Novel22 days ago · 8.2k chars · 1 pages

幼馴染より弱いヤツとは付き合わない

𝕞𝕚𝕣𝕚𝕒𝕞𝕚𝕣𝕚𝕒

苦労人だが満更でもない幼馴染の話 。.ꕤ………………………………………..ꕤ.。 勢い書き。矢印のでかい二人組が好き。 ご都合設定や自分解釈でお話書いてます。 なにもかもがファンタジーなのでこんなのねぇよを見かけても温かい心で見逃してください。 誤字脱字多いかもです。気づいた時点で修正していきます。 苦情、誹謗中傷は受け付けていません。 少しでも不快な思いをした場合、その時点でブラウザバックを推奨いたします。 なんでも許せる方のみです 。.ꕤ………………………………………..ꕤ.。  ちょっとした読了後おまけ 。.ꕤ………………………………………..ꕤ.。 . . . . . . 「……維月ちゃんってどこに配属されてんだろ」 「なんだよ藪から棒に」 「だって警視庁来ても一回も会わねぇじゃん」 「そりゃ、こんだけ人いたら無理だろ」 「急に現れてくれねぇかな、お姫様みたいに」 「暴走機関車の間違いだろ」 「あ、いまのチクっちまうからな」 「……ん?んだよ捜一の奴ら、誰か来てんのか?」 「さぁ?あの感じは公安じゃねぇの?」 「へぇ、よく聞くやつか。おもしろそうじゃねぇか。覗いてこうぜ」 「あ、ちょっと陣平ちゃん!」

■あてんしょん■

・夢主ちゃんいます。

・夢主ちゃん名前固定です→杠 維月

・全部が勢い。

・ご都合主義と自分解釈です。

・苦情、誹謗中傷受け付けてません。

・なんでも許せる方のみです。

✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••

「維月より強いヤツとしか付き合わない」
「……いや、ちょっと」
「維月に勝ってからまた顔見せに来いよ♡」

そう告げた幼馴染が何の気なしに嬉しそうな笑みで、名案を思いついたかのような晴れやかな表情を見せてきた時。

それを見た私はきっと、なんとも形容しがたい表情を見せていたんだろうなと。

それは人生で一番と言っていいほどに動揺をした日であり、今までで一番楽しそうな彼女の表情を見た日でもあった。

「……私いま巻き込まれたね?」
「私は維月のモノだろ?」
「千速はものじゃないでしょ」
「あは、そういうところほんと大好きだぞ♡」
「だからさぁ……もぅ」

調子のいい言葉にのせられちゃうのは、私も幼馴染のことが大好きだからで。決して甘やかしてるわけじゃない、はず。

……あれ、好きだから許容するのは甘やかすのと同義ってコト?

✿ ┈ ⋯ ┈ ✿ ┈ ⋯ ┈ ✿

事の発端は小学生くらいの頃。
よくあるお遊びのような、ネタのような。そんなノリだったことは確かだし、その場にいる全員誰も本気にはしてなかったと思う。

「維月より強い子ならつきあってもいい」

私、杠 維月には物心つく前からの幼馴染がいた。パワフル全開で、まさに豪快さを具現化したような。私のことが大好きな子。

その名を萩原千速といった。
これはそんな彼女の発した言葉である。

その先にいるのは彼女に恋焦がれ毎日のように告白をする二つ歳下の、松田陣平という男。

ふいと顔を逸らした千速を見て、次に隣にいた私を見ては眉を上げて「いつき!しょうぶしろ!」とか。
突然飛びかかってきたから驚いたけど、幼い頃から武道をかじってる私はそのまま軽く投げ飛ばし、翌日陣平の頬には湿布が貼られていた。

「……やり過ぎたかな」
「陣平が軽すぎたんだろ」
「千速好きだ!!!」
「おぅ、頑張って維月に勝てよ!」

なんて、軽い調子で千速が返すくらいに。

「ねぇ、そしたらさ」
「ん?」
「いつきちゃんは?」
「私?」
「どんな人とならつきあうの?」
「……さぁ?分かんない」

そうして研二の問いを軽く流すくらいに。
ちょっとしたことから始まったこのやり取りは、まぁ幼馴染の間で流行るんだろうな。所謂身内ノリみたいな、よくあるよねぇ。くらいのものだと思うわけね。
だってみんな小学生だったし。

