前提
超かぐや姫!の本編後の二次創作。かぐやとヤチヨの二人にボディがあるIF設定です。一応続きですが、この話だけでも楽しめます。
◆
休日の朝。
家のリビングで、朝食のメニューを巡って、熱い議論が交わされていた。
「だから、たまごかけごはん! 良い卵貰ったんだから試してみなきゃでしょ!」
「えー、せっかくなんだからお昼にオムライスにしようよー。朝はー、昨日買ってきたデニッシュパン食べようよ~」
右からかぐや、左からヤチヨ。
何故か二人は私の両隣に座り、お互いの主張をぶつけ合っている。
今日は昨日遅くなってしまったせいで、三人仲良く遅い時間に起きた。
そのせいで、メニューで揉め始めてしまった。
「「ねぇ、彩葉はどっち食べたい?」」
私は寝不足と空腹で、ソファに深く沈み込みながら、適当に生返事をした。
「ふぁあ……どっちも美味しそうじゃん。私は、なんでもいいよー」
かぐやが作ってもヤチヨが作っても、それが何であっても、絶対に美味しいのだから、私は何でも良い。
そういう答えを返したつもりだったが、両隣にいた二人の動きがピタっと止まったのを感じた。
「「……」」
二人はゆっくりと視界を私ではなく、その先にいる互いに向けた。
「ヤチヨ。これって、もしかして」
「うん。それだよね」
「倦怠期かな」
「それだよね」
思考が同期している二人は、お互いの脳内で結論を出してしまったようだ。
「えっ、ちょ、違う! なんでもって言ったのは、どっちも美味しそうって意味で……」
慌てて弁解するが、二人は真顔だった。
「適当に流されたってことは、私たちの料理に飽きたんだ」
「彩葉の胃袋を掴んだと思ってたのに、怠慢だったね」
「だ、だから違うって。えっと、じゃ、じゃあ、二人の意見を合わせて、たまごかけご飯とデニッシュどっちも食べよ! ね!」
私が必死にリクエストするが、二人は私の顔を訝し気に覗き込む。
「「……妥協された」」
「めんどくさいなアンタら!!」
私がツッコミを入れると、二人は立ち上がって宣言した。
「よし。彩葉が食べたいって縋り付いてくるような、至高の料理を作る。ヤチヨは座ってて」
「ヤッチョにだって意地があります。彩葉が食べたくて泣き出す人生のフルコースを作るよ。勝負だよ」
「あ、いや、勝負とかじゃなくて、私、今お腹すいてるんだけど……」
私の声は無視され、二人は財布と鞄を引っ掴み玄関を飛び出していった。
「えっ……ご飯は……?」
リビングには、私のお腹の音だけが響いた。
◆
私はいつも行くのとは別の、隣町のスーパーに来ていた。
新鮮な肉や野菜、魚が売っているから、ここで良い食材を探そう。
(ヤチヨ~、欲しがってたデミグラス用の赤ワイン見つけたよ~。買っとくね)
(お、かぐやナイス。助かる~)
別の店に行っているかぐやと情報共有で会話しながら、買い物を続ける。
料理自体は勝負するつもりだけれど、食材の仕入れとかで競い合うつもりはない。
彩葉に良いものを食べて欲しいという気持ちはお互いに一緒だからね。
(あ。ねぇ、彩葉からこの前お土産で貰ったリンゴ食べていいかってメッセージ来たんだけど)
(食べたら絶交って送っといて~)
(はいはーい)
空腹は最高のスパイスだからね~。彩葉には我慢してもらいましょう。
彩葉がなんでもいいなんて言うから、ちょっとした意地悪のつもりだったけど、やるなら全力でやらないとね!
