Novel6 days ago · 9.8k chars · 1 pages

酒寄彩葉(28歳)とかぐやがガチの新体力測定をやる話

かもかも

10年後に色気たっぷりの彩葉が運動でもバケモンみたいな結果出してたらどれだけの人間が堕ちるんだろうね。そんなことを考えながら書きました。ちなみに自分が過去に投稿した野球の話のSSが続きではないけど要素として少しだけ出てきますのでご注意を

「「いただきます!」」

 2人して手を合わせ、私はお味噌汁から、かぐやはいきなりおかずに手をつける。10年越しの、いつもどおりになった食卓

 「今日のお味噌汁おいしっ!あおさ入ってるんだ」
 「今日は海鮮尽くしだよ!良いのが手に入ったからね!」

 相も変わらずかぐやのご飯は絶品で、ご飯が楽しみになる日が来るなんて。お味噌汁の温かさに幸せを噛み締めているその時、かぐやが私に聞いてくる

 「あのさ、彩葉」
 「? なあに?かぐや」
 「昔に比べたら彩葉の生活ってちょ~健康になったよね?なんで?そりゃ今の方がよっぽどいいけどさ」
 「あー。聞きたい?何個か理由はあるけど」

 私は理由をある程度省略しながら話し始める

 「まず一番は今みたいにかぐやとの時間が欲しいから。今は2人だけど、いつかはヤチヨもいれて3人ね」
 「で、次が肉体かな。そりゃ無茶はまだ出来るけど、どうしても年齢的なとこでもわかりやすくガタが来るようになっちゃってね。休んだ方がよっぽど良いのよね」
 「それで最後が立場だね。ほら、今の私って所長だからさ、所員の職場の居心地のためにも上司の私が率先して休んだりする姿を見せなきゃいけないのよね」

 私は掻い摘まんで理由を話す。どうやらかぐやには最後がわかり辛かったようで

 「え?最後のはどゆこと?」
 「簡単に言うとさ、かぐやが部下だったとして考えて欲しいんだけどさ、上司がいつも仕事してて、休みも取らず、朝早くから夜遅くまでずっと仕事、しかも仕事は部下には任せてくれない。とかだったらどう?」
 「うわー嫌かも。距離感じちゃうなー」
 「でしょ?だから上司の私が率先して休んで、部下も休みやすい環境にする必要があるの」
 「ほえー。上司って大変なんですなぁ」

 お味噌汁をすすりながらかぐやが答える。すると話が少し変わってきたようで

 「じゃあさ彩葉、今の彩葉って健康だよね?運動出来る?」
 「健康だしバリバリ出来るけど、どうしたの?」

 ちょっと待ってて!と言いながらかぐやはどこかに行ってしまう。30秒もしない内に戻ってきたかぐやは1枚の紙を手に持っていた

 「彩葉!動画の企画でこれやりたい!」
 「これ?あ!私の体力測定の!懐かしっ!物置から見つけたの?」
 「そう!やったことないからさ、彩葉が出来るならやりたいな~って」

 正直言うと私もこの紙を見たときに当時を思い出してやりたいと思った。そういえば10年もやってないのか。だから

 「いいよ。それならやりたい」
 「うえ?そんな軽いの?嫌がるかと思ってた」
 「ふっふっふ。これでも私は当時のトップだったんだよ?満点なんて学年どころか学校で私ぐらいだったんだから。運動にも自身アリよ」
 「マジか!そんなに凄かったんだ!じゃあ決まりでいい?」
 「うん。けど1ヶ月は欲しいかな、流石に追い込みたいし。それと撮影場所のアポは任せるよ。かぐや考案の企画だからね」
 「りょーかいです!それじゃ来月!やりましょー!」

 ご飯を食べながらそんな会話をする。明日から頑張りますかっ!