それが中学校生活を経て、変わったきっかけはこれまた千速だった。というより千速を取り巻く環境という方が正解に近い。

なにしろ彼女は、男女問わず誰もが美人と思うほどビジュアルが強い。振り返る男の数なんてもう数えるのをやめてしまうくらいに。

中学生になって少し大人の価値観を取り入れ始める学生たちの、玉砕覚悟で千速に告白をしてくるヤツのなんと多いことか。それ故、節操ない男によるいざこざが目につき始めた頃。

これが本当に面倒くさいことになった。

「維月、彼女は誰だ……?」
「こないだ千速に告白した男の彼女だってさ」
「男がとんだ下衆野郎じゃないか」
「うん、千速は悪くないね」

千速は良い奴だから、話せば大体の子は彼女を敵対視することなんてない。人の男を取るなんて最低なことをする人に見えるわけがないからね。

ただ、男女構わず引き寄せる魅力があるからこそ。彼女の、私たちの知らないところで勝手に周りが拗れていく。

それが故に、この辺りから少しずつ千速の疲弊した様子が目につくようになって。
そんな彼女を心配したわたしはつい

「なにか力になれることがあれば頼ってね」

──と、言ってしまった。

私ももう少し詳細に言えばよかったんだろう。
誰にも見つからないように帰るルートを探すとか、いざこざに巻き込まれそうになったら仲介するだとか。

そんな話をプラスですればよかったのだ。
そうして、言葉足らずが祟った結果。

「維月より強いヤツとしか付き合わない」

千速は全部私に丸投げした。

 ໒꒱· ゚

私こと、杠維月はそこそこ強かった。
千速が丸投げしてきたそれに問題なく対応できるくらいには。

「そこそこじゃなくてめちゃくちゃだろう」
「めちゃくちゃだね」
「ごりらだろ」
「陣平あとではっ倒す」

……隣で幼馴染達はこんなことを言ってるけど、本当にそこそこ。ちょっと広めに武道を嗜んでいるだけで、どれもこれも極めているほどではない。

そう言うとすぐに「そこそこの人間は空手部主将といい勝負しないだろ」なんてことを千速が言い出すんだけどね。あれはあちらが私に対して手加減したのと、私が主将だからとそれなりに本気を出してしまったのが絶妙に噛み合ったからで。

本当に人から持て囃されるほど私は強くはないと思う、たぶん。本当に。

「柔道部のエースが投げ飛ばされたってさ」
「だって軽かったから、エース」

「隣の不良にたんこぶ作らせて帰したんだって?」
「話通じなかったし」

「空手部主将、県大会いい所までいったのにまたお前に負けたってよ」
「あぁ……うん、ソウダネ」

そうして謙遜していたはずの学生生活は、段々と連戦連勝を貫いていくことで(あれ、私ってば本当にそこそこじゃなくてめちゃくちゃ強かったのか)なんて思考チェンジすることで、認識がゆがみ始めた。

というよりも、これはやってるうちに負けず嫌いが発動していた私が原因だとは思う。

だが少し聞いてほしい。
だって、声をかけられる度に「意外と弱そう」だとか。挙句の果てには「萩原千速は俺のモノだ」なんて開口一番に言い出すのだ。

千速は物じゃないっつの、誰も彼もろくな男じゃない。もちろん普通の人だっていたけど、普通の人ほど腕相撲とか簡単なもので勝負をつけたり失言なんてしないから、私だってそこまで派手にやらないし目立つ噂になることもない。

私に変な噂を纏わせようとしてくるのはいつだって気に食わない態度で千速に好意を寄せてる奴ばかり。
そして私も、そんな奴に噛み付いてしまえば次第に学校中へ名前が広がっていくのも仕方がない。

「維月は最強だな♡」
「また調子いいことばっかり言って」

……私こと、杠維月はめちゃくちゃ強かった。
結局のところ、当たり前のように千速と一緒に入学した高校でも、その先にある大学でも。

「へぇ、千速は警察学校行くんだ。確かに白バイとか様になりそう。想像するだけでもうかっこいい」
「そうだろう?」
「うん、応援してるね」
「維月もなるだろ?」
「うん、そう……ん?」
「ん?警察官」

