Novel18 days ago · 4k chars · 1 pages

かぐや「捨て彩葉拾った!!」

望月わんこ望月わんこ

本編とは一切関係のない謎パロです。かぐやとヤチヨが姉妹。 設定も状況もふわふわ、あんまり深く考えず読んでください。 書きたいところは書いたので続きません。 6/10追記:続きました→novel/28307912 いいねやブクマ、コメント、いつも本当にありがとうございます。本当にうれしいです。

冷たい雨が、私の体温をじりじりと奪っていく。
 路地裏のコンクリートに背を預け、私はただ、濁った水溜まりを眺めていた。
 あそこに戻るくらいなら、このままここで冷たくなってしまった方がずっとマシだ。逃げ出して、あてもなく歩き続けて、ようやく辿り着いた行き止まり。もう、指一本動かす気力さえ残っていなかった。

「……ねえ! ちょっと、大丈夫!? 起きてる!?」

 思考が白く濁り始めたその時、強引に肩を揺さぶられる。
 ぼんやりと視線を上げると、そこにはずぶ濡れの制服を着た女の子がいた。彼女は傘もささずに、滝のような雨の中で私を覗き込んでいる。その瞳が私を捉えた瞬間、ぱっと弾けるように輝いた気がした。

「……うわ、やば、めちゃくちゃ可愛い――じゃなくて! なんでこんなとこいるの!? 死んじゃうよ!」
「…………」
「うーん……よし、決めた! うちおいで! ほら、立って!」

 返事をする間もなかった。彼女は私の腕を掴んで自分の肩に回すと、迷いのない足取りでずんずんと雨の中を突き進んでいく。
 訳も分からないまま連れ回され、ようやく辿り着いたのは高層マンションの一室だった。
 彼女は慣れた様子でオートロックを解除し、エレベーターを上がって玄関の扉を開く。そこから覗くリビングは、冷え切った私の体には眩しすぎるほど、温かな光に満ちていた。

「――ヤチヨ! この子、かぐやが飼う! 絶対ちゃんとお世話するから!!」

 玄関を開けるなり、彼女はリビングに向かって絶叫した。……飼う?

「ちょっと、かぐや〜? 声大きい。配信中だったらどうするの」

 ソファでタブレットを眺めていた、透き通るような銀髪の女性が呆れたように顔を上げた。モデルのように整った顔立ち。ヤチヨと呼ばれたその女性は、面倒くさそうに立ち上がり、私たちの元へ歩み寄ってくる。

「いいから、お願いヤチヨ! あのね、道に落ちててね! ご飯もトイレも全部、かぐやがちゃんとするから! だからお願い、飼っていいでしょ!?」
「あのねぇ。捨て猫じゃないんだから、人間を勝手に連れ帰ってきちゃダメでしょう?」

 ヤチヨさん?は私の前にしゃがみ込むと、値踏みするように、じっと私の顔を覗き込んできた。
 ……ああ、やっぱり。追い出されるんだ。こんな泥まみれの不審者を受け入れてくれるなんて、そんなおいしい話があるわけないよな。
 そう思っているのに、私の体は一向に動こうとしない。冷え切った頭で「捨てられたらまたあの雨の中に戻るのか、それはちょっと嫌だなあ」なんて、他人事のようにぼんやりと考えていた。

 けれど、ヤチヨさんは私の頬を伝う雨水を指先で拭うと、そのまま顎のラインをなぞり、くいっと顔を上向かせた。
 絡みつくようなその指先は、まるで動けない獲物をじっくりと品定めする蛇みたいで。

「……ふーん」

 ふいに、彼女を覆っていた面倒そうな空気が霧散した。
 ……なんだろう。よくわからないけれど、急に機嫌が良くなった……? 私を見つめるヤチヨさんの瞳から、さっきまでの不信感が綺麗に消え失せている。

