には変えられないなと、フィルムを何セットかカートに入れる。

「かぐや、仕方ないから今回は買ってあげる、次からは自分のお金で買ってね?」
「い、いいの?」
「かぐや、すっごい楽しそうだったでしょ?あれが見れるなら安いもんかなって」
「いろは~!ありがと~!だいすき~!」
「うわちょっと往来で抱きつくなおバカ!」

あっつい中往来で抱きついてくるおバカぐやを引きはがして、カートに入れたフィルムの注文を通して。
かぐやと二人、日傘の相合傘で帰路に就く。

傾いた太陽が伸ばした私たちの影は、楽しそうに揺れていた。

— End —

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放課後延長戦18 小时前
Sticker
むつき21 小时前

いろかぐの母娘としての側面を強く感じて心がほわほわする〜

Sakuria
Where every work blooms
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