「ふふふ……待っててね彩葉。なんでもいいなんて言葉、二度と言えなくしてあげるんだから〜☆」
私はいっぱいになった買い物カゴを抱えてレジへ向かう。
◆
周囲が暗くなって来た頃、私とヤチヨは帰宅した。
リビングに彩葉の姿は無く、どうやら自室に居るようだ。
私は彩葉にメッセージを送る。
「『今から作る。出来たら呼ぶからちょっと待ってて……』っと。よし、やるよヤチヨ!」
「がってんだ!」
彩葉からの返信も待たず、早速調理を開始する。
キッチンで私とヤチヨ、互いに作るメニューを打ち合わせもせずに作り始める。
互いに何を作ろうとしているのか共有しているから、調理自体は協力する。
だって調味料とかレンジとかは共有するしかないから、段取りとか考えたらそっちのほうがいいからね。
「もうちょっと赤ワイン入れた方がいいんじゃない?」
「今考えてるー。ほら、そっちのフライパン焦げるよー」
「卵そっちも使うっしょ。二個出しといた」
お腹を空かせている彩葉のため、手早く済ませようと調理を進める。
家の中に良い匂いが充満する。
「よーし、ソース完成! だば~っと掛けてっと」
「こっちも、バジル添えて~、できた~☆」
「完璧だね、ヤチヨ!」
「これなら彩葉も泣いて喜ぶよ〜☆」
私たちはハイタッチを交わし、自信満々で皿を持ち、彩葉の部屋へ向かう。
メッセージには呼ぶと書いたけれど、一秒でも早く彩葉に食べて欲しかった私たちは階段を駆け上がった。
「「彩葉〜! お待た……せ」」
◆
ズズーッ、ズルズルッ。
お湯を注いで三分。 醤油ベースのチープでジャンクな香りが私の自室に充満していた。
「……うま。カップ麺なんて何年ぶりに食べるかな……意外と味は悪くない……」
私はかぐやとヤチヨの料理対決に巻き込まれ、家の中のものを食べることを禁止された。
仕方なく、近くのコンビニに行ってカップ麺を買ってきて、部屋の中でこっそり食べる。
これなら家の中のものじゃないからいいでしょ。屁理屈なのは分かっているから、隠れて食べているわけだけども。
「いや、流石に昨日の夜あんな運動した後、一日絶食は辛いって。二人には悪いけど、ちゃんと作ったものも食べるつもりだから、いいよね……あぁ~スープうま~」
なるべく匂いが部屋の外に漏れないように、窓際で麺をすする。
チビチビと食べ進め、そろそろスープを飲み干そうかなとカップを傾けた瞬間。
「「彩葉〜! お待た……せ」」
料理皿を持った二人が、部屋に突撃してきた。
「……」
私は手に持ったカップ麺の容器を背中に回す。
手遅れなのは分かってるけど、一応……
「「な、なんで食べちゃうのぉ〜!!??」」
二人の悲鳴が、家中に響き渡った。
「信じらんない! 彩葉のバカ! 彩葉のために、頑張って作ったのに!」
「間食禁止って言ったのに~! 絶交だよ~! 絶交やだぁ~~~!」
かぐやとヤチヨが泣きながら私を責め立てる。
「そ、そんなこと言ったって、私だってお腹空いてたんだもん……」
「「……おぉ」」
「な、なにがおぉ……?」
これはおぉだろ、とでも言いたげなかぐやとヤチヨ。
それはそれ、と言いたげなジェスチャーを挟み、手に持っている料理皿を私の目の前に押し付ける。
「彩葉、もうお腹いっぱいになっちゃった? 食べられない? いらない?」
「自信作なんだけどな~。ヤチヨ食べて欲しいなぁ~」
「た、食べる、食べるから! せめてテーブルで食べよ? 押し付けようとしないでよ!」
私が食べると言ったことで機嫌を直した二人に連れられて一階のテーブルまで連行され、二人に両脇を塞がれて食べることになった。
「ほら、食べづらいだろうから、あーん!」
「あ、あーん……」
「こっちも~! はいあーん!」
「あ、あ~……ん」
かぐやの料理とヤチヨ料理を、何故か交互にあーんで食べさせられる。
「お、おいしいよ、どっちも。本当に。嘘じゃないよ」
「本当~? 嬉しっ! はいあーん!」
「んむっ……」
「ヤッチョのは? はいあーん!」
「むっ……お、おいしいよ」
「うれし~☆」
そんな感じで、一生口の中に料理を運ばれ続ける。
それが二皿目を超えた時、私は二人に質問した。
「ね、ねぇ、ちょっと聞いていい?」
「なに~?」
「なぁにー?」
「あ、あと何皿ある感じ……?」
二人は顔を見合わせ、キッチンに視線をやる。
するとそこには、でっかい寸胴鍋や料理が山盛りに盛られた大皿が複数並んでいた。
ビュッフェか???
「え、ビュッフェか?」
「全部彩葉の分だよ~♡」
「ちゃんと全部食べてね~♡」
「あ、ぁ~~~……ん……」
私は翌日、腹痛で仕事を休んだ。






















ご飯作ってくれるって意気込んでるのにカップ麺に浮気するなんて…罪な女だ…(serious)