 2週間後

 「おっけー。後3本」

 私はガチガチのトレーニングをしていた。1ヶ月は想像よりも短いし、出来る種目は放置で時間がかかるものに多くの時間を使う必要がある

 (マジで運動って一夜漬けは論外だからね。だからといってかぐやに威厳を見せるとこだし、頑張らなきゃね)

 約1時間後、全てのトレーニングやストレッチが終わって携帯を確認すると何通かのメッセージが届いていた

 『おっす!彩葉!かぐやちゃんから聞いたけど面白そうな企画するそうやん?ガヤとして来て欲しい言われてん参加させてもらうわ!』

 まさかのお兄ちゃんからのメッセージ。続けて黒鬼の3人全員に送ったらしいけど乃依くんと雷さんは他の用事が被ってて無理だったと伝えられた。ちなみにお兄ちゃんは「そんなオモロイことすんなら会議とか後回しや!」って感じでこっちの企画を優先するらしい。凄いなそれ

 『かぐやちゃんから聞いたよ!勿論参加させてもらうよ!楽しみにしてる!』
 『私もかぐやから聞いたよ~。私たちも盛り上げちゃうよ~』

 芦花と真美はグループでのチャット。2人きりでは測定方法に差が出るかもしれないし見られてる方が程よい緊張もあるし、丁度良いのかもしれない。私としてもありがたく参加してもらうことにした

 本番当日

 「身体能力王決定戦!うおおおお!!!」

 タイトルコールと呼んでいいのかわからないかぐやの声から撮影が始まる。場所は近くの競技場を貸しきっている

 「私が上ってところを見せます。覚悟しておいてよ?かぐや。それと皆途中で忘れると思うから言っとくけど今日だけは本名呼びを許します」
 「けどコメント欄とかではいろPでお願いしますね?」

 この1ヶ月、かなりガチのトレーニングをしたし体調はバッチリ。そこからは芦花と真美、そしてお兄ちゃんの挨拶が続く。今回は私とかぐやの企画のため、測定には参加せず裏方や応援に専念してくれる。ちなみに真美はお兄ちゃんを出来るだけ見ずに必死に正気を保っている

 『ちなみにヤチヨもいまーす!それと帝サマに関してはヤチヨの力でツクヨミ内のアバターで映るようにするから安心してね~!』
 「おー助かるぜ!それなら動き回れるな!」

 そんな会話からついに競技が始まる。シャトルランは時間の都合上無くなった。最初は上体起こしから

 「よっしゃあ彩葉!かぐやちゃんの腹筋見せたるからな!」
 「おーおー今のうちに言っときな。30秒後には私に跪くからさ」

 私たちは煽り合いながら測定が始まる。お互いの回数がわからないようにするためにとあえて背中合わせになったから、とにかく全力を尽くす

 『しゅ~りょ~!』

 ヤチヨの合図で終わる。多分だけど勝った。かなり頑張れた

 「結果は俺が発表しようか!じゃあまずはかぐやちゃんから!」
 「かぐやちゃんは29回!」
 「うおー!それっていいの?紙に書いてた彩葉の記録も覚えてないや」
 「え?それめっちゃいいよ!私と真美なんて当時ギリギリ20回ぐらいだったし。点で言えば多分満点だよ」

 ほうほう。そんなもんか。よし勝った。そう思いながら私は自分の結果を聞く

 「じゃあ次は彩葉だな!彩葉は36回!」
 「え!最高記録じゃないんだ!悔しっ!」
 「えーー⁉それ悔しがるとこ⁉かぐやより7回多いんだよ!」
 「いやいや、私にとって過去とは越えるもの。それが成し得なかったのは悔しすぎるんだよ...」

 普通にショックだった。40目指せてたまであったと思ったのに。これは次への課題かな

 次は立ち幅跳び。正直これはやってないし記録が落ちてても仕方ないとは思うけど、割となんとかなりそうな気もする

 「真美~!真美どれぐらいだったの?彩葉じゃ参考にならん気がする~!」
 「えー私⁉うーーん、多分150ぐらいだよ。そこまでいい記録じゃなかったはず~」
 「おっけー!次はかぐやが勝つよ!」

 そう言いながらかぐやが跳ぶ。この種目は競い合いにはならずその場で結果がわかる。後からまとめて発表というのもあったけど、この時はまだその考えには至ってはいなかった

 「かぐやちゃん、記録212cm!」
 「かぐやちゃんめっちゃ凄いで!さっき調べたけど満点もらえる結果やで!」
 「ふっふーん!どやぁっ!」

 いい気になっちゃって。見てなよ。私の本気を!