そうして千速と話していくうちに(まぁ、行ってみるのもありだな)と思った警察学校までも。

連勝記録は続いていき、それ即ち千速に惚れる男の数もどこへ行ったって変わらない。

「おい維月!千速と将来結婚すんのは俺だ!」
「陣平のおかげでボクサーに襲われても立ち向かえそうな気がしてきた」
「維月は誰が来ても負けないだろ」
「陣平ちゃん、もうすっかり維月ちゃんに攻略されてやんの」

ずーっと負けはなく、千速に惚れた男たちをはっ倒す日々に明け暮れ。

「本日付で配属されました。杠維月です」

いくところまでいった私は、紆余曲折を経てゼロに配属されることになったと。
それ故に、今後あまり目立ったことはできなくなるので仕方なく。もちろん詳細は伏せてそんなことを幼馴染に話したけど。

「……へぇ、暫く会えないって?」

これが想像以上に幼馴染の機嫌を損ねてしまったらしい。

 ︎✿ ┈ ⋯ ┈ ✿ ┈ ⋯ ┈ ✿

「神奈川県警が白バイの手配依頼出してんだってよ」
「ふーん、よく知ってるね」
「だってよ〜手配理由見たか?」
「見てない」
「犯人追ってて一台お釈迦にしたんだと」

ほら写真、と言って隣にいる同僚は資料を見せてくる。なんでお前が持ってるんだ?と思ったものの突っ込まないでおくが。気になるものは気になるので見せてもらった。
白バイ駄目にするとか懲戒免職まっしぐらだぞ……どんな奴がやってるのか気になるでしょ、どう考えたって。

そう軽い気持ちで資料を見た自分が愚かだったと気づくのは遅くない。

「ち、ッ」
「ん?知り合いか?」
「あれ、よく見たら杠と同期じゃん」
「い、いやぁ……あ〜、ウン」

お、お前か〜〜〜〜!!!
資料の写真に見覚えのありすぎる顔が載ってた時の、それも結構なことをやらかしてる時の寒気ったら。もう経験したくないけどこの感じはこれからもやるんだろうな、なにをしてんだこの幼馴染は。

お釈迦にした白バイの写真も丁寧に並んでいたが、なにをどうしたらこうなるんだといった惨状で。兎にも角にも一旦頭を抱えた。

うわぁ、この……どうしよう。
いまこの立ち位置を最大限利用して揉み消そうかな、と思いついた悪い考えは霧散させた。
いやほんとになにやっちゃってんのまじで、懲戒処分されたらどうすんだこのッ、もう!!

「ちなみになんで白バイはこんなザマに……?」
「追跡してた車両が赤信号直進しようとしたから止めようとしてこれ」
「そりゃ、こうなるか……」

勲章なのね、白バイもまさか自分がこうなるとは思ってなかっただろうに。

「なぁ、ほんとに杠の同期なのか?」
「そうだよ、幼馴染」
「美人だな。紹介してくれよ」
「私に勝ったらいいよ」
「え、なにそれ」
「そうなってるの」
「登竜門ってこと?」
「そんな感じ」

そう聞くや千速に紹介されたい男が腕まくりをしていたが、執務室故に軽くやった腕相撲でしっかり勝利を掴んだ私の横で「ごりらかよ」と呟いては腕を抑えている。

甘いね、千速に紹介されたいんだったら私くらい軽々やってもらわないとさ。

この日を境に、部署内では定期的に腕相撲大会が開催されることとなる。もちろん千速の噂は瞬く間に広がった。いや仕事しろよ。

 ໒꒱· ゚

「ちょっと千速」
『おぉ、どうしたんだ突然。暫く会えないんじゃなかったのか?』
「イヤ、もう貴方のやらかしが目に入って心臓に悪いんだけど」
『へぇ?騒ぎになったらお前から連絡がくるようになるのか、いいことを聞いた』
「ほんとにやめてね???」

電話するとしたらいい話がいいんだけど。
そう思った勢いのまま、電話先に伝えた「せっかくなら犯人逮捕した話とか、昇進したとかいいことで話したいでしょ」なんて言葉には「それは……頑張らないとな」と、心做しか嬉しそうな音色が返ってくる。

