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やはり俺がアマゾネスなライダーのマスターなのはまちがっている。

ミッキーミッキー

冬の月明かりが照らす冬木市の住宅街、その舗装されたコンクリートを削り取りながら、圧倒的な暴力の化身が暴れ回っていた。

バーサーカー「ッッッッ――!!!!!!!」

理性を剥奪された狂戦士、『バーサーカー』。

ギリシャ神話最大の英雄ヘラクレスの巨躯から繰り出される、無骨な万力の一撃が夜空を裂く。

迎え撃つは、青と銀の甲冑を纏った騎士王、セイバー。

不可視の剣でその猛攻を受け止めるものの、一撃ごとに大地が爆ぜ、彼女の足元が深く沈み込んでいく。

圧倒的な力の差。

防戦一方のセイバーの背後では、セイバーのマスターである『衛宮士郎』が息を呑み、『遠坂凛』が冷や汗を流しながら、戦況の絶望さに唇を噛んでいた。

イリヤ「アハハハハハハハッ!!やっちゃえバーサーカー!!その調子で、お兄ちゃんのサーヴァントをバラバラにしちゃいなさい!!!」

無邪気な、それゆえに酷薄な少女ーーバーサーカーのマスターである『イリヤスフィール・フォン・アインツベルン』の笑い声が木霊する。

勝敗は決した――誰もがそう確信したその瞬間

???「――そこまでだッ!!!!」

劈くような峻烈な声、そして戦場を切り裂く轟音と共に、一条の神速の影が乱入した。

煙塵を巻き上げ、蹄の音が響き渡る。

現れたのは、神馬に跨り、決意に満ちた黄金の瞳を持つ、一人の美しい女戦士。

月光を浴びて鮮やかにきらめくのは、燃えるような赤髪。纏うのは、白いチュニック(ペプロス)と、夜の闇よりも深い紫の布。

その姿は、凛然たる美しさと、周囲を威圧する圧倒的な「武」を同時に放っていた。

そしてその傍らには、死んだ魚のような、しかし底知れない冷徹さを宿した瞳を持つ少年――比企谷八幡が静かに佇んでいた。

士郎「なっ……!?」

凛「別のサーヴァントとマスターですって……!!?」

女戦士は、突如現れた闖入者である自分に武器を構え直すセイバー、驚愕に目を見張る士郎に凛、イリヤを一瞥すると、堂々と自らの名を戦場に解き放った。

ヒッポリュテ「我が名はヒッポリュテ!!!戦神アレスと、アルテミスの巫女たるオトレーレの間に生まれしアマゾネスの戦士長である!!!此度の聖杯戦争で、ライダーとして現界した!!!」