 「い、彩葉の記録...227cm!」
 「えーーー!帝ぉ!余裕で負けてるじゃん!」
 「嘘やろ彩葉...フリちゃうで今の...」
 「彩葉やば~。レベチ過ぎじゃーん!」
 『ヤチヨは割とドン引きなのです...』

 ふふふ。その反応が見たかった。それに自己ベスト大幅更新。これだよ。気持ちの良い瞬間は!

 「これは私としても満足がいきますな!次いこー!」
 「あー!彩葉がわかりやすく調子こいてる!」
 「ほなら抜いてみなっ!受けて立つ!」

 軽口を叩き合い次の種目へ、次は長座対前屈

 「かぐやちゃん、柔軟やってる?」
 「やってない!一応ここ最近はやったけどそれだけかも!」

 そう言ってふんぎぎぎ!と必死に手を伸ばす。しかし柔軟とは積み重ねが大切なもので

 「かぐやの記録、37cm!」
 「ぐえーこれは悪い気がする~!」
 「はっはっは!かぐやちゃん、柔軟は苦手な人はとことん苦手や、けどやっとかんと怪我の元やで?やってて損はあらへんよ」
 「しゃーない。やるかー」

 かぐやが思ったよりも悪い結果になっている。だが私は自信大有りなんだ。すまないな、かぐや、また引き立て役になってもらう

 「彩葉の記録~、66cm!」
 「当時と一緒か~!これは仕方無いかな!」
 「彩葉ってやっぱバケモンだよね?なかなか聞かないよ、そんな数字。しかも当時は運動してなかったのに」
 「ほんまやで、男子でもそうそうおらへんわ」
 『彩葉は軟体生物なのかにゃ???』

 褒めるな褒めるな。良い気になっちゃうじゃないか。しかしこの種目は絶対に勝てるとわかっていた。だからそこまで得意気にはならない。次の種目は握力

 「じゃあ今度は私からいこうかな。記録は最後に発表してよ」
 「わかったで。ほな終わったらヤチヨちゃんに見せな。じゃあ彩葉から!」

 私は全神経を手に集中させる。声はそこまで出さない。己の中のタイミングを合わせ、いざ!

 「記録は見てないけど、多分完璧かな」

 これは来た。タイミングまで噛み合った。ちなみにヤチヨは記録を見て目を見開いている

 「ここまで全部負けてるからね!ここは勝つよ!」
 「かぐや~。頑張れ~!」
 「いけるで!このままやったら妹が魔王みたいになってまう!ここらで鼻折ってくれ!」
 「かぐやちゃん!全力だよ!」

 実の妹に向かってなんだその言い方は。だが事実私の運動神経は良い。てかもう自認してるけどバケモンレベルだ

 「ぬぅぅぅあああああああ!!!!!」
 「うおおおおおお!!!!!」
 「どぉりゃあああぁぁあああ!!!」

 スゴい声が出ている。多分東京23区に響き渡っているんじゃないか?ってぐらいの全力。それをかぐやたちは結果を見ないようにヤチヨに見せる

 『それじゃ結果発表、いくよ!まずは最初にやった彩葉から!』
 『彩葉、右手45!左手42!』
 「...は?彩葉、ヤバすぎんか?」
 「妹にドン引きしないで。当時でも平均37ぐらいはあったんだから」
 「にしてもヤバすぎでしょ。ほんとにヤバいね。逆に冷静になってきたよ」
 『じゃあ次はかぐや、いこうか!』
 「ばっちこい!声だけなら100越えてる!いける!」
 『かぐや、右手30!左手33!』
 「普通に負けてるー!!!」
 「かぐや~。かぐやは普通に良い方だよ。てか記録上では8点だよ。確か」
 「せやねん。彩葉がバケモンなだけや。握力満点なんかそうおらへん。40越えは男子でも運動してへんかったら無理なレベルや」

 最初はすごい!だった私への反応は最早全員が引き気味になってきている。けれども運動神経がいい人ならわかるかな。この反応、めっちゃ気持ちが良いんだよね

 「じゃあ次はハンドボール投げだよ!これは勝てるかも!」
 「確かに。彩葉は肩肘壊さないようにしなよ?」
 「そだよ~。流石に無理は出来ないでしょ」

 そうだ。ここが最大の難関。練習でハンドボールを投げる場所なんて無いし、肉体の全盛期で無茶が出来るかぐやとある程度はセーブしなきゃ多分肩肘がぶっ壊れる私。けどここを勝たなきゃ完全勝利にはならない

