三者三様の驚愕を置き去りにしたまま、夜の倉庫街にはライダー――征服王イスカンダルの豪快な声だけが響き渡っていた。
その傍らで、華奢な身体を縮こまらせて涙目で戦車の縁に掴まっている少年――ウェイバー・ベルベットは、自身のサーヴァントのあまりの暴挙に頭を抱え、今にも泡を吹いて倒れそうになっている。
ウェイバー「な……ななな、何を考えてやがるんですかこの馬鹿はああああああああーーーッ!?!?」
絶叫するウェイバーの額に、肉厚な指先でのデコピンが容赦なく炸裂した。
ウェイバー「痛っ!?!?――ッ!?」
涙目で蹲るウェイバーを完全に無視し、イスカンダルは眼下の三騎を鋭い眼光で見据えた。
ライダー「うぬらとは聖杯を求めて相争う巡り合わせだが……矛を交える先に、まずは問うておく事がある。我が軍門に下り、聖杯を余に譲る気はないか?さすれば余は貴様らを朋友(ほうゆう)として遇し、世界を征する快悦を共に分かち合う所存でおる!!」
………非常識極まりない。
この場に居た全員が、ライダーに対して全く同じ感想を抱いていた。
緊迫した死線、互いの命を削り合う魔術儀式の最中に、これほど堂々と、かつ的外れな勧誘を行う英霊など、誰が想像できただろうか。
ランサー「……その提案には承服しかねる」
沈黙を破ったのはランサーだった。
ライダーの堂々たる名乗りとその器量には多少の好印象を抱いたものの、彼の言葉はランサー――ディルムッド・オディナの逆鱗に触れるものだった。
ランサー「我が槍に賭けて忠誠を誓うのはただ一人、今世の我が主(マスター)のみ。聖杯を手にし、我が主以外に渡す気など毛頭ないぞ、ライダー。貴様の無頼、笑って流すには些か無礼が過ぎる」
ディルムッドは苦笑こそ浮かべているものの、その琥珀色の瞳には一切の笑みがなかった。主を変え、忠義を違えるなど、彼がこの第二の生を得てまで成し遂げようとした誓いを根本から否定する行為に他ならない。
セイバー「……そもそも、そんな戯言を述べたてる為に私とランサーの決闘を邪魔だてしたのか?」
セイバーが、風王結界に隠された見えない剣を構え直し、冷徹な声を浴びせる。
セイバー「だとしたら、騎士として許しがたい侮辱だ。我らの闘志を、誇りを、貴様は踏みにじったのだぞ!!」
ライダー「……待遇は、応相談なのだが?」
イスカンダルは太い眉を寄せ、大真面目に交渉を継続しようとする。
「「くどいッ!!!」」
セイバーとランサーの声が完璧に重なった。
「加えて言うなら」と、セイバーはさらに一歩前に踏み出し、凛とした威厳を放つ。
セイバー「私も一人の王。ブリテンを預かる身として、いかに征服王といえど、貴殿に下るなどという選択は有りはしない!!」
ライダー「なんと!ブリテンの王とな?!」
イスカンダルは目を見開き、まじまじと小柄な少女の姿をしたセイバーを観察した。
ライダー「よもや、かの西方の島国を統べ、騎士王と称される者が、これほどの小娘だったとは驚きだ! これは一本取られたな!」
セイバー「信じられぬか?ならば――その小娘の一太刀、その身に受けてみるか、征服王?」
セイバーの纏う魔力が膨れ上がり、周囲の空気がピりりと震える。
ライダー「いやはや、セイバーとランサーは交渉決裂かぁ、惜しいなぁ……」
イスカンダルはこれ見よがしに肩をすくめてぼやいた。
しかし、その直後、彼の鋭い眼光が、これまで沈黙を保っていた最後に残った一騎――アサシンへと向けられる。
ライダー「では、闇に潜む刃でありながら、堂々と二騎の騎士と渡り合ってみせたそこのアサシンよ! 貴様はどうだ? 余の臣下となる気はあるか?」
セイバー、ランサー、そして周囲の闇から彼らを監視しているマスターたちの視線が、一斉に和服の少女へと集まった。