「わかった。いいよ」
「本当!? やったぁぁ!」

 かぐやさんが弾んだ声を上げる。対照的に、ヤチヨさんは私の顎に添えた指先を、慈しむようにスッと頬へと滑らせた。

「……で、この子のお名前は?」

 ヤチヨさんの問いに、かぐやさんの動きがピタリと止まった。

「えっ? ……あ」

 彼女はそこで初めて、私の名前を知らないことに気づいたらしい。
 困ったように眉を下げ、私の顔を至近距離でまじまじと覗き込んできた。

「……名前、なんていうの?」

 口を開きかけたけれど、喉の奥が凍りついたように動かない。名前。……名前、か。
 あそこでの呼び名ならある。けれど、それを口にした瞬間に、すべてが手元から滑り落ちてしまいそうな気がした。私が唇を震わせたまま固まっていると、ヤチヨさんは私の迷いを見透かしたように、穏やかに目を細めた。

「……言いたくないなら、無理に言わなくていいよ。ねえ、かぐや。名前、付けてあげたら? 拾い主の責任でしょ」
「えっ、かぐやが!? うーん、えーっと……」

 かぐやさんは私の顔を穴が開くほど見つめ、何かを懸命に探るように唸った。やがて、その瞳がパッと輝く。

「……彩葉。いろは、ってどうかな! あのね、土砂降りで、くら~い路地裏だったのに、この子の周りだけパッて色が付いたみたいに見えたんだ。……彩りの、葉っぱ。今の季節にもぴったりでしょ?」
「彩葉。…………うん、いい名前」

 ヤチヨさんの指先が私の耳たぶに触れ、そのまま髪を掬い上げる。その一連の動作はひどく優雅で、不思議な心地よさがあった。

「よし。あ、でも、彩葉ちゃんのお世話はヤチヨが全部やるね。かぐやは明日も学校あるし、日中家を空けるでしょ? 家にいる私が見てた方が、この子も安心だと思うし」

 ヤチヨさんは掬い上げた私の髪へ、慈しむようにそっと唇を落とした。
 穏やかな声で、まるでもう決まったことのように告げたヤチヨさんだったけれど、その瞬間、かぐやさんの顔からすっと表情が消える。

「……は? ヤチヨ、何勝手に決めてるの? 意味わかんないんだけど」
「勝手だなんて心外だな~。ただの役割分担。かぐやだってこの子を一人にしたいわけじゃないでしょ? ヤッチョがついてるからさ、安心して学校行っておいで?」
「ぜーったい嘘じゃん! そんな貼り付けたみたいな笑顔でかぐやは騙されないから! 彩葉はかぐやの! いくらヤチヨでもあげないからね!?」
「ヨヨヨ〜、お姉ちゃん心が疑われて、ヤッチョいと心憂し〜」

 ついに視線を伏せるヤチヨさんと、顔を真っ赤にして怒るかぐやさん。

 ……どうしよう。
 さっきまであんなに仲が良さそうに見えた二人が、一瞬で険悪になってしまった。
 理由はわからないけれど、きっと、私がここにいるせいだ。私が余計な存在だから、この人たちの穏やかな生活を壊してしまっている。

 ……せめて、これ以上邪魔にならないようにしないと。
 そう思って、濡れた服が滴らないように腕を抱いて身を縮めた拍子に、鼻の奥がツンと刺激された。

「――っ、くしゅん!」

 静かな玄関に、私の小さなくしゃみが響く。
 その瞬間、睨み合っていた二人の動きが、文字通りピタリと止まった。

「……あ」
「……とりあえず、お風呂が先だね〜」

 ヤチヨさんが、少しだけバツが悪そうな顔で私へ視線を向けた。
 けれど、すぐにまたいつもの涼やかな笑みを浮かべ、かぐやさんの背中を軽く押す。

「……ほら、かぐや。今は譲ってあげるから、早くお風呂連れていってあげて。しっかり温めないと、風邪ひいちゃう」
「言われなくても! ほら、行こう彩葉」

 かぐやさんに手を引かれ、私たちは玄関を後にする。
 さっきまでの怒りはどこへやら、私の手を引く足取りはどこか誇らしげで、心なしかそわそわとした空気をまとっていた。
 けれど、脱衣所へ向かおうとする私たちの背中に、ヤチヨさんのさらりとした声が追いかけてきた。