 「じゃあ次はかぐやから!投げ終わったらすぐ結果言ってもらって良いよ!自信アリだからね!」
 「うおおおおお!!!いくぞおおお!!!!!」
 「どりゃーーーー!!!!!」

 実は私とかぐやは以前、野球を楽しんだことがあった。その時の体の使い方を思い出して応用して、完璧な投球をする

 「かぐやちゃん、記録28m!」
 「やっしゃあ!!!良いか悪いかわからんけど多分良いんじゃね⁉」

 マズいな。私の最高記録を抜かれている。けど負けるわけにはいかない!

 「じゃあ次は私だね」
 「やーー!!!」
 「おー、可愛い声」
 「可愛ええ声出すやん。兄として誇らしいわ」
 『ASMRにしたいかにゃ』
 「運動神経は全く可愛くないけどね」
 (お兄ちゃんはそこを誇らないでもらっていいかな?)

 「彩葉、記録23m!」
 「うわちゃー。下がってたか。でもこれは仕方無いかな...」
 「いよっっしゃあー!!!遂に彩葉に一矢報いたぞー!!」

 悔しいがこれは負けを素直に認めざるをえない、私としても肩を考慮して一投しか出来ないし。だが負けを認めても悔しくない訳じゃない、ここからは完膚無きまでに勝つ!

 「じゃ~次は反復横跳び、いってみよ~!」

 来た。得意種目のひとつ。女子の間ではぶっちぎりの1位だった。男子と合わせても学年で3位ぐらいには入ってた種目

 『じゃ~ここはヤチヨがストップウォッチをしちゃうよ!』
 「じゃ、私は彩葉を数えるよ」
 「じゃあ私はかぐやを~」
 「俺は今回はガヤだな!」

 私は再び全神経を集中させる。いざ!記録更新!

 『スタート!』

 例に漏れずこういった種目はわたしとかぐやであえて背中合わせになっている。てかかぐやのことはもう気にしていない。私は私の記録更新に向けて全力を注ぐ。明日股関節が痛くなるかもとか知ったこっちゃない!今!全力を尽くす!

 『ストップ!』

 多分、良かった。ゾーンに入ってた気がする。残りの5秒ぐらいは多分めちゃくちゃすごかった気がする。ケガ防止もあってこれも測定は1回だけ。これは全力を出し切ったと言っても良い

 「私が発表からで良いかな?かぐやの記録は~」
 「58回!」
 「スゴいの⁉どうなの⁉」
 「かぐやちゃん、めっちゃスゴいでそれ。男子って満点が63なんやけど、60いけん人ようけおるで」
 「じゃあ良い方じゃん!これ、勝ったんじゃなーい?」

 はっはっは。あまり私を舐めないでもらいたい。さあ芦花!言って頂戴!

 「えー、彩葉の結果...68回!」
 「どっかで見た流れ!」
 「彩葉!俺の台詞はフリちゃうで!天丼やんこれ!」
 「ぬはははは!!最高記録更新!完璧!男子だろうと余裕で満点よ!!」

 また魔王への道が近づいてしまった。だが今の私は最高記録更新の余韻に浸っている。そうして遂に残す種目も走る競技だけだね。ここからがトレーニングの成果が出るかどうか

 「どうする?先1000mやっとく?」

 芦花からの提案。確かに動画的にも一番見てくれるのは50m走だし、そっちの方がいいかな

 かぐやも皆も動画のことも考えた上で同じ考えだったみたいで1000m走を先に始める

 『じゃあヤチヨの合図でいくよ~...スタート!』

 合図と共に走り出す。するとかぐやが

 「たかだか1㎞!ここは全力で走るんだ!」
 「かぐやちゃん!それはマズいかもしれへん!」
 「かぐや~!多分後半ヤバくなるよ~!」
 お兄ちゃんと真美の忠告なんて聞いていない。最初に飛ばしてリードを広げるかぐや。だが私はそんなものに惑わされない