誰もが、アサシンもまたプライドに懸けてその傲慢な誘いを断るか、あるいは暗殺者らしく冷酷に闇へと消え去るかのどちらかだと確信していた。
しかし。
アサシンは、表面上は表情を変えずにいながら、頭の中の念話を通じて自身のマスターへと語りかけていた。
アサシン『……どうする、八幡? あいつ、なかなか面白そうなことを言っているけれど。』
八幡『……そうだな。』
遠く離れた場所から使い魔を通して戦況を監視していた比企谷八幡は、腐った魚のような目を細め、脳内で状況を整理する。
事前の情報収集によれば、あのライダーのマスターとなっている時計塔の学生は、魔術師としては未熟でお人好しの部類に入る。背後から裏切るような冷酷な真似はできない(あるいは、する度胸がない)タイプだ。
それに、あのライダー自身の豪放磊落な性格も、嘘を吐くような性質には見えない。
八幡『……セイバー陣営とランサー陣営を同時に敵に回すよりは、あの大男と組んだ方が生存確率は上がる。マスターの素性から見ても、信用できる部類だと判断していいだろ……よし、同盟の打診に乗れ。』
アサシン『了解。それじゃあ、ちょっと交渉させてもらうわね。』
念話での数秒のやり取りを終え、アサシンは一歩、前に踏み出した。
カチャリ、と静かな音を立てて、彼女は愛刀をサヤに納める。
明確な戦闘停止の意志表示に、セイバーとランサーの眉が跳ね上がった。
アサシン「良いわよ」
鈴を転がすような、涼やかな声で、アサシンはあっさりと告げた。
セイバー「……何?」
セイバーが耳を疑うように呟き、ディルムッドも驚きに目を見開く。
アサシン「ただし……条件があるわ、征服王」
アサシンはイスカンダルを指差し、不敵にニヤリと笑った。
アサシン「協力してあげるからには
美味しいご飯をしっかり用意すること。毎日、お腹いっぱい、美味しいものを食べさせてくれるなら……貴方の覇道とやらに、少しだけ付き合ってあげてもいいわ」
「「「「…………は?…………」」」」
静まり返る倉庫街。
セイバーは呆然とし、ランサーは完全に呆気に取られ、戦車の上のウェイバーに至っては「ごご、ご、ごはん!?!?」と間抜けな声を上げてその場にずっこけた。
しかし、その妙な条件を聞いたイスカンダルは、一瞬の静寂の後、夜空を震わせるほどの爆笑を轟かせた。
ライダー「ヌァハハハハハハ!美味い飯か!良い、実によい要求だ!戦に勝った後の祝宴こそ、王と臣下の絆を深める至高の儀式! 腹が減っては戦はできぬと言うからのう!よかろうアサシン、余の遠征路にある美味という美味を、そなたが飽きるまで食らわせてやると約束しよう!!」
アサシン「決まりね。じゃあ、よろしく征服王様」
アサシンはひらひらと手を振り、あっさりとライダー陣営への「臣下(同盟)」入りを表明したのだった。
切嗣「……狂っている」
遠く離れたコンテナの上から、サーマルスコープを覗き込んでいたセイバーの真のマスター『衛宮切嗣』は、煙草の煙を吐き出しながら、苦々しく毒づいた。
アサシンが一切の躊躇なくライダーと同盟を組んだこと。そして、その目的が見えないこと。
冷徹な暗殺者である切嗣にとって、戦場における「予測不能な混沌」ほど嫌うべきものはなかった。計算が、大きく狂い始めていた。
ライダー「さて……」
ライダーは満足げに頷いた後、その鋭い眼光を、誰もいないはずの闇の奥、倉庫街の陰へと向けた。
ライダー「そこな闇に隠れて様子を窺っている鼠ども! 聖杯を求める英霊がこれだけ集っているのだ。余の顔を見てなお名乗り出る度胸もない臆病者は、この征服王イスカンダルがまとめて蹂躙してくれるわ!!!」
その挑発は、確実に隠れ潜む者たちの自尊心を逆撫でした。
街灯の上に、黄金の粒子が集束する。現れたのは、黄金の鎧に身を包んだ傲岸不遜なアーチャーのサーヴァントであった。