凛「っ!? バカなの、あのサーヴァント……!姿を現した初戦で、真名を堂々と名乗るなんて……!!」

凛が絶句する。

だが、その真名を聞いた瞬間、それまで余裕の笑みを浮かべていたイリヤの顔から、完全に色を失った。

イリヤ「……嘘……ヒッポリュテ……ヘラクレスの『十二の試練』、その第九の試練で……軍帯を奪われ、殺された、アマゾネスの……!!?」

『ヒッポリュテ』

ギリシャ神話において、バーサーカー――大英雄ヘラレスが課せられた『十二の試練』。

その第九の試練こそが、『アマゾネスの女王ヒッポリュテの腰帯』の奪取であった。

軍神アレスの加護たる帯を巡り、神の策謀によって悲劇的な行き違いが起き、彼女はヘラクレスの手によって殺され、その命を落とした。

すなわち眼前に現れたのは……

バーサーカー/ヘラクレスにとってこれ以上ない『因縁の宿敵』に他ならない。

バーサーカー「ッッッ!?!?ッッッッッ!!!!!」

バーサーカーの巨躯が一瞬、微かに揺れた。

狂気に狂った瞳の奥で、かつて自らの手で理不尽に命を奪った気高き女王の残像が、微かに明滅したかのように。

セイバーが加勢しようと一歩踏み出そうとした瞬間、ヒッポリュテは鋭い眼光で彼女を制した。

ヒッポリュテ「ここからは私と奴の死合い!!お前達は手を出すな!!!………ヘラクレス……」

ヒッポリュテは、狂気に染まり咆哮を上げる黒き巨人を見据え、静かに、しかし熱を帯びた声で語りかけた。

ヒッポリュテ「……生前、貴様に殺されたことを私は恨んではいない。あれは神々の悪戯であり、戦士としての運命(さだめ)だった………だが――」

ヒッポリュテは腰の帯から溢れ出る神の力を全身に巡らせ、その拳を強く握り締めた。

ヒッポリュテ「此度の召喚、そしてこの邂逅。これぞ戦神の導き!!!怨恨ではなく、純粋なる武人の誉れとして、今度こそ貴様と正々堂々、雌雄を決する!!!!」

その言葉には、私怨を超越した戦士の誇りがあった。

八幡はただ静かに、その背中を見つめていた。その左手には、禍々しい輝きを放つ令呪が刻まれている。

八幡「……行け、ライダー。お前の戦いをしろ」

ヒッポリュテ「応ッ!!マスター!!――戦神アレスの娘、ヒッポリュテ!!これより大英雄の首を貰い受ける!!!!」

ゴォ、と大気が鳴動した。

ヒッポリュテが自らに纏う『戦神の軍帯』を完全解放する。

現代社会の「神秘の薄さ」という制約を、八幡から供給される異常なまでの執念と魔力によって強引に突破し、彼女の神性、筋力、耐久、敏捷が爆発的に跳ね上がる。

イリヤ「……おもしろいじゃない……!! やっちゃえ、バーサーカー!!その生意気な女王様を、今度こそ文字通り砕き殺しなさい!!!!」

バーサーカー「ッッッッッー!!!!!!」

バーサーカーが咆哮し、巨大な斧剣を振り下ろした。

直撃すればサーヴァントとて一撃で消滅する程の一撃。

しかし、神速を超えたヒッポリュテの身体は、すでにその肉薄する刃の軌道上から消失していた。

ヒッポリュテ「――遅いッ!!!」

駿馬カリオンを呼ぶまでもない。

超加速した彼女の肉体そのものが、一発の砲弾と化す。

神の力を宿したその右拳が、バーサーカーの無防備な側頭部へと叩き込まれた。

ドガァァァァァンッッッ!!!!!!!!!

衝撃波が木々を薙ぎ倒す。

拳の一撃。

ただそれだけの質量攻撃が、数十メートルにわたってバーサーカーの巨躯を吹き飛ばし、その強固な頭蓋を完全に粉砕した。

凛「嘘……あのバーサーカーが、一撃で……!?!?」

凛が目を剥く。

しかし、それはまだ地獄の殺し合いの幕開けに過ぎなかった。

バーサーカーの身体が急速に再生していく。

命のストックを消費し、瞬く間に蘇生する宝具『十二の試練(ゴッド・ハンド)』。

ヒッポリュテ「知っているぞ、貴様の不死の呪いなど!!ならば、その命の限界まで付き合うのみ!!!」

蘇生しきる前に、ヒッポリュテの手にはすでに神代の弓が握られていた。引き絞られた弦から放たれたのは、光の奔流と化した魔力の矢。

更に間髪入れずに、彼女は魔力で生成した槍を、全身のバネを使って投擲する。

バーサーカー「ッッッッッ!?!?」

狂戦士の胸部を光の矢が貫通し、心臓を消滅させる。

直後、超音速で飛来した槍が、再生直後のバーサーカーの眉間を容赦なく穿ち、脳漿をぶちまけた。

凛「な、何あいつ……!!?弓も、槍も、肉弾戦も……全部が一流以上なんて……!!!」

凛の背筋に冷たい戦慄が走る。

あらゆる間合いに対応するオールラウンダーとしての戦闘技術が、狂化によって大振りの力任せとなったバーサーカーを完全に圧倒していた。

イリヤ「な………何なのよあいつ……! !?バーサーカーを……あんな簡単に……!!!」

イリヤの顔に初めて明確な焦燥と恐怖が走る。

すでに合計三度の死。

しかし、大英雄もただでは転ばない。

四度目の蘇生を果たしたバーサーカーの眼光が、真紅の怒りに染まる。

バーサーカー「ッッッッッッッーーー!!!!!!!!!」

狂戦士の猛反撃。

超絶的な連続攻撃がヒッポリュテを襲う。

いくら能力を引き上げたとはいえ、相手はかつて彼女を殺した神話最強の怪物。

斧剣の風圧だけで彼女の白いチュニックが裂け、鮮血が夜の闇に舞った。

ヒッポリュテ「グゥッ!!!」

肩口を深く切り裂かれ、脇腹から血を流しながらも、ヒッポリュテの黄金の瞳は一切の光を失わない。

ボロボロになり、膝が折れかけながらも、彼女は不敵に笑った。

ヒッポリュテ「ハ……ハハハハハハハハハハッ!!!これだ……この渇き!この痛みこそ!!私が求めた戦いだ……!!!いくぞ、カリオンッ!!!!」

霊的な輝きを放つ神馬が具現化し、彼女はその背に飛び乗る。

人馬一体となり、戦場に転がる瓦礫を駆け巡りながら、空高くまで一気に上り詰めていく。

その手に握られるは、アマゾネスに伝わる巨大な戦斧。

ヒッポリュテ「これで………決める――!!!」

神々から受けた加護、その全てを戦斧に込める。

圧倒的な強さと、それに付随する美しさ。アマゾネスそのものを体現する一撃。

「『傲慢覆す怒り(ヒュブリン・アナトレポーン・エリーニュエス)』ッッッッ!!!!!!」

空高くから一気に敵に向かって打ち下ろされる、破滅の流星。

馬に乗ったまま斧を振るうという、ただそれだけの行為の到達点。

――轟、轟、轟、轟オオオオオオオッッッッッッ!!!!!!!!