 「彩葉、めっちゃ冷静じゃん」
 「最早かぐやちゃんのことなんか眼中にないって感じか?最後に抜いたらええもんな」

 私には芦花とお兄ちゃんの言葉が遠いからハッキリではないけど聞こえてくるぐらいには冷静で走れている

 『よーし、500m!後半分!頑張って~!』

 ヤチヨの言葉はかぐやに向かっている。現在私は400m付近。かぐやはだんだんひーひー言い始めたが根性で耐えている。私は、スパートはまだまだかな

 「は、はぁ...はぁ...長いごれぇ...」
 「やから言うたやん!かぐやちゃん!1㎞ってわりかし長いんよ!」
 「かぐやちゃん!もう根性しかないよ!頑張って!」
 「かぐやー!耐えろー!」

 多分だけど、全員が最後は私が勝つと確信している。てか勝つ。だって私は普通にピンピンして走ってるもん。そうして多分700mが過ぎた辺りで遂にかぐやを捉える

 「かぐや、お先っ!」
 「あぁ...!までぇ...!ぎっづぅ...!」

 かぐやの身体能力は確かに相当高いしボディ製作の面でもそれは完全再現している。勿論現在は疲れ果ててもボディに問題は起こらない。だが長距離走のペースなんて知らなくて当然。ここは経験の差で私がぶっちぎる

 『彩葉、ゴール!』

 私はふぅっ、と息をつき上を向いて歩く。しんどいときは膝に手を置きたくなっても上を向いて歩いた方がいい。そしてそこそこ待ってから

 『かぐや~、ゴール!』

 1000m走が終わった。かぐやはお兄ちゃんがこんなこともあろうかと持ってきてくれていた酸素スプレーをド必死で吸っている。そりゃそうなるよ。仕方無いよね

 数分後、かぐやの息が戻ってから結果発表が行われる

 『じゃあここはヤチヨが発表しちゃうよ!流石にかぐやからかな!』
 「うぇー。めちゃくちゃ記録悪い気がする~」
 『かぐやの記録、4分18秒!』
 「あれれ?結構良いんじゃない?ねぇ芦花?」
 「そうだよね。普通に高得点だよ。確か8点ぐらいはくれるはず。普通にスゴいよ」
 「仕方ねぇよな。なんかアホみたいに早いんがおったんやしな」
 「褒め言葉のアホ、ありがとね~」
 「うわー!彩葉にイヤミが通じてない!かぐやめっちゃ負けて悔しいのに冷静すぎるって!」
 『じゃあ次、彩葉いっちゃうよ!』
 『彩葉は~...3分42秒!』
 「おっけーここも記録更新!」

 私が満足そうにうんうんと頷く様子を皆は相も変わらずドン引きしている

 『ちなみになんだけど、彩葉のペースでフルマラソン走りきれたと仮定したら2時間36分位らしいよ~ヤチヨ意味わかんないや』
 「ホンマやで。バケモンにも程があるで」
 「いやいや、あくまで仮定だからね?」
 「でも理論上は可能ってことでしょ?とんでもないよねほんとに」

 まあ流石の私でもこの理論が机上の空論過ぎることはわかっている。だがそこまで早く走れることに自信を持つなと言う方が無理でもある

 「じゃあ最後はメインイベント!50m走!いくよ!」
 「おー!」

 かぐやと私が動画の山場用にカメラの前で喋る。ここだ。トレーニングの成果を発揮する時だ

 『どうする?ヤチヨの計測だとほんとのやつになるから記録落ちるよ?』

 学校とかでの50m走、それは手動が故に本来の計測よりもタイムは速くなる。それがそういった動画のコメント欄で争いの火種になっているのも割と見かけるものなのだ。しかし

 「けどあくまで学生時代に合わせるなら手計測の方が良くない?わかりやすいし」
 「そだね~。皆授業じゃ手計測なのに今だけガチなのはね~」
 「せやな。ガチなのはガチでまたやったらええわ。今は学生時代とおんなじでやろーや」
 『りょー!じゃあ帝サマ、測定お願いしても良いかにゃ?』

 皆の発言であえて当時に合わせた手計測になる。お兄ちゃんも任せろ!とゴール地点へ向かい、最終種目が始まる

 「ここは私がスタート合図をやるね。どうする?一人ずつ走る?タイムわかっちゃうし」
 「そうだね。かぐや、先攻後攻はじゃんけんで決めよっか」
 「りょーかい!いくよ!」