アーチャー「我(おれ)を差し置いて王を自称する雑種が、一夜に二人も湧くとはな……」
アーチャーの不快感を露わにした声が響く。
だが、変変はそれだけでは終わらなかった。
倉庫街の逆側、海から吹き付ける夜風が、一瞬にして肌を刺すような冷気へと変貌する。
きぃん、と空間が凍りつくような清澄な音が響き、夜霧の中から、純白のドレスを身に纏った銀髪の少女が姿を現した。その腕には、どこか不気味で愛らしい、異形の怪物のぬいぐるみのようなものが抱かれている。
キャスター「お初にお目にかかります、偉大なるマケドニアの征服王、イスカンダル陛下。私は、ロシア帝国最後の皇帝ニコライ2世の第四皇女『アナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァ』。このたびの聖杯戦争において、キャスターのクラスで現界しました。この子は『ヴィィ』、私共々、お見知り置きを」
凛とした、しかしどこか儚げな美声を響かせ、深々と一礼するキャスター。
その瞬間、キャスターのマスターからの念話が飛んだ。
???『(ちょっとアナちゃん!? なんでアナちゃんまで自分から真名バラしちゃうのさ!? )』
キャスター『(あら。向こうだって名乗っているのだから、こちらも名乗るのが礼儀でしょう?それに、真名がバレても私には弱みになることなどないのだし)』
平然と返すキャスター/アナスタシアに、マスターは「う〜、まあアナちゃんがそう言うならいいけど……」と、内心で頭を抱えていた。
それを見たアサシンが、さらに面白そうにクスクスと肩を揺らして笑った。
アサシン『アナスタシアが真名を明かした以上、私も隠し通すのは無粋かしらね。ねえ、八幡?』
八幡『……しゃーない。どうせお前も、真名がバレたくらいで不利になるサーヴァントじゃないんだろ?』
アサシンはニヤリと不敵に笑うと、セイバーとランサー、そしてライダーに向かって、その小さな身体から凄まじいまでの剣気を放ちながら言い放った。
彦斎「キャスターが名乗ったのだもの、同盟者である私も隠すのは野暮ね………私の真名は、この日の本における幕末四大人斬りが一人――『河上彦斎』。……よろしくね、征服王、騎士王様、輝きの貌のディルムッド。」
切嗣「(何だと……!?)」
コンテナの影からスコープを覗いていた魔術師殺し――衛宮切嗣は、驚愕に目を見開いた。
切嗣「(アーサー王だけでなく……あの河上彦斎までもが、あんな少女だというのか……!!?)」
ブリテンの伝説たるアーサー王(セイバー)だけでなく、日本の歴史に名を刻む希代の人斬り(河上彦斎)までもが、可憐な少女の姿で現界している。歴史のねじれか、座の悪戯か…
そんな切嗣の心中とは裏腹に、ライダーは満足そうに頷き、新顔のキャスターへと向き直る。
ライダー「ほう、ロマノフの皇女か! 良いな、王の器を持つ者が集う中、うぬのような美しき存在は戦場を華やかにする! どうだキャスター、うぬも余の臣下に加わらんか?」
アナスタシアは一度目を閉じ、マスターとの短い念話ののち、静かに目を開いた。
アナスタシア「……丁重に扱うのであれば、構わないわ。」
ライダー「うむ! 淑女を無体にあしらう趣味は、この征服王イスカンダルにはない! 歓迎しよう、キャスター!」
この瞬間に、ライダー、アサシン、キャスターの3騎による異例の「同盟」が成立した。
セイバー「(ライダー、アサシン、キャスターの3騎が結託した、だと……!!? これは、不味いことになった……瞬く間に包囲網が敷かれてしまったか……!!)」
本来であれば個々に殺し合うはずのサーヴァントの半数近くが、一つの巨大な陣営としてまとまったのだ。セイバー、ランサー、アーチャー陣営にとって、これほど最悪な展開はない。