ただ、そうは言ったものの。私のせいであまり話せる機会が多くないのは申し訳ないのだが。

それでも、さすがに次会う時には懲戒処分されてましたとか言われたら泣いてしまう。お前と一緒にやるなら警察も悪くないなと思ったんだぞ。私を一人にするな。

『お前はちゃんとやってるのか?』
「そりゃあ、仕事ですから」
『場所によっては一緒に住めたかもしれなかったのにな』
「研二もいるのに私入ったらおかしいでしょ」
『そんなわけあるか、研二も喜ぶさ』
「どうだか」
『それより、次はいつ会えるんだ?』
「まだ分からない」
『こないだもそう言ってたじゃないか、研二と陣平も会いたがってたぞ』
「その二人にはもっと会えない」

警察関係者ですらないし。
残念ながら普通の警察ならまだしも、公安の身では会える人も限られてしまうのだ。

「悪いけど今日は約束できない、また会えるタイミングで連絡するから」
『……会えるタイミングだけか?』

そのまま切ろうとした電話は。その先から きゅるり、と効果音が聞こえてきそうなほどの切ない音色によって手が止まり。またも調子は狂され、ぐぅと喉の奥が鳴る。

「……連絡だけなら、返せる日には」
『そうか、なら許そう』

くそう、私の扱いが分かってるなこの幼馴染。
小さくため息をついたその先で「じゃあ私はこの後お偉い方への訪問があるから、またな」なんて聞こえた言葉を最後に電話はぷつりと切れる。

……お偉い方って、絶対白バイの件じゃん。
そんな大事なことがあるなら後で折り返しにでもしてくれればいいのに。

そう考えてすぐ、折り返しじゃなくて今を優先したのは私のせいか、と気づいた。
……折り返しに出る保証ないもんね、私。

心の中で(頼むから辞めさせられてくれるなよ……)と願うままにデスクへ戻り、残った書類の山の処理に明け暮れた結果のド深夜頃。

『久しぶりに話せて嬉しかったぞ』

ただ一通そんな連絡がくるものだから、私も結局のところ絆されてしまうので。

『私に白バイ乗ってる姿見せるまでは辞めさせられないでよね』
『じゃあさっさと見に来ればいいだろう』
『それができないの分かってて言ってるでしょ』

頑張って時間作るから、今度ゆっくり話そう。

そう一言返してから電源を落とした。
直後の携帯はデスクの隅で少し震えていたけど、それはまた後で。仕事が片付いてからにしよう。

そう思うだけであと少しはやる気が保ちそうだな、さすがに帰宅はしたいからね。
チラチラとパソコンの光と薄暗い電球が光る部屋の中で。さっきより減ったように見えない書類の山と空いたコーヒーの缶に埋もれながら、仕事を片していく。

「……あ」

今日、結局どうなったのか訊けばよかったな。

 ໒꒱· ゚

あれから、書類や仕事を片っ端から片付けて一回だけ千速に会った。日常の話に花が咲いたかと思えばやれあの上司が腹が立つだのこいつが口説いてきてしつこいだの。

相も変わらずよっぽど面倒くさい相手には私を通せと言っているようだった。ただ、目立ちたくないと言った私の言葉を護って名前は出してないようで。

ただ「私の幼馴染を通せ」とだけ言われた相手はもちろん理解などできずただ首を傾げるばかりなんだと。

そうした結果、神奈川県警では「萩原千速の幼馴染がいるらしい」なんて噂だけが独り歩きしてるらしい。その幼馴染、一生その人たちの前に出てくることはないのに、おもしろ。

そんななんでもない話を交わして浴びるほどお酒を飲んで寝て、朝日より早く起きてはまた溜まった仕事をしなければならない。
千速と交わした「またね」がすぐにくることもなく。

なんなら小さな組織に潜入捜査が決まって余計に連絡が取れなくなったりとか。

──まぁ、その後いろいろあったわけで。
数年後、小さな組織が潰れた頃。とある事件により重症を負った私はそのまま潜入捜査員を継続することが困難となったので。大きな組織への先入を控えていたがやむを得ず今度は警視庁への異動。

私の後任?知らない。大した引き継ぎもできないままいなくなっちゃったし。一つ下の後輩に声掛けしたくらい。

……その後輩はいま隣で仕事してるんだけどね。

「今度は同僚だね風見」
「勘弁してください……」
「あは、かわいそ〜」

大量の胃薬と缶コーヒーが置いてある隣のデスクを少し不憫に思った。きっと元凶は私ね。
申し訳ない気持ち半分、それだけ優秀だったのでついつい無茶振りが増えてしまったのだ。これからは同じ立場なので許してほしい。