 そうしてじゃんけんは私の勝ち。勿論後攻を取りかぐやがスタート地点へと向かう

 「最後はもっぺん彩葉に勝つ!かぐやの全力見せてやる!」
 「よし、じゃあいくよ!よーい、ドン!」

 芦花が用意していたフラッグを振り下ろす。その合図と共にかぐやは綺麗なフォームで全力疾走をする

 「かぐや、結構速くなーい?」
 「速いよね。てかかぐやの運動神経ってめっちゃ良いからね。あれで月の頭脳も持ってるから本来はチート級だよ」
 『チートそのものの彩葉が言っても説得力無いよ?』

 そんな会話もすぐに終わりを告げる。ゴールまでを全力で駆け抜け、お兄ちゃんがストップウォッチを止める

 「よし!かぐやちゃん!悪いけどタイムは彩葉が走るまでおあずけな!彩葉!すぐ行こか!」
 「りょーかい。かぐや、本物を見せたげる!」

 次に私の番。多分疲れも考えたら1回目が一番速い。イメトレもバッチリ。いざ!

 「よーい、ドン!」

 その合図と共に私は風となる。フォーム、ストライド、スタート直後の前傾姿勢。どれを取っても完璧だろう。気が付くとゴールしていた

 「よっしゃ!出揃ったな!ほなタイム発表、いこか!」

 お兄ちゃんの言葉で全員がカメラ前に集まる

 「よし、かぐやちゃんから発表するで!かぐやちゃんは...」
 「7秒6!」
 「おお~!速いよかぐや~!」
 「文句無しの満点だよかぐやちゃん!」
 「よっしゃー満点!けど彩葉の方が速いのはわかっちゃってるからな~」
 「そいじゃ彩葉のも発表するか!彩葉の結果は...」
 「7秒0!」
 「記録落ちとるやんか!!!!!」
 「ええ⁉そんな悔しがるとこー⁉」
 「そうだよ彩葉!普通喜ぶとこだよ⁉」
 「ちゃうねん2人とも...私はこの1ヶ月、もっぺん6秒台になるために頑張ってきたねん...悔しすぎるでホンマ...」

 なんと無情。方言なんて気にしない。勝手に出る。というかあれで7秒切れてないのか...悔しすぎるな...

 『なにはともあれ怪我がなかったのが一番だよっ!締めの挨拶、いこうか!』

 ヤチヨの言葉と共に私たちは締めの挨拶へと移る。結果は言うまでもなく私の圧勝。唯一負けたハンドボール投げは正直仕方の無い部分もあったし、かぐやもそれはわかっている

 撮影終了後、お兄ちゃんが私に近づいてくる

 「なあ彩葉。今の体調、どうや?」
 「ん?めっちゃええで。多分全盛期かもしれへん。やりたいことと出来ることが合致してる感覚があるんよ」
 「...そっか。なら良かったわ。ホンマにな。これからもかぐやちゃんのご飯、しっかり食べてよー寝るんやで」

 そう言って表情は見せずに去っていく。お兄ちゃんの言葉も、成長した今の私なら察しが付く。

 (そうだよね。皆、ありがと)

 心の中で全員にお礼をする。そうして撮影は終わり、私たちは競技場を後にした

 数日後、慣れた手付きでかぐやが編集を終わらせ、体力測定の動画を投稿する。話題性もあって100万再生を突破したのもすぐだった。コメント欄では「かぐやちゃんもめっちゃスゴい方」VS「いろPがスゴすぎる」で軽い論争が起きている。こらこら喧嘩はやめなさい

 「いろっぴー。いろPでーす」
 私は久々とまではいかない雑談配信をする。30分程度のつもりと前置いて体力測定の動画について雑談をする

 <あれ?いつもならかぐやちゃんがひょっこり出てくるのに、かぐやちゃんどうしたの?>
 「あぁ、かぐやねー、私に負けたのが悔しくてたまらなかったらしくて今もトレーニングしてますよ」
 「今から差し入れ持っていくつもりです。じゃ、差し入れも作り終わったので配信も終了。じゃあね~」

 かぐやに差し入れを持っていく。あの調子じゃー第2回もあるのかね。私も頑張りますかっ!

— End —

Comments 2

3 天前

月産のチーターvs地球産の化け物(surprise)

放課後延長戦6 天前
Sticker
Sakuria
Where every work blooms
Click anywhere to skip