「お風呂から上がったらヤチヨの部屋に連れてきてね〜。お布団敷いて待ってるから〜」

 その言葉が耳に届いた瞬間、かぐやさんの足がピタリと止まった。
 私を引っ張っていた手が、一瞬でガチガチに強張る。ゆっくりと振り返った彼女の顔は、完全に引きつっていた。

「……待って、ヤチヨ。今、なんて言った?」

 廊下に立つヤチヨさんは、かぐやさんの視線を正面から受け止めながら、どこか楽しそうに目を細めた。

「ん〜? だから、彩葉ちゃんのお布団敷いとくねって」
「なんでヤチヨの部屋なの!?」
「保護した子を一人で寝かせるわけないでしょ〜?」
「そういうことじゃない!」

 まただ。二人ともすごく真剣そうだけど、何について揉めてるのかがよくわからない。
 そもそも、私なんかの寝る場所でこんなに言い合う意味あるんだろうか。

「……あの、私、床とか、玄関でも――」
「「だめ」」

 ぴしゃり、と綺麗に声が重なった。
 鼓膜を震わせた強い拒絶に、びくりと肩が跳ねる。

「床で寝たら風邪ひくでしょ」

 重なった声の後に続いたかぐやさんの言葉には、一切の迷いがなかった。ヤチヨさんもまた、当然と言わんばかりに深く頷いている。

 なんだか、ひどく変な感覚だった。
 さっき会ったばかりなのに。どうしてこの人たちは、見ず知らずの私に対して、こんなにも真っ直ぐな心配を向けてくれるんだろう。
 私が戸惑っている間にも、かぐやさんは険しい顔でヤチヨさんを睨み続けている。

 ……でも。
 ふと、かぐやさんの視線が、濡れた服のまま小刻みに震えている私の手元へと向いた。

 その瞬間。
 何かを言いかけ、吊り上がっていた彼女の口元が、ぐっと不自然に閉じる。

「…………」

 数秒。
 ものすごく何かを言いたそうな顔をしたまま黙り込んだあと、かぐやさんは盛大に顔をしかめた。

「~~~っ、もー! 今はそれどころじゃない!」

 半ばやけくそのように叫ぶと、私の手を掴み直す。

「ほら彩葉! 先お風呂! あったまるのが最優先!」
「あ、う、うん……?」

 疑問を挟む余地もなく、ぐいぐい引っ張られる。
 後ろから、ヤチヨさんの上機嫌そうな声が飛んできた。

「ふふ、着替えはあとでヤッチョのおさがり置いておくね〜」
「ヤチヨオオオオオオ!!」

 脱衣所のドアが勢いよく閉まるその直前。
 ちらりと見えたヤチヨさんの顔は、「してやったり」と言いたげな笑みを浮かべていて。
 ……けれど、その笑顔の意味を私はまだ知らなかった。

— End —

Comments 45

クラway3 天前

面白い 続き嬉しい 感謝感激

曇らせ最高12 天前

、、飼う、、、?カウ、、?あれもしやあまり倫理観ない、?それはそれとして続きはないのですか!?

ハロ13 天前

面白かったけど、続かないのかぁ… ヨヨヨ…

ちょこツ17 天前

彩葉ってイヌ寄りのネコタイプだと思ってるんですけど、そんな子が家出?してずぶ濡れて目も死んでるのに華やかさは失われず、美人姉妹に大事に甘やかされて目に光が宿ってデレていく過程が世の中必要だと思うんですが続きナイノォ!?

かがり(ت ) (夏琉)17 天前

スクロールバーが仕事してなくて続きが見えないんです!続きはいずこ?(

K
Kirq17 天前

最高っすね、続きはどこですか

たぬき17 天前

うーんエッチだ、エッチな話だ。 続きは?どこ?ここ?

間問 稚雪17 天前

あぁ~^とても良いですね、ありがとうございます続編お待ちしております

グランドマスター・リア17 天前

続き楽しみにしてます!!

ひーこみーこ17 天前

続きますよね? まさかこのまま生殺しにしないですよね??? お願いします(土下座)

絡繰ツル18 天前

続きを……

N
nekosi18 天前

続きは?って思いながら概要欄見て絶望してる

Sakuria
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