この事実に、他陣営のマスターとサーヴァント達には激しい動揺が走る。
ランサーのマスターである『ケイネス・エルメロイ・アーチボルト』は、暗闇の中で奥歯を噛み締めた。セイバー陣営のアイリスフィールも、顔を青ざめさせている。
遠くで戦況を見つめるアーチャーのマスター『遠坂時臣』もまた、優雅にワイングラスを傾ける手をとめ、その顔から余裕を消し去って驚愕していた。
時臣「……馬鹿な……こんな事態、あり得るのか……!!?」
だが、混沌とした戦場はさらなる狂気を呼び寄せる。
バーサーカー「■■■■■■■■■■■■―――!!!!」
同盟成立の余韻に浸る暇もなく、街灯の上に立つアーチャーを睨みつけるように、漆黒の怨念を纏った狂騎士――バーサーカーが乱入してきた。
アーチャー「誰の赦しを得て我を見上げている…?狂犬めが…!!」
激怒したアーチャーが空間から無数の宝具を出現させ、バーサーカーへと射出する。
しかし、バーサーカーはその驚異的な身体能力で宝具を受け止め、あるいは奪い取り、アーチャーの攻撃をことごとく迎撃していく。
その凄惨な戦闘の最中、アーチャーのマスターである遠坂時臣からの指示(撤退の進言)により、アーチャーは不機嫌極まりない表情で黄金の光となって消え去った。
場を一瞬の沈黙が支配する。
そんな中、セイバーは自分を見る視線に気がつく。
視線の先には、バーサーカーがいる。視線が交わる刹那に、感じる悪寒。
セイバー「アイリスフィール下がってッ!」
アイリ「セイバー!!」
セイバーの言葉を合図に
バーサーカー「■■■■■■■■■■■■ッ!!!!!!」
一層激しい咆哮を上げ、バーサーカーは近くに引き抜いた鉄柱をぶん回しながら、左腕を負傷しているセイバーへと襲いかかる。
さらに、この機を逃すまいと、暗闇からランサーのマスター・ケイネスの冷酷な声が響いた。
ケイネス『令呪をもって命ずる。ランサーよ、狂戦士と協力し、確実にここでセイバーを討ち果たせ!!』
ランサー「くっ……我が主よ……!許せ、セイバー…!!!」
騎士としての誇りを汚され、苦渋の表情を浮かべながらも、令呪の絶対的な強制力には逆らえない。
ランサーは二本の魔槍を構え、バーサーカーの猛攻に合わせるように、セイバーへと突撃した。
左腕の呪いの傷により、満足に剣を振るえないセイバー。そこに襲いかかる、最強クラスの二騎による挟撃。
万事休す。そう誰もが思った瞬間。
ライダー「AAALaLaLaLaLaieッッッ!!!!!!」
豪快な裂帛の気合いと共に、ライダーの神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)がバーサーカーとランサーの間に割って入り、蹂躙の雷撃を放った。
そんなライダーの行動を見た彦斎は、八幡に念話で指示を仰ぐ。
彦斎『八幡、どうする?』
八幡『…………チッ。セイバーを助けるのは癪だが、ライダーと同盟を結んだ以上、ここで手を貸さないわけにはいかねえ。恩を売っておくのも悪くない。援護しろ』
彦斎『了承』
マスターの指示を受け、彦斎は即座に地を蹴った。
同時に、隠れていたアナスタシアのマスターもキャスターへと指示を出す。
???『アナちゃん!ライダーとアサシンの援護をお願い!!』
アナスタシア「ええ、任せてちょうだい。――ヴィイ、お願い。全てを呪い殺し、奪い殺し、凍り殺しなさい……魔眼起動――疾走せよ、ヴィイ!!!」
アナスタシアが宝具を解放ーーバーサーカーの足元のコンクリートが一瞬にして絶対零度の氷塊と化し、その動きを大きく鈍らせた。
その隙を突き、ライダーの戦車がバーサーカーを弾き飛ばす。
さらに、セイバーに迫っていたランサーの眼前に、彦斎の刃が割り込んだ。