爆風が周囲を吹き飛ばし、土砂が津波のように押し寄せる。

士郎や凛、イリヤが目を覆う中、光の奔流がバーサーカーを完全に呑み込んだ。

戦神の加護と月女神の加護を受けたその一撃は、狂戦士の肉体を細胞単位で消滅させ、凄まじい熱量によって、一気に4つの命を同時に消滅させた。

爆煙が晴れる。

そこには、全身から煙を上げ、血塗れになりながらも、斧を支えにして辛うじて立っているヒッポリュテの姿があった。

その呼吸は荒く、魔力も底を突きかけている。完全に満身創痍だった。

対するバーサーカーも、計七度の死を経て蘇生したものの、その霊基は大きく揺らぎ、かつてないほどのダメージを負ってその場に跪いていた。

『12回殺されなければ死なない怪物』を、アマゾネスの女王はたった一戦で、しかも単騎で七度も殺し尽くしたのだ。

イリヤ「バーサーカー……!!!」

イリヤが駆け寄ろうとするが、それを阻むように、八幡が歩み出た。

その全身から溢れ出る、どす黒く、冷徹な「殺意」の重圧に、士郎も凛も、セイバーもが息を呑んだ。

八幡の視線は、跪くバーサーカーではなく……士郎、そしてイリヤ、二人の顔を交互に射抜いていた。

凛「……信じられない。あんた、一体何者よ!?そんな眼をして……そんな、呪いみたいな魔力を孕んで……!!!」

凛が声を震わせながら尋ねる。

八幡は自嘲気味に、低く、掠れた声で呟いた。

八幡「……何者、か………ただの被害者だよ。あるいは、お前たちの言う『正義の味方』とやらに、全てを奪われた亡霊だ」

その言葉に、士郎が鋭く反応する。

士郎「正義の味方……!?どういうことだ!?」

八幡「……『衛宮切嗣』………」

八幡の口からその名が出た瞬間、士郎は目を見張り、イリヤの身体が明確に強張った。

イリヤ「……!?切嗣の事を、なんであんたが……!!?」

八幡「………あいつが、かつて『魔術師殺し』なんて大層な名前で呼ばれていた頃、ある魔術師の暗殺依頼を奴は引き受けた。奴はいつも通り、効率的で、確実で、冷酷な手段を選んだ。ターゲットの潜伏するビルごと、関係のない民間人もろとも爆破するっていうな……」

八幡の死んだ魚のような瞳に、微かな、しかし絶対的な憎悪の炎が宿る。

八幡「……そのビルにはさ、たまたま買い出しに出ていた俺の家族がいたんだよ。親父も、お袋も、……まだ小さかった妹もな。全員、跡形もなく消し飛んだ………あいつの言う『最大多数の幸福』のための、切り捨てられた端数としてなぁ…!!!!」

士郎「……そんな……切嗣が、そんなことを……!!?」

士郎の顔が青ざめる。

自分の憧れた、命を救う正義の味方と言っていた養父の、凄惨な過去の片鱗。

八幡「……イリヤスフィール、お前はその男の血を引く実の娘だ。そして衛宮士郎、お前はその男の独善的な思想を受け継いだ養子だな」

八幡は冷たく言い放ち、一歩、また一歩と彼らに近づく。

その殺気は、魔術師の家系である凛ですら身震いするほどに純粋で、鋭利だった。

八幡「勘違いするなよ。俺は聖杯なんていう、叶うかも分からない願望機には興味がない。俺の目的は最初から一つだけだ」

八幡は、ボロボロになりながらも自分を守るように寄り添うヒッポリュテの肩を支えた。そして、士郎とイリヤを冷酷に見据え、最後通牒を突きつける。

八幡「衛宮切嗣が遺した、その汚らわしい血脈も、思想も、お前たちが守ろうとするその命も――この手で、必ず根こそぎ叩き潰す…!!あの男が犯した罪の代償を、お前らのその身で、支払ってもらうぞ!!!」

その宣告には、一切の慈悲も、迷いもなかった。

八幡「……いくぞ、ライダー。お前も限界だろう」

ヒッポリュテ「すまない、我が主(マスター)……ヘラクレスよ、次の戦いを楽しみにしているぞ!!」

ヒッポリュテは不敵に笑い、八幡と共に漆黒の霧へと溶けるように姿を消した。

残された戦場には、圧倒的な爪痕と、士郎の心を根底から揺るがす『義父ーー切嗣の過去の罪』と言う、重苦しい沈黙だけが取り残されていた…

冬木の聖杯戦争に、神話の戦士の誇りと、現代の復讐者の執念が混ざり合い、より深く、昏い混沌が幕を開けた……

— End —

Comments 7

S
SaKuRa1 天前

面白い

カズ1 天前
Sticker
マコト1 天前

うちのヒッポリュテもグランド化してるので作品出るの嬉しすぎる! zero編で切嗣は切/嗣したし、こっちで士郎とイリヤは果たしてどうなることやら…

ハク2 天前

まさかその日中にstay nightで復讐ネタを書くとはw

Sakuria
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