身体がある程度回復してからすぐに異動は命じられ、さらっと異動先での引き継ぎを受けて当たり前のように日常が始まったのだが、その矢先。

早速と言っていいのか、捜一の捜査をこちらが巻き取る事案が発生したらしい。

あ、これ知ってる。
よく聞く殴り込みみたいなやつだ。

そう聞いて少しだけ、いやかなりわくわくした。だって前の部署じゃ身内にも身元隠してばっかりだったから、こうして誰かに顔を出しに行くのは随分と久しぶりなのだ。もちろん名乗り出てしまった。
隣にいる風見の怪訝な顔はもちろん見えないフリ。

……仕事だしもっと真面目な顔しなきゃいけないか。

捜一へ行く途中、ふと感じた視線に気づくも、自分の顔や身体についた湿布やら包帯やらのせいと結論づくのは早い。その視線でやっと自分がまだ病み上がりだったことを思い出した。公安内では誰も突っ込んでこなかったから。

「失礼します。公安部です」

執務室に入って早々、体格のいい警部へ要件を伝えるが、まぁ当たり前のようにその後ろには目つきのきつい捜一の面々。

本当に嫌われてるんだな……。
というよりは今回の件がかなり理不尽というか、相手方には大した事情も話していないんだろう。

その上、謎の傷だらけの公安を名乗る女が一人で来たこともよくなかったのか。一つ聞こえた小声は段々と伝播していき、不平不満のオンパレード。

その中には普通に「やり方があるだろ!」なんてこちらに投げかけてくる声をもある。それはそう、とつい私も思ってしまった。

そんな中で、どこかの誰かが呟いたちょったした言葉。まぁ、簡単に言うと私の悪口みたいな。傷を嘲笑するような言葉だろう。
別にそこまで気にするものでもない。

ただ、対立してばっかりの相手方の油としてはちょうど良かったようで。まるで発火したように瞬く間に、一部でその言葉が繰り返されて。割と言いたい放題にはなっていた。別にいいんだけれども。

相手の畑にきたのは私だし、なに言われてもおかしくないかと思いながら来たから。むしろ本当にこんな感じなんだとちょっとだけ感動してるのは、絶対顔に出ないようにしなければならない。

「君たちやめんか!」

少し放置しすぎてしまっただろうか。体格のいい警部の注意を聞いてその場は収まると思ったけど、それを遮ったのは一体何かと。急に私の視界を埋める黒い影の正体を探って視線を右へ左へと。

動かしてやっと、違和感に気づく。

「おいてめぇら」
(……ん?)

黒い影は一つじゃなかった。
私の前に立つ大きな影は誰か、その声だけでは脳が認識せず。顔を認識するまで気づかなかった。
あれ、なんかどこかで聞いた声だな。しかもなんだか見たことのあるフォルム。

まさかこの場で私に援護がくるとは思ってなかったから、丸まった目でとりあえず瞬きを二つ。
そうして、その存在を認識する頃には

──あ、これやっちゃったか。

時間稼ぎすぎちゃったな、もっと早く退散すればよかった。私みたいな立ち位置の人間ってこの場だと異様に目立つんだ。気にしていなかったから気づかなかった。
きっと、今までのやり取りがいろんな人の視界に入っていたんだろう。

もちろんいま目の前で騒いでいる二人にも。

その剣幕は警察官としては勇敢そのものであるけど。
いざと言う時にこれ以上なく心強いんだろうけど。

この場ではどうしても、小さくため息が漏れて。
つい頭を抱えそうになったが、まずはこの場を収める方が先だった。どう考えても骨の折れることである。

「いま維月になんつった?適当ぬかしてんじゃねぇよ!!」
「さすがに度が過ぎるんじゃねぇの?謝れよ」
「どうどう、落ち着きなさい」

……いつの間にか警視庁に配属されていたこの幼馴染二人、誰か止めてくれないかな。

などと悠長に考えている私は、大したことないだろうと距離をおいたままの幼馴染たちからの矢印を順当に育ててしまっていたなんてことは、今はまだ知らないまま。

ただ一つ。この後真っ先に行わなければならないことは片割れの姉である一番の幼馴染にこの状況が漏れるのを防ぐことなので。どうしたものかと頭を回し始めた。

伝わったら私の手助けどころかこの二人に加勢するのは目に見えているし、そうなってしまえばもう収拾がつくことなんてないからね。

「……だから、落ち着きなさいってば」

— End —

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