アサシン「悪いけど、ここからは多勢に無勢よ、ランサー」
ランサー「くっ……!!」
同盟を結んだ三騎の流れるような連携。
これ以上の戦闘は不利と悟ったのか、あるいは魔力が尽きたのか、バーサーカーは突如として深い霧の中へと姿を消した。
ケイネスもまた、形勢逆転を悟りランサーを撤退させる。
傷つき、息を乱すセイバーを慮り、アイリスフィールもまた撤退を選択した。
夜の倉庫街には、戦闘の傷跡と、ライダー、ウェイバー、そして彦斎とアナスタシアだけが残された。
ウェイバー「お、終わった…………って、なんでまだお前ら残ってんだよ!?同盟は結んだけど、急に斬りかかってきたり氷漬けにしないだろうな!!?」
ライダー「落ち着け坊主。彼女らからは殺気は感じん。それに、マスター同士の顔合わせがまだであろう?」
ライダーがそう促した直後。
倉庫街のコンテナの影から、二人の人影がゆっくりと歩み出てきた。
一人は、どこか気怠げで、腐った魚のような目をした黒髪の青年。
もう一人は、快活そうな雰囲気を纏いながらも、今はその瞳に鋭い光を宿している少女。
八幡「……初めましてだな、征服王、それとライダーのマスターで時計塔の学生さん。俺がアサシンのマスター、比企谷八幡だ」
小町「そして、その妹でキャスターのマスター、比企谷小町です!」
ウェイバー「なっ、兄妹でマスター!!?そんなイレギュラーが……!!」
ライダー「ほう、お前たちがこの2騎を束ねるマスターか!見所のある面構えをしているではないか!」
豪快に笑うライダーに対し、八幡は短くため息をつき、ポケットから手を出した。
八幡「褒め言葉として受け取っておく……改めて、同盟の件は感謝する。アンタらとなら、ある程度信用して背中を任せられそうだからな」
小町「うんうん、お兄ちゃんの言う通り!でね、私たちからも、同盟を組むにあたって隠し事はなしにしておきたいの」
小町の言葉に、場の空気が一段と張り詰める。
八幡もまた、腐ったような、しかし確かな「殺意」を込めた瞳で、遠くを見つめるように言った。
八幡「俺たちの狙いはただ一つ………聖杯そのものよりも、『セイバーのマスターを確実に殺す』ことだ」
ウェイバー「セイバーの……マスター?あのホムンクルスの女の人か?」
八幡「いや、あれはダミーだ。本当のマスターは別にいる……名前は、『衛宮切嗣』」
八幡の口から発せられたその名前に、小町の表情から笑みが消え、憎悪に満ちた表情へと変貌する。
八幡「……奴はかつて、他の魔術師を暗殺する仕事の巻き添えにして………俺たち兄妹の両親の命を奪った……外道でクソッタレな『魔術師殺し』さ」
八幡の声は、夜の冷気よりも冷たく、重かった。
八幡「俺たちの目的は聖杯じゃない。衛宮切嗣への復讐だ……そのために、あんたたちの力を借りたい」
静まり返る倉庫街。
復讐という、あまりにもドロドロとした暗い情念。
しかし、それを聞いた征服王は、忌避するどころか不敵な笑みを浮かべた。
ライダー「……なるほど、仇討ちか。実に分かりやすくて良いではないか!!」
ウェイバー「おい、ライダー!?」
ライダー「案ずるな坊主! 臣下の無念を晴らすのも、また王たる者の務めよ! いいだろう比企谷八幡、比企谷小町! その復讐、余の覇道と共に成し遂げてやろう!!」
差し出された巨大な手。
八幡は小さくため息をつきながらも、その腐った目に微かな信頼の色を宿し、ライダーの手を力強く握り返した。
八幡「……言質は取ったぞ、征服王。これからの戦い、せいぜいこき使わせてもらう」
月明かりの下、復讐を誓う兄妹と、世界征服を掲げる覇王による、異端にして最強の同盟がここに完全な結実を見た。
聖杯戦争の運命の歯車は、大きく狂い始めていた――。

















