「ぶぅちゃんは怒っています!」
腰に手を当てて仁王立ちしたブエナがプンスカと頬を膨らませている。そんなブエナに、俺は床に正座をしたまま平謝りするのだった。
ある日の休日、いつものようにブエナが家に遊びに来ていた。スマホをその辺に放り出していた俺は、以前インストールしていたマッチングアプリの通知があったことに気づかず、それをブエナに見られてしまったのだ。
「お兄ちゃん、もしかして私に飽きちゃった?」
「ブエナ、これは違うんだ。友人から、友達紹介キャンペーンをやっているからアカウントを作ってくれと頼まれて、断れなかったんだ」
「キャンペーン?」
ブエナが小首をかしげる。
「ああ。だからプロフィールも適当に免許証の写真を貼って『ブエナビスタのトレーナーです』とだけ書いていたんだが、そうしたら1時間足らずで100件以上のメッセージが届いたんだ」
「そりゃそうだよ。お兄ちゃんはかっこいいから、お兄ちゃんを狙う悪い虫がそこら中にいるんだよ」
ブエナが呆れたように頭を抑える。
「悪い虫って……。それで先週、メッセージくれた人の1人と会ってきたんだ」
「会ってきたの!? 私という幼馴染みがいながら他の女にうつつを抜かすなんて、お兄ちゃんの浮気者!」
「ブエナ、落ち着いて。キャンペーンの特典をもらうために、1回以上のマッチングが必要だっただけだから」
今にも爆発してしまいそうなブエナを何とかなだめる。ブエナはひとつ深呼吸をして話をつづけた。
「だとしても、お兄ちゃんが知らない女の人と二人っきりで会っているのは、私嫌だよ……」
「悪かったって。その女性がブエナのファンだって言うから、カフェで1時間ほどお話ししてきたんだ。話題はもっぱらブエナのことだったよ」
「私のこと?」
「うん。レースの裏話とか、日常の事とかを話せる範囲で話してきた。その人も喜んでいたよ」
「そうなんだ。その人、キレイだった?」
「まあ、普通にキレイだったよ」
「ぶぅ……。お兄ちゃん、その女性に目移りしちゃったんだね……」
むくれた様子のブエナ。そんなブエナもかわいいと言ったら、彼女は怒るだろうか。そんな心の内を悟られないように俺は言葉を選ぶ。
「目移りなんてしないよ、実際に付き合いしてくださいって言われたけど、俺にはブエナがいるからって丁重にお断りしたからね」
「ふーん、そうなんだ……」
耳がピコピコと動き、しっぽがパタパタと左右に揺れる。あからさまに変化した声色からも、嬉しさがにじみ出ている。
「だから、機嫌を直してくれないかな、ブエナ」
「でもダメ! 幼なじみのぶぅちゃんを放っておいて他の女の人と出かけるお兄ちゃんはキライです!」
「困ったなあ。どうしたら許してくれる?」
そう尋ねると、ブエナは、自分の頭をスッとこちらに差し出した。
「ナデナデしてくれたら、許しちゃうかもね」
「わかった。こっちにおいで」
ブエナを抱き寄せて膝の上に座らせると、彼女の頭を優しく撫でてあげる。ブエナはこちらに体を預けると、気持ちよさそうな声を漏らす。
「これで許してくれる?」
「まだ足りない! 今日は1日中ぶぅちゃんを甘やかすこと! いいよね、お兄ちゃん?」
「はいはい。ブエナの仰せのままに」
頭を撫でる手に力を込めると、ブエナはうっとりとした表情を浮かべる。結局この日は1日中、ブエナをお姫様のように甘やかし続けるだった。
おまけ:ある女性のつぶやきより
いつものように良い人はいないかとマッチングアプリで男を探していたら、なんとブエナちゃんのトレーナーだと言う人が!釣りでもいいと思ってダメ元でメッセージを送ってみると、なんと返信があり、そのまま会えることになっちゃいました!!
当日あった際の第一印象は、清潔感があって顔立ちが整ったイケメンといった感じでした!コーディネートは全体的に落ち着いた感じでしたが、手首にブエナちゃんの勝負服モチーフのスカーフを巻いていたのがポイント高かったですね。
そのままカフェに行き、1時間ちょっとのおしゃべりを楽しみました! 私もブエナちゃんの大ファンなので、話題は必然的にブエナちゃんのことに。ブエナちゃんのデビュー前から応援していることを伝えたら、ブエトレさんとても喜んでいました!
ブエトレさんからは、ブエナちゃんのデビュー前の話とか、オークスを勝ったときの話とかを聞かせてもらいました! すぐそばでブエナちゃんを見てきたブエトレさんだからこその話を聞けてとても面白かったです! その会話の端々でブエナちゃんが愛されていることがわかってしまい、ちょっと羨ましくなってしまいました笑。
それとこれはオフレコなのですが、ブエナちゃんの幼い頃のエピソードを聞かせてもらったり、小さい頃の写真を見せてもらったりしました!!どれもブエナちゃんらしくほっこりするものばかりなのですが、とは言えあの可愛らしいブエナちゃんの数々をSNSのドブ川に放流するわけにもいきません。これは私の胸の内にそっとしまっておこうと思います。
カフェでお話ししていた時間はあっという間でした。あまりにも楽しかったので、別れ際、玉砕覚悟でまた会いませんかと伝えてみましたが、俺にはブエナがいるからと丁重に断られてしまいました。もちろん2人が幼なじみなのは知っていましたし、2人の仲を引き裂くつもりもありませんが、ちょっぴり涙が出ちゃいそうです。こんな何のとりえもない私に最後の最後まで丁寧に接してくれて、忘れられない1日になりました。あの日伝えられなかったことを最後に書いて、この日記を締めたいと思います。
ブエナちゃんといつまでもお幸せに。



















相手もええ人や…3人の未来に